風になる   作:猫タクシー

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奪敵決戦楽しみにしてた皆さんすいません。
また要所要所飛びますが勘弁してください!






第11話

 

 

 青い監獄、3rdステージ。ここまで予選、1stステージと順調に進んでいた迅だったが───

 

「ギリギリ、だったな」

 

 ここに来て苦戦を強いられていた。彼はこの奪敵決戦において、勝ったり負けたりを繰り返していた。今の試合だって2対3とどちらが勝ってもおかしくない試合であった。

 

 では、彼自身になにか問題があるのか? 

 

 否である。彼はここまで12得点と華々しい成果を残している。彼自身の実力には全くもって問題はない。

 だが、彼にとって致命的なまでの問題がひとつあった。

 

 それが、『味方とのレベルの差』である。

 

 迅自身も気づいてはいないが、体力と精神を極限まですり減らすような天才たちとの勝負に打ち勝った彼は、1段階も2段階も強くなっていた。元々上のステージにいたのに加え、さらにレベルアップした彼は、当然味方に求めるプレーのレベルも上がってくる。

 それについてこられる選手が、敵味方共にいなかった。

 

 中学高校の嫌な思い出が蘇ってくる。出したいところに味方が居ない。欲しいところにボールが来ない。

 まさか青い監獄(ココ)に来てまでこんな思いをするとは思ってもみなかった。

 

「キシシ。それじゃあどいつにする?」

「そうだな」

 

 だが、彼には悩んでいる暇などない。よりレベルの高い選手と戦いたければ、より上に上がっていくしかない。

 

「お前にしよう。広海 (シャチ)

「え、俺?」

「キシシ。気が合うな、お前。俺もソイツにしようと思ってた」

「お前のボール奪取率は武器になる。実際、俺も何度もお前にボールを奪われたしな」

 

 迅と鮫貝(さめがい)は、迷わず広海を選択した。広海は立ち上がると、申し訳なさそうに味方であったもう1人を見つめる。

 

「ちくしょう…」

「ごめんな。お前の分まで絶対勝つよ」

 

 彼はここでリタイアだ。負けたものにここにいる資格はない。

 

「じゃあ、行くぞ」

「キシシ。アイツのことは忘れな」

 

 そうして俺たちは、何度目かの3rdステージへと進出した。

 

 

 

 

 

 1日が経って、俺たち3人は次なる4thステージへの戦いへと赴いていた。

 ここで簡単な紹介でもしておこう。

 

「キシシ。楽しみだ」

 

 まず1人目。鮫貝 優。身長は162cmとサッカー選手にしては小柄である。キシシ、と笑うくせがある。

 

「よくそんなこと言えるね。俺ちょっと緊張してるよ」

 

 2人目、広海 鯱。身長は180cmと高め。コイツのボール奪取には俺も苦しめられた。

 

「でも意外」

「何がだ」

「迅。君みたいな天才がまだこんなところで立ち止まってるのがだよ」

「…余計なお世話だ」

 

 味方が使えなかったから、と正直に言えるほど迅の神経は図太くなかった。

 

「でも、君にボール預けとけばなんとかなるでしょ?」

「賛成だな」

「俺は別に構わないが」

 

 ゲートに足を踏み入れると、そこには1組しかグループは存在しなかった。こちらを見るその目は3人とも、幾多もの修羅場をくぐり抜けた歴戦の猛者かのようだ。

 

「おっ!誰かきたぞ」

「もう待ちくたびれた」

 

 俺たちが入ってくるのを見るなり、3人は立ち上がってこちらに近づいてきた。その中の一人、体つきががっしりしている男が1人先頭に立って話しかけてくる。

 

「オイ、俺たちと1試合やるぞ。異論は認めねぇ」

「またクセが強いのが来たなぁ」

「まるで王様だな」

 

 俺たちが断るのを許さないという物言いに、鮫貝と広海は呆れた反応を返す。

 

「で?返事は?」

「OK、やろう」

「…ならさっさと用意しろ」

 

 それだけ言い残して、彼を含む3人は足早に立ち去った。

 

「キシシ。何をあんなに焦ってんのかね」

「どういう意味だ?」

「なんでもないさ」

 

 意味深なセリフを残した鮫貝に疑問を持った迅だったが、すぐに気にするのをやめた。

 

 そして俺達は準備を済ませ、フィールドに着いた。試合が始まる前に簡単なチームの方針を決める。

 

「基本的には迅にボールを集めるって感じで、俺ら二人はそのサポート」

「了解」

「わかった」

 

 地面を踏みしめ、スパイクがしっかりと芝生と土をとらえる感触を確かめる。ポイントひとつひとつが、地面に食い込むのが心地よい。

 うん。いい感じだ。

 

 間もなく、彼らにとっての長い戦いの幕が上がろうとしていた。

 

「つーか当然のように馬狼がワントップなんだな」

 

 

千切 豹馬

 

 

「大丈夫、不甲斐なかったらすぐ俺が変わるから」

 

 

凪 誠士郎

 

 

「ゴチャゴチャうるせぇぞお前ら。黙って俺にボール寄越せ」

 

 

馬狼 照英

 

 

 チームREDからキックオフ。対するチームWHITEは俺が馬狼、鮫貝が凪、そして広海が千切とマッチアップ。

 

 馬狼がドリブルを開始。俺は様子見でしっかりと敵のパスコースと味方の位置を確認しながら、相手との距離を図りつつディフェンス。

 

「なんだそりゃ? それでDFしてるつもりか?」

「ッ!」

 

 俺のディフェンスをものともせず、猪突猛進の一点突破を仕掛けてくる。まさかストレートに突っ込んでくるとは思っていなかった迅は、その速さと迫力にたじろいだ。

 

「それで突破できるつもりか」

「あ?」

 

 だが、こちらもそう易々と抜かれる訳には行かない。一瞬で相手に置いていかれないよう、反則(ファウル)にならない程度に手を引っ掛ける。巧みな重心移動と軽いフットワークを生かし、すぐに馬狼の正面に回り込んだ。

 

「鬱陶しい」

 

 ここで抜かれるわけには行かない。ディフェンスが上手いわけではない迅。半身の体勢で足早に下がりながら、敵との距離を保つ。

 

「馬鹿が」

「!」

 

 少しボールを右にズラし、そのまま右足を大きく振りかぶり蹴球(シュート)

 

 

1(RED)0(WHITE)

 

 

「退けよカス。俺は今イライラしてんだ」

 

 長距離蹴弾(ロングシュート)持ちか。厄介な。

 敵との距離を一定に保ちながら守るDFスタイルの迅には、馬狼は少しキツい相手であった。

 

「ドンマイ、ドンマイ。次行こう、次」

「キシシ。ビックマウスなだけはあるな」

「あぁ」

 

 試合は俺たちから再開(キックオフ)

 鮫貝と広海は俺を頂点とした、両サイド斜め前の逆三角形の位置。いつでも俺のフォローに入れる位置だ。

 対する相手は馬狼。まずは、小手調べ。

 

「!」

 

 こちらも馬狼とやることは変わらない。ただただ純粋な一対一の勝負にもつれ込む。

 フェイントを使いながら、左右に揺さぶりをかける。しっかりと距離を詰め、必死に食らいついてくる馬狼。

 

(消えたッ…!?)

 

 最高速(トップスピード)に一瞬だけ切り替える迅。

 "緩急"。馬狼は迅との距離が近すぎたが故に、消えたかと見紛うほどのそのスピードの落差には反応できなかった。

 

「ノ野郎ォ…!!」

「凪、カバー」

「うん」

 

 真ん中のスペースを閉めるように、凪と千切が間を絞る。当然、パスコースも切りながら、味方との距離感を絶妙に保っている。

 迅は迷わず馬狼と同じく、迷わず二人の間に突っ込んでいく。パスを出す素振りもない。

 

(!…突っ込んでくるのか!?)

 

 トン、と迅がボールを蹴り出す。その落下地点は彼と二人のちょうど中間地点。イける、と確信した凪が飛び出した。

 かかったな。

 

後方回転(バックスピン)…!」

 

 わずかにボールは迅へと転がりかえっていく。そして───加速。罠にかかった凪、千切共に彼を捕らえることは出来ない。

 

 

軸回転ドリブル(ルーレット)

 

 

「一気に2人抜いた…!」

「キシシ。やるねぇ」

 

 完全に抜け出した感覚。ここからさらに加速。風を切るようなそのドリブルで、あっという間に迅の確殺攻撃範囲(クロスレンジ)に到達。

 

「させねぇ…!!」

「ッ!?」

 

 千切の必死のスライディングに面食らう迅。が、運良くわずかにシュートを打つのが早く、ボールはゴールネットに突き刺さった。

 

 

1(RED)1(WHITE)

 

 

「クソ…少し出遅れた」

「うん。でも、次はさせない」

 

「(まさか後ろから追いつかれるとは…)」

 

 あと少し俺がシュートを打つのが遅かったら、確実に阻まれていた。決して手を抜いていたわけじゃないが、俺のスピードについて来れるやつなんていつぶりだろうか。確定だな。

 

 千切(ヤツ)のスピードは脅威になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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