我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
Dance with Bullets
──引用:デート・ア・バレット
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身も蓋もない確定事項だが、一夏とマドカが今のセシリアに勝てる確率はまぁ、0だ。第四世代技術を搭載した如何なるブッ壊れISを用いようと、慢心を捨てた圧倒的経験実力差の前では変わらない。
この戦いは触れただけで全てを初期化する姑息な任意コードでも実行しない限り、どう足掻いても負けイベにしかならないのだ。
| 『さーて初陣だ。じゃあ早速セシリア・オルコットの出方、を…………あっ、いや、壊れちゃう壊れちゃう!? 避けて避けて避けて!!』 |
「えっちょ!? うわァァっ!?」
「ウォーミングアップといきましょう──全て捌けるなら、
『オルコット、いきなり飛ばしていくゥ! 公式戦ISCSお馴染みのBT兵器で、二人を風穴だらけにするつもりだーッ!』
『まぁこの初見殺しチュートリアルをどうにも出来ないなら、論外ってトコだな。因みにアレ、手ブラならオレでも全避けはキツい』
『まるで一戦交えたことがあるかのような』
『やったよ。入学初日に』
『は!?』
ガチです。
詳しくは、クラスメイトは『
『頑張れェ! 一夏くん! 一夏くゥーん!! ISに乗って、倒しなさい、一夏くゥーん!!!』
『全然似てないミサトやめろ』
さて、話を戻すが。射撃、射撃射撃射撃。
鋼鉄の指鳴らしが合図だった。
開幕から訳も分からず、失明したかと疑う程の。見るもの全てを塵に溶かす、蒼白い光の雨が降り注いだ。
一夏は現世代最高スペックを誇る白椿に振り回されながらも、機動力ゴリ押しで射程圏内からの離脱を優先。一方マドカはその場で対応しているように見えて、普通に擦っている。
「耐えろよ、織斑一夏。こいつはセシリィにとって朝飯──」
「ただしウォヴェンスポートさんあなたは別。消えなさい」
「──!!」
制空権を掌握したセシリアは逃げ惑う二名を眺め、腕を組みながら。ただ突っ立ってるだけならこんなことにはなっていない。
名前が紛らわしいが、世界初の第三世代兵器であるマインド・インターフェース武装《BT兵器ブルー・ティアーズ》を。絶賛精神感応制御操作中。
そして明らかに、マドカへバラ撒く弾幕の方が濃い。ハエ一匹の駆除にC4爆弾を投入するかの如く、濃過ぎる。
「ふんッ! はッ!! おいセシリィ、全てのBTを私に向けなかったこと、後悔す」
「
刹那、引き金が空間を切り取る。
量子変換から3.4秒後、命中。ヘリオス・レイヴンの左脚部装甲が見事に吹き飛ぶ。BTでの速射を突如止めた瞬間を縫って、試作段階の
| 『え、来る!? この距離から!!?』 |
更に反動を利用した
直後、IS装甲と同質の形状記憶合金による障壁再生が始まるが……ドえらい余波だ。
| 『いや危ねェ!? アレで当ててくるのかよ怖〜ッ!!?』 |
「チィィっ──メインブースターの片割れがイカれたか!! 流石の狙げッ、きッ、センッ、だッ、どわッーーー!」
「……やはり少々、クセがありますわね。
『いつもと違うやつだな』
『本試合にて解禁、だそうです! トライアル装備の全貌をイチ早く拝めるのも、IS学園ならでは、ですね!』
姿勢制御がままならず、ぐるぐる無様な回転を見せながらBTの追い討ちを食らうマドカ。
動く的がコイツ以外なら、もっと有益な実験結果を得られたのだが──威力が一丁前でも使い物になるまでは遠い。調整が必須だ。
プロトタイプならこんなものかと、見切りを付ける。
「(BTレーザーが)お太い!!」
「最高……出力を……!」
「お前もう生きて帰れねぇな?」
「見える見える……凄くいやらしい穴だよ」
「ハッハッハッハ(乾いた笑)……なんか芸術的」
「お前んコアこわれるわ」
ポップコーンを貪るギャラリーも、前作主人公の不殺主義者みたいな一切情け容赦ないクソマンチビームを撒き散らすセシリアに対して。ボキャ貧の野次を垂れ流した。
こんな日だからこそ、地獄へ叩き落とすには丁度いい。
花が咲き、蝶が舞い、風が吹き、きっと今宵の月も。清々しき晴天に見舞われた本日だが、第三アリーナ戦闘領域のみ。降水率が200パーセントだ。
『なるほど、流石はspec:IIにグレードアップした、ブルー・ティアーズの力ってワケだ』
『織斑くんの勝算は如何です?』
『これ無理だゾ』
『え』
『え』
『えぇ……』
議論の余地すらなき即答。
それでいいのか、篝火ヒカルノ。
『……さ、さぁ織斑はどう出るか! 倉持最新の白椿、今のところBTを全て回避していますが……かなりデタラメな軌道で飛び回って、見ているこちらも酔いそうです!』
『うん、はえーな。あのスピードで接近戦に持ち込まれたら、嬢ちゃんからすりゃちょいと面倒かもな』
足掻くほどに体力は消耗。かと言って間合いに入れば、蜂の巣になってお陀仏。
山田先生とも、『あの日のオータム』とも違う
「このレーザービット、ってやつ、どうすれば──!!」
| 『ま、まぁ大丈夫。アレは四基だから、ね。分断されてるならこっちに来てるのは一か二基くらいだし、対策は…………いや待って。ちょっと待ってよ。なんで……』 |
アシストが無ければ、開幕で既に死んでいた。
猫の手も借りたいこの状況。ならば打開の術をと、やたら喋るコア人格を頼るしかないが……一夏の思惑を読み取った当の彼女、ナンバー046こと白椿は。ウユニ塩湖みたいな深層のど真ん中で頭を抱えていた。そして。
| 『なんでレーザー型BTが てか今気付いたけどなんかISどころかあいつ顔作画もおかしくない? 誰!?』 |
深刻なエラーが発生したと言わんばかりに吠えた。すげーうるさい。
どうやら、ちょっとどころかかなり想定外の事態らしい。というのも。
白椿にかかればここまでお見通しだった。
流れはこうだ。
レーザービット或いはライフルによる波状狙撃がプランA。攻略されて接近されたところを狙って、「BTは六基ありましてよ!」と隠し球のプランBを投入してくる。AとBさえ潰せば、最後のプランCはショボいなまくらでの牽制しか残っていな──あ、来た。
| 『今! 一番反応が遅れる角度!』 |
「つまり後ろのッ、そこか!! ──えっ? ぐあ!?」
「7分42秒。早々にブルー・ティアーズの
| 『は?』 |
紙一重の補正で三発回避。全身を捻った即座の応酬でBTIIに斬り掛かるが──ひょいと躱された。被弾。
シールドエネルギー残数、780。おまけに満足気な顔で聞き捨てならない言葉を発した。
『あぁーっと! 遂に織斑、BTの餌食となりました!!』
『惜しかったな。けど、嬢ちゃんの方が一枚上手だ』
……話を戻そう。
術を失ったセシリアは近接戦に対するアドリブが皆無である。おまけに戦闘プランをめちゃくちゃにされると感情的になるので……プライドをズタズタにしながらCプラン突入が決まれば勝ち確。後は自慢の雪片を出力最大にしてしばき倒せば、簡単に勝てる。
と。ここまで過去のデータと予測に基づく確信的御託を長々並べてきたが。
高飛車らしい分かり易い穴を突けばもうマジで絶対に簡単に勝てる──筈だった。
| 『……うん、やっぱり落ちたな(確信)。BTの弱点は極限の意識集中。しかも本人が想定していない事態に陥ったらそれがブレる。この超絶スペックな私の力で撹乱してやれば、精神攻撃になってドツボにハマるんだよね。あとはタイミング見計らって最速の |
試合直前もこんなこと言ってました。実際はご覧の通りだ。
武装は違うわ、動きは違うわ、全然手加減しとらんわ、イレギュラーへの手慣れ方が異常だわ。そもそもタレ目じゃなくてツリ目になっとるわ。弱点が見当たらない。自信満々に立てた作戦が全て水泡となった。
| 『……いや、私の知らないセシリア・オルコットがいるんだけど、これひょっとしてヤバいやつ? しかもミサイルないじゃん。プランB消えてるじゃん。え、まさか近接対応してくるの? マジで? ……あああああぁぁぁ! なんでなんでなんでなんで!?』 |
君大丈夫か。
実際に戦闘プランをめちゃくちゃにされて取り乱しているのは、最初から何もかも見当違いのガバガバチャートっぷりをこれでもかと発揮した白椿の方だった。
何より
「……何か、オルコットさんに問題でもあるのか?」
| 『大ありだよ、全然チョロまかせないセシリア・オルコットなんて解釈違いもいいとこでしょ?! どんな魔改造してんだ、中にオリ主でも入ってんのか?!』 |
「?????」
| 『……ごめん、調べるから5秒だけ待って』 |
「あっはい」
意味不明だ。一体、何がどうなってんだと。
急いで彼女のプロフィールをコア・ネットワーク経由のグローバル・アーカイブから調べ上げると、
セシリア・オルコット。
世界序列24位。
出場した公式戦、全勝。
IS適性、A+。
BT適性、世界最高のA++。
そしてBT兵器稼働率は──75%。
有り得ない。
今のセシリア・オルコットは、
予測を覆す遙か埒外に位置した、完全の別者であった。
目を疑って擦ったが、この数値が本当に正しければ。『ビームが曲がる例のアレ』が発動可能な領域に、既に達している。
| 『通りでねぇ! ……はぁぁぁああ!?』 |
で、また発狂してる。それもそうか。
一夏は鼓膜がぶち破れそうな感覚に襲われたが、これで確定した。冒頭で述べた通りの、「不可能」の結末が。
プログラムの概念を超越した悪魔が囁く。
「──とうッ!!!」
絶望を叩きつけられた中、背後から爆発音と共に颯爽と。
ギリシャ彫刻作製過程のように見事な蜂の巣にされた筈のマドカが、鬱陶しい綺羅星となって返って来た。
……全身大炎上状態で。
「ッハハハハハハハハ!!
お待たせしました諸君!!」
「いや全然」
「それは君の錯覚だよ」
「申マN」
「下に降りて静死受け容れろ」
幻魔界最強の剣士復活へのブーイングが止まらない。罵倒の雨をも浴びる少女がそこにいた。正常なのか疑わしいISを纏って。
「やぁ、生きていたか織斑一夏」
一応「敵」なので構える一夏に、迂闊に無防備に気さくに話しかけた。こっちの台詞である。お前まだ
| 『気を付けて一夏!! コイツだけは何してくるか分からないよ!』 |
「まぁ待て。君もセシリィの実力が本物だと理解したろう。彼女に挑んだ9割の挑戦者は、この第一波で脱落している」
ロックオンはされていない。
白椿の警告に反して、敵意は皆無。何だったら白椿は、セシリアなんかよりずっとコイツの方が危険と認識していた。対してマドカは、入学時からの馴れ馴れしさを一切崩さず。
それよりも。
便所のネズミを目の当たりにしたかのような戦績と周囲の評判を鑑みれば、不可解にも結構持ち堪えている。
その理由はミューゼル式スパルタ訓練を施されたマドカの努力……ではなく、何百回も調整を重ねたヘリオス・レイヴンに。
「……《ソリッド・フレア》、また改良しましたのね」
「
燃ゆる指先を突き付けるマドカ。
腹が立つより先に、その光景そのものが。何かがおかしいと、観客は揃いも揃って
損傷率25%。
シールドエネルギー残数、600。
これもまた有り得ないことだった。
試作ライフルに狙撃された後の追い討ちを数発食らってなお、シールドエネルギーが
「
「対BT仕様、と言えば解るかな」
勝手に種を明かしてくれる。
これまでセシリアが95回も鉄クズにしてきたモノと決定的に異なるのは、その装甲。対BTを含めた複合コーティングによる変色だ──これは『かの雪片』にも採用された
その分コストが馬鹿にならないが、如何せん
「あえて言わせてもらおう……君との闘いのお陰で愛機を強くしてくれてありがとう、とな」
当然、本来は当たらなければ。
こんな血税無駄遣いの金食い虫を全身介護してやる必要はない。
「…………やはりあなたの存在、“No thank you” ですわ」
「咬み殺せ」。猟犬を放つと言わんばかりに、また指を鳴らす。
状況整理から再び退避を取った一夏を尻目に。今度はBT六基全てがマドカへ牙を向く。
第三ルーチンに当たる不規則な隊列を組みながら、瞬く間に取り囲み。全弾命中で即死は免れないだろう。が。
「残念だが、そいつはもう私には効かない」
BTレーザー発射の瞬間。
両腕を広げると、
結果。
全弾消滅。
「は?」
「なに?」
「ああん? なんで?」
「どうなっとんねや!?」
「意味がわからへん(痴呆)」
| 『……おいおいおいおい。《プロミネンス・コート》じゃんか。思い出したわ。じゃあコイツの機体って……!!』 |
「…………」
周囲の唖然とは別の意味で、一切の反応を示さないセシリア。その沈黙の間で、白椿がヘリオス・レイヴンの正体を看破していた。
『……ハッ! こ、これはどういうことだーっ!? ミューゼル、異例の生存となりました!! ……レイン様、これは一体どういうことでしょう? 失礼ですが、妹様の前情報を考えると継戦能力はとっくに……』
『まぁ、企業秘密ってコトで』
『へぇ……
世界中が驚愕するに値する現象だ、無理もない。これまでの戦闘、全てが5分以内にマドカ敗北で処理されているのだから。
しばしの思考停止から復活した黛の疑念に、分かりやすくしらばっくれたレイン。性懲りも無く小賢しい特殊武装を組み込んでいるのは確かだ。
| 『なんてもん乗って来やがったんだよ……ミューゼルって名乗ってるなら確かにそうなるんだけど、やっぱり私の目に狂いはなかった……コイツ……』 |
身の丈に合わないマドカのIS──磁場制御した掌部核融合炉ユニット《ソリッド・フレア》が出てきた時点で、気付くべきだった。
それはスコール・ミューゼルがデザインした、次世代ISの前身。
そしてスコール本人が搭乗することを想定した、最初の開発コード名は『黄金の夜明け』。
『μ-s.o.l-01
第三世代が台頭した当時は机上の空論と呼ばれていたが。失踪した篠ノ之束が残した文書を元に、昨年篝火ヒカルノが提唱・完成させた第四世代技術──『
元は太陽エネルギー推進による宇宙航行を想定し、「来たる未来における金星の開拓」を目的とした『非戦闘用IS』である。
「紹介しよう。コイツはMeusel Materialの新型兵器──《
『ちげーよ』
マドカには余りにも勿体ない試作型展開装甲搭載可変式双鞭《プロメテウス》。
その熱源機関を解放した多関節から放たれた多重炎環バリア《プロミネンス・コート》を、BT包囲の瞬間に発動させていたのだ。
「──フっ、無駄だ。仮にBTミサイルであっても、この絶対的闇を纏う私には無力!」
戦場に余計な言葉なんて要らない。BTに帰還指令を出しつつ攻撃を続行するセシリア。
けれど仕様上、対広域実弾武装*1を持ち併せていないのが仇となったのか、全て掻き消される。
『わ、我々は夢でも見ているのでしょうか……なんとオルコットのBT兵器、ここでミューゼルに通用しなくなったァァッ! レイン様、詳細を伺っても!?』
『360°自動対応で遠距離武装を無効化出来る盾ってのは、最近の第三世代だと割とメジャーなやり方だよな。ギリシャ製とかそういうの得意だぜ』
『あぁ彼女さんのアレとか。今いらっしゃらないのが悔やまれますね』
『……まぁ、そう、だな』
「あああああああああもうやだああああああああああ!!!!」
「お慈悲ˆ〜!! お慈悲ˆ〜!!!」
「ああぁぁぁぁ……↓ぁぁぁぁああああ↑! ぁあ!!!」
「あぁ゛死ぬ! 気持ちいい(ドーパミン放出)……シンボラー!!」
「泣く(呪怨)」
「泣いても泣いてもおッパラディン」
外野共がレインの色ボケに喘いでいるが、それは置いて。
正に、オールレンジに対する最強の『解』を示す武装だ。これさえあればBT兵器は完封したも同然。
重ね重ねて述べるが、マドカには余りにも勿体なさ過ぎる。
「……良いでしょう、ならば──」
「そろそろ反撃開始といこうか」
「──ちっ」
次なる指令の前に動いたのはマドカ。
プロミネンスコートを展開したまま、強引に突撃する──得物を召喚しながら。
「次元干渉幻魔方陣展開、暗黒太陽機関解放──燃えよ、世界は命じた、漆黒、焔、星の鼓動瞬く間に、刹那閃き踊り狂え、今宵罪人の宴なり、堕ちよ、堕ちよ、愚者の魂堕ち果てよ、永遠無限にたゆたいし、全ての力の源よ、我が魂のきしゅ、帰する場所にて根源に生まれ出でし刃よ、全ての闇を等しく滅ぼし、等しく無に帰す……えー、等しく無に帰す…………『闇』を我が前に示せ──
『あ、あ、あ、あ、あ、あ゛ぁ゛〜……ヤメテ……あのクソボケが……!!』
『レイン様!?』
『めちゃくちゃ詠唱してて草』
| 『……』 |
悶え苦しむレインもとい、焦焔将ダリル・ケイシーの懐剣、炎帝魔剣シリウスと対を成す一刃。という設定。
一体
いや正式名称は《フェンリル・ブロウ》なんですけどね、初見さん。
「貰ったぞ!!」
身長よりも大きいそのクソデカ刀身を振り降ろす。既に間合いは領域侵犯レベルの肉薄となっており、神の鉄槌を気取った一撃をセシリアに浴びせる──が。
「“
「なに!」
| 『でしょうね』 |
なんとレーザーを三角に結び形成したバリアにより、呆気なく無力化。
「やりますねぇ!」
「全然(有効打)入んねぇじゃねえか」
「三基に勝てる訳ないだろ!」
「おい剣、どうにかしろ」
「カスが効かねぇんだよ」
『おっとコレはァ! オルコット、咄嗟に機転を効かせたかビットを盾にした! 公式戦でも見たことの無い戦術ですが、これも新たな装備なのでしょうか……』
『装備というより、技だね。あの娘はBTの可能性に気付いている……だから応用も容易いし、BTレーザーだって"攻撃手段"に囚われず自由自在に操れるのさ。あやとりみたいにね』
『近接戦の対策も仕上げてきた、ってトコだな。にしてもビットで自己完結させる路線もあるってことか……此処に行き着くまで相当頑張ったんじゃないか?』
流石は最強の
『……うん。やっぱり一夏くんと白椿の
『……ミューゼルじゃあ力不足ってことかい? まぁ否定はせんけど。で、何企んでるんだ?』
『いやー、こっちの話』
『とにかく! こんな芸当が出来るのはまさしく彼女のブルー・ティアーズだけ! 無敵かぁ〜!?』
「まだだ! 私には
聞こえてはいないが、実況の私見を棄却するが如く。
無駄にしぶといのでタダでは終わらない。それがカリバー・セブンス。スカート・アーマーから覗かせた小賢しい二本の槍が、仕方なく応える。
「……BT兵器?」
「詠唱破棄! 来い、
モンハンかよ。
※セシリアが大して驚かない程度にはなんてことのない、ただのBT兵器《ランサー・ビット》です。
因みにマドカのBT適性はDを下回るので、マウント固定。操作不可能。射出しようものなら二度と帰ってこない超高級ボンクラロケットと化すだろう。
「フハハハハ! 我が暗黒の旋風でビットごと破壊してくれるわ!」
炎の竜巻が交差し、力づくでの発破を仕掛ける。イキりまくるがぶっちゃけジリ貧。
しかもプロミネンス・コートの出力が低下していることに、本人は気付いていない。ランサー・ビットのエネルギー増大に反比例して、プロメテウスの回転が弱まっている。
けれどセシリアは、敢えて。
その隙間を突くことはなかった──
| 『かかったな馬鹿め、食らえ卑劣斬り!! やっちゃいなよ一夏!』 |
「光、れぇッ──!!」
『お、来たね零落白夜。決まるかなぁ〜?』
『え』
『え』
「えっ何それは……」
「聞いてません」
「嘘つけ絶対嘘だゾ」
「えぇ……?(有り得ない) と思って倉持に問い合わせしたんですけど(クレーマー)」
『えぇ、零落白夜ですが何か?』
『…………な、何ということだァッ!? 織斑一夏のその手に持つ光は、誰もが知るあの伝説の妖刀、"零落白夜"だァーッ!!』
『おいおい、マジか』
究極の一刃、発動。
自らのシールドを生贄にして、全てのエネルギーを無効化するバリア貫通攻撃。即ち
| 『ん!? なんかあいつ笑ってるぞ!? あ、飛んだァ!?』 |
『オルコット、迎撃せずに垂直急上昇!! やはり零落白夜を前にすると、流石の彼女も逃げ一択となるかぁ!?』
触れてしまえば一瞬で勝負が終わる。故に、バックブーストで脱出したのは極めて合理的な選択だ。
おさらいになるが。競技性を破壊し尽くした零落白夜の脅威を知らぬ者など、観客を含めこの場に一人としていない。それは織斑千冬が退いた現在においても。
この生まれてはならなかった究極のクソ妖刀対策は、脳を焼かれた異常者共によって日夜研究・議論が交わされてきたが──結論は「逃げろ」で満場一致。
| 『いや逆にチャンスじゃんこれ! このままマドカを叩ッ斬っちゃえばさぁ!』 |
確かに。
急加速を乗せた一太刀は、プロミネンスコートごと真っ二つにしてしまえそうな勢いだ。
不本意か本意か、今度はマドカと一夏の一騎打ち、鍔迫り合いと──
「!」
「乗れ!!」
──否。
遠心力を乗せたフェンリル・ブロウを踏み台に、打ち上げ、再度加速する!
「なんで──」
『悪魔と相乗りしろ織斑一夏、我が愛機もそう言っている!』
| 『言ってません』 |
アドリブには咄嗟に乗ったものの。どういう風の吹き回しか、自らの愛剣であろうそれを足蹴りにさせた。
何を考えているのか何一つ分からない。が、この起点が一気に距離を詰める一手には違いない──つまりチャンスだった。故に、マドカではなくセシリアを。展開装甲による加速形態への変形・出力を全開。臆せずに突っ切る。
『グゥッレェェェイット! 白い椿の花言葉は"至上、完全"。ならば敵を穿つ必殺状態は天下無双! 名付けて──』
完成系展開装甲
《白椿・
最高速で必殺の一手を放つために最適化された、逆転劇の布石。オータムとの一戦で無意識に発動していた、
今、零落白夜さえ直撃すれば。
セシリアの敗北は決定的
「──ですがそれは、あなたの
──否、否。
この女、確かに笑っている。
絶対の雪片と零落白夜を携えていようが、関係ない。こちらに迫る前に
その証明のため。
銃口先に形成されたのは、三基と三基のBT──BT粒子を圧縮解放させる二重のライフリング・ジェネレータ。これで威力を
スターライトmkⅢは今、まどろっこしい奴ら全員を踏み潰す広域殲滅兵器と化した。
一夏が超えるべき標的はセシリア。
対するセシリアが下すべき標的も、無論、一夏本体。
これは我慢比べだ。けれど結構。
「個」を消滅させるべく振り翳す魔剣か、「全」を壊滅させるべく降り下ろす魔弾か──
セシリア・オルコットは闘争に乾いていた。誰のせいだか、誰がそうなるよう陥れたのか……つまるところ彼女もまた、ある種の「異常」に踏み入れた逸脱の類であったのだ。
| 『ヤバいヤバいヤバいヤバい! ヤバいよ一夏! 殺される!!』 |
「ッ! けど、俺は──!!!」
「“
シークエンス・コード『
後に『アフタヌーン・ブルー』と呼称されるそれは、零落白夜を遥かに上回る光の奔流。そして絶対防御を強制発動させる規模の極大粒子砲が、二人を包み込んだ。
「ぐわーーッ!!!」
……そう、二人。