風になる   作:猫タクシー

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PROFILE

広海 鯱

HEIGHT :180cm

WEIGHT :85kg

WEAPON:ボール奪取

MEMO:元CB。その恵まれた体格から、監督に誘われDFとして入部。FWにコンバートしたのはつい最近のこと。趣味は、動物が狩りをしている動画を見ること。


PROFILE

鮫貝 優

HEIGHT:162cm

WEIGHT:55kg

WEAPON:跳躍力、バネ

MEMO:元SB。ギザギザした歯と、時折見える目が特徴的。好きな動物はアザラシ。






第12話

 

 

 ゲームは馬狼から再開(リスタート)。先程と同じように好きにプレーをさせるつもりはない。

 キックオフ直後から即距離を詰める迅。特に馬狼(コイツ)相手には厳しく寄せ(プレス)をかける必要がある。最悪抜かれたとしても自慢のスピードになんとかなるという判断の元。

 

「返せよ、お嬢」

「お嬢って呼ぶなッ」

 

 が、馬狼はあっさりとパスを選択。ボールは千切の元へ。そこへすかさず広海が素早くプレスをかける。

 

「抜いてみなよ、お嬢ちゃん」

「ッ!絶ッ対ブチ抜く!」

 

 広海の挑発に乗ったようだったが、売り言葉に買い言葉。千切は至って冷静であった。今の自分の実力では、下手な足技やフェイントはミスへと繋がる。ならば、自分の強みを最大限に生かしたドリブルで勝負。

 ワンタッチでボールを前に転がす。

 

「あら?」

 

 広海がボールに気を取られている間に、自分は蹴飛ばした方向とは逆方向へ加速(ダッシュ)。ものの三歩で広海を置き去りにした。そのままグングン、と右サイドを駆け抜けていく。

 

「広海、中に入れ。入れ替わり(スイッチ)だ」

「了解!」

 

 中には凪とそれにつく鮫貝。自分のやや後方に馬狼がいることを確認。

 広海では追いつけないと判断した迅は、即座に対応する選手を変更。彼を馬狼に預け、自分は千切を追いかける。

 まだ足りないか。ギアを上げ、地面を踏みしめる足に一層力を込め────加速。

 

 絶対にセンタリングはあげさせない。その一心で、目の前の(チーター)に食らいつく。ゴールラインギリギリまで来たところで、スライディングを選択。

 しかし今回ばかりは千切が一枚上手だった。

 

上げるフリ(フェイント)…!」

「凪!」

 

 右足で切り返し、左足で蹴りあげたクロスはややゴールに向かう回転で凪の元へ。

 

 だが、そこには鮫貝がついている。

 190cm近い凪に対して162cmと小柄な彼。しかし、彼は凪に対抗する()()をしっかり持っていた。

 背中に手と体をくっつけ、好きにプレーをさせない。常に自分が自陣のゴール側に立ち、絶対にシュートは打たせない。

 

「キシシ。さぁ、どうする?」

「いや───」

 

 次の瞬間、鮫貝は前髪で隠れていた両目を見張った。トン、という軽い音が鮫貝の耳に届く。

 あれだけ勢いよく飛んできたボールの姿が、凪の体に隠れて見えない。

 まさか。

 

 

「───打つよ」

「胸トラップ…!?」

 

 

 決して弱くなく、しかも回転がかかったカーブ気味のセンタリング。それを彼はいとも簡単に勢いを殺して見せた。

 軸をしっかりと固定し、体を回転させながら振り向きざまに直接蹴球(ボレーシュート)

 ボールは迅たちのゴールに突き刺さる。

 

 

2(RED)1(WHITE)

 

 

「ハメス*1かよ…!」

「今の俺なら余裕」

 

 2点目を決められた現在、迅は頭をフル回転させていた。

 

 少し整理しよう。たった今点を取られた7番()の武器は、その天才的なまでの吸着力(トラップセンス)

 44番(千切)の凄まじい俊足(スピード)には俺も目を見張るものがあった。

 そして俺の相手の18番(馬狼)だが、爆発的な突破力に加え、ロングシュートの決定力まで備えている。

 さらにいえば、3人とも体格的に恵まれていると言えるだろう。

 

 7番の方はあまり問題ではない。俺にとって、トラップが上手いというのはそこまで怖くはないからだ。

 問題は後者の2人。いくら広海とはいえ、千切にスピード勝負に持ち込まれたなら彼に勝ち目はない。

 

 そして、馬狼。俺はコイツをフリーにさせる瞬間を1秒でも作りたくない。少しでもコイツに隙を見せれば、すぐに喰われるだろう。

 いっそ、俺とマッチアップする相手を変えるか。それならば、わざわざ俺が何度も広海のカバーに入る必要は無い。

 

「広海」

「必要ない」

 

 靴紐を結び直し、膝をはたいて立ち上がる。俺が対戦する相手を変更しろと言うのを予測していたかのように、広海は食い気味にそう答えた。

 

「俺にも意地があるんでね、ここは譲らないよ。その代わり、キミは王様(キング)をどうにかしな」

「…そうだな」

 

 そう言われてしまえば、それについて俺が言うことはもう何もない。二人に対して、次の指示を出す。

 

「次アイツらは俺に対してのアプローチを強くかけてくるはずだ。お前達には、俺がパスを出せる位置を意識してプレーして欲しい」

 

 二人が頷き、位置に着いたのを確認する。

 俺にとっての本当の勝負はここからだ。

 

 キックオフ直後からやはり、馬狼は迅の前に立ち塞がった。さっきとは打って変わって、無理に突っ込もうとはせず互いの出方をうかがう両者。少し揺さぶりをかけたことで、迅はすぐに馬狼の狙いに気づく。

 

 俺が来るのを待っている。ある意味領域(ゾーン)DFか。俺とボールから一切目を離さず、その時が来るのをじっと我慢している。

 

 そしてこの時、迅にとってもうひとつ懸念すべき点があった。

 それが、凪のポジションである。

 

 さっきより明らかに間の距離を詰めている。馬狼が抜かれても、俺が完全にスピードに乗る前に、カバーに入れる。さらにいえば、鮫貝へのパスコースも切れる位置。まさに最適解(ベストポジション)

 となれば、俺に取れる選択肢はひとつしかない。

 

「…来いよ」

 

 迅がドリブルで突っ込んで来たことで、馬狼はよりいっそう気を引き締める。

 同じ過ちは犯さない。次は必ず潰して、俺が点をとる。

 

 かと思いきや、迅は鋭いパスを放った。向かう先には広海、しかし反応出来ずボールはラインの外へ出た。

 

「…頼むぜ、広海。そこしかないだろ?」

 

 鮫貝にパスするのは論外。ドリブルで勝負するにはリスクが高い。となれば、出すのは広海しかない。しかし、縦に勝負をさせても勝ち目が薄いのは目に見えている。彼が勝負すべきは、真ん中。そこへ、迅はパスを出した。

 

「いやいや、あの速さじゃ無理だって」

 

 感じ取れ、と文句を言いたかったが、次のプレーにすぐ切替える。

 

「テメェらにはもうパス出さねぇ」

 

 千切からリスタートし、ボールは馬狼の元へ。そのまま戦車のごとく突進してくる。怒りに任せてプレーをする相手に遅れをとるほど、迅は甘くはなかった。切り替えそうとした方向へ先に回り込み、ボールを奪取。

 

 そこにはボールを奪われることを予想していたかのように、凪が潜んでいた。取ったボールをすぐに千切へパス。対面するのは、広海。

 

「もう1回ブチ抜いてやろうか?」

 

 軽口を叩く千切への応答は無い。途端に、広海の様子がおかしいことに気がつく。()()()()()()。いや、彼の目は自分が今持っているボールを捉えている。

 

「(なんだコイツ、無視?いや、聞こえてない?)」

 

 ドリブルを開始しようと、ボールを転がした瞬間───消えた。

 

「は?」

 

 まるでそこに元からなかったかのように、ボールは跡形もなく消え去った。加えて、広海の姿もいつの間にか消えている。

 一体、どうやって?

 

「海の盗賊(ギャング)って知ってる?」

「なに?」

「俺のことだよ」

 

 千切は広海からボールを奪い返そうとしたが、パスによりすぐにボールは迅の元へ。

 

 これ以上の連携は無駄と判断した迅は、一気に勝負に出る。広海がボールを奪い返したところで、体勢が崩れている今が好機。馬狼に向かって、ドリブルを仕掛ける。

 

 得意のフェイントを使い、股を抜くことに成功。しかし───

 

「まずい」

 

 すぐにそれが敵の狙いであることに気づき、舌打ちをする。

 馬狼はわざと股を抜かせたのだった。後ろにはすぐに凪がいるため、カバーはすぐに間に合う。あとは自分が回り込ませないように、体で迅を抑え込めばいいだけ。

 

「ッ!退けよ王様(キング)

「お荷物抱えたまま俺に勝てるかよッ!」

「ナイス馬狼」

 

 すかさずボールを奪った凪が、敵陣の真ん中に向けてグラウンダーのロングクロス。普通ならば追いつけないスピード。そう、普通なら。

 

「頼んだよ、千切」

「任されたッ!」

「相変わらず早ェ」

 

 彼ならば追いつくことが可能。なんとか千切に追いついた広海だったが。

 

「ッ…!マジかよ…!?」

 

 トラップ、では無く触らない(スルー)。予想外の行動に、反応が遅れる。そのまま広海の股を抜けたボールに千切は追いつき、シュート。

 

 

3(RED)1(WHITE)

 

 

「ナイスパス、凪」

 

 ここで、前半終了の笛が鳴った。

 

 …何だ。何が違う。俺たちとアイツらとでは一体何が違うと言うんだ。確かに、点を取ることについての能力のならば総合力ではあちらが上だ。だが、それだけではこうもボコボコにやられるわけが無い。

 

 作戦を変更しよう。今の二人のプレーはいささか俺に頼りすぎだ。それ故に、読まれているし、対応もされやすい。このままでは勝てないし、何よりアイツら二人のためにもならない。

 

 

──────いや、待て。()()()()()()()()

 

 

『お荷物抱えたまま俺に勝てるかよッ!』

 

 

 なぜ、俺がアイツらのためにプレーしなきゃいけない?

 

 

「オイ…俺に返せって言ったよな?お嬢」

「はぁ?俺がシュート決めんのが第一優先だっての」

 

 

『革命的なストライカー達は皆、稀代のエゴイストなんだ。日本のサッカーに足りないのはエゴ(それ)だ。

 世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない』

 

 

「…ハッ」

 大きく目を見開き、迅は笑った。

 ようやくわかったぞ。

 

 アイツらがやっているのは連携なんかじゃ無い、『喰い合い』だ。

 互いに自分が自分の獲物(ゴール)のことしか考えていない。彼らが生み出している一つ一つの神的な連携は、その喰い合いから生じた言わば『化学反応』。彼らは自分がゴールするという目的と互いの利益の条件が一致しているだけ。そこには仲間意識などあろうはずもない。

 

 それは勝てるはずがない。連携を意識するだけのチームと、一人一人がゴールを意識しているチームとでは目的の違いがプレーに影響しているのだから。

 

 無理もない。だって知らなかったから。経験したことがなかったから。サッカーに対してのひたすらに熱いヤツらが集まると、こんな面白いコトが起きるのか。

 

───だが、()()()()()()()。知ってしまったのだ。一度、それを知ってしまえば、もう二度忘れることはない。

 

 

「聞け、話がある」

 

 

 

 

 

*1
ハメス・ロドリゲス。コロンビア代表の10番を背負う絶対的エース。







遅くなって申し訳ないです。
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