犬とオカンとバンパイア   作:- 鴇時 -

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01.

 何もない小道で、一人何かを待っている少年がいる。ここは細い道が続くだけでまわりに家も人もいない。少なくとも、少年の視界にはずっと小道と野原が広がっているだけだ。

 

「これ、今更間違っているとかないよね?」

 

 少年は困ったように手元にある一枚の紙を何度も確認する。彼の持っている紙には大きく『入学案内』と書かれており、少年が印をつけたのか、一部分を蛍光ペンで色づけをしている。

 そこにかかれていたのは学園へのバスの案内。どうやら時間はいまから数分後であり、場所はおそらく彼が立っているその場所なのだろう。なにせ目印になるものがないから彼が不安になるのもうなずける。

 

 彼の名前は御上空。ここへは今年の春から入学予定の学校へ行くためのバスに乗りに来たようだ。

 

「いくらなんでも何もなさすぎるだろ……。あのくそおやじの言うこと信じた俺がバカだった!」

 

 御上は大きくため息を吐いて、バスが来ないかを待つ。

 

 すると、しばらくして遠くの方から車の走る音がする。御上がそちらを確認すると、その音は彼の待ち望んだ学園行きのバスのようだ。

 

 バスは彼の前に止まると、プシューと音を立てて入口が開く。

 

「ヒッヒッヒ……あんたも陽海学園に入学する生徒さんかい~?」

 

 御上がバスに乗ると、昼間にもかかわらず何故か顔がよくみえない怪しい運転手が話しかけてくる。

 

「ああ、そうだけど……あんたも?」

 

 御上がその言葉の意味を考える間もなくその意味はわかった。バスに御上以外の、そして御上と同じ制服を着た少年が席に座っていた。

 

「よかった。俺以外にもこのバスに乗っているやつがいたんだな。あまりにバスがボロボロだから心配になったわ」

 

「お、おはよう」

 

 御上はこちらに挨拶をしてきた少年以外に乗客がいないのを確認し、その少年に確認して彼の隣に座る。

 

 

 

 

 

 

 それからどれくらいの時間が経ったんだろうか。御上より前にバスに乗っていた少年、青野つくねと話をしているうちにバスが止まる。目的地に着いたようだ。

 

「お、着いたみたいだぜ」

 

「そうだね。……ねえ天くん?」

 

「なんだ?」

 

「なんか空暗くない? 気が付かなかったけどそんな時間経ってた?」

 

 つくねの言葉通り、バスの外は何故か夜のように暗い。

 バスから降りてまわりを見渡すと、空は曇り、土地は荒れ果て、近くの木には多くのカラスがとまっている。

 

「運転手さん、本当にここで合ってるか?」

 

「ヒッヒッヒ、そうだよ。あの森の奥に建物がみえるだろ~?」

 

「みえるな。なんかお化け屋敷みたいなやつが」

 

「え、まさか……」

 

「あれが君たちがこれから通う陽海学園さ。この道をまっすぐに歩けば着くから、気をつけてな~。ヒヒッ」

 

 そう言って、運転手は二人の姿を見送る。

 

「ヒヒッ、陽海学園は怖~い学校さ。本当に、気を付けてな……」

 

 

 

 運転手に見送られた二人は、学園へ続くであろう道を歩く。

 

「空くん、なんか思っていたよりやばい学校に来ちゃったね」

 

「そうだな。ここへ来るまでにトンネル通ったけど、きっとあの時に移動したんだろうな」

 

「えっと……。そ、そうだね。トンネル通る前とここじゃなんか別世界だよね」

 

「なんかも何も……

 

 空がつくねに言葉を返そうとした時、チャリンチャリン、とベルの音が響く。

 

「ど、どいてー!!」

 

「え、えぇー!?」

 

 何かが勢いよくつくねにぶつかる。

 

「う、痛たたたた……。一体何が?」

 

「ご、ごめんなさーい!!」

 

 そのなにかは、自転車に乗ったきれいな女の子だった。勢いよくぶつかったせいか、自転車ともどもつくねの上にのしかかっていた。彼女の容姿が、稀にみるほどの美少女だったためか、のしかかられているつくねの表情は少しうれしそうだ。

 

「つ、つくねー!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いくら人気がないといっても、あんなスピードで自転車走らせたら危ないだろ?」

 

「ごめんなさい……」

 

「天くん、俺は大丈夫だよ。う、痛っ」

 

 ぶつかった衝撃で、つくねの額から血が流れる。御上が慌ててバッグの中に入っているハンカチと絆創膏をとりだして手当をしようかけよる。

 少女もまた、心配そうにつくねの血をぬぐい、そして……カプリとつくねの肩にかみついた。

 

「は?」

 

「はへ?」

 

「チューって、ご、ごめんなさい! 私バンパイアで、あなたの血の匂いがあまりに美味しそうで、実際にとても美味しかったし、え、えーっと……」

 

「とりあえず、つくねはこのハンカチで止血して傷口みせてくれ。そして君はとりあえずつくねの血が止まるまで少し離れて待機」

 

「う、うん」

 

「ご、ごめんなさーい!!」

 

 

 

 しばらくして、つくねの血も止まり、止血したハンカチを凝視する少女の様子も落ち着いたころ、天が二人に声をかける。

 

「はぁ、つくねも君も、とりあえず歩きながら話そうか」

 

「天くん、いろいろありがとう」

 

「本当にごめんなさい……」

 

「とりあえず自己紹介からはじめようか。俺の名前は御上天。今年から陽海学園の1年生だ。そこのつくねとは、ここへ来るためのバスで知り合った感じだな。よろしく」

 

「俺は青野つくね。僕も今年から陽海学園の1年生なんだ。よろしくね」

 

「私は赤夜モカ。天くん、つくね、さっきはごめんなさい。私も今年からの陽海学園の1年生で、学園に向かう途中に近道をしようとしたら坂道で勢いがつきすぎちゃって……」

 

「幸い二人とも大きなけがなくてよかったよ」

 

「俺もちょっと驚いたけど、天くんが手当してくれたから血も止まったしもう大丈夫。それよりも、気になることがあるんだけど、バンパイアって……」

 

「あ、ありがとうございます! そうなんです、私バンパイアで、最近トマトジュースばかりで血を摂ってなかったからさっきはつい」

 

「バンパイアってあの十字架とかニンニクが嫌いなあの?」

 

「はい、そうなんです! あ、やっぱりバンパイアは嫌いですか?」

 

「全然、そんなことないよ! かっこいいと思う!」

 

「バンパイアに会ったのは初めてだけど、嫌いとかはないから大丈夫。あと、これから同じ学校に通うんだし、敬語じゃなくてもいいよ」

 

「二人ともありがとうございます! じゃなくてありがとう! その、もしよかったお友達になってくれないかな?」

 

「もちろん、よろしくな赤夜さん」

 

「も、もちろんだよ! モカさんよろしくね!」

 

 

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