我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
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非の打ちどころのない、憧れの的。
1000年に一度の美貌。
そして全ての嫉妬すらそのハンサムな甘いマスクと均整の取れたプロポーションを以ってガチ恋慕に変えてしまう、合衆国を代表するに相応しいスーパー・パイロット。それがレイン・ミューゼル。
スコール主導の軍隊教育を経た彼女は、『
それからはもう引火したガソリン、揺れたニトログリセリンだ。勢力図の制空権を圧倒的実力差で勝ち取り、爆発した支持のままトップルーキーの座に君臨していた。
コアナンバー010の
──ロシア代表の
学園最強の称号でもある生徒会長、及びそれに追随する上級生・教師陣で構成された機動部隊の総称。
学園に侵入した脅威存在との自由戦闘権限、並びに第三回モンド・グロッソより
ああああああああ
死にたい死にたい死にたい!!!
ただいま、レイン・ミューゼルが顔面流刃若火の悶絶少女と化した。
『英雄視された義姉の功績を最も容易く万象一切灰塵に帰した女』ことマドカと同じく、中学二年の頃までは。それはもう『厨二病』として故郷ワイオミング州にてブイブイ言わせては暴れまくった。
現在は羞恥の出口を求めて、頭の中でぐるぐる暴れまくっている。
「行かないのか、師匠?」
「……良いかよく聞け。その耳かっぽじってよーく聴け」
今までで、人生で一番ドスを効かせた忠告だった。
これはミューゼルがマドカに向けて啓示したミッションよりも、遥かに大事なことだ。
「その『カリバー』って単語、これから何があっても二度と使うなよ。絶対だ」
『ッ!?!?!?!?!?』
「だから何をそんなに驚いてんだよ」
「な、ならダリル・ケイシーという名は」
「それこそダメに決まってんだろーが!!」
口を滑らせた『ダリル・ケイシー』という名は、今やレインにとってはただの忌み名。そんな奴はこの世にいてはならない。
本人はシュウ・サウラみたいなノリで幻魔界での異名を生み出したに過ぎなかったが、恐らく死んだ後も墓場まで持って行くであろう、『後悔』の一つだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ師匠! まさか引退したというのか!? なら封印した『炎帝魔剣シリウス』の後継者は一体誰に──」
「声デケぇんだよバカタレ!」
そしてこれが『後悔』そのニ。
かつて二人で考案した、
「今日からおれは、『焦焔将ダリル・ケイシー』……さぁ、お前の名を聞かせて貰おう」
「わがなは『かりばー・せぶんす』……せかいのきんこうを、かげでまみもるそんざい」
「よし……おれたちは、人類の自由と──」
「へいわをまもる」
「「『
当時12歳のレインと9歳のマドカは、傘をぶん回しては飛天御剣スタイルやアバンストラッシュ、卍解やらサンダーストームヘリックスに興じたものだ。一生懸命ノートに必殺技を書き殴ったし、変身ポーズの練習なんかもやった。戻そう。
まぁお察しの通り、名乗りの由来は『
本来は第二次世界大戦期に発足され、約80年に渡り現代まで暗躍し続ける秘密結社──と、囁かれていたのだが。
マイクロチップが大好きな某陰謀論者の標的になってから、酷く滑稽で陳腐な御伽噺の存在になってしまった。それだけではない。
実はイルミナティやフリーメイソンのようなカルトはおろか……詐欺グループや貧困ビジネスやハッカー集団や無料漫画転載や商標登録や転売屋や企業wikiや公金チューチューのような悪意の塊から、『壺』といった極悪宗教団体に対してもこの組織名が一種の記号であるかのように濫用されている。逮捕された奴らは皆揃って『亡国機業』を自称するのだ。この世の終わりみたい。
したがってこんなご時世に名乗りを上げるマドカは、入管審査で「アイ・アム・ザ・テロリスト」と英検三級の阿保面で発信しているのと同義だ。
「……あのな、オレもう高三なんだぜ? お前の好きなキュアムーンライトだって高二で終わってんだよ。つまりもう封印したいんだ。何もかも終わり。流石のお前だってソレが理解できないパッパラパーじゃないだろ?」
「やけに怖い顔をしているぞ、師匠」
「こっちはお前が何時いらんこと言わんか冷やッ冷やなんだよ」
そして悲しきかな。
幼いレインもまた、都市伝説と囁かれた亡国機業を。悪を以って悪を制す、正義の集団と勘違いしていた。で、ご覧の通り。
見事高校生デビューを果たした彼女は、そこで初めて組織の実態を認知して。その思い出を虚無の辺獄に葬り去ったわけだ。まさしく失望と、卒業の瞬間であった。
「もう一回言うぞ。オレがダリル・ケイシーやらカリバー・フォースやらフザけた名前振りかざしてたのは過去の話だ。その口溶接されたくなかったら二度と喋るな。良いな?」
未来を左右する未曾有の隕石、地獄の業火、死人の復活、人の生贄、40年の暗黒めいた黙示録的地雷が降り注げば。
誰だって不穏因子の排除なり、釘の一本や二本ブッ刺したり抹殺したくなるものだろう。
洗っても擦っても永久に落ちないタトゥーをその身に宿したレインは、握り潰す勢いでマドカの両肩を掴んでいた。
「師匠」
「なんだよ?」
「後ろがガラ空きだ」
「あ? 何寝ぼけたこと言って──」
「せんぱーい!!♡」
「ぐぉぉぉぉおおおおおお!?!?!?」
故に。
背後から突進するひとつの影に、最後まで気付かなかった。
「ぐぁ、腰やった……腰を……」
「ひどいじゃないっスか先輩! せっかくの挨拶なのにうちを置いていくなんて!」
「そ、それはすまん……いつからいたんだ?」
「ずーっと後ろからつけてたんスよ、えへへ」
覆い被さり、そのまま抱き付いたままの小さな影。
半身不随になりかねない悪質タックルを受けたレインとは、随分と親しい様子だ。
「……あぁ、そうか。つまり敵の裏の裏をかいて、敢えて本名で活動していると。流石は師匠」
「も、もうそういうことに、しとくわ……」
いつまで自分の世界に入っているつもりだと。……いや、もういいか。
これがフィクションでなければ腰椎をぶち壊しかけた犯人に介抱されながら、レインは『彼女』を紹介してやる。
「……マドカは初めてだよな。こいつはフォルテ・サファイア。まぁ、なんというか……オレの
「その通り!!」
小悪魔的な笑みを浮かべるそばかすの少女、フォルテ・サファイア。2年2組。
公式戦開催地のアテネで知られる、ギリシャ代表候補生だ。そうでなければ、レインの伴侶など到底務まらない。
「先輩の愛しい愛しいハニーなんスよ。ねー?」
「ねー……じゃない。悪ぃ、ハズいわ」
「ノリノリじゃないスか。やっぱ相性良好ってことで?」
先まで年長者の威厳をぶち撒けていたレインだったが、すっかり夫婦漫才のリードにたじたじである。
黒い三つ編みおさげを結ったフォルテのリボンは、赤と青が交わりし紫。つまりレインのローポニーを結ぶソレと、お揃いのものだ。
実にカップルらしい、見事な仲睦まじき匂わせっぷりで──
「ほう、恋人か……」
「で、この子っスよね。先輩が言ってた──」
「えぇ、そうですとも。我が名は」
「
──今日はデカい声の罵倒が、よく通る。
マドカが顔を覗かせるも、口を閉ざしたレインは目を平泳がせ。ガン無視を決め込んだ。
「師匠? ……師匠、何故目を逸らす?」
「知らん。オレは知らん」
面子を見れば。
学園史上最強コンビで知られる百合の間に割って入る、酷く不躾な女。
祝福するが如き快晴のみ及第点の休日は、始まったばかりだ。
「えっ、なんスか今の」
「アイキャッチは必要であろう?」
「いらねーよ」
まだ戦っている様相すらロクに描写されていないが、アイキャッチにまで罵倒されている。
来たる実戦において、その蔑みは裏切りとなるのか。まぁ、遠くない未来の話だ。結果はすぐにわかる。
「……やっぱり死にたくなってきたな」
「穏やかじゃありませんね、師匠」
「おめぇがラブライブの真似事で路上ダンスした際にトラックに撥ねられかけたのを思い出したんだよ」
「良いなぁ、仲良いんスね二人とも」
最後の学園生活として、後釜の世話を兼ねた道案内をスコールに頼まれた訳だが。
はてさてこの厨二病をどうしてくれようかと、有効期限三年の矯正方法を考えあぐねていた。同じくかつて厨二病だったレインは、フォルテに貰ったタオルで冷や汗を拭きながらげんなりしている。
「先輩、水いります?」
「……あー、うん、もらう。サンキュ」
何せこいつは、一度目を離せば止まらない暴走ラジコンのような奴だ。しかも小バエの駆除に手榴弾を使うような奴だ。
何時ぞやの定例会食でも、ダンスパーティでも、あろうことかオルコット家主催のお茶会でもそうだった。何度叔母が頭を下げて腰を痛めたかわからない。
大体、公の場で効果音を口ずさみながらS.H.Figuartsテンペスタ*1片手に走り回るクソボケが何処にいるんだと。いた。
酷な話で、責任の所在──つまり尻拭いは決まって大人だ。
機関銃のような外野の罵詈雑言を。百戦錬磨であれどもう若くない一身に受ける
「で、師匠は何処まで進展したのです?」
「んあ、何が?」
「ッフフ、とぼけても無駄だ……やるべきことはもう全部やり終えたのでしょう?
星空の下でハネムーンとか、
聖なる泉の上でまぐわいとか」
「ブフゥッ!!!???゛・∵.゜」
気休めに貰った液体を二度も無駄にした。どうしてくれる。
盛大にみずタイプの技を吹き出した元来ほのおタイプのレインは、そのままむせてうずくまった。顔だけでなく、目まで真っ赤にして。
「せ、先輩!?」
「ヴェ゛ェッヘッ゛、ェ゛ッヘッ、ざけんなお前……
ン゛ン゛……!? ヴェッフェェッ!!!?」
死霊の雄叫びのような酷いむせ方だ。
これが食い物だったら、全部吐き出している自信がある。
「失礼、図星だったか」
「……ン、ン゛ンッ!! ……や、逆だよ。てかこんなこと朝から言わせんな」
「うちは別に気にしないっスよぉ。だって既成事実は見せつけてこそなんで、こんな風に」
「!? おいちょちょちょちょ待て、待て! 今はダメだって! 汚ねーぞ!」
「え〜」
「いや、『え〜』、じゃねーから!」
更に起き攻めでノックダウンさせようとした主は、フォルテ。
その身長差からは想像できない腕力で、突如レインを引っ張り、自分の顔まで近付けて──言わずとも想像がつくだろう。寸前で拒絶されたのだが。
これが元・学園最強と謳われた彼女の現在にして末路だ。惚気の塊である。
危うく義妹が見ている前で、最強リザードンを蹂躙するが如く。カピカピになるまで絞り吸い尽くされる*2ところだった。
「ぶー、先輩のけち」
「そっ、そういうのは二人だけの時に、やるもんだろ、もう……」
「じゃあ今夜は覚悟っスね」
意外にも、攻めはフォルテらしい*3。
「師匠がそこまで奥手だったとは……」
「……まぁ、
「結構真面目なんスよ、先輩は。それでいてうちのことを大事に大事にしてくれる、優しい未来のフィアンセなんス」
それはそれはもう氷のお城のような、重度の箱入り娘故に、だ。
家元の許しが出るまで決して手を出さないよう、レインは心臓に誓いの剣を立てていた。
付き合って半年近く、フォルテもそろそろ焦れったいようで。が、こうして腕にしがみつかれようが、柔らかいソレをわざと擦り付けられようが、めちゃくちゃ我慢強い。
多分男だったら生理現象には抗えないので、女で良かったと心底痛感している。
「こう見えてプラトニックな関係を心掛けてんだよ……え、えっちとか、まだしてねーし……」
「なにっ」
そしてこれが理性の証明。
まだ“mouth to mouth” までしかしておらず、“fuck each other” なんて以ての外。
ミューゼル式の三半規管強化訓練よりも遥かにキツい、生殺しの拷問であろう。
「なんと嘆かわしい……それでもカリ」
「だからその話するなっつったろブッ殺すぞ」
「『カリ』ってな〜んのことっスか?」
「!?!?」
非常無心で口を滑らせた命令全無視クソ野郎の胸ぐらを掴んでいると、フォルテがひょいと割って入った。
悪意のある言葉の切り抜き方は、まるで下ネタに一喜するありきたりな貞操観念逆転女子に見立てたような。
「え、えっとだな……かり、そう! 狩り、この後『ひと狩りいこうぜ』って話だよ! こ、今度モンハンの新作*4出るから、ゲームしたくて仕方がねぇんだとよ、は、ハハハ!」
「マドカちゃんモンハンやるんスか?! 丁度金冠集めまだ終わってなかったんで手伝って欲しいっス!」
で、頭をフル回転させた結果。
マーヴェリックの操縦並に、クッソ強引な話の曲げ方だ。しかも何故か回避に成功している。
「なら三人でやるしかないな。こんなこともあろうかと、モバイルモニターとキャプチャーボードの予備を四人分用意してある。つまり全員大画面だ」
「あぁ良いっスね〜」
「……こいつすぐ三落ちしてクリアどころじゃねーから、一応言っとく」
あっっっっぶねええええ!!
モニター+キャプボ四台持ちとなると色違い厳選異常者かと疑うほどの用意周到さだが、またしても。レインは心の奥底で叫びたがっていた。
それもその筈。初めての恋人にだけは、自分の黒歴史を知られたくない。何ならバレた瞬間に中退してもいいとすら思っている。
最悪の場合が訪れた暁には──
──なんてことになりかねない。
原作10巻61ページみたいな絶望顔でドン引きするフォルテの顔が思い浮かぼうものなら、その時点で既にマジでBADな地獄である。死んだ方がマシ。
「ねね、マドカちゃん。なんか今日の先輩、具合悪くないスか?」
「無理もない。敵の気配を常に察知し続けているのだ。来たるべき闘いに備えて……」
「はえー……」
まぁフォルテはフォルテで納得してくれたようなので、暫くそのような災厄は訪れないだろう。多分。
「……あぁそうだ。お前のクラス、伝説の山田パイセンいるだろ」
「副担任のことか?」
「マジですげーからなあの人。オレ、リスペクトしてっから。教師になってなかったら、去年のヴァルキリーはあの人以外に考えられねぇ」
「なんだと」
なるべく黒歴史から遠ざけようと、話は変わって一年一組の副担任について。
妙に子供っぽいダボッとした黄色いワンピース姿、それとズレた眼鏡から、どちらかといえば頼りにならなさそうなルックスをしているが……人は見かけによらないというもの。
齢20を迎える今年から副担任として、千冬の補佐をしている山田先生だが。彼女は元・日本代表候補生である。しかも千冬の後釜になる一歩手前だったらしい。
は? 高校の教員免許がそんな歳で取れるわけねぇだろガバガバじゃねぇかという野次が飛んでくる頃合だが、一応。IS学園の教員免許取得は理論上18から19が最短だそうだ。アラスカ条約云々で定められているとか何とか。知らんけど。いくらでも言い訳は考えてやるからこの拷問を受け入れろ*5。
「山田先生は『
「『
「……絶対、ニュアンス間違ってるよな」
後日、輝かしい異名が1年教室にて言いふらされることが確定したところで。本人はなるべく隠したいらしいが。
「ところでなんでパイセン呼びなんスか?」
「一番乳でけーじゃん」
「うわー単純」
「とにかくお前も、あの人を敬えよ。甘く見てるとイタイ目見るからな……着いたぞ、ここだ」
フォルテが隣にいる故か追っ手も現れず、無事に最初の目的地に辿り着いた。
第六アリーナ。
位置的には新第一アリーナのすぐ近くで、高速戦闘機動訓練──毎年九月に開催される市内レース用の設備が整っている。地下は学園中心のシンボルタワーへ繋がるトンネルも増設されており、『最もカネの掛かったアリーナ』と揶揄されることも少なくない。
上級生の御用達ということもあって、専用機のテスト飛行には持って来いの場所だ。
「ほらよ、ちゃんと整備班に挨拶しな」
「おぉ……おぉおぉおぉ! 素晴らしい、これが我らの拠点……『ヴァリアント』……!!」
「そんな大した名前付いてねーよ」
子供のように目を輝かせ、無邪気に駆け回りはしゃぎまくるマドカ。
本来、一年は自由な出入りを許可されていないが……
特に優秀極まりない代表候補生の場合、企業スカウトや代表試験等でアリーナの利用が優先されがちだ。三年に至っては最も実戦向きの第六アリーナで、あらかじめ専用機を待機させているのが殆ど。ついでに専属の整備班も移動させている。
「ま、お前の専用機も頑張ったら、ここで手厚く面倒見てもらえるさ──」
「お疲れ様です、レインさん!」
「フォルテさんもご無沙汰してます!」
と、丁度向こうから出迎えてくれた。
レイン曰く、筋金入りのファッキンISナード共。休みの日にも関わらず、学園一を誇っていい自慢の整備チームが揃っていた。
「よう、オレの相棒どうなってる?」
「この通り、バッチリだよ」
無論、レイン専属の整備班は二・三年で構成されており、首に掛けた名札を見れば大体わかる。赤色の帯が三年で、黄色い帯が二年。
そしてその背後で……『一年』を示す青い名札を提げた二人が、物凄く申し訳なさそうにこちらを見ていた。
──否、二人だけじゃない。
「あの子たちは?」
「あぁ、先輩にも紹介しますよ」
活発そうな青髪の子と、逆に運動とは無縁そうな……言うなれば、のほほんさんのような雰囲気を放つ、黒髪の子。
二人とも、レインを目の前にしてガックガクだ。
「うちの新入り内定。整備科志望の京子ちゃんと、フィーちゃんです!」
「「は、初めましてっ!」」
目線が全く合っていない。それもそうか。
何せ、文化祭に催される『ミス・インフィニット・ストラトス』を、勝負にならない得票差で二連覇した後に
「この子たち、もう二級資格持ちなんだって」
「う、打鉄とラファールを弄るくらいなら、出来るでありますっ!」
「お、おなじくであり、ます〜!」
特別に招待されたということは、相当期待されているのだろう。
プレイヤー志望でなくとも、IS知識は候補生にも劣らない。まるでIS博士だ。機体のセミスクラッチやチューニングなんかではこの先、下級上級問わずお世話になるはずだ。
「へぇ、そりゃ将来有望だな。今のうちにオレのカッコいい相棒、たっぷり見とけよ」
「良かったっスね。コレ写真とか撮ったら高くついちゃうから、たっぷり拝んでおくと良いっスよ」
「おいおい売りもんじゃねーんだぞ」
「っふふふふふ……これが師匠のIS……また一段と改造を施したようだな」
「あー言ってる側で撮ってら…………
で、まだいるだろ、
そろそろ出てきてもらおうと、格納扉に向かって声をやった。
実は
「…………えー、ばれちゃいましたぁ……」
「あぁー! 探してた『気配』ってこの子たちっスか。流石は先輩……」
多分違う。
観念したのか、影からひょっこり出てきたのは小さい狐……ではなく。初日のマドカをお手玉にしたのほほんさんと。
「ほらかんちゃ〜ん。恥ずかしがらずにぃ〜ふにゅにゅにゅにゅぅぅ……」
「ちょっと本音っ、ひっぱらないで……!」
「もう〜シャイだなぁかんちゃんは〜」
「だ、だってレイン先輩も、いるから……その」
水色の髪に特徴的なヘッドギアを付けた、眼鏡の少女。
しかし、ややこしい奴がここにいる故、挨拶も束の間。のほほんさんに気付いたマドカが、またもや
彼女は今だに、超能力因子保管機関の刺客。
厨二病にとっての宿敵だ。
「やっほ〜まどっき〜」
「ノホ=ホン!? 貴様ァ、何しに此処へ来たッ!」
「貴様呼ばわりすんなアホが、マジ失礼だぞ」
「アダッ!」
第二ラウンドを許可なくおっ始めようとしていたが、恐ろしく速い縦チョップで強制終了した。
レインの
「んで、誰かと思ったら
「あ、ああああああああの、わわわわわわ私」
「とりあえず落ち着こう、震えすぎて作画崩壊してる」
彼女の名は
1年4組、日本代表候補生の
「本音ちゃんも来てたんだね〜」
「もとかいちょーの挨拶は、ふぃっふぃーに先越されちゃったけどね〜」
「ん〜、癒し系枠三人目っスか……」
「……あと一人は?」
「え、ここにいるじゃないスか」
「えっ」
「えっ?」
それまで彼女の情報、ましてや存在は。
時折、指定暴力団と疑われた戦国から代々続くと云われた名家更識の秘蔵っ子故か、一切明らかにされていなかった。
それが一夏の適正発覚を撃鉄としたのかは定かでない。が、日の丸を白星に返り咲かせるという『栄光の再起』は、誰もが望んでいること。家元の命を受け、満を持して現れた。
その先の道は
「……そうか、君があの更識家の。だがノホ=ホンと絡んでいるということは、グルなのか……?」
「お前ちょっと黙ってろ」
「……あなたのことも、よく知ってる」
「!! ……っフッ、いや、何も驚くことはないか。暗躍とはいったものの、こうして表舞台に出てしまえばそう分析せずとも──」
──Wikipediaより、引用」
へ へ
イ ・
ト ・
ス ・
ピ ・
ー ・
チ ・
・ ・
・ ・
・ ・
突然ミニガンばりの事実陳列罵倒を一言一句寸分狂うことなく放ったものだから、のほほんさんと言われた本人以外の一同が絶句していた。
この女、この中で一番控えめな立ち回りなのに一番容赦ない。
そして残念ながら、全て本当のことだ。ニコニコ大百科にほんわかレス推奨と記載されるだけのことはある。
おまけにマドカ本人ではなくマドカの異常狂信者がコメントで自演したせいで大炎上したこともあった。悲しい事件だったね*8。
「よもやそこまで私を検索していたとは……流石だな、更識簪。よき
「……正直、あなたのことは嫌いじゃない。……ちょっとだけ、勇気とか分けて貰ったし」
「うんうん、それとまどっきーはねぇ〜……んーと、なんだっけなぁ…………ぁ! 『かりかりのてんむす』なんだよ〜」
「??????????」
恐らくのほほんさんは、簪に「カリバー・セブンス」と言いたかったのだろう。全く伝わっていないが。
「それって美味しいんすか?」
「あー乗るな乗るな」
「美゛味゛し゛い゛ぞ゛!゛!゛」
「おめぇもリュウソウレッドの真似しなくて良いんだよ」
「レイン先輩も、特撮観るんですか……!?」
「…………あっ。ぁっ──ッスゥゥゥゥゥ、た、たまたまな。テレビつけたらたまたまやってたんだよ。うん」
「い、今やってる、ドンブラザーズとかは……」
「……面白いって、ネットでよく見るよな」
※プリキュアも仮面ライダーも戦隊も全部欠かさず観てます。理不尽な放送延期にもマジギレしました*9。サンダーゲイル大好き。……違う、そうじゃない。
しまった、と。内なるレインは両手で頭を抱えた。
無理のある誤魔化し方は、親に部屋を見られてオタク趣味がバレた息子のソレである。悪夢そのものだ。
「あ、あの……良かったらここにサイン、貰えますか……?」
「あっ、あぁ。いいぜ、そのくらいなら」
……ファインプレー、簪嬢。
活路を見出していけると踏んだのか、推しであろうヒーローのステッカーがぺたぺた貼られたケースから……某林檎マークのタブレットを取り出した。
「直接書いて頂ければ……」
「えっいいのか?」
なんかこれもジョージ狩崎が使ってそうだなと思いながら……うわ、しかもM12proチップモデル*10だ。高いやつ。
快く受け入れる以外の選択肢がなかったが、まぁ、昔話の打ち切り料と思えば安い。簪がサイン用にと渡した金色のマーカーを走らせ、ひと想いに刻印してやった。
「──、よし。これで良いか?」
「〜〜っ!! ありがとう、ございますっ! 一生、忘れません……絶対に……!!」
感激のあまり泣きそうになっている。
いつの間にか、レインは簪にとっての『ヒーロー』となっていたようだ。
そんな経緯もあって、簪も例に漏れず。
憧れのレインを目標として、殻を破る努力をしながら日々研鑽していた。心臓が張り裂けそうなのを抑えて、内気な自分を変えるために本人へ突撃したのだ。
「で、では私はこれで、失礼しますっ……先輩、これからも応援してます! いつかお姉ちゃん倒してくださいっ!」
「あっ、まってぇかんちゃ〜ん! 整備の紹介終わってないぃ〜! あ、ばいば〜いまどっきー、また明日〜」
「ふん、敵同士というのに馴れ馴れしい奴だな……残念だが、私にハニートラップは通用しないぞ」
「お前が一番馴れ馴れしいわ」
言いたいことを吐き出し終えると大きく一礼し、照れ隠しなのかそそくさと去ってしまった簪。超スロースピードで追い掛けるのほほんさん。
しかしこのままでは、『アンチのほほんさん』なんていうIS二次創作で有り得ないタグをつける羽目になりかねない。どんなオリ主だ。白い篠ノ之束ですら理解に苦しむだろう。
「……じゃあ、次行くか」
「そっスね」
「っフフ。次は何が、私を楽しませてくれるかな。なぁ、カリバー・フォ──」
「てめぇ死ぬまで焼れたいらしいな」
珍道中は、もうちょっとだけ続く。
.
なおこの後メル・ゼナのamiiboが亡国機業の手によって高額転売されるのは言うまでもない