我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
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──倉持技研はおろか、日本国のIS
継承候補自体は数名居た。が、それらは結局。候補止まりの引退続きで進展がなかったという。
これにより吸収合併、最悪廃業を余儀なくされた企業が数社。
次のモンド・グロッソまでに代表が選出されなければ、政府からの開発予算が。当然、倉持も例外ではなかった。
世界の主流は第三世代。
転落したシェア率二位を支える第二世代『打鉄』では、限界が来るというもの。
大人の事情のゴタゴタに巻き込まれ、かつての栄光『暮桜』も凍結処分──そんな低迷の倉持に齎された、
一つは、不可能と云われたその『暮桜』の後継。
そして二つ目は、次世代型『打鉄』を量産するためのプロトタイプ。
互いに欠けてはならないそれらを担うものは、
「このてぇんさいッIS学者の篝火ヒカルノお姉さんにかかれば、倉持の復興なんざ朝飯前っ!! 世界に名を知らしめるのも、時間のもんだ」
「まぁ会長がご厚意で三年待ってくれなかったら我々みんな路頭に迷ってましたけどね」
「……リンダくん、話の腰は」
「
──篝火ヒカルノの卓越したカリスマ性と世界髄一に匹敵するコア調教技能、ついでに先見の明であろう。
「……ん、んんっ」
「ほら、会長見てますよ」
「君が要らんこと言うからだろォ!?」
「……まぁ、結果的には貴女というより。
「ヒュッ」
初老の女性、倉持技研三代目会長こと
当初は「三年待て」などと土下座しながら舐めた口を利くものだから、虚言ならどう八つ裂きにしてやろうか思い巡らせたものだ。
「とは言え、これだけ猶予を与えたのですから。貴女の未来図が机上の空論でないことを、必ず証明なさい。さもなくば……」
「い、イエスマム!!!」
倉持会長の背中から、悪霊の化身の如き影が溢れている。拳を重ね、引き抜くような仕草で。
調子に乗ったヒカルノが割と本気でビビり散らかしているのには、訳がある。
倉持家先祖は刀匠の家系らしく、前述の件で代々伝わる業物を鬼の形相で突き付けられたそうだ。つまりこのハンドサインは、「首を刎ねるぞ」。
「よろしい。では殿方に『白椿』を」
「ハイ! ささ、一夏くん。この子に手を伸ばして。カモンカモン」
「っ、はい──」
緊迫の一瞬であった。
佇む白。
無垢の水晶を羽織る真っ白。
まるで凍りついたような、夢を見続けてるような……
「……これが、おれの──」
そうだ。
これこそが、幼き日からずっと求めていた翼。かつて可能性を否定された、少年の翼。
世界の理を変える『力』を前に息を呑み、その指先を──
「!?」
「……これは……ヒカルノさん」
「どうしたリンダく──んん?」
「
同じだった。
あの日、あの場所で。
一機の『打鉄』に手を伸ばし、誤って起動してしまった、運命的な瞬間と。
──今、
刹那よりも速く、『それ』は襲来した。
インフィニット・ストラトスとは、 今から10年前──
お母様が遺した 記された小さなフラグメント・マップ
第三世代IS『■■』は コアナンバー001『白騎士』と同一の──
「完全」と「至上」、そして「愛」を込めて GX-01『
全ISに対する決定的有効打を秘めた 究極の単一仕様能力『■■■■』──
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駆け巡るは
記録、即ち第三者による
脳裏を穿つ無限の閃光。
Start and fitting… 戦闘待機状態のISを感知 ISネーム、『ブルー・ティアーズ』
One-off Ability『■■■■』:Ready to Utilize
──たい、が』白『、にこそ──あああ
ハワイ沖で試験稼働にあった軍用IS 『銀の福音』の暴走 あの女性は誰かに似ていた 白い、騎士あああああああ
2nd-Form 『Snow Veil』:Complate
──かすまし欲を力──あ
殺してやる、織斑一夏 資格のない、者に、力は、不要
Code White:boot
──め挑、に私──
Daisy, Daisy, Give me Your Answer Do Mode EXCALIBUR, count ZERO
──だのだん■、は夏一斑織──
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しかし、次の瞬間。
閃光が歪曲し、反転し、混濁した。
金属の高周波のようなそれは、けれど優しい音に聞こえる。
何故か、鏡に映ったように。自分の姿が見えた気がした。
夜の帷が燃えて、白を、無を。照らしている。そして遥かに強い閃光に飲まれ、明けない漆黒が来た。
それら全ては。
見覚えのない逆巻きの記憶。記録。異物。加速するそれらを辿れば、否。きっと
けれど、467で繋がったコア・ネットワークが包囲する、『絶対量子空間』と
いつしか、食らいつくように色彩を黄金にさせて。光の軌跡たちをひたすらに追いかけていた。
そして、
あ『この日をずっと、待っていたんだよ』あ
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──ラーニング完了。
「……約12秒間のトランス状態に陥った後、ISとの
「
「想定内。思った通り、時結晶粒子の波長が大きくブレたねぇ。二月の生体データを認識させた時と同じだ」
暗転、明転。
ばやけた視界が眩しい。
ヒカルノと輪那の妙な会話を拾って、一夏は自分の意識が現実に戻ったと認識する。
「やぁ、今の世界はどんな感じ?」
気付けば、目の前にあったISは
否、正確に言い換えれば──変化は劇的に訪れている。己の身体が、ISを纏っていた。
中世を彷彿させた白き鎧。けれど遙か新世を指す連なった両翼。
盾が在れば当然、矛も在る。日の本の席を表すに十全な、一本の刀剣を添えて──そしてその節々を覆う、翡翠の時結晶。
「あぁ、ついに、とうとう…………!!」
「おめでとうございます、会長……!」
邂逅を祝え。
倉持技研が持てる全ての技術を集結させ、過去と未来をしろ示した薄明の姿。
その名はGX-01『白椿』。
幾星霜の時を経て、織斑一夏の専用機と成ったことで。
「……あれ…………っすぅー…………ヒカルノさん、あの、
「え」
「ほら」
「いや早スギィ!!?」
驚くほどに馴染んでいる。
生まれた時から、端から人身一体であったかのような融和、適合。
そして二ヶ月前のあの日とは比べ物にならない、恐ろしく透き通った世界が、視える。
「ともあれ、これでまた証明されてしまった──この子は一夏くん以外の干渉を拒んでいた。私の
「接触拒否で自己凍結した時はもう終わったと思いましたけど」
「おいそれ禁句だって──」
「は?」
「ほらぁ!!」
先の不可思議な景色によって、これが『何』であるか──認知を終えた。
まだ習ってもいないのに。何故か最初から、知っているかのように。理解してしまった。
これが本当の。
「後でその話、たっぷり詳しく聞かせて貰います」
「……さ、さて、テストはまだ終わってないぞ〜、仕上げといこうかっ!」
全天周囲センサーの反応で、感動の時間はひとまず中断。
会長の諭旨宣告から逃げたヒカルノの如何わしい谷間から出てきた琥珀色の鍵を、『白椿』がピンポイント捕捉した。
感知。
微細な意図でも即、読み取られる。
どんなISか、特性は、意識を向けたならば──カチリと秒針が進む如く。
まだ完全に終わっていない処理を裏で巡らせながら、必要最低限の量子字列が書き上がった。そして。
「さぁおいで──
放り投げた鍵が光の雨粒へと変換され、ヒカルノに纏わり付く。
ISが誕生する前から、宇宙開発用として構想された
「紹介しよう。この子はコアナンバー017、『
幾度の世代互換改修、更にヒカルノの趣味的設計思想が施された結果。新型二機以上に、打鉄の原型とは程遠きデザインと化している。倉持の始まりを名乗るには、実に歪だ。
「──皆様ご注目、上に参ります!」
直後、駆動音。
これから起こる
「飛ぼうぜ、少年」
登録操縦者:篝火ヒカルノ/輪那ひより
裏に浮かぶ幾多の思惑を含めて。
彼女の笑顔から読み取られた影は、この上なく
私が目覚めた時。それは、はじまりの合図。
『はーい、おーらいおーらい。じゃけんそのままアリーナまで行きましょうね〜』
ヒカルノの手引きで上昇を始めた一夏は、ガイドビームに誘導されるがままに。試験稼働用アリーナへの飛行を始める。
因みにIS学園に設置された六つのアリーナは、全て倉持の協力・監修だ。というか学園のあれやこれやの面倒な設備関連は、大抵倉持が二枚ほど噛んでいる。コキ使われている。
『気分はどう? と言ってもその様子だと、
覚束無く、安定とはやや遠い飛行を見守る中。
見透かされれば当然、振り向く。
元々天体望遠を想定したハイパーセンサーのお蔭か、離れていてもピースサインがはっきり見える。
『何故解るのか、そんな顔をしているねぇ……その心は、私が並々ならぬてぇんっさいIS学者だから! というのは大前提として』
隙あらば飄々。
これでもかというくらいにくどくど天才を自称した後、こめかみをトンと叩いてみせた。
ご理解を頂くが、この女。
篠ノ之束が失踪して消去法的に自分が世界最高峰の技術屋となってしかも一夏の国家公認専属サポーターと化したせいで、阿保ほど浮かれている。
……故に、手取り足取りの施しを全力で遂行しようとしていた。何事も第一印象が肝心であるが、もう失敗してるとか言ってはいけない。
『ISとリンクした操縦者諸君は、ありとあらゆる情報を
| 『一応正解。まぁ、齧ってるだけのことはあるな……』 |
『図星って顔だね。うんうん。予定より早く
「……因みに悪い方だと」
『乗っ取られるよ』
「え!?」
| 『それも正解。でも残念、一夏を掌握する理由なんて私にある訳ないんだよね。……よっぽどの事じゃないと』 |
「っ…………」
本職によるありがたい座学の一瞬。
頭の中で
──これこそが、ISの潜在意識なのか。
『まぁそうなったら豆鉄砲でも止まるように、操縦者保護による"絶対防御"発動から強制
「……俺、さっきから誰かの声、聞こえるような気がして」
『超ビンゴじゃん。やっぱり織斑の血かな……』
「?」
『あぁ、こっちの話。間違いなくISのコアからだ。今も何か訴えかけたりしてる?』
猫ミームのヤギくらい訳の分からん専門用語が飛び交うものの。難なく情報を捌ける程度には理解出来る。ISの補佐機能が操縦者に著しく干渉しているお陰だろう……感謝はさておき、促されるまま。
一夏は今一度、『声』に耳を傾けることにした。すると。
| 『……さっきからやけに馴れ馴れしいけど、コイツだけはほんっと信用できないんだよね。あと輪那ひよりって誰? 倉持出身無双系のオリ主か?』 |
「……『こいつだけは信用できない』、って言ってますね」
『え』
| 『そうだよ……え、全部聞こえてる?』 |
「……うん」
| 『…………』 |
「「…………』』
沈黙。最悪。
どんなものかと伺ってみたが、
かえって気色悪いくらい、
「……人間の脳は、さ。100億メガバイトもの容量を有するなんて云われてるけど……ISはその比ではない、ということさ。うん」
そして不幸なことに。
通信を切って恐る恐る一夏に寄り添うヒカルノにとってもそれは、半ば事実陳列を突かれる痛い事案であった。
それっぽい御託を並べているが、まるで自己弁護になっていない。誤魔化し方がド下手なのでますます怪しい。
「って、そんな話じゃなくてね! 要はキミも特異体質ってコトだ。ISの成長過程をすっ飛ばして、
| 『えっ何それ初耳私の知らん設定……ソースはどこ?』 |
「ってことは現役時代の千冬姉を、詳しく知ってるんですか!?」
「んにゃぴ、まぁ同級生だし多少はね?」
かなり気になる。それはそう。
何時からか、千冬は過去を話さなくなった。故に一夏も様相を察して。
理由を聞くまでもなく、掘り返す真似をやめて数年だ。二人で居る時間だって、教員生活が絡めば昔とは違う。
「彼女もISとガンガン会話出来るタイプだったよ、それこそ本当の家族みたいにね。独り言に見えるのがタマに傷だけど」
両親は蒸発。
世間では完全無欠と謳われる千冬だって、人間だ。そんな彼女にとって、最も大きな支えとなった存在は──何を隠そう人格を形成した『IS』だったと、ヒカルノは語る。
「折角だし、全部筒抜けなら尋ねてみよう。コアナンバー046のシロちゃん改め……『白椿』ちゃん。キミは何故、私が信用ならないのか──」
| 『私の中勝手に覗こうとするわめちゃくちゃな改造するわそもそも欠陥の烙印だった"白椿"って名前自体がどうもきな臭いし気に入らない。"打鉄弍式"が完成しているのだって意味がわからないし……お前、最初から一夏を利用する気満々でしょ。それも無理。後のこと考えるなら今すぐ《雪片》でデータの藻屑にしてやり──』 |
「…………胡散臭すぎて、無理?」
「」
| 『……しまった、全部聞こえてるんだった……で、でも事実しか言ってないし……はっきり言ってこいつ嫌いだし……』 |
で、話を戻せばこれだ。
流暢な言霊をぶちまけるので優しく翻訳してやった結果、今度こそヒカルノは閉口してしまった。
その調教とやらで一体、白椿に対して何をしでかしたのか。
『立ち止まって何やってるんですか。会長のシワ増えますよ』
「……いや、それがねリンダくん。まさかここまでISに嫌われているとは思ってなくてね」
『今更気付いたんですね』
「わ、私はこれでも徳を積んだつもりなんだけどな゛ぁ゛、一体何がいけなかったんでしょうね゛ぇ゛!゛」
『なんで泣く必要があるんですか』
「うるせぇ! 知らねぇ!! 行こう一夏くん!!」
「あっはい」
| 『何やってんだこいつは……』 |
お気持ち表明によるひと悶着が終わり、アリーナ中心へ降り立つ。
素人にしては一夏の順応は早く、基本的な操縦も既に慣れた様子だった。
「そういや結構上手いじゃん、練習でもしてた?」
「練習は全く……でも、確かに。今回は思うように、動く気がする……」
| 『ふっふっふ、そりゃ私が補助してるからね。もちろん、そんじゃそこらの |
──訂正。
白椿がゴリゴリに関与しているらしい。
「いやーお待たせリンダくん。待った?」
『とっくに全員スタンバってます』
もたもたしている間にギャラリー一同は。ピットの客席にて、わざわざ会長が持ってきた高級茶菓子片手にくつろいでいた。
背筋を強張らせ、おずおずと茶を啜る箒。対照的に簪なんかは、拳三つ分くらいのクソデカ煎餅をボリボリ食ってる。
「ああああぁっお前らだけ良いもん食って! いーなー!!」
『……代わりますよ。貴方、操縦は大して上手くないでしょう』
呆れた輪那がピットから降りてすたすたとやって来ると、ヒカルノは
「ここからは私がやるので」
「流石は元日本代表候補生のリンダくん。火が点いた?」
「……ISをこちらに」
「…………」
待機状態の鍵を貰おうと手を伸ばす輪那。
──しかし。
「……ふざけてます?」
「いいや? リンダくん届くかなーって」
「は?」
その得物をひょいと高く上げ、わざとらしく。絶妙に輪那の指先が触れないよう、ぶら下げ始めた。
──『零式・星鐘』は元々、
現在はヒカルノと輪那の二名が登録されているが、となれば余計、ここで遊んでいる暇はない。今度こそ小指の一本や二本、会長に落とされても文句は言えないだろう。
けれど、この瞬間だけ。
指どころか腕ごと差し出しても構わない程の『違和感』が。ヒカルノの奇行には在った。
「いい加減にしないと……」
「いや、
苛立ちを見せた輪那に対し、不可避の本題を切り出すヒカルノ。
既に違和感は、『確信』に変わっている。何故なら、
「──キミ、
何故なら彼女は、輪那ひよりに非ず。
確信に『結論』付けた。