怪物たちと,バケモノと。   作:パセリセリ

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序章はこれにて終わりです。
冷静に考えてウマ娘達の年齢やら合わなかなりそうな気配が出てまいりましたが,何かあったら突っ込んでくれると助かりますです…


バケモノ研修生

 

「お〜い君!今度はこっちの機材を頼む!」

 

「はーい!」

 

あのルドルフ誘拐事件(未遂)から数週間が経ち,本格的なトレーナー研修制度への参加するようになった。

 

レース学,運動栄養学,メディア対応,ウマ娘の体内構造や生態,怪我への対応と事細かな座学。そして現場では実際のトレーニングメニューの組み方やウマ娘達とのコミュニケーション,各トレーニングルームの使用条件なども活躍しているトレーナー達から指導を受けている。

 

場合によっては早朝からウマ娘達のトレーニングに駆り出されることや,遠征でレースを直接見る為に付き合うこともしばしばあるとのこと。

 

気力体力共に削られ,覚えることだらけではあるが今まで感じたことのない体験に内心ワクワクしている自分もいる。

 

(まぁ上司達含めて推されているし,ルドルフに応援すると言った手前生半可なことはできないしな。)

 

 

あの後,ルドルフは紆余曲折を経てトレーナーを見つけることができた。

 

冷静沈着な判断と,徹底した指示の遵守をウマ娘に求める学園内でも屈指の女性トレーナー〝東条ハナ〟ー通称〝おハナさん〟である。

 

何度か研修でも話したことがあるが,厳かかつ自分にも他人にも厳しい人ではある。

 

しかし担当しているウマ娘達はメキメキと実力をつけ,彼女らの可能性を限界まで高めようとする熱意もあってその信頼は厚いものであった。

 

研修生間でも些細な質問や悩み事を一人一人丁寧に聞き,的確なアドバイスをくれることから人気も高い。

 

まぁ時折とてつもない難題を突きつけてくることもあるが…流石は最高峰であるトレセン学園のトレーナーということにしておこう。

 

話は逸れたが,ルドルフとの相性は非常に良く毎日おハナさんのトレーニングに励むルドルフの実力はさらに磨きがかかっているとのことだ。

 

「俺も頑張らなくてはな…最短2年で資格取るくらいでなければ顔向けもできん。」

 

資格を取ること自体はどうにかなるかもしれないが,ここトレセン学園の専属となると訳が違う。

 

地方で実績を出したトレーナーや,名門校や名家からの出身者。年齢問わずにトレセン学園でのトレーナー資格を狙う者はごまんといる。

 

中にはその狭き門に何度も弾かれる。もしくはその過程でストレスで発狂する者も稀にいると聞くが…トレーナーになった後もその可能性はあるのでなるべく気にしないようにしている。

 

というよりもウマ娘関連でそのような事案に陥った場合,十中八九止めるのは自分である。勘弁して欲しい所だがそれも仕事なので文句は言えない。

 

(まぁ内部で起きている分気付きやすいし,敵わない訳ではないからどうにかなるが心は痛い…)

 

現に何度か諸々の理由によりトレーナーとウマ娘のいざこざやら,俗に言う〝うまぴょい〟での強制的に肉体関係を持ってフリーのトレーナーを狙う脅迫紛いなことやらに直面し,表立たないよう暗躍している。

 

一応今はまだ事件が多発する時期(そもそも多発するなと突っ込みたいのだが)ではない為,比較的個人の時間も確保できている。

 

「うん…今日のところは終わりかな。

また明日もよろしく頼むよ。お疲れ様。」

 

「はい,お疲れ様でした。失礼します。」

 

夕方となり,初老の先輩トレーナーが今日の業務が終わったことを伝えられ礼をしてその場を去る。

 

途中に破壊された練習レース場を見返せば走る分には問題がない程整備し直されており,今も多くのウマ娘達がトレーニングに励んでいるのが目に写った。

 

結局烏天狗のやつがあらゆる事をゲロった為,ウチの組織の尽力もありレースを荒らした奴らは捕まった。とは言ってもほぼほぼゴロツキの寄せ集めのようなもので,有力な情報はこれといって集まることはなかった。

 

更にルドルフを誘拐するように依頼したスポンサーも表社会に晒され,契約は解除。しかも大手企業のトップ層であったことからもそこの株は大暴落,今や大赤字である。

 

 

アレ以来外部による目立った時間もないし,平和と言えば平和な日々が続いていた。

 

「銘無研修生!」

 

「ンァ!?」

 

ありきたりな平和を噛み締めていると腰あたりに衝撃が走る。突然のことに驚かされるがそのまま後ろに向き直れば,見慣れたアメジストの瞳がこちらを見上げていた。

 

「やっぱりルドルフか。練習終わり?」

 

「はい!」

 

「そうか,お疲れ様。」

 

ニコニコと笑うルドルフの頭を撫でる。

嬉しそうに尻尾を振り,目を細める。 

もっと撫でろと頭を手に押しつけてくる辺り,あの一件を通して随分と親しくなったものだ。

 

「まだこれからトレーニングか?」

 

「今日は終わりです。そちらは?」

 

「夜にいつもの見回りがあるから,それまでは課題でも済ませるさ。終わるといいけれどな。」

 

「それは…お疲れ様です。」

 

ルドルフは俺が人狼であることや,個人の仕事を学園から請け負っていることを知っている唯一の学生だ。そしておハナさんの所にも何回も研修などを通して顔を見ているから此方の予定や仕事など想像しやすいのだろう。

 

こっちからしてみれば,労いの言葉を掛けてくれるだけでもありがたいものなのだがなぁ。

 

そう思いつつ彼女の頭を撫で続けていれば,ルドルフの小さな両手が此方の腕を掴み動きを止めてくる。

 

(ん?)

 

どうしたのかと彼女の顔を伺えば,頬を赤くし耳はへにゃへにゃと倒れていた。

 

周りに意識を向ければ興味ありげな視線が此方に集まりつつあるのを感じる。「何あれ,カワイイ〜」「仲良しねぇ」なんて声も聞こえてくる辺り,恥ずかしくなってしまったのだろう。

 

先程までは人があまり居なかったし,ルドルフもそれを承知で突っ込んできたのだが,トレーニング終わりの学生が増えてきたのが原因だ。

 

「そ…それではこのあたりで失礼します…」

 

「うん。お疲れ様。」

 

まだ頬を赤くしたままルドルフは早足に去ろうとするが,此方が手を振れば小さくと振り返してきた。相変わらず律儀な娘だ。

 

すっかりとグラウンドに差し込む夕陽は傾いていた。門限も近いだろうし先に見回りをしてしまおうか。

 

ゴソゴソとシャツのポケットから鎮圧団体を示すバッヂを取り出し身につける。見回り時には目のつく所にしていた方が色々とやりやすい。

 

「さて,いきますか」

 

息を一つ入れて,気持ちを切り替える。

 

トレーナー研修員 対亜人種鎮圧員

そして2年後には中央トレーナー資格への取得

 

やることだらけではあるが,色々と飽きることはない。不慣れなことも多いが、学園側から用無しと言われるまではやれることはやろうではないか。

 

流されるように決められた新たな自分の職務も,満更でもないかのように彼は小さく笑った。

 

そして時は流れ…怪物と言われる存在達とこのバケモノは出会うことになるのだが,それはまた先の話。

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