博麗家の姉として   作:てへぺろん

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最近ちょっとスランプ気味な作者です。調子が悪いですので投稿頻度下がり気味なのはご了承ください。そんなことよりも本編へ移りましょうか。


それでは……


本編どうぞ!







名乗らぬ巫女と名乗らぬ妖怪その弐

 「おにぎりを持ってきましたよ」

 

 「うむ、すまないな」

 

 「いえいえ」

 

 

 おにぎりか……初めて会った時のと同じメニューか。

 

 

 この小娘は変わっている。小娘と言えど女性の中では少々背が高い方に分類されるだろうが俺よりかはやはり低い。男と女の差と言うものか……それ以前に俺が()()()()からだろうな。視線が高いのはそのためだろう。だが低いからと言って侮らぬ。俺は憶えている……俺を殺した女はこの小娘と同じく巫女だった。

 赤白の巫女装束があの時の恐怖を体現していた。俺はこの小娘とあの妖怪巫女……いや、あいつは自分のことを人間巫女と言った。そう……俺はあの人間巫女(あいつ)とこの小娘を重ねていた。

 

 

 「はぅ!?」

 

 

 岩場の凹凸に足を引っ掻けて盛大にこけた。その拍子におにぎりが宙を舞うが男は難なくそれをキャッチしてお皿へと戻していく。

 

 

 「す、すみませんでした……危うく食べ物を粗末に扱うところでした」

 

 「いや、それよりも大丈夫か?」

 

 「あっ、はい……痛みには慣れてますから」

 

 「……気をつけろ」

 

 「心配してくれてありがとうございます」

 

 「……心配などしていない……」

 

 

 重ねていたが……敵視できなくなった。問答無用で()()()()()()俺を殺した人間巫女(あいつ)とはかけ離れた存在だと認識してしまったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小娘は()()()()()()()()らしい……訳がわからぬ。妖怪だとしても道で倒れていた俺を助けてこの洞窟に匿っただけでなく、わざわざ人目を盗んでこうして食事を運んで来る。洞窟に囚われた囚人の扱いではなかった。鎖も結界もなく、洞窟の入り口は当然のように口を開けて外から光が差し込んでいる。少々暗いが鉄格子も嵌められていない自然な形だ。何故この小娘がここまで俺を無防備にしておくのか理解できぬ。そもそも俺自身も何故道に倒れていたのかわからぬのだ。目が覚めたら小娘に洞窟に連れて来られていたのだ。しかも巫女と来たものだ……恐ろしい運命を感じた。

 それと……この小娘は俺の恥ずかしい姿を見た。自分自身でも情けない姿だった……そんな俺に「怖いものは怖いのだから怯えても仕方ないじゃないですか?」と語り掛けて来た。その言葉に俺は落ち着きを取り戻してしまい、状況が状況だけに俺は自身を哀れに感じてしまった。

 

 

 初めは警戒していた。小娘は俺のために古い机と布を数枚用意して食事台と寝床を作った。それに食事……おにぎりまで作って持って来たのだ。竹水筒には飲み水も入っており、小娘が見ず知らずの俺にそこまでするのが怪しかった。頭では警戒していても勝手に腹の虫が騒ぎ出す……こんな屈辱を受けるとは思いもしなかったぞ!羞恥心に耐えていると小娘は神社に帰ると言って去って行くと俺はチャンスが訪れたのだと理解し、今ならば洞窟を抜け出し妖怪として今度こそ自由に生きていけると思った……だがそんな俺に人間巫女(あいつ)の姿が立ちはだかるように脳内に現れた。

 

 

 たったそれだけのことだったが、俺は腰が引き()ってしまい足がすくんでしまった。情けないことだが俺は人間巫女(あいつ)が怖い……俺が生きていることを知ればまた俺を殺しにやってくる。足は動かず縮こまる俺……惨めに思えたのは生活だけではなく、俺自身にも言えたことのようだ。

 俺は項垂(うなだ)れてた……そんな時に鼻に付くにおいを辿って視線を向けるとおにぎりがあった。あの小娘の……俺は無意識に手を伸ばしてしまっていた。もしかしたら罠かもしれないと脳では思っていたが、体が勝手に動いて口の中に放り込む。手が止まらず米粒でいっぱいになっていたのを水で流し込む。

 

 

 ……美味くもなく、不味いとも言えない味……特徴の無い変わったおにぎりだ。普通過ぎる味と言えばいいのかわからぬ。これほど舌に同化した味は初めてで流石に困惑したぞ。水の方が美味いとはどういうことだ?

 

 

 結局全部平らげてしまった……腹は満たされたが、疑問が満たされることはなかった。

 

 

 そしてその日はあの小娘はやって来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますも誰もいない。昨日のことは夢だったのだろうか……

 

 

 何も乗っていない皿と竹水筒が視界に入り夢でないと理解出来た。俺はまだ生きていた……巫女の小娘に助けられた。複雑で訳がわからない状況に脳の処理が追いつけなかった時に足音がした。

 

 

 逆光を浴びた巫女だった。人間巫女(あいつ)が俺の前に現れたと思った俺は情けない悲鳴をあげてしまった。体が勝手に震えだし死を恐れてしまった……が、声が違う。その声を聞くと俺の脳内にこびりついた人間巫女(あいつ)の姿は掻き消え、小娘がそこにいたことに何故か安堵していた。

 

 

 少し警戒が薄れている気がした。この小娘を見ても恐怖しないのはそういうことなのだろうな。小娘はおにぎりが乗っていた空の皿と竹水筒の中身を確認すると笑みを浮かべていた。喜んでいるのか?ならば感想も伝えておかないといけないなと素直に言えば落ち込んでいた。正直に言っただけなのだがな……だが、そんなことなど俺は気にも留めない。何故かはわからぬがいい匂いが漂って来る。小娘が背に隠していた物が何なのかわかると唾液がにじみ出るのを感じたものだ。

 肉と焼き魚が現れたことに自然と唾液を飲み込んでしまった。情けないとは思わない……小娘が新しい竹水筒を差し出し、肉と焼き魚も受け取った俺の手は止まらない。小娘から箸を奪うようにひったくると俺の意思とは関係なく食していく。この時の俺は飢えていたに違いない。食べれるところを残さず平らげて俺はごちそうさまと言っていた。

 

 

 だが……ここまで美味しいとも不味くもない味を感じるとは思っていなかった。いや、昨日ぶりか?どうでもいいことだが、腹が膨れたことには間違いないのだ。昨日はおにぎりだけで物足りなかった。今度も感謝のつもりで感想を伝えたが、微妙な顔をしていたな。この小娘料理の腕はいまいちなのだな。

 

 

 満足はできた。腹が膨れたことで小娘の言葉一つでも聞いてやろうかと思ったが、小娘は「これからどうするのか?」と聞いてきたので口を閉ざしてしまった。

 俺の方が聞きたい……俺はどうすればいい?死んだと思ったら何故か生きていて巫女の小娘に拾われた。一体どうすればいいかなんて思いつくことなんて出来なかった俺に小娘は提案してきたのだ。

 

 

 「妖怪ならば外で人間を襲ってみたら?」「妖怪ならば他者を支配してみたら?」と驚愕の提案を出したかと思えば「妖怪ならば……巫女にもし恨みがあるのならば……巫女である私を殺してみる?」と言ってきた。俺は全力で否定したし、小娘はなんてことを言っているのだと思った。人間を守るはずの巫女が妖怪に人間を襲わせる提案を持ちかけるなんてどうかしている!こいつは巫女ではないのか?()()()()()()()()と言っていたのには訳があるのか?何もわからない……詮索もしようとも思わない。知ってしまえば後戻りできなくなる……知らなくても良いことだって世の中にはあるからな。

 ともかく俺は人間を襲わないし、支配なんてできるわけがない。それに俺は巫女が怖い……俺はそんなことをしたいが為に妖怪になったんじゃない。情けなく震える俺……そんな俺に小娘は言った。

 

 

 『「よかったらここでしばらく暮らしませんか?狭くて暗くて雨が降ったら多分ジメジメしますし、住み心地は悪いですけども」』

 

 

 その言葉がきっかけで俺はここに住むことになった。それから今でもこうしてここに居る。自らの意思で囚われている……人間巫女(あいつ)に見つからないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからというもの何度も美味くもなく不味くもない食事を運んできた。あれこれ10日は経っただろうか?今では警戒するのも馬鹿らしくなり、来たら来たで少々会話するようになった。小娘はそれが嬉しいのか笑みを俺に向けて来る……相変わらずわからん小娘だ。

 そして今日も……いや、今日は果物か。味付けも手を加える必要のない自然の恵みである創造物を差し出された籠から一つ掴んで齧ると口いっぱいに甘みが広がっていく。

 

 

 「うむ、果物()美味いな」

 

 「果物()……ですか……」

 

 「あの料理を美味いと言え……とは承知しかねるな」

 

 「そ、そうですよね……はぁ……」

 

 

 やはり小娘は料理の腕はいまいちのようだ。味付けの要らない果物がこんなにも美味しく感じるとはな。ある意味では才能ではないか?あれほど味が普通過ぎて特徴もないと感じさせる料理を作るのは?それはそれで俺だったら嫌だが、俺はそもそも料理をしないし作れない、作れるだけまだマシだ。だから小娘よ、気落ちする必要はないぞ。

 

 

 「作れるだけマシだ。俺は料理すら作れんからな」

 

 「ですが……作ってもこれじゃ……材料の無駄遣いって考えもあるかと……」

 

 

 話していてわかったが小娘は消極的なようだ。更に気落ちしていく……見ていて哀れだな。

 

 

 だが俺は……

 

 

 「だが……嫌いではない」

 

 「えっ?」

 

 

 いまいちだが……いつの間にか小娘が持って来る食事が嫌いにはなれなかった。そのことに俺自身疑問に思うことにもなったが……今はどうでもいいか。

 

 

 巫女は呆気に取られていた様子で口をポカンと開けていた。男の方はそれ以上何も語らず果物を平らげた。

 

 

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 「霊璃さんは今日も猫さんにお食事を与えに行ったのですね」

 

 「……ええ、そうね……」

 

 「霊夢さん?元気ないですね?」

 

 「そんなことは……いえ、今は調子が良くないの。悪いけどあうん、洗濯物を干しといてくれない?」

 

 「了解しました!」

 

 

 あうんは元気いっぱいに返事をして洗濯物を探しに行った。一人となった霊夢の口から息が漏れる。

 

 

 姉さんの様子がおかしい……正確にはお米と竹水筒が消えたあの日から。

 

 

 あの日は姉さんの帰りを待っていると気配を感じた。その気配は姉さん……なんだけど何故か裏口から気づかれないように気配を押し殺そうとしていた。けれども私にはバレバレだった。台所の方から気配がするし、なにをしているのだろうと思っていると姉さんの気配が遠のいていく。疑問に思ったわ。博麗神社は私と姉さんの家なのにコソコソと気配を押し殺して裏口から侵入する行動に疑問を感じた。姉さんはなにをしていたのか台所で探っていると少量のお米と竹水筒が消えていた。

 つまみ食い?姉さんはそんなことをする理由がない。じゃあ何故と思った。それからしばらくして姉さんが何食わぬ顔で帰って来たからぶつけてみた。

 

 

 『「お米と水をどこへ持って行ったの?」』

 

 

 『「――ッ!!?」』

 

 

 一瞬だけど強張った。それを見過ごすなんてことは私はしないわ。バレたことできっと焦っているはず……お米と竹水筒をどうしたの?何をしているの?

 

 

 『「野良猫たちにあげていたのよ。時々この辺に迷い込んでお腹を空かせていたみたいだったから餌をあげてあげたのよ」』

 

 

 猫……その単語に体が反応してしまったけど我慢した。猫のためにお米を食料としてあげたのでしょうね。竹水筒も猫に水を与えるために使ったのでしょう。それならコソコソせずに言ってくれてもいいのに……モフモフしたい……けどそんなこと言えない。魔理沙や文に知られたら揶揄われる……でもモフモフしたいわ。姉さんだけモフモフしたんじゃないの?どうなの姉さん?

 

 

 私はその時、姉さんを見つめていた。知らず知らずのうちに無言の圧力をかけていたのか姉さんが汗を流しそうになっていたし、目が若干だけれど泳いでいたのを見過ごさなかった。けれどそれは私の所業のせいだとこの時は思っていた。

 その後、ご飯の用意をするために姉さんを誘うけど無言の圧力がいけなかったのかいつもよりも行動に違和感があった。料理を作っている時もしきりに私を気にする……出来上がった料理を並べてあうんも含め食事をしている時もしきりに気にしていた。あうんは食べるのに夢中で注意した時も私のことを気にする姉さんに対して疑問が浮かぶ。

 

 

 あっ、もしかして姉さんは……猫が気になっているの?野良猫たちと言っていたから一匹ではないみたいだし、野良なら人里には住んでいない自然の中で生きている猫のはずね。もしかして腹を空かせた妖怪に襲われてしまわないか心配しているの?それにお腹を空かせていたとも言っていたわね。お米は少量無くなっていたからそんなに与えてはいないのでしょうけど、猫にお米の与え過ぎは良くない。栄養バランスも偏ってアレルギーを引き起こすって外の本に載っていたのを知っていてよかった。肉と魚を持って行ってあげるように伝えないといけないみたいね。

 

 

 『「霊璃さん猫さんを飼っているのですか?」』 

 

 『「い、いえ違うわ。偶々お腹を空かせた()を見つけて()を与えただけよ」』

 

 『「おお!霊璃さんは優しいのですね!」』

 

 『「あ、あはははは……」』

 

 

 猫のためにと行動した。あうんの言う通り姉さんは優しい……やっぱり姉さんね、そういうところが私は好きよ。

 

 

 だからこの時、私は疑わなかった……疑いたくなかった。例え()()()()()があったとしても己の巫女としての()に逆らってまで納得させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし何度も食事と水を持って出て行く姉に違和感が大きくなっていく。しかも出て行くのにいつもコソコソとして挙動もおかしい……あうんも霊璃一人では大変だろうからついて行くと申し出た時は必死になって説得していた。日に日に霊夢は姉の行動を嫌でもおかしいと思わざる負えなくなっていた。

 

 

 「……姉さん」

 

 

 姉さんが私に隠しごとをするなんて……気分が悪くなる。あの日と同じ……

 

 

 あの日は満月の綺麗な夜空に星々が輝いていた。しかしあの日霊夢にとって最悪な一日となった。姉である霊璃が巫女を辞めようとしたあの日と同じく嫌な気持ちが膨れ上がるのを感じる。それは嘘を付いたからではなく、自分に頼ってくれない姉に対するものだった。

 

 

 姉さんはいつも自分で抱え込んでいる……家族である私がいるのに……私がそんなに頼りないとでも言うの?

 

 

 不安が生まれる。何故自分には何も言ってくれないのか……そう思っていた時だ。

 

 

 「……気になるのかしら?」

 

 「……紫」

 

 

 スキマから顔を覗かせたのは紫だった。プライバシーもなくどこからでも現れるスキマ妖怪に普段ならば嫌味の一つや二つ投げかけている霊夢だったが今はそんな気分にはなれなかった。

 

 

 「気になるのならば見に行けばいいんじゃない?」

 

 

 見に行けばわかる。紫の言う通りにすれば答えが出るが、それは霊夢の中では姉を疑うことに繋がる……霊夢は姉である霊璃を心から信頼している。その信頼を捨ててしまう行動を霊夢は良しとしなかった。

 

 

 「……」

 

 

 紫の言葉に耳を傾ける必要はない胡散臭い妖怪の戯言だと無視を決めつけようとした。

 

 

 「……霊夢、あなたがあの子のことをどう思うのは勝手だけどこれだけは言っておくわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「理は変えられない……情けは時に残酷な結果へと導いてしまうことになるわ」

 

 「紫それはどういう……」

 

 

 その言葉の意味がわからずに霊夢が聞き出そうと振り返るとそこには誰もいなかった。

 

 

 「……」

 

 

 霊夢は紫の言葉が頭から離れなかった。

 

 

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