博麗家の姉として   作:てへぺろん

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キリの良いところまで投稿します。


別れとは突然に呆気ないものであります……


それでは……


本編どうぞ!




意思を継ぐ

 「霊璃、霊夢をお願いね」

 

 「うん、気をつけてね」

 

 「ああ、朝食を作っておいてくれ」

 

 「私のあまり美味しくないよ?」

 

 「それは確かにそうだな。でも食べたい、娘の料理は高級料理よりも舌に合うからな。私は霊璃の手料理の方がいい」

 

 

 嬉しいことを言ってくれた母様は今、仕事に出かけようとしている。今朝方、人里の代表が博麗神社を訪れて里の近場に出没する人食い妖怪を退治してくれとのことだった。既に何人かの人が被害に遭遇し、運よく逃げ延びた人物の証言でその存在が明るみに出た。人里の住民は気が気ではないだろう……里の近場で現れたのだから。

 人里には普通の人間が多く暮らしており、妖怪と戦えるのはほんの一握りのみだ。下手に妖怪を退治しようとして返り討ちに遭うのは目に見えている。そこで博麗の巫女である母様の仕事だ。今まで博麗の巫女として務めを果たして来た母様だ。数々の武勇伝を聞かされていた私は疑わなかった……

 

 

 母様ならばその妖怪もやっつけてくれると……

 

 

 何の疑問もなかった。時間も時間だったので鳥居の前で話し合っていた母様と代表、運よく目が覚めた私はそれを目撃し、依頼を受けて母様が今から妖怪退治に出かけるところだったのだ。そうして母様が出て行こうとした時だった。

 

 

 「まってかあちゃん!!!」

 

 

 妹が裸足でかけてくる。様子が変だ……寝起きのようで髪はボサボサで寝間着姿であったが、何かを訴えかけるような必死さが伝わってくる。その様子に出かけようとした母様は足を止めてかけてくる妹はそのまま胸に飛び込んだ。

 

 

 「どうしたの霊夢?」

 

 「かあちゃんいっちゃダメ!!」

 

 「あら、どうして?」

 

 「わからない……でもいっちゃダメなの!!」

 

 

 服を掴んで離そうとしない。私と母様は顔を見合わせる……尋常じゃない妹の行動、だが時間は止まってくれない。もしかしたら今この瞬間妖怪が人間に危害を加えているのかもしれない……母様は妹の背中を擦って優しく語り掛けた。

 

 

 「大丈夫よ、すぐに帰って来るからね」

 

 「いやだ!!」

 

 

 それでも駄々をこねる。これでは埒が明かないと悟ったのか母様は妹に軽く霊力を込めて気絶させて私に後を任せて妖怪退治へと赴いた。

 

 

 しかし私は後悔することになる……何故あの時に母様を止めなかったのか、妹には鋭い勘があり、巫女としての勘が悪い方向へと向かっていることを気づかなかったのか、妖怪退治なんかそっちのけで無理にでも引き止めておけば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……きっと母様が死ぬことはなかったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました妹が母様を探すが当然いない。不安を口にする妹を宥めておいしいとは言えない朝食に元々の味を活かせるフルーツを追加してあげる。それでも箸が進まずにいる妹を元気づけてあげようと面白い話をしようと思った時だった。

 

 

 「霊璃!!!霊夢!!!」

 

 「どひゃあ!?……って藍さん?どうしたんですかそんなに慌てて?」

 

 

 珍しく慌てた様子でスキマから姿を現す藍さんに質問するがそれよりも先に疑うしかない情報をもたらされた。

 

 

 「二人共……心して聞いてくれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「巫女が……霊香殿が亡くなった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時から記憶がほとんどない。辛うじて憶えていたのは散らかった朝食に辛そうな藍さんの表情……魂が抜けた妹の姿……そして藍さんに掴みかかる私自身の姿だった。

 

 

 後で聞かされた話……私は藍さんに当たっていたらしい。朝食なんてそっちのけで行き場のない怒りをぶつけて藍さんはそれを受け入れてくれていた。藍さんが辛そうだったのはその時の私の表情を見ていたからだとか……霊夢ちゃんは喪失感に包まれて信じようとしなかった。私も信じたくなかった。だけども現実は非情で母様は妖怪と同士討ちで亡くなったそうだ。紫さんも動揺していてあんなことを言ったのだと……思いたかった。

 

 

 「博麗霊璃、あなたが博麗の巫女として先代の務めを全うするのよ」

 

 

 そして我に返り気がついた時には私が博麗の巫女となっていた。

 

 

 母様に憧れて私は博麗の巫女を目指した。相応しくないと言われて怒りもした。けれども……こんな形でなりたくはなかった。幻想郷には博麗の巫女が必要不可欠、妹もいるが幼過ぎて紫さんと藍さんの補佐があっても流石に無理があった。そのため私が選ばれた……博麗の巫女として相応しくない者が博麗の巫女になってしまった瞬間だった。

 

 

 その日の夜、紫さんと藍さんが博麗神社に居座ってくれたが、雰囲気は最悪だった。紫さん達はまだ起きているということで私と妹は早々と寝床に入り眠ろうとしたが中々寝つけない。不意に私は隣を見た。いつもは私と妹の間で寝ているはずの母様の姿はもうどこにもない……代わりにあるのは空の布団のみ。途端に悲しくなる……頭までかけ布団を被り気力で泣くのを我慢していると私の布団に入って来る影があった。

 

 

 霊夢ちゃんが今にも泣きそうな顔で抱き着いてきた。そして抱き着いた妹は……

 

 

 「おねえちゃんも……いなくなっちゃうの……?」

 

 

 母様の後を引き継いで博麗の巫女になった私、その私が今度はいなくなってしまうのではないかと不安を口にした。妹はとても賢い、紫さんとの話を聞いていた妹はそう思ったのだろう。たとえ才能があって博麗の巫女としての素質があると言ってもまだ幼い子供で一人になるのが怖いのだ。もしかしたらそうなってしまうかもしれない……けれども私はやらねばならない……

 

 

 妹を抱きしめて母様がいなくなった寂しさと博麗の巫女となってしまった恐怖を包み隠す。

 

 

 博麗の巫女として……母様のような立派な巫女を目指して……私の明日は今までと違う朝になるだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……はぁ……!」

 

 

 頑張った。博麗の巫女の務めを果たそうと躍起になったこともあった。その結果は酷いものだった……

 

 

 幸いなことは他人に被害が及ぶことがなかったことだろう。それともう一つ、あまり凶悪な妖怪がいなかったことで私は今まで生き延びることができた。だが……今の私の姿はボロボロでどこからどう見ても敗北者だった。

 

 

 人里を荒らす妖怪退治が舞い込んできた。初めは悪戯程度である程度は人里の方で対策していたが、悪戯の度合いが酷くなっていった。しまいには危うく放火される事案にまで行き、遂には博麗の巫女である私に依頼が来たというわけだ。覚悟を決めて妖怪を退治しに行ったが……遊ばれた。

 退治道具の武器である御払い棒は猿のような妖怪にへし折られ、泥団子をぶつけられ、斬り倒れた木の下敷きになって危うく死にかけた。おちょくるように逃げ、泥団子を投げてまた逃げるの繰り返しで体力には自信があった私でも妖怪と比べたら天と地ほどの差だ。追いつけない……何度追いかけても木の上に逃げられたら人間である私は木をよじ登るしかない。その間に隣の木へと飛び移りまた泥団子を投げて来る。これでも幻想郷では弱小妖怪に含まれるらしい……そんなのに苦戦を強いられていた。

 

 

 結局私は何もできずに、陰から見守っていた藍さんが代わりに猿妖怪を懲らしめてくれた。相手が大妖怪の藍さんに懲らしめられたことで悪さもほどほどにすることで逃げ出し、一件落着となったが、博麗の巫女である私が一人でまともに解決したことは今まで一度もない。いつも藍さんや紫さんに手伝ってもらっている。人里の多くの人物は私が見事()()で解決したものと思っている。

 

 

 私は嘘をついていた。本来ならばこんなことをしてはいけないのだが、私は()()()だ。次世代の巫女は博麗霊夢であることは間違いない……妹が博麗の巫女になれるまでの間の代わりだ。私は博麗の巫女の()()を続けていることに相違ない。

 

 

 運よく妹が博麗の巫女になるまで大きな異変はなく、無事に博麗の巫女が誕生した。そして私は晴れて巫女をやめようとしたのだが……

 

 

 「姉さんと一緒じゃなきゃ私は博麗の巫女をやらない」

 

 

 その言葉を聞いた時は耳を疑った。どうしてと聞けば……

 

 

 「姉さんは母さんに憧れて博麗の巫女になりたかったのでしょ。私はその夢を諦めてほしくないし、捨てないでほしい……相応しくなくても身を挺して母さんの意思を継いでくれた姉さんは立派な博麗の巫女だから。そんな姉さんと共に人生を歩みたいの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だって姉さんは……私の憧れなんだから」

 

 

 恥ずかしそうに告白する妹……まさかこんなことを言われるとは思っていなかった私は妹の前で泣き崩れると言うみっともない姿を晒してしまった。姉として恥ずかしいことをしたと今でも恥じることがある……

 

 

 その翌日、なにがともあれ妹に博麗の巫女をやってもらわないと困る私は博麗の巫女をそのまま続けることになる。だけれどこんな私がこのままでいいのか?私のせいで霊夢ちゃんに支障がきたすのではないか?とも思った。そんな中で紫さんと霊夢ちゃんは幻想郷に画期的な決闘方法を普及することになった。

 

 

 それが弾悪ごっこであった。「人間でも神様と同等の強さを発揮できる」美しさを競い合うもので、これを幻想郷中に広めることで被害を最小限で済ませて、わだかまりを無くし、無益な血を流さずにすむ方法でもあった。

 まだ霊夢ちゃんが博麗の巫女になっていない頃、毎回ボロボロになって帰って来る私を心配した様子で出迎える。毎度大丈夫だと主張しても納得がいない様子の妹を尻目に家庭を両立させようと台所へ向かおうとする私を止めて安静に休ませようとする。そんなことが何回も続いていた。そんなことがきっかけとなり、極力暴力で解決することはない決闘方法を生み出すことで私を守ろうとしてくれていたとは最近まで知らなかったことだ。まさか私のことを思って幻想郷のルールまで変えてしまうだなんて……

 

 

 この方法が普及するまでには色々といざこざもあったが、紫さん達が解決してくれて今では主流の決闘方法となった。

 

 

 二人の博麗の巫女が存在する異例な時代ともなったことには変わりはない。そして最弱な巫女である私と最強の巫女である霊夢ちゃんとが異変を解決していくことになる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ん?」

 

 「姉さん起きた?」

 

 「……うん、おはよう……ごめんね、ずっと膝枕していて疲れたでしょ?」

 

 「ちょっとね、でも姉さんの寝顔見れたから大丈夫」

 

 「いつも隣で寝ているから見てるじゃない」

 

 「それとこれとは別よ」

 

 

 夢から目が覚めると妹が出迎えた。そのことに心の奥底で安心していた私がいただろう……

 

 

 「目が覚めたところ悪いけど、姉さん」

 

 「ああ……そういうことね」

 

 「ええ、そういうことよ」

 

 

 何も言わなくてもわかる。妹はこう言いたいのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異変だ……だから行こう……っと。

 

 

 こうして時々起こる様々な異変を解決しに、博麗の巫女としての務めを果たしに行くのである。

 

 

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