広海 鯱
HEIGHT :180cm
WEIGHT :85kg
WEAPON:ボール奪取
MEMO:元CB。その恵まれた体格から、監督に誘われDFとして入部。FWにコンバートしたのはつい最近のこと。趣味は、動物が狩りをしている動画を見ること。
PROFILE
鮫貝 優
HEIGHT:162cm
WEIGHT:55kg
WEAPON:跳躍力、バネ
MEMO:元SB。ギザギザした歯と、時折見える目が特徴的。好きな動物はアザラシ。
ゲームは馬狼から
キックオフ直後から即距離を詰める迅。特に
「返せよ、お嬢」
「お嬢って呼ぶなッ」
が、馬狼はあっさりとパスを選択。ボールは千切の元へ。そこへすかさず広海が素早くプレスをかける。
「抜いてみなよ、お嬢ちゃん」
「ッ!絶ッ対ブチ抜く!」
広海の挑発に乗ったようだったが、売り言葉に買い言葉。千切は至って冷静であった。今の自分の実力では、下手な足技やフェイントはミスへと繋がる。ならば、自分の強みを最大限に生かしたドリブルで勝負。
ワンタッチでボールを前に転がす。
「あら?」
広海がボールに気を取られている間に、自分は蹴飛ばした方向とは逆方向へ
「広海、中に入れ。
「了解!」
中には凪とそれにつく鮫貝。自分のやや後方に馬狼がいることを確認。
広海では追いつけないと判断した迅は、即座に対応する選手を変更。彼を馬狼に預け、自分は千切を追いかける。
まだ足りないか。ギアを上げ、地面を踏みしめる足に一層力を込め────加速。
絶対にセンタリングはあげさせない。その一心で、目の前の
しかし今回ばかりは千切が一枚上手だった。
「
「凪!」
右足で切り返し、左足で蹴りあげたクロスはややゴールに向かう回転で凪の元へ。
だが、そこには鮫貝がついている。
190cm近い凪に対して162cmと小柄な彼。しかし、彼は凪に対抗する
背中に手と体をくっつけ、好きにプレーをさせない。常に自分が自陣のゴール側に立ち、絶対にシュートは打たせない。
「キシシ。さぁ、どうする?」
「いや───」
次の瞬間、鮫貝は前髪で隠れていた両目を見張った。トン、という軽い音が鮫貝の耳に届く。
あれだけ勢いよく飛んできたボールの姿が、凪の体に隠れて見えない。
まさか。
「───打つよ」
「胸トラップ…!?」
決して弱くなく、しかも回転がかかったカーブ気味のセンタリング。それを彼はいとも簡単に勢いを殺して見せた。
軸をしっかりと固定し、体を回転させながら振り向きざまに
ボールは迅たちのゴールに突き刺さる。
「ハメス*1かよ…!」
「今の俺なら余裕」
2点目を決められた現在、迅は頭をフル回転させていた。
少し整理しよう。たった今点を取られた
そして俺の相手の
さらにいえば、3人とも体格的に恵まれていると言えるだろう。
7番の方はあまり問題ではない。俺にとって、トラップが上手いというのはそこまで怖くはないからだ。
問題は後者の2人。いくら広海とはいえ、千切にスピード勝負に持ち込まれたなら彼に勝ち目はない。
そして、馬狼。俺はコイツをフリーにさせる瞬間を1秒でも作りたくない。少しでもコイツに隙を見せれば、すぐに喰われるだろう。
いっそ、俺とマッチアップする相手を変えるか。それならば、わざわざ俺が何度も広海のカバーに入る必要は無い。
「広海」
「必要ない」
靴紐を結び直し、膝をはたいて立ち上がる。俺が対戦する相手を変更しろと言うのを予測していたかのように、広海は食い気味にそう答えた。
「俺にも意地があるんでね、ここは譲らないよ。その代わり、キミは
「…そうだな」
そう言われてしまえば、それについて俺が言うことはもう何もない。二人に対して、次の指示を出す。
「次アイツらは俺に対してのアプローチを強くかけてくるはずだ。お前達には、俺がパスを出せる位置を意識してプレーして欲しい」
二人が頷き、位置に着いたのを確認する。
俺にとっての本当の勝負はここからだ。
キックオフ直後からやはり、馬狼は迅の前に立ち塞がった。さっきとは打って変わって、無理に突っ込もうとはせず互いの出方をうかがう両者。少し揺さぶりをかけたことで、迅はすぐに馬狼の狙いに気づく。
俺が来るのを待っている。ある意味
そしてこの時、迅にとってもうひとつ懸念すべき点があった。
それが、凪のポジションである。
さっきより明らかに間の距離を詰めている。馬狼が抜かれても、俺が完全にスピードに乗る前に、カバーに入れる。さらにいえば、鮫貝へのパスコースも切れる位置。まさに
となれば、俺に取れる選択肢はひとつしかない。
「…来いよ」
迅がドリブルで突っ込んで来たことで、馬狼はよりいっそう気を引き締める。
同じ過ちは犯さない。次は必ず潰して、俺が点をとる。
かと思いきや、迅は鋭いパスを放った。向かう先には広海、しかし反応出来ずボールはラインの外へ出た。
「…頼むぜ、広海。そこしかないだろ?」
鮫貝にパスするのは論外。ドリブルで勝負するにはリスクが高い。となれば、出すのは広海しかない。しかし、縦に勝負をさせても勝ち目が薄いのは目に見えている。彼が勝負すべきは、真ん中。そこへ、迅はパスを出した。
「いやいや、あの速さじゃ無理だって」
感じ取れ、と文句を言いたかったが、次のプレーにすぐ切替える。
「テメェらにはもうパス出さねぇ」
千切からリスタートし、ボールは馬狼の元へ。そのまま戦車のごとく突進してくる。怒りに任せてプレーをする相手に遅れをとるほど、迅は甘くはなかった。切り替えそうとした方向へ先に回り込み、ボールを奪取。
そこにはボールを奪われることを予想していたかのように、凪が潜んでいた。取ったボールをすぐに千切へパス。対面するのは、広海。
「もう1回ブチ抜いてやろうか?」
軽口を叩く千切への応答は無い。途端に、広海の様子がおかしいことに気がつく。
「(なんだコイツ、無視?いや、聞こえてない?)」
ドリブルを開始しようと、ボールを転がした瞬間───消えた。
「は?」
まるでそこに元からなかったかのように、ボールは跡形もなく消え去った。加えて、広海の姿もいつの間にか消えている。
一体、どうやって?
「海の
「なに?」
「俺のことだよ」
千切は広海からボールを奪い返そうとしたが、パスによりすぐにボールは迅の元へ。
これ以上の連携は無駄と判断した迅は、一気に勝負に出る。広海がボールを奪い返したところで、体勢が崩れている今が好機。馬狼に向かって、ドリブルを仕掛ける。
得意のフェイントを使い、股を抜くことに成功。しかし───
「まずい」
すぐにそれが敵の狙いであることに気づき、舌打ちをする。
馬狼はわざと股を抜かせたのだった。後ろにはすぐに凪がいるため、カバーはすぐに間に合う。あとは自分が回り込ませないように、体で迅を抑え込めばいいだけ。
「ッ!退けよ
「お荷物抱えたまま俺に勝てるかよッ!」
「ナイス馬狼」
すかさずボールを奪った凪が、敵陣の真ん中に向けてグラウンダーのロングクロス。普通ならば追いつけないスピード。そう、普通なら。
「頼んだよ、千切」
「任されたッ!」
「相変わらず早ェ」
彼ならば追いつくことが可能。なんとか千切に追いついた広海だったが。
「ッ…!マジかよ…!?」
トラップ、では無く
「ナイスパス、凪」
ここで、前半終了の笛が鳴った。
…何だ。何が違う。俺たちとアイツらとでは一体何が違うと言うんだ。確かに、点を取ることについての能力のならば総合力ではあちらが上だ。だが、それだけではこうもボコボコにやられるわけが無い。
作戦を変更しよう。今の二人のプレーはいささか俺に頼りすぎだ。それ故に、読まれているし、対応もされやすい。このままでは勝てないし、何よりアイツら二人のためにもならない。
──────いや、待て。
『お荷物抱えたまま俺に勝てるかよッ!』
なぜ、俺がアイツらのためにプレーしなきゃいけない?
「オイ…俺に返せって言ったよな?お嬢」
「はぁ?俺がシュート決めんのが第一優先だっての」
『革命的なストライカー達は皆、稀代のエゴイストなんだ。日本のサッカーに足りないのは
世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない』
「…ハッ」
大きく目を見開き、迅は笑った。
ようやくわかったぞ。
アイツらがやっているのは連携なんかじゃ無い、『喰い合い』だ。
互いに自分が自分の
それは勝てるはずがない。連携を意識するだけのチームと、一人一人がゴールを意識しているチームとでは目的の違いがプレーに影響しているのだから。
無理もない。だって知らなかったから。経験したことがなかったから。サッカーに対してのひたすらに熱いヤツらが集まると、こんな面白いコトが起きるのか。
───だが、
「聞け、話がある」
遅くなって申し訳ないです。