我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
A, ISの劇中年が2022年だから
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「ふむ、おかしいな。おかしいぞ」
「あいつさっきから何ブツブツ言ってんだ……」
「近寄らない方がいいよ」
「私たちまで巻き添えになるしね」
「でもアイツ
「それは……そうなんですが……」
全ての従来兵器を無力化した強靭・無敵・最強のパワードスーツ、IS。
ベイブレードや超次元サッカー、デュエルモンスターズの如く、今やISこそが世界の絶体的中心だ。その大いなる力の資格者たちが、此処に集結している。
……本当に、女性専用車両ならぬ
そのために私は去年、国際連合が発表した『
私が所属する『Meusel Material』も、いち早く資金援助しているからな。公認アンバサダーとしては私や師匠が適任だろう。
……しかし中々、採用通知が来ない。
もう五回も応募したのだが、競争倍率がかなり高いらしい。*1
五次選考の通知は偶然にも、今日の9時から1時間以内──残念ながら、タイムオーバーだ。
だが私は諦めないぞ。
不屈の黒炎をナメて貰っては困る。
気長に粘り強く、時の激流に身を任せ。来たるXデーを待とうじゃないか。
「そうだな……2035年*2にもなれば、真の平等が実現するやもしれん。その日が楽しみだと思わないか、織斑一夏よ……む、いないのか」
任務遂行がてら、迷える子羊へ語りかけようとしたが……対象は既に、教室から失せているではないか。
この手はなるべく使いたくないのだが、仕方がない。窓際の隅っこから熱い視線で私の噂をしている、『良識あるファンたち』に教えを乞うとしよう。
「やぁ。そこで私を『視て』いる君たち、
「ひぇ!」
「終わり! 閉廷! 以上みんな散開!!」
「“What the silly ass goddamn bull
「クンナ! クンナ!」
──どうやら、このクラスは恥ずかしがり屋が多いらしい。
アラクネの子散らすが如く。私のサービスすら拒んで、ファンたちは逃げてしまった。
皆して、どこぞの感染症ガイドラインみたいな一定のソーシャル・ディスタンスを維持している。*4
まぁ無理もないか。
代表候補生とはエリート中のエリート。同じ屋根の下で相席するだけでも奇跡、それはそれは幸運なこと。我が生涯の好敵手ことセシリィも、よく口にしていたな。師匠だって絶大な人気を誇る余り、目が合っただけで気絶した奴がいたとも聞いたぞ。
「やれやれ。本部からの接触命令というのも、早急に片付けたいのだが」
我々は本来、孤独であるべき存在だ。
となればこの退屈も、私への試練の一つかもしれないな。っフフ。
今は束の間の休息時間だ。今後の作戦を練りながら、また『聖書』でも読み直すか……
「ふわぁ〜、っ。きょうもねむねむの顔で、しらけぎみ〜……およ、まどっきーだぁ〜」
「確か台湾代表候補の
ッ、何者だ貴様!?」
ふっはっ!
おいおい、余韻すら与えてくれないのか。反射的に
にしてもぬかったな。この私としたことが。策士であるこの私が。
死角からの来訪を予知できなかったとは。
「まどっきー、おもしろい格好してるよね〜。もしかして、おーだーめーど、ってやつです?」
「私が撒いておいた『伏魔の領域』*5に、土足で入ってくる奴がいるとは……久々だなこの感覚は──まさか」
ガイアが我に、新たな会敵の瞬間来たれりと囁いている。
この得体の知れない女は尋常ではない、危険だと。我が封印されし
「……先の答えだが、企業秘密だ。それよりも、この私が感知できなかったステルス……かなり手慣れの曲者と見た。だが私の『幻魔心眼』を以ってすれば、貴様の正体など手に取るように解るぞ──ほう。貴様、
あらかじめレッグポーチに忍ばせておいた、長年共に生きた愛刀を引き抜き差し向ける。
こちらは臨戦態勢万全だ。
「おぉ〜……」
青ざめたか、だろうな。
コイツは『幻魔界』において、数え切れない罪人共の血を啜ってきたのだから。ムラマサやオニマルといった妖刀というやつだな。こびり付いた亡者の気配を感じ取ったのだろう。
「さて、まずは名乗って貰おうか」
さもなくばこの『
「んーとねぇ、おりむーが『のほほんさん』って呼んでたから、のほほんさんでいいよぉ」
ノホ=ホン……『
「いかにも中東に潜伏する暗殺者らしき名前……ふん、読めたぞ。やはり貴様はあの組織──『
「……およよ〜? もしかしてたっちゃんさんのこと、知ってる?」
「『
『
暗部の情報は掴んでいたが、それがボスの
兎にも角にも。
IS学園に蔓延る『闇』をこの目で捉えた。
幻魔界から追いかけて早六年、ようやくその答えが見つかる。そして私の予測に、狂いはなかった。
──本来、公の場に持ち込むのは私のポリシーに反する。が、止むを得ない。決断の瞬間だ。
「貴様が組織の刺客なら──もう語るまでもない。正々堂々、『アレ』で決着をつけるぞ」
黒きシルクグローブを脱ぎ捨てた、我が右腕。普段はミューゼルが開発した特殊包帯で縛り付けている。
こうでもしないと、特級禁呪と謳われた第二の
ノホ=ホンも幻惑の構えを取った。とうとう尻尾を出したな、
闇を以って闇を切り裂く
「いくぞッ、つど──」
「あ、ちょっと待って〜」
「なんだ貴様、『
異能者の我々が対峙するに相応しき決戦の大舞台、『
しかも暗黒空間が垣間見える袖から魔導書を取り出しただと?
それとも、まさかとは思うが。今更この形式を「知らん」とは言わせないぞ。
「えーっと、ふむふむ。なるほどなるへそ。整いました。続けていいよ〜」
こけ脅しか、味な真似を──良いだろう、後悔させてやる!
「あいつここでISバトルやるの?」
「無断展開の報告してさっさと殺そう(退学にしよう)ぜ!」
「その必要はありませんわ」
「えっ……あっ、もしかして、オルコットさん自らが……!?」
「サスガダァ……」
「そういう意味ではなくて……文字通り『必要がない』、と言っているのです──
──だってアレは、
かくして、新たな闘いが始まった!!
アメリカ合衆国アトランタに聳える一大
それまで義肢や美術モニュメントの製造に注力していたが、2014年よりIS事業への参入開始。代表取締役はスコール・ミューゼルの『妹』。学園へ輩出した専用機持ちは現在、レイン・ミューゼルとマドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼルの二人。
しかし、武装開発支部長であるスコールが第三者に殺害予告を受けるほどの『マドカの度重なる国辱的未勝利によるライセンス及びスコア不振』が問題視され、現在ISコア再分配候補企業に上がっている。
保有ISコア数はナンバー010、079、096の三つ。
幻魔界。
それは、全ての生きとし生けるものに眠る潜在能力を覚醒させた──
すなわち『
……と、いうのは真っ赤な大嘘。
この世で唯一、
マドカ=ウォヴェンスポートが発した不可解な単語の羅列は、全て存在しないもので構成されている。
「私の背後を取った、その無謀と豪胆の紙一重……憎き敵ながら褒めてやろう」
「えへへ〜、それほどでも〜」
「だがその油断が命取りよ、覚悟しろノホ=ホン!!」
至極当然だった。
何故なら彼女は、弱冠14歳という中二の賞味期限が残っている上で、現実と夢の区別が分かっていない極度の厨二なのだから。
思い出断捨離療法等で治療しても、後遺症で苦しむ者が後を絶たないのが実状だ。マドカに関しては診察不能な、末期の最たる例。
因みに。
幻魔心眼とやらは合成鉱物アメトリンのような、彼女の瞳が由来である。
ひとつの瞳に色が混在する場合でも同じく定義されることから、彼女は世の厨二病なら誰しもが羨む『
「のほほんさんくろすちょっぷびーむ!」
「なにッ!? ぐあああああああああッ!!?」
──どうやら、もう決着がついたらしい。
いたいけな首筋が見え隠れする、タートルネック目掛けて飛び掛かったマドカであったが。全て本音、のほほんさんの術中。
鶴の構えからダボダボの袖を交差させた彼女が放つ、NGバツ印または存在お断りの見えないザナディウム光線によって。
マドカはその邪悪極まりない心身を、光の速さで聖水を顔射された吸血鬼の如く焼かれてしまった。
「お、おのれ……何故、だッ……」
「むっふっふ〜、まどっきーの負けで〜す」
空中で仰け反って、小刻みに震えて。
成人男性が真似すれば、間違いなくこむら返りを発生させる姿勢だった。
そして
「だ、だがこれは始まりに過ぎないぞ……ノホ=ホン、私というパンドラの箱を開けてしまった貴様は、必ず後悔するだろうよ……!!」
完全に第一話でやられそうな三下の演技だ。周囲は害虫を見るような目をしているし。
孤独を名乗る分際で誰よりも目立ちたい主人公ムーブを欲する割に、随分と真逆な噛ませ役に回りたいらしい。
「ねぇ、あいつの席の床に撒かれた白いの何?」
「覚せい剤!!(孫gong)」
「く す り ^ ~」
「やっぱりキメてんじゃねぇか……」
かくして、バニッシュメント・ディス・ワールドを丸パクリした妄想バトルは、呆気ない最後を迎えた。
直後、『
これ以上は頭の中が汚染されるので、マドカのボトルネックぶち抜き面子掘り下げもここまでにしておこう。
──遡ること、約八分前。
構内屋上にて幕を開けた、本当のはじまり。
「……えっと、久しぶりだな、箒」
「う、うむ。一夏こそ……」
手が届きそうで届かない、絶妙な距離で。
後ろ髪を掻く少年と、横髪を弄る少女。
焦ったい雰囲気を醸し出す二人は、この物語における本当の主人公だ。
あんな厨二病オリ主がしゃしゃり出なくとも、本来の『インフィニット・ストラトス』は勝手に歯車を回し始める。というのは置いて。
「もう俺たち、六年も会ってないんだよな」
「そう、だな。……厳密には、五年と十五日」
「えっ?」
「な、なんでもない」
人間の細胞は、六年で全て入れ替わるらしい。
つまりそれだけの歳月があれば、理論上は同じ人間でも全く別人に見える、というよくあるうらしま的な錯覚に多少の筋が通る。年頃になり、おめかしを覚え始めた女性なんかは特にそう。厨二病の発症も例に漏れないが。
(……まずいな)
(……まずいぞ)
両者、そっぽを向いて。
全く会話が弾まないことの、気まずさからなのか。否、もっと単純な答えだ。
(思ってた以上に幼馴染が美人になり過ぎてて、接し方がわからない件について)
(想像以上に幼馴染が男らしくなっていたので、正直直視できそうにない)
((どうすればいい???))
相思相愛の両片想いか?
公式敗北CP*9がよ……
なんて事実陳列罪に相当するちくちく言葉は、絶対禁句だ。
イマドキのラノベタイトルみたいな正に高校生並みの感想を渦巻く二人は、赤面のまま。
何とか静寂を斬ろうと、一夏が舵を取る。
「……そ、そういやさ、箒」
「な、なんだ?」
「剣道の全国大会、優勝したんだよな。お、おめでとう」
「!? なっ、なぜそれを知ってる!?」
「いやまぁ、ネットで見たと言いますか、新聞で見たと言いますか……」
二又のポニーテールを靡かせた大和撫子ガールこと
幼馴染で女らしからぬ武士口調で割とすぐ手が出るという、キレた爆鱗竜バゼルギウスと同程度に全身弱点だらけのクソデカ負け属性センターヒロインに与えられた特権だ。別段珍しくもなんともない。
「だ、だがっ、あの時の私の名前は、要人保護プログラムで……」
「見たらすぐ分かるさ」
「えっ?」
「へ、変な意味じゃないからな! こう、あの太刀筋というか竹刀捌きというか。間違いなく箒だって、俺、すぐ分かったよ」
「そう、か……」
だが織斑一夏はどうだろうか。
彼は果たして、こんな初っ端からヒロインに赤面するような、呆気なく幼馴染に靡くような男であっただろうか。
もしそうであれば、今世紀に渡り本当にホモに仕立て上げられる野獣のSSが出現するなんてそのようなことがあろうはずがございません。
本人からすればマドカに名誉毀損されたのほほんさんと同じく侮辱に値するのだが、実際の彼の性欲の程は裸の女を前にしてズボンの下でマグナムを形作れるくらいは残っている。
詳しくはサンデーGX版の第五巻を舐め回すくらい読んでみよう。Amazonなら大体607円くらいで売ってる。
「…………」
「…………」
「「……あ、あの」」
で、二人の会話は、今だに歯切れ悪い。
こうなればお約束、譲り合いの精神が発動するのだが。そこは一夏が「順当に」と全力全霊で譲り倒すことで、遅延が解決した。
ただし次に投げかける問いは──箒はかなり気まずそうではあるものの、口を開く。
「本当に、
「
「っ!」
「──が、正しいのかもな」
微塵の迷いなき、即答だった。
その茨を踏む覚悟をずっと、ずっと前から決めていた。
むしろその時が来るのを、待ち構えていたかのような。
「だって俺、他の誰でもない
「偶然じゃ、ない……」
「まぁ、俺がそんなこと分かるわけないけど」
その真意を知るのはきっと、箒の『姉』である
三年前の失踪後は指名手配を受け、絶賛海外逃亡を続けていると言われている。
現在の所在に関しては、『ドバイで隠遁しながら質疑応答でスパチャを稼いでいる』とか、『Twitterを開設してからラボの写真一枚だけで1000万のフォロワーを集めた』とか、『特に見所のないバトオペとかディアブロの配信を延々垂れ流している』とか、あることないこと言われ放題なのが現状だ。本題に戻ろう。
「こんな俺にも、強くなれる資格があるなら。必ずこの手を伸ばし切って…… 千冬姉が見た世界一の景色を、掴み取りたいんだ」
まるで、己の使命であるかのように。
頂点を標すであろう果てなき全空に、拳を掲げ。強く握り締める。
──けれど、彼の朱い双眸には。
憧憬や、純真といった無垢の輝きが
人は六年で別人になると前述したが、まさにそれだ。目の前で夢を語る織斑一夏は、
先まで頬を掻いていた少年とは全くの、別人の姿をしていた。
故に、箒は。
「まぁ、アレだよ。男として、家族の名前に泥を塗るわけには──もう次の授業か」
「あっ……」
「積もる話は、また後にしようぜ」
幼馴染として、その決意の根幹を尋ねようとしたが。残念ながら。
定刻通りの余計な予鈴で、遮断された。
「言い忘れてた。これからよろしくな、箒」
「あ、あぁ! こちらこそ、よろしく頼む」
とは言え、ふと笑いかけた彼の顔を見ると。
名残惜しさも即座に吹き飛んで、つい表情が緩んでしまう。
らしくないと、分かっていても。
…………。
酷く大袈裟かも知れないが、
「時を経て二度と会えないと思っていた彼と再会する」以上に、幸福なことなどないだろう。断言できる。
間接的ではあるが、姉がもたらしたISに人生を破壊されたのは事実。これまで一家離散を伴う監視措置を受けてきた。
生きた心地のしないその空白期を乗り越えた先に、こうして奇跡に等しい願いが叶ったのだ。一生分の願いを使い果たしたと言っても、過言ではない。
故に箒は、一夏の
この五年と十五日で。
一度は関係を断たれた箒が知る筈のない、同じ空白が恐らく。
見えない『何か』に、追い詰められたかのような。実体の疑わしい「何か」に囚われていることを、その瞬きに察した。
「……一夏」
揺れる陽炎。
再会できたことが、こんなにも嬉しいのに。なぜこんな、複雑な感情が湧き上がるのか。
彼の瞳を見て自覚した、心の奥の『不可解なつっかえ』を……篠ノ之箒は、拭い切れない。