博麗家の姉として   作:てへぺろん

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ほのぼのしている気がしない……そのうちできるの……かな?


それでは……


本編どうぞ!




妹になったあの日から

 「はぁ……やっと帰って来れた」

 

 「お疲れ様」

 

 

 私達の居場所へと帰ってきた。無事……とは言えないけど、隣には疲れた表情の姉さんがいる。私は疲れるどころか生き生きとしている。姉さんと一緒に異変を解決できるのが楽しみだなんて口が裂けても言えない……これだけは内緒よ。

 あの日は満月の綺麗な夜空に星々が輝いて見惚れるはずだったのに、姉さんの様子がおかしいことに気がついた私は声をかけた。そもそも今思えばその日の今朝から様子がおかしかったわね……その時に気がつかないだなんて私は自惚れていたみたい。姉さんは大切な話があるとかで綺麗な夜空を背に私達は向かい合った。話があるとか言って中々口を開こうとしなかったけど待った……その間、ずっと辛そうにしていたのを憶えている。見たくない顔だった。そして嫌な予感がした。

 

 

 外れてほしかった勘が当たってしまう。

 

 

 『「ねぇ……私ね……博麗の巫女を……やめようと思うの」』

 

 

 私は一瞬思考を放棄したのだと……思うわ。もしくは姉さんの言葉を理解したくなかったのかもしれなかった。でも姉さんはそんな私に構わず続けて口を開く。

 

 

 『「私ね……無能だから……ダメダメだから……これ以上あなたに迷惑かけたくないの」』

 

 

 そんなことない。姉さんは無能でもダメなんかじゃない……姉さんは立派な博麗の巫女なの!

 

 

 拳に力が込められていた。姉さんは自分の夢を諦めようとしている……私が「博麗の巫女をやるなら姉さんと一緒じゃなきゃやらない」って言ったじゃない!そう口に出そうとしたけどやめた。姉さんは今まで我慢して我慢し続けて来た。私が幼過ぎて博麗の巫女になれなかった。その間ずっと姉さんが博麗の巫女の務めを果たしてくれていたし、たとえ紫や藍の手を借りようと姉さんはボロボロになるまでやり通した。知っている……母さんのような博麗の巫女になりたかったのを。

 忘れもしないあの日、朝目覚めた私は嫌な気がした。勘が私に何かを伝えていた。不安になった私は母さんを探していると今から出て行こうとする姿を見つけたわ。姉さんの姿もあったけど真っ先に母さんの元へ駆け出して止めようとしたけど……止めることはできなかった。そして母さんは死んだ。一緒にいた姉さんを恨んだことはないわ。だって姉さんだって知らなかったし、姉さんが一番辛かったと知っている……藍に掴みかかった姉さんは泣いていた。私よりも姉さんの方が母さんと長く一緒にいたし、母さんに憧れて修行が嫌いな私と違ってずっと頑張っていたんだから……

 

 

 姉さんと一緒だから修行が好きだった。母さんと一緒だったから修行なんて苦にも思わなかった。私だけじゃ修行なんてつまらない……家族と一緒だったからできた。姉さんのように私は立派じゃない……

 

 

 姉さんは憧れだった母さんと同じ博麗の巫女となった。けど望んだ形とはかけ離れた形で引き継ぐことになった。それでもやり通した……毎回ボロボロの姿で帰って来る。平気だと嘘をつく。人里では()()で妖怪を退治しているのだと思い込まれている。私に苦労をかけまいと気丈に振舞う姉さん……早く私も博麗の巫女になって姉さんを支えたかった。一緒に巫女をやりたかった。

 

 

 そして時が来たわ。姉さんはそのまま巫女を止めてしまおうかとしていたみたいだけど……私が止めた。だって形はどうであれ、母さんの後を継いでくれた。私が巫女になるまで全部その荷を背負っても生活の方も疎かにしないようにしてくれていた。そんな姉さんが長年なりたかった巫女の夢を諦めてほしくはなかった……

 

 

 大丈夫、今度は私が姉さんを支える……支えられる!

 

 

 そのはずだったのに……

 

 

 『「私は博麗の巫女をやめる……だからね……明日……ここを出て行くわ」』

 

 

 『「――ッ姉さん!」』

 

 

 『「ごめん……決めたことなの……」』

 

 

 『「……」』

 

 

 言葉が出なかった。そして怒りが湧き上がってきたけど、それ以上に寂しいと感じていたのだと思うわ。それ以降会話が続かなかったもん……

 

 

 姉さんと共に人生を歩みたいと願った。私は本音を滅多に言わないけどあの時は包む隠さずに伝えることができた。

 

 

 『「だって姉さんは……私の憧れなんだから」』

 

 

 とても恥ずかしかったのを憶えているわ。その場から走り去りたい衝動に駆られたけど、姉さんが泣き崩れたのにはびっくりして焦ったわ。胸を貸してあげて私よりも背が高くスラっとした体型なのに泣き虫な姉さん……泣いた後のスッキリした顔が笑顔だったので安心できた。でもあの時の「ありがとう」の笑顔は卑怯だった……ちょっとドキッとしちゃったじゃないのよ……

 

 

 色々とあったけれど、姉さんは巫女をやめて終いにはここを出て行こうとする。私達の居場所である博麗神社……母さんと姉さん、それに私が生きた証の場所。そこから出て行こうと……去って二度とここへは戻って来ないだろう姉さんと同じ部屋で寝たけどその日だけはお互いに距離が離れていた。

 悪いのは姉さんだ。そう決めつけて勝手に出て行けばいいと知らんぷりをしようとしたけど……急に怖くなった。母さんがいなくなり3人から2人に、今度は2人から……そう思うと真っ先に行動していたわ。早朝荷物を担いで去ろうとする姉さんを力ずくで引き止めた。

 

 

 そして私は……素直になれた。

 

 

 寂しいと……姉さんにはどこにも行ってほしくない。ひとりぼっちにしてほしくない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いをぶつけると姉さんは思いとどまってくれた。それだけで姉さんを許せた。だって私達は姉妹なのだから一緒に居なきゃいけないわよね。まぁ……寂しい思いをさせたから罰は受けてもらったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからただ姉さんが隣に居るだけで安心できた。異変の時もそう……姉さんが傍にいるだけでいつも以上に力を発揮できるし、一緒に異変を解決している時が楽しく感じる。一人だとやってられない……やっぱり姉さんがいないと私はダメみたいね……

 

 「霊夢~疲れたぜぇ~」

 

 

 ……うるさいのを忘れていた。

 

 

 「お二人さん宴会の準備は任せたぜ!」

 

 「何言っているのよあんたも手伝うの!」

 

 「ええ~」

 

 

 無事に異変が終わり、異変解決後の宴会を取り持って人間や妖怪種族関係なくどんちゃん騒ぎする。うるさくて面倒な連中が集まるけど、姉さんと一緒にお酒を酌み交わすのが楽しみ。

 

 

 我が家へと帰ってきた来たけど残念なことにお邪魔虫もついてきた。

 

 

 霧雨魔理沙……昔からの腐れ縁で一応の友人。付き合いは幼い頃からだから長いけど、昔と違って図々しくなったものね。宴会の準備は私達に任せて自分だけがくつろぐつもりでいる……そんな楽は許さない。無理にでも働かせて酒代分働いてもらうからね。

 

 「文句言わずに働け!!」

 

 「うげっ!?助けてくれ霊璃さん!霊夢がいじめるぜ!!」

 

 

 ……異変解決中に尻に針を打ち込んでやる。後で絶対ボコボコにすることに決めた……これは決定事項よ。それに姉さんにくっつくな!おいこら、背後に隠れて姉さんを盾にするとかボコボコにするだけでは済まさないわよ魔理沙!!

 

 

 ぎろりと鬼のような素顔と化した霊夢が魔理沙を狙っていた。そんな霊夢を宥めるのはやっぱり姉である霊璃の仕事だ。

 

 

 「霊夢ちゃん、魔理ちゃんだって疲れているんだし休ませてあげよう。代わりに私が魔理ちゃんの分も頑張るから」

 

 「だったら私が魔理沙の分も働くわ。姉さんは休んでいて」

 

 「それはできないわ。姉として妹に甘えるわけにはいかないわよ」

 

 「……罰の時は甘えてくれたのに……

 

 「霊夢ちゃん何か言った?」

 

 「……なんでもない」

 

 

 甘やかし過ぎよ姉さん、少しは魔理沙を怒っていいのに……って言うかいつまで姉さんにくっついているのよ!!早く離れなさいよこいつ!!

 

 

 その後は3人仲良く宴会の準備をして、関わった連中が博麗神社を訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし呼んでもいない連中もやってくるとか……あんた達は関係ないでしょうが!!!

 

 

 眼下に広がる無数のお邪魔虫に苛立ちを覚える……霊夢はご機嫌斜めの様子で立ち尽くしている。そんな霊夢に恐れをなさず近づく影があった。

 

 

 「異変解決ご苦労様」

 

 「咲夜……あんた今回は関係ないでしょ?」

 

 「お嬢様が参加すると言って聞く耳を持ちませんでした」

 

 「霊夢、光栄に思いなさい。私達があなたのために集まってあげたんだからね?」

 

 「帰れ」

 

 「うー!咲夜ー!!」

 

 

 面倒くさい連中の一人の我が儘な吸血鬼レミリア・スカーレットとその従者の十六夜咲夜と紅魔館勢諸々……あんた達が来るとお酒の分配が減るのよ。それにレミリアはよく私と姉さんを揶揄おうとするし、適当にあしらったら今みたいにすぐに咲夜に甘えるしまつ……どっちが上なんだか。

 ……って言っている傍でまた新しい無関係な連中がやってくる。どこから聞きつけたのか……いや、やっぱりお前か……捏造記者鴉め!!

 

 

 「あやや!?なんで羽を掴むのですか霊夢さ……アイタタタタタ?!」

 

 

 ネタがあればどこからともなく現れて厄介ごとを持って来る射命丸文……こいつが無関係な連中に宴会のことを喋ったに違いない。罰として羽を毟りとっても構わないわね。痛い?知らないわ。そうだ宴会料理に鳥の唐揚げを一品追加しないと。

 

 

 「霊夢ちゃんそれぐらいにしておいてあげましょう。文さんも宴会楽しんでいってくださいね」

 

 「おお霊璃さん助かりました!しかし霊夢さんは相変わらず手が早くて困っています……すぐに暴力を振るうので皆怯えて夜も眠れません。保護者としてそこのところどうでしょうか?」

 

 

 するりと拘束から抜け出た文が霊璃に対して抗議の文句をつける。その光景に苛立ちを増していたのは霊夢であった。

 

 

 こいつ調子に乗って!絶対に息の根を止めてやるだけじゃダメみたいね……私に勝てないからって姉さんを巻き込んだ罪は万死に値するだけじゃ許さないから!!!姉さんからも何か言ってやってよ!!

 

 

 「私は優しくて気高くて誰にでも平等に接してくれる素敵な妹が無意味に暴力を振るうだなんて思わないな。それは照れ隠しや文さんを信頼している証拠だと思う。スキンシップ?ってやつなのかな?きっと霊夢ちゃんは文さんのことが好きなのよ。だからついつい構ってしまうし、嫌いだったら本当に関わろうとしないはずだから。もしかして文さんは妹のことが嫌いになっちゃったの?」

 

 「あやや!?そ、そういうことではなくてですね……」

 

 「……妹はとてもいい子ですけど他人には素直になれないところがあります。けれども皆さんを蔑ろに扱うような妹ではありません。妹が誰かから嫌われるなんて私は嫌なのです。だから……妹をどうか嫌いにならないでください……!」

 

 「あやや!!?頭をあげてください霊璃さん!!私はそんなことをしてほしくて言ったわけではありませんのであの、その……!」

 

 

 なんで姉さんが頭を下げる必要があるのよ……私が誰かに嫌われることが嫌だとかお人好し過ぎるわよ。文の冗談に真面目に返答するなんて……ほら文が予想外の反応に慌てふためいているじゃない。でもこれはこれで面白いわね……って姉さん、私のこと評価高くない?それに照れ隠しで暴力なんか振るってないからね!?

 

 

 なんだか複雑な気分になっちゃった。結果は自業自得で文の負け、罰としてカメラは没収よ。なにを喚こうが聞き入れないわよ?丁度いいわ、文の負け犬ならぬ負け鴉の姿を撮って売りさばこうかしら?まぁ、なにがともあれカメラは預かっておきましょう。それでなんだけど姉さんの発言を聞いていたのかちびっ子共が集まって来た。

 チルノ、大妖精、ルーミア、ミスティア、リグル、萃香、あうん、針妙丸……そしてまたレミリアとその他大勢がなんでこんなに集まってくるのよ!?口々に私のことを嫌っていないなんて言っちゃって……萃香あんた絶対面白がって言っているでしょ酔っ払いめ。それにレミリア抱き着くなうっとおしい!!「霊夢だいすきー!!」とか子供か!?……って子供だったわね。もう姉さんのせいで大変なことになったじゃない!

 

 

 霊夢は大勢にもみくちゃにされていた。口ではなんやかんや言っていても彼女の心はとても軽く感じられた。

 

 

 ------------------

 

 

 「人気者だな霊夢は」

 

 「そうね、お嬢様もあんなに嬉しそう」

 

 

 隣にいる咲夜はそう言いつつ鼻を抑えている……またかよ。こいつはレミリアに対して忠誠を誓っており、愛情を向けている。それが度合いが違った方向に傾いているのは私から見ても明らかなことだ……いつものことだから何も言わないがな。

 にしても霊夢は好かれすぎだぜ。みんな霊夢に会いたくて宴会に参加するぐらいだからな……私も他人ごとではないけどな。

 

 

 「はい、魔理ちゃんに咲夜ちゃんの分」

 

 「ありがとうだぜ」

 

 「ありがとうございます霊璃様」

 

 

 おっと霊夢だけじゃなかったぜ。私はもう一人にも会いたくてここにいる

 

 

 博麗霊璃さん……霊夢のお姉さんだけど血の繋がりはないらしい。ちょっとネガティブなところが多い人だけど、とても優しい性格だ。私のことを魔理ちゃんと呼ぶ……もう諦めたけど初めは呼んでほしくなかったぜ。名を呼ばれる度にこそばゆくなったぐらいだ。あとちょっと自分を蔑ろにし過ぎる人だが、あの霊夢が心から信頼して唯一甘える存在……初めて霊夢の甘えた姿を目撃した時は幻覚なんじゃないかと思ったぐらいだったぜ。だってあの鬼巫女とも呼ばれる霊夢がデレデレになったんだぜ?気持ち悪いと感じたが、壮絶な人生を歩んだ霊璃さんのお話を聞いたら、こんなお姉さんがいたら誰だって甘えたくなると思ってしまったぜ。

 

 

 藍の奴から聞いた話だ。霊璃さんは昔から今も特別な力を持っていない。霊夢みたいに空も飛べないし、弾幕も碌に撃てない。初めはそれでよく博麗の巫女が務まるなと感じたぐらいだ。「それなら私の方が巫女に向いているんだぜ!」って言ってしまった時、霊夢が怒ったのを憶えている。あそこまで霊夢が怒るとは思ってなかったし、頬を叩かれたから唖然としちまった……あの時は痛かった……身も心も……な。それからは当分口を聞いてくれなかった。だが霊璃さんが宥めてくれて何とか仲直りできた。何でそこまでと思ったが、霊璃さんの境遇を聞いて私は後悔した。

 霊璃さんは()()の人間だったんだ。でも博麗の巫女は()()ではダメだった。妖怪を退治し、異変を解決し、結界に干渉できる力が無ければ到底なることはできない。けど博麗の巫女だ。矛盾しているかもしれないが、霊璃さんは()()()ではなく()()()()()()()と言った方がいいかもしれないんだぜ。

 

 

 御袋さんが亡くなり、博麗の巫女の座が開いた状態では妖怪が好き勝手な横暴を許してしまう。そのために博麗の巫女が必要だった。霊夢はその時まだ幼い子供時代で、なったとしても負担がかかりすぎる。そう判断した紫の手によって霊璃さんが選ばれたみたいだが、藍は初め反対したそうだ。巫女としての力はない……一人で解決できたことは今まで一度もない……きっと霊璃さんは辛かったと思うぜ。時より感じた霊璃さんの視線……あれは私のことを見ていたんだと思う。必死に頑張って努力して、異変を解決することで成果を出せた私と違って霊璃さんは私よりも幼い頃から頑張ってきた。けれど成果は現れず努力は報われなかった。

 努力して成果が出た私と努力しても成果が出なかった霊璃さん……上手いことがいかずに不貞腐れていた自分自身が恥ずかしくなった。そしてそれだけじゃなかったんだ。

 

 

 帰って来る度に怪我を負って汚れボロボロになった巫女装束の姿で霊夢に心配かけまいと気丈に振舞う。巫女としての仕事でも大変なのに生活を両立させようともしていたみたいだ。無茶だと思うがそれをやろうとしたんだ。そりゃ霊夢だって心配するさ……それで霊夢が正式に博麗の巫女になるまでずっとこの繰り返しだったんだと。

 

 

 ……霊夢が霊璃さんを大切にするのはわかるぜ。異変を解決している時の霊夢は楽しそうにしている。私が傍に居る時よりも……最初異変に出向いても空も飛べず弾幕も撃てなかった霊璃さんが霊夢と共にいるのかわからなかった。だから「それなら私の方が巫女に向いているんだぜ!」とつい口に出したんだ。きっと嫉妬でもしていたんだ。お姉さんだからと言う理由で異変解決する力のない奴が霊夢の隣にいることに……あの時の私はどうかしていた。霊夢が怒るのも納得したし、霊璃さんに何度も謝った。

 甘えたがるのもわかる。そして……この人には勝てないと悟った。霊夢のことを思い、夢であった博麗の巫女とは違う形の博麗の巫女となった。霊夢と同じ巫女だけど違う巫女……巫女に相応しい霊夢と相応しくない霊璃さん……何度も挫折や苦しみがあったはずだ。それでもずっと霊夢のことを支え続けて自分の身を削って来たんだ。私には到底できやしない……霊夢が憧れるはずだぜ。私もいつの間にか尊敬する人になっていた。

 

 

 そんな人と共に異変を解決してきたんだ。凄いだろと(チルノ)ほどではないが自慢したくなってしまうし、霊夢だけでなく霊璃さんに会いに来るんだぜ!

 

 

 「霊璃さん、霊夢さんとお子様たちの微笑ましい写真を撮ったのですが……一枚如何ですか?無料ですよ♪」

 

 「無料?お金ならちゃんと払うけど?」

 

 「いえいえ、他の方ならそうですけど霊璃さんからお金を取ったらなんだか悪いかなってそんなことを思っちゃったりしたりしてですね……」

 

 

 文のやつ、さっきのことを気にしているのか?ちょっとした悪戯だったつもりが思いもよらない反応で返って来るだなんて傑作だったな♪

 

 

 「そう……ならちゃんと払わないとダメ。私だけ特別なんてずるいし、他の子ならともかく私は()()だから特別扱いする必要はないわよ。それでいくら?10円?100円?」

 

 「あや!?え、ええっと……」

 

 

 文……諦めろ。この人はお人好しで霊夢のことが好きな人だからな。そして咲夜お前いくら出すつもりなんだよ?お前絶対レミリアの写真狙っていたな?

 結局写真は全て無料で配られた。咲夜はレミリアが写っている写真だけ貰ってそれをポケットに忍ばせていた。帰ったら保存するつもりだろうな……忠誠心が違った方向で高い奴だぜ。霊璃さんも霊夢の写真をゲットして嬉しそうだぜ。

 

 

 「いい写真ね……文さんのおかげでまた一つ宝物が増えました」

 

 

 この人の笑顔は見ていると安心する。霊璃さんは幸せになってもらいたいからな……

 

 

 自分が()()()()()だと思っていた……でも私は霊璃さんからしたら()()()()()だったのを気づかされた。空も飛べるし弾幕も撃て、異変も解決できて妖怪退治する力を持っている。霊夢に追いつくため、追い越すために求めて努力して力を手に入れた。弾幕ごっこで負けて悔しい思いもしたこともあったし、悩んだことだって何度もあった。自分には才能がないと、努力しても何の意味もないじゃないかと一時期自棄になったことも私にはあった。だけどその考えがどれほど恵まれていたことか……霊璃さんは求めても手に入らなかったのに……

 それでもこの人は博麗の巫女だ。辛くても力がなくても霊夢まで()()()()んだ……影からの協力があってもやり遂げたんだ。私だったなら逃げていたかもしれないしな……やっぱり霊璃さんはすごいぜ。

 

 

 「霊璃さん酌してやるぜ!」

 

 「ありがとう魔理ちゃん」

 

 「いいってことだぜ」

 

 

 霊夢ほどではないにせよ、微力ながら影から支えてやるんだぜ!

 

 

 ------------------

 

 

 「うぅ……きもちわるい……」

 

 「姉さん大丈夫?」

 

 「もう……布団に横になって寝たい……」

 

 「わかったわ。あうん、タオル持って来てくれる?」

 

 「はい霊夢さん!」

 

 

 霊夢の肩を借りてもフラフラ状態の霊璃を布団へと連れてきた。顔色が悪くお酒を飲み過ぎた様子である。そして霊夢の知らぬ間に博麗神社に住み着いていた高麗野あうん。とたとたと廊下から戻ってきたあうんの手にはタオルが握りしめられていた。

 

 

 「持ってきました!」

 

 「ありがとう、あうん」

 

 「ごめんね、霊夢ちゃんだけじゃなく……あうんちゃんにも迷惑かけてしまって……」

 

 「いいんです。霊璃さんの役に立てるならあうんは頑張るです!」

 

 

 今まで異変を解決してきた。その過程で様々な要因で私と姉さんの居場所であった博麗神社に居候するやつが増えた。酔っ払い鬼に以前は小人もいたし、ボヤ騒ぎを起こしたのにまた戻ってきたバカ妖精……も時々やってくる。姉さんと二人っきりでいられなくなったけど、あうんは大人しいし、手伝いを率先してくれるから大いに助かっているから良しとするわ。

 

 

 それにしても姉さん飲み過ぎよ。何か良いことでもあったのかしら?

 

 

 「姉さん服脱いで、体を拭いてあげるから」

 

 「私は大丈夫だって……だから拭く必要は……」

 

 「お風呂入らないのだから拭くだけでもしないとダメ、お酒のにおいが服にもついちゃうから……早くして」

 

 「わ、わかったから!自分で脱ぐわよ……でもその前に……」

 

 「……わかってるわ」

 

 

 寝かせてあげたいけどそのままにしておくと後が大変だから姉さんには少し我慢してもらう。でもその前にあうんには部屋から出て行ってもらわないと。

 目配せをするとあの子は素直にお風呂場へ去って行く。姉さんはあまり素肌を見せない……それには理由がある。

 

 

 私とおそろいの紅白色の見慣れた巫女装束……だけど全てが同じじゃない。姉さんは肩や袖、足の部分を生地で肌を隠している。露出度が手先と顔のみとなっていた巫女装束を脱いでいくと露わとなる。

 

 

 姉さんを犠牲にした……その戒めの証が体中に刻み込まれている……

 

 

 露わとなった素肌は見慣れている。見慣れているはずなのに……目を背けてしまう。

 

 

 傷、傷、傷だらけの体……浅いものから深い傷痕まで様々な形が無数にある。所々の骨が陥没して数か所は変な方向に曲がっている箇所もあった。今まで博麗の巫女として役目を務めてきたその中では妖怪との争いがあり、その争いの中でついたものだったわ。私が巫女になるまで姉さんはその間ずっと戦ってきた。凶暴な妖怪はあまりいなかったみたいだけど、相手は妖怪、妖怪の力なんて人間をあっさりと殺してしまうほどの筋力を持ち合わせていたりする。遊びのつもりでも人間からしたら命がけだなんてよくあること……勿論姉さんも命がけで務めを果たそうとしていた。

 遊ばれてボロボロになっても務めを果たそうとしてくれた。藍も最後の最後まで手を出さずにいた……傷ついても立ち上がって最後までやり遂げようとした。そして傷ついた。姉さんの体についた傷は一生消えない……姉さんが素肌を隠すのはこの傷を見るたびに罪悪感を持ってしまう私のためだ。だから夏の暑い日差しの中でも巫女装束でいるのはそのため。

 

 

 姉さんの素肌に色々と思うことがある。そんな時に姉さんは口を開いた。

 

 

 またか……また私に対して姉さんは……

 

 

 「ごめん霊夢ちゃん……」

 

 

 いつもだ。確かにこんな姿の姉さんを見てもなにも思わないほど冷たい人間ではないと自負している。でもなんでいつも謝るのよ?姉さんは悪くない、この傷もこっちの傷も姉さんが悪い証じゃないのに……

 

 

 「……私がもっと強いお姉ちゃんだったら……私が母様みたいに強ければ霊夢ちゃんも私を気にかけなくてもいいのにね……私なんかいなかった方がよかったんじゃ……」

 

 「それ以上言うと……怒るわよ」

 

 「……ごめん……」

 

 

 姉さんは自分を蔑ろにする……「もっと強いお姉ちゃんだったら」「私なんかいなかった方がよかった」ですって?どうしてそんなことを言うのよ……姉さんは姉さんなの、強いとか弱いとか関係ないでしょ……私達は姉妹なのに遠慮もクソもないわよ。姉さんが傷ついて平然としていられるわけないじゃない!

 

 

 「い、いたいよ……霊夢ちゃんもっと優しく……」

 

 「……知らない……」

 

 

 馬鹿な発言をした姉さんが悪い。体を拭く手に力がこもり痛くなっても自業自得……宴会の時だって自分がお酒で気持ち悪くなったのだって萃香の口車に乗せられて飲み過ぎたじゃないのよ。だから拭き終わるまで我慢してよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「すぅ、すぅ……」

 

 

 先に寝てしまった姉さんの横顔の血色は良くなっていた。二日酔いに効く常備薬が役になったみたいね。

 

 

 「……霊夢さん寝ないのですか?」

 

 「寝るから心配しないでいいわよ、それじゃ灯りを消すわよ」

 

 「はい、霊夢さんおやすみなさい」

 

 「おやすみ」

 

 

 隣であうんも丸まって寝てしまったけど私は眠れなかった。姉さんが馬鹿な発言をしたせいで酔いがきっと醒めたんだわ。これも姉さんのせいだからね?

 

 

 霊璃の頬をつねると表情を歪めていて夢の中でも痛そうにしている姿を見るとつい悪戯したくなる。鼻先をつついたり、頬をつねったりして妖精のような悪戯を引っ掻けて霊夢はしばらく姉の顔で遊んでいると……

 

 

 「うぅん……霊夢ちゃん……」

 

 

 ……私を呼ぶ姉さん……一体何をしているのかしらね?夢の中でも私を忘れないでいてくれる姉さん……私も夢の中で姉さんに会いたいな……

 

 

 悪戯の手を止め、ぼんやりと姉の寝顔を眺めているとだんだん瞼が落ちていきやがて意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「霊夢さんと霊璃さんは仲がいいですね♪」

 

 

 目覚めたあうんが隣を見れば一緒の布団に包まって寝ている姉妹の姿がそこにあり、微笑ましく観察していた。

 

 

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