我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
1 年 振 り。
例によってコミケ用の絵書いたりしてました。
まるで何も学習していないじゃないか……(諦観)と思いましたが、一つ収穫。「まだまだISは手に取って買ってもらえるくらい需要が残っている」。やったぜ。
あ、そうだ(唐突)、今回の投稿でリメイク前のお話は完全に消滅しました。合体してるから安心!
※本作品の『単一仕様能力』に関しまして、全て四文字で統一しています。(謎のこだわり)
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──2016年。
第一回IS世界選手権『
白騎士事件を引き金としたISの生誕から条約制定、法整備、教育機関設立……四年の歳月を経て開かれた初の世界的祭典は、『ISバトル』という競技文化の確立を決定付けた歴史的瞬間である。
そして今、この一瞬。
地上最強の雌雄を決する『終わりの刻』が、近付きつつあった。
「勝負だッ、
イタリア代表、序列二位。
アリーシャ・ジョセスターフ。
世界最速を冠した当時の異名は、『ヴェネツィアの韋駄天』。
「『
翡翠色の第一世代IS『
その畏怖に恥じない
『ジョセスターフ選手、速い、速すぎる! アレは残像なのか分身なのか、二人にも三人にも見える! 何がどうなっているのか、実況席からはまっっったく把握出来ておりません!』
『両者ともに、これまでとんでもないタイムで名だたるライバルを葬ってきました。まさにこの決勝は、"最速vs瞬殺"と言えるでしょうね』
実体のある分身。質量を得た残像。
実況を放棄しかねない様相らしいが、実際外からはどう見えるか──『雷雲が巻き起こり茜い残光が飛び交う前で、術なく呆然』といった光景だ。
「…………」
それもまた、科学を通り過ぎた魔法に等しき。形容し難い概念だった。
超常存在のISから、更なる超常現象を引き出す──心象具現化プロセスの作動。
シンクロ率の限界突破が無ければ発現しない、ISの極致を。母なる君は、
「アタシの『
と、名付けた。
『!! ということは、出ましたぁ! つまりコレは、本大会では初! ようやく披露となりました"
『さぁ、この絶望的状況でどう出るか──』
絶望的。確かに。
今までトーナメントを生き残った者たちは、その希望を容易く。『単一仕様能力』すら使用していない彼女に屠られてきた。
つまり手加減無しの本気を出そうものなら、世界最強は自ずと。
──けれど、実際は
『日本総大将おり、あぁっとここで遂に剣を抜きました!!』
アリーシャと相対する日本代表、未来永劫・絶対の序列最高位を貫き続ける運命にある織斑千冬は。
目に迫る『全力』を眺めては、酷く涼しげで。口角を大きく吊り上げた、不気味な笑みすら浮かべた。
そして。
「──よう、歌舞伎女郎」
瞳の彩が、朱から『
「精々
ひと振りのみで対象を屠る一撃必殺。
剣は人成りて、心に剣を。即ち剣心一如の極を。故に己が存在、己が決意全てを込めた
『一刀一閃の構え』と唱え。
アリーシャ・ジョセスターフ。
織斑千冬。
両者互いに、他者など眼中になくずっと。
この時を迎えることしか考えていなかった。
故に彼女らは。
『
『
「「夕嵐/黄昏に帰せ」」
──そう。
たった一撃の交錯で、この試合は
「-
「-零落白夜:
────────裂空、斬響。
日本国東京中心にて観測された極致の衝突は、ほんの僅かな時間に生じた余波のみで。アリーナの天井
その成層圏まで昇った禍光の柱が、後の神話として語り継がれるべく。最強の何たるかをしろ示して。
「…………すげぇ」
特等の観客席で試合を見届けた、幼き少年が呟く。
試合時間、二分二十九秒。
翡翠色のISは、茜色の操縦者は。死屍累々と変わり果てた。独り残った彼女を止めるものは、もう誰もいない。
『ジョセスターフ選手、
風を切るよう微細の鉄屑を振り払い、その赤き妖刀を納めたと同時に。
名実共に世界一のISプレイヤーとなった瞬間を、
「──勝ったぞ、
『日本代表、織斑千冬だぁぁぁあああ!!』
爆轟の祝福、歓声が。
勝利者・織斑千冬を手招いた。
理解とは最も遠き、届かぬ存在。
玉座を揺るがそうとした挑戦者を一振りで叩き伏せ、晴れて英雄と成った
「……おれも、いつか」
人々の号は、止まない熱の雨。それら全てが幼き全身に突き刺さり、五臓六腑の奥底までひりつく。
感動の範疇を揺るがした、劇的な黄金の視界へ。彼は無意識に手を伸ばした。
目に焼き付けた『世界』に、触れようと。
──が、しかし。
「──残念ですが。弟さんのIS適正は計測不可。
余りに酷く残酷なことに、
それらすべて、知ることも、習うことも決して出来ない。
けれど、その『世界』はまるで──
──誰かが望んだ、もう一つの空。
INFINITE STRATOS
ALTERNATE UNIVERSE
Episword I :
六年後。
2022年4月4日、倉持技研道中。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………(もうすぐ着くけど、この子たちほんとに一言も喋らない……)」
助手席で固まる織斑一夏。
その背後、イヤホンで下界を完全遮断し、縮こまっては昨日放送していたリバイス29話とドンブラザーズ5話*1をリピートする更識簪と……何故か招かれた篠ノ之箒。
クッソ狭い山道に揺られながら、一行。車酔いかと疑うくらいのだんまり。
一応運転手がざっくり説明したが、目的地の第二研究所は。山奥に設立された第一研究所から、川を渡った先に聳える。因みに魚がよく釣れる、らしい。
「────さ、着きましたよ」
そんな生命のありがたみに囲われる中で、ひとつ聳える白が見えた。
あれが、倉持技研。
今や、『
「ヒカルノさん、連れて来ましたよー…………」
インターホンを鳴らすが、暫し沈黙。「お前もか」と愚痴を零す。
けれど予測はしていた。こういう時、あの人は決まって
「──隙ありッ!!」
「はいお触り禁止」
「あだだだだだだだだだだだだッ!!?」
で、こうして客様のケツを撫で回すまでがワンセットだ。
故に灸添えも兼ねて、ちょっとヤバそうな方向まで両手首を捻り倒してやった。
「待って折れる! リンダくんSTOP、ストーップ!!」
「
「「……………………」」
仲良く触られる筈だった、一夏と箒は唖然。簪は「あぁまたか」といった無表情。
白衣にスク水の濡れ姿を晒した、クセ毛の変質者が私人逮捕されている様相を見せつけられては。そうならざるを得ない。
「……失敬。お見苦しいトコ、見せちゃったね」
「全くです。最近コンプラ厳しいのでちゃんとしてください、先に訴えますよ」
「いやはや返す言葉がない……気を取り直して、んんっ! 今をトキメク少年少女のお二人方、ようこそおいでくださいました!」
この巫山戯た女。
偉業を遂げた一族故にそれなり権威のある人間なのだが……これでは示しも格好もクソもない。やっぱりただの変質者だ。
少々発育の過ぎた肢体を揺らし、けれどご身分を明かせば。多少は印象も変わるだろう。
「私の名は
かつて暮桜を開発した第一研究所所長、故・篝火ステラの一人娘。
織斑千冬と篠ノ之束とは同学同級の関係にあるのだが、彼女の才能だけは。これまで一切、日の目を見なかったという。
「因みに例のアレなんだけど、最終調整終了まであと二十分以上三十分以下くらい。急ごうぜ、ついて来なッ!」
──親の七光りを払拭出来なかった、虚しき過去あって。篝火ヒカルノは自らを。
『
織斑千冬と篠ノ之束の同級生であるが、実は在学中の交流が一切なかった。というか全部無視されたらしい。
「──とまぁ、そういうことで。今は私が新規事業。んでそっちのリンダくんが、第三世代ミドルテスターこと更識簪ちゃん専属」
「
「おぶっ!?」
べちゃべちゃべっちゃと、濡れた早足音が通路に渡る。背後を見てやればどうだ。クソデカナメクジでも這ったような、おびただしい痕が残っているぞ。
でもって、さっきからわざとらしく名前を間違えるものだから。第三世代『
「……彼女、見ての通り変態なので。お困りなら申し付けください、しばきます」
「おい見た目で人を判断しちゃいけないんだゾ! このナイスバデーだって、神から与えられたモノなんだぜ? だったら最大限活かさなきゃ勿体無いだろ???」
「何の話ですか」
髪色も相まって海藻と化した髪を靡かせるが、自己賛美にしても一々挙動が大袈裟だ。
わざわざ一夏と箒の視界に入るために反復横跳びまでかますので、
「あ、もしかして見惚れちゃった? いやー分かるよ分かる仕方がない。だってキミ思春期真っ盛りの少年だからねぇ! ほらほら、おっぱいだって結構自信あ──」
「分かりました。織斑先生にも変態趣味の変質者がいたって伝えておきます」
「待って」
調子に乗ってセンシティブなアピールまでかますが、それは箒が許さなかった。弱点は千冬らしい。
やれやれといった様子でついて行くも、やはり他スタッフの視線が痛い。変態糞IS技術屋と同伴させられることへの哀れみなのか。
……こんな歪な状況でずっと前だけを見て無表情の簪に、一夏は恐怖すら感じた。
「あぁそうだ、イイコト教えてあげよう」
アスファルトから鋼鉄の絨毯へと変わり。
ガラス越しに代名詞の『打鉄』やら付随する武装やらの製造過程を一望できる中、次の言の葉から。唯一の男にとって聞き捨てならないフレーズを飛ばす。
「ここで働いてるスタッフ、殆どがIS学園出身なんだ。お陰様でジャパニーズ卒業生の進路先、倉持が毎年人気ナンバーワンなのさ」
「へぇ……」
「なんか興味なさそうだね、そこの織斑少年。
「……!」
「お、釣れた釣れた。ちょいと調べさせてもらったんだけどキミ、お堅い公務員目指してたんでしょ」
将来。安定。
一夏はその二文字に弱い。
今となっては全て水泡に帰したが、つい二ヶ月前までそれに縋って。ISとは無縁の人並みな勉強を、それはそれは必死に。
「でもまぁ、中学の時点でその志かぁ。結構ご立派だと思うけどね」
「……本当なのか? 一夏」
「……『夢が無い』とは、よく言われた」
「確かにキラキラはないね!」
箒が怪訝な目で窺ったが、ごもっとも。否定しない。
一度はかつて抱いた憧憬を。
そう。
「男はISに乗れない」と宣告された日から。
モンド・グロッソが終わって間もなく、地上最強の弟という理由でメディアに囃し立てられ、勝手に期待されるがままに。適性検査を受けた。
当時十歳の一夏にとって、それは真実にして無慈悲無条理の現実だった。
空に焦がれ、けれど地に足をつけた動機はこの上なく。使命付けられた不可避の決択。
ならば少しでも、唯一の肉親である姉を楽させるためと。
家族の安寧こそが、彼の『空白』を埋めるに打ってつけの。ささやかな願いだった。
……受け容れてしまった過去と、未だ受け容れ難い現在。
一体どちらが悪い夢だろうか。
「にしても
「……ン゛フッ」
「え」
と、ヒカルノの何気ない同音に。ここまで無言だった簪がむせた。
一夏の反応を察知するや否や、目が合わないように顔を手で隠す。シャットアウト。
……さて、浮かない閑話休題は終わった。
肝心の本題は、足を止めたすぐ先に。一夏の新型ISコアを保管する開発室A-1が、遂にご開帳となる。
「お待たせ。そんなこんなで着きましたぞと……おぃぃーっす帰ったぜー、ついでにスーパールーキーの名を冠する可愛い後輩御一行もいらっしゃるから貴様らもてなせ」
『うわでた』
『帰ってください』
「……キミたちちょっと酷くない? 聞こえてるぞ」
巨大な鉄扉が開くや否や。
駆動音に紛れた、死海の濃度にも勝る保全課共の塩対応。しかも溢れんばかりの、人のごった煮返しが発生している。
何せ今日は、世紀の瞬間の立ち会いだ。
期間は実に三年、立ち上げと同時に。
ヒカルノの意図で、敢えて第一研究所の暮桜開発区画と同じ列番にした。
──
「さーて、説明したいのは山々だがとりあえず後だ。一夏くん、今からお姉さんとエロいことでもすっか」
「はい?」
「身体の穴という穴を調べさせてもらうから、脱ごう。はい、リンダくんよろしくぅ!」
「だから
何を言い出すのかと思いきや、輪那に背中を押されながらロッカーへ連行される一夏。
作業員を尻目にぽつり佇むは三人。懲りずに誤解を招く下の句を連射したヒカルノと、
「………………」
「……不純褐藻網痴漢常習昆布目低俗千賀磯科変態ワカメ属」
「ごめん。あと簪ちゃん辛辣過ぎ」
度重なるセンシティブ囁きでそろそろキレちまった箒と、何時ぞやのマドカへ放ったヘイトスピーチ並のオーバーキルで援護する簪。
頭がいいのか悪いのか、既に好感度が最悪をぶち抜いている。
「わ、若気の至りの冗談だからさ。それに────
「──!」
「あと簪ちゃんはコレ! ヒカルノお姉さん特性、ご要望に答えた『マルチ・ロックオン・システム修正データver.2』入ってるから。自分好みに調整したまえ」
「……どうも」
ただし負債の清算は忘れない。
弁明代わりに、箒の耳元で。ついでに指輪──『専用機待機形態』が恐る恐る入った化粧箱を、簪に渡す。
「プレゼントって……」
「今はまだ、とだけ言っておこう。大丈夫、必ずその日は来るから! このてぇんっさいIS学者に任せなさいっ」
まさか、自分も? 何故?
さっきまでただの変な人だった目の前の女が、急にらしくなった。
両肩を掴み、さぁ言質を取れと言わんばかりの宣誓。
──瞬間。
一時は血の繋がりすら疑った、紫の髪が。
三年前に失踪した、
「っ」
「おっと、ごめんごめん。や、今のは違うからね! セクハラじゃないから! ……信じて、マジで。お願いします」
何故、今になって『あの人』が。
突如ノイズがかった思考を振り切るのが先だった。反射的に身を強張らせ、退く。
「お待たせしました……また何かやったんですか」
ゴマすりの構えで許しを乞うヒカルノを、戻って来た輪那が早速睨みつける。背後には制服ではなく、ISスーツに着替えた一夏がぎこちなく。
お蔭で不快の疑念は、これから中断される。
「いやーベストタイミング……ほぅ。良いカラダしてんねぇ!」
「……なんか、この格好恥ずかしいというか」
「!?」
相応の筋肉ある肩から腕が剥き出しとなった、世界に一つしかない特注品を纏っている。
普段は白いブレザーで見えていなかったが……鍛えた跡、均整の取れたボディラインが浮き彫りだ。
見え見えの刺激が強過ぎた故か。即座に箒が赤面硬直に陥るのも、無理ない。
「結果はどうだった?」
「変わらず、ですね」
「ふむふむ」
「……………………」
突っつくなり手を振るなり、箒の応答確認を試みる簪の隣で。紙切れに書かれた『IS適正:B』は、適正発覚の二月と何ら変化なく。
数値変動の波を多少は期待していたが、面白みに欠けるか。否、
「……そろそろ、だね」
狙い済ましたかのようにアラームが鳴る。天井投影モニターが、瞬く間に『COMPLETE』の文字で埋め尽くされた。
──リアルタイム・チューニング、及び最新の遺伝子ラーニング完了。
さぁ、準備は揃った。
「皆の者ご注目! 一夏くんの専用機こと、我々倉持が生み出した史上最高傑作と遂にナマ対面だッ!!」
専務やら社長やら、お偉い方々を含めたスタッフ陣が、道を開ける。
全工程オペレートが完了したキャリア・ボックスから顔を出す、誕生したばかりのIS待機形態──そのフォルムは。
「──“そこに、『白』が、いた”!」
冷却の風に混ざり。
ISコアの元、すなわち時結晶から放たれる永久運動粒子『
「……ふふん! この継ぎ目すら美しいフォルム。新たな時代を感じさせるに相応しい。どうだ、最ッ高でしょ? やはり私はてぇんッッッッッさいでしょ?!!」
まさにこの時をもって。
産声を上げたISを取り出すヒカルノは、結晶と同じ翡翠の瞳を煌めかせた。
「待っていたまえ、宇宙の遥か向こう側に眠りし、まだ見ぬ
「は、はい! ……えっ?」
その虹彩の奥底に映る、ヴィジョンは。
新たな希望か。または一個人が抱く、底知れない野望か。
「まだ赤子のようなものだけど。これが私の、新たな夢のカタチ。そして倉持の未来だ。君に託すよ」
いきなり無から生えてきた肩書きに困惑する間もなく。そしてこれより、『
呼吸を止めた一夏に向けて、待ち侘びた
「コアナンバー046、GX-01『
廻り集い、回帰した歴史は。
枝分かれの先でまたひとつ、また一輪。
「
──起源の定式からは程遠き。
異形の花を、咲かせてしまった。
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