風になる   作:猫タクシー

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キタニタツヤさんの歌でブルーロックのMAD見たんですけど、最高でした。
アニメ化するならぜひ主題歌はキタニタツヤさんでお願いします!








第8話

 

 

 

 

 

「メンドいわぁ……」

 

 烏の口からそう本音が漏れる。点を決めた迅の周りには多くのチームメイトが詰め寄り、賑わっている。

 最後の最後で同点とかいう激アツ展開なんか誰も求めてへんねん。

 

 実の所、烏はこの勝負は楽に勝てると思っていた。自分の性格はよく理解している。相手の弱点を突くことで敵を無力化させるそのプレースタイルは、実のところ現在の迅には非常に有効な手だった。

 それが蓋を開けてみればどうだ。楽勝どころか同点まで追い上げられ、もはや烏にも勝敗がどうなるか予測がつかないところまで来ている。

 

 だが、彼にとっての大きな問題はそこではなかった。

 

「この土壇場で覚醒ってか……?」

 明らかに前半と今では様子が違う。一言で言えば、雰囲気(オーラ)が変わった。言うまでもない、あの11番()のことだ。

 かなりの疲労が溜まっているのだろう。息もまだきれているし、体力は完全には回復しきれていない。

 それでも烏にははっきりとわかった。

 

 "目"や。周りのはしゃいどるのが見えてへんかのようなあの目。あの目を見た瞬間、背中にゾワッとするものが走りよった。

 

「笑えへんぞ。ここはマンガの世界やないっちゅうねん」

 

 烏自らキックオフし、試合を再開する。

 とにかく点や。残り時間ももうわずか。次点を決めた方がおそらく、この試合に勝つ。

 

 下手に攻めあぐねてしまえば反撃(カウンター)をくらってしまうことがわかっている烏。かと言って自分たちに自陣でボールを持たれても、相手は何も怖くない。

 見極めな。どっかに必ずスキがあるはずや。

 

 残された時間もあとわずか。相手のチームもここに来て底力をみせ、必死にDFでくってかかる。味方と慎重にパスを繋ぎつつ、ドリブルで攻め込み、無理をせず戻すことを繰り返し、徐々に敵陣へ侵入していく。

 

 今や。

 緩急をつけたドリブルでDFを抜き去り、開けたスペースに出た。烏でも十分に直接ゴールを狙える距離。予備動作(シュートモーション)に入った彼にこれでもかと食らいつくチームZ。

 

「行かせんッ!!」

「オラァッ!!」

「釣られたな、アホが」

 

 が、撃たない。

(しまった……!! キックフェイント!?)

 烏1人にDFが2枚来たことであいたその空間(スペース)にボールを放る。

 おるやろ? ───乙夜。

 

 タッタッタッ、と軽快に踏み鳴らし、走ってくる足音。彼はすぐに異変に気づいた。

 2人分やと……? 

 

「ギリギリ間に合ったわ」

「氷織さんッ!!」

 

 スライディングした氷織が何とか乙夜にわたる直前でボールをカット。

 アカン。()られる。

 直感的にそう感じた烏は己の全速力でもって自陣に駆け戻る。

 

「信じとったよ。この場面、この状況で何よりも先ず勝ちを取りにいく君やったらここしかあらへんよね」

 

 氷織の声はもはや、今の烏の耳には届かない。

 ここまでお約束の展開とかほんま泣けてくるわ。

 なぁ、せやろ? 

 

「行くで───迅クン」

 力強く蹴りあげられた球体は、寸分の狂いもなくいつの間にか前線で待機していた男の足元へと収まった。

 

「また会ったな烏。少しバテてるんじゃないか?」

「やかましいわボケ」

 

 俺の見立ては半分正解、半分間違えとった。

 コイツは確かにチームの弱点()でもあり、同時に(キーマン)でもあったわけや。せやけどその穴を埋めるれるだけの何かが、今のコイツにはある。

 再度対峙した両者。体力も底をつきかけているだろう2人だが、相手に1歩も引くことは無い。

 

「諦めろ、烏。俺が決めて終わりだ」

「マグレで決めてもう勝ったつもりかい……!!」

 ドンッ、とより一層強く体をぶつけた烏。しかし、倒れない。いや───

 

 軽い。真っ先に烏の脳裏に浮かんできた言葉は、それだった。

 俺の体ぶつける勢い利用して、俺の間合い(ハンドワーク)から外れよった……!! 

 

 迅は先程のの偶然の反則(ファウル)でこのことを思いついた。踏ん張りがきかなかったことで、それまで反発することしかしなかった力が一気に片方に集中された。

 そう、これだ。

 

「そうだろ? 氷織」

 接触(インパクト)の瞬間、それまで力んでいた力を一気に脱力。相手の勢いを利用して加速(ブースト)。そして、しっかりとボールも離さず移動(スライド)

 

『動きが固いで。力が入りすぎや。もっとリラックスしてみ』

 

「そうだ。殻を破れ、風早 迅」

 普段自分のことしか頭にない士道だが、今この瞬間、久方ぶりに他人に大して興奮を覚えていた。

 

「俺に魅せてみろ」

 

「そっからどうするつもりや?」

 しかし、烏は至って冷静であった。

 コイツ()の利き足は、これまでのシュートを見てから判断してもその全てが左足(レフティ)。やから完全に左のコースは切った。利き足とは逆足でのシュートは必ずその制度が落ちるもんや。

 加えて今俺らからゴールまでの距離は目測で30m前後。完全に長距離(ロング)シュートを得意としとる選手(プレイヤー)しか打てへん距離のはず。

 そう推理した烏はこの日、この男の実力を思い知ることとなる。

 

「よく見ておけ」

 

 迷わずシュートやと? 

 次いで彼の目に映ったのは、利き足のときと何ら遜色ないキレイなシュート体勢(フォーム)

 一点だけ違うとすれば───利き足(左足)の時よりも深く、そして力強く踏み込んだ軸足。

 直後、凄まじい程の衝撃音が烏を襲った。

 

 

無回転蹴弾(むかいてんシュート)

 

 

 そこから放たれた大砲(ロケット)は一切その高度を落とさず、ゴールの左上角を1度弾いて、その網に吸い込まれた。

 

 

4(TEAM Z)3(TEAM V)

 

 

「俺は元々()()()だ」

 

 試合の終了を告げるアナウンスとともに、チームの勝利を祝福する歓声が彼を包んだ。

 

 

 

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