「(
士道は自分の
「(直接俺にじゃなく、俺の
勝った。俺の勝ちだ。
心が満たされていくのがわかる。
チームの勝利ではなく、正真正銘自分の力のみで勝ち取った
「なに……何やってんだよ迅……」
鼻からツー、と鮮血が垂れているのに気づいていないのか、呆然とするだけの遠藤。
「お前、さっき自分でオニやるって───」
「あーあれか。あれは
「は?」
"お疲れ、才能の原石どもよ。ここでは結果が全てだ。
敗れたものは出ていけ。遠藤 翼 失格!! "
「ふざけんなよ……」
拳はワナワナと震え、強く握りしめたせいか血がにじんでいる。
「フザけんなよ!! こんなお遊びで!? こんなゲームで!?
敗北したことで激高し、感情をモロにぶちまける遠藤。
一人称が僕から俺に変わっている。ついに化けの皮が剥がれたな。
"
「あ?」
"その部屋の広さは16.5×40.32m、
それは気づかなかった。通りで馴染みある感じがしたわけだ。
いつだったか、
サッカーにおいて、全てのゴールの75%がこのP・Aの中で起きる、と。
P・Aはいわば俺たちストライカーの仕事場。ここでの仕事が、俺たちの価値の全てを決める。もし、その仕事場でクビになるような奴がいたら───
"そんな
「だ、だからどうした!! 俺が言ってんのは"サッカー"と"オニごっこ"は関係ないって言ってんの!?」
それは解説するまでもないだろうが、絵心はご丁寧に遠藤が納得するまでこの
"逃げる側"に要求されるのは対人感覚、駆け引き、
"オニ"に要求されるのはドリブルの精度、狙いを定めるキックの質など。
オニごっこはこれら全てを総合評価するためのトレーニング。
「いやいやいや!? こんな2分ちょっとで俺の実力が測れるかよ!? サッカーは90分だろ!?」
90分1試合の中で1人がボールを持てる平均時間は約136秒、つまり2分弱。
つまるところ遠藤は平等に与えられたチャンスをみすみす逃したことになる。
「じゃあ……じゃあ!アイツみたいに
遠藤は俺の方を指さして、唾を飛ばし、叫び散らかしている。
"アホかお前は。言っただろう、これは試合だと。
お前は敵が「俺はシュートを打たない」と言ったら、それを信じるのか?
そして、お前は試合でも「ルール違反だ」「嘘つきだ」と同じことをソイツに言うのか? "
歯ぎしりをするだけで、絵心のもの言いに何も言い返せない遠藤。
"このオニごっこにおけるオニはボールを持ち続けることで敗者にもなりうるが、誰かに当てることで自分が勝者にもなることが出来る有権者だ"
視野が狭いヤツらはこのことに気づかない。結果、底辺でのオニの擦り付けあいが始まる。
その手に自らが勝ち取れる
"
他人に委ねることなく、自らの手で
それこそが集団の常識に左右されない、己のためだけの勝利の執念であり、俺が求めるストライカーのエゴイズムだ"
随分な評価をどうも。
"そこから逃げたお前の負けだ、遠藤 翼。
「嘘だろ?コレで俺が、終わり……?」
現実を受け入れられないという様子だな。
キッ、と俺の事を親の仇のように睨む。俺はただ黙ってそれを見つめ返す。
「なんで黙ってんだよ……なんとか言えよ!」
「悪いな」
俺は
「
「ッ!? このクソ───」
「HeyHeyヘーイ」
俺に掴みかかろうとした遠藤に何者かが割り込み、顔面に1発拳をお見舞いする。士道だ。堪らず後退する遠藤。
「邪魔するなよ。お前には関係ないだろ!?」
「負け犬は大人しく尻尾振って帰れよ。それとも、ご主人サマが
手のひらに拳を叩きつけ、アピールする士道。さすがに今のは効いたのか、遠藤は後ずさりする。
「これで終わったと思うなよ。次あった時は必ずブッ潰してやる!!」
視線だけで殺せるくらい俺の事を睨みつけ、遠藤は部屋を後にした。
「おい、士道」
「!」
俺は試合が終わったことで、疑問に思っていたことを口にする。
「なんで
オニごっこはルール上、ハンド以外の反則は禁止されていなかった。先程の殴り合いを見れば、士道の性格上それが1番ベストのやり方だったハズ。
なのにコイツはそれをしなかった。
「爆発だ」
「は?」
コイツ、今物騒なこと言わなかったか。
「お前なら俺を爆発させられる、そう思ったからだ。それ以上でもそれ以下でもねェ」
コイツが言っている"爆発"という単語の意味は分からないが、何故か俺はコイツのお眼鏡にかなったということだろう。
「だがまだまだ全然足りねェな。次は期待してるぜ? 風早 迅」
「……善処しとく」
◇◇◇
生き残った俺たち11人は、見事
そして初日からここ3日間、俺たちは体力テストをやらされている。
課題となった体力増加も、3日間では到底上げることなどできず、ただ悔しい結果を残すだけとなった。
また納豆だけか……。まぁ、嫌いじゃないからいいが。
食堂ではご飯と味噌汁の他に、ランキングによっておかずが変わってくる。
「さすがにずっとたくあんだけはキツいべ……」
「ドンマイだな」
「僕のギョーザ、1つあげよか?」
「いいんすか? ヒオリさんっ」
「そんな畏まらんでええよ? 迅くんもどう?」
「ありがたく頂く」
チーム内でもそれぞれのグループができ始め、かく言う俺もこの二人と親交を深めていた。
「それにしてもいつ終わるんやろ、この体力テスト」
「正直めっちゃきついし、つらいべ。早くコートでボール触りてぇ……!」
「どうだろうな。オニごっこの件もあるし、次も普通のサッカーじゃない可能性も十分ある」
絵心の考えること全てがわかる訳では無いが、そもそもこの施設だけでも異例中の異例。これからも先のように予想外なことが続くだろう。
だか、それら全てはサッカーに直結していると見ていい。アイツ自身が言っていたように、これから待ち受けるトップレベルのトレーニングと言われて期待してしまっているのも確かだった。
「それにしても、ヤバいっすよね、アノ人」
「かかわらんとき。こっちが痛い目見るで」
『アノ人』とは十中八九、士道のことだろう。
言わずもがな、士道はいつも
というか、よくイけるって思ったなアイツ。
そして睡眠。それは唯一各々が、ゆっくりできる時間。
俺はその時間、無理にならない程度に睡眠時間を削り、自主練をしていた。
あの日の1体1で確信した。ココには俺の想像を超えてくるヤツらが必ずいる。そしてこれからも、きっと出てくる。
その日のために、そしてアイツに負けないように。今は務めねば。
体力を底上げし、全力の感覚を取り戻す。
全ては来たる日のために。
そしてついにその日はやってきた。