我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
3月:引越し→4月:インフル→5月:資格試験
6月:古戦場(?????)→7月-8月:C102
ということでいつもの如くまたコミケ出てました。なんとお陰様で売上が過去最高とのこと(隣で集計してました)。これがISの底力かッ……
ちなみに次回冬コミはIS2期10周年本──!!
【宣伝:ISのえほん梅(サークル主TwitterXリンク)】
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セシリィ
ここはわたくしの
どいてくださる!?
マドカ
いいや私だな、君にはまだ早い。
セシリィ
わたくしですわ!
マドカ
私だ。
セシリィ
わ・た・く・し・で・す!!
マドカ
……フッ、だったら決闘で決めようじゃないか。
みんなも、この後の代表決定戦を期待するといいぞ、首を洗って待っていろ。
セシリィ
望むところで──お待ちなさいそれでは今後の趣旨が変わって
マドカ
さぁどうなる第三話!
セシリィ
“
「……はぁぁっ…………っ」
4月4日。早朝、5時30分。
公園区画をなぞるジョギングコースを、明けの桜が手招く。
生真面目な常連含むその僅かな人影の中で、深い呼吸を駆け足に重ねる少年が一人。
織斑一夏。世界唯一の男性IS資格者。
「見て、あれ一年の織斑くんだよね?」
「がわ゙い゙い゙な゙ぁ゙い゙ぢがぐん゙」
「もう(我慢できないから)行っていーい?」
「ダメです」
「ハァ~?オマエガサキイッテドウスンダヨワタシガゼンゼンキモチヨクネェジョンヨ」
彼の朝は、どの新入生よりも早かった。
基礎体力をつけるルーティーンは入学確定段階から、否。それよりもずっと前から日常に組み込んでいた。入学当日すら変わらず。
そうして何時しか、目が覚めれば勝手に。彼の身体は走ることを求めていた。何の因果で、幼馴染と相部屋になってしまった次の日も、そして今日も抜き足で。
ある種の逃避なのかもしれない。けれど。
後先何も考えずにただ、ひたすら。
「…………っ、ふぅ、っ」
そう。
今日から本当に始まってしまうのだ。
自分以外女しかいない、生理的地獄たるこのIS学園での生活が。絶対英雄を目指すための、確固たる一日が。
故の高揚、それとも焦燥か。いつもより、呼吸のペースが乱れていた気がする。必要以上に力んでいた。
「あ、織斑くんだ。織斑くんすき」
「でも好きな子いるらしいよ。諦めるアル」
「は? 誰だよ(半ギレ)」
「知らなーい」
「…………」
手合いは眼中になく、汗を拭う。
一度呼吸を整えて、振り払うように。また走り出した。
学生寮周辺のみになるが、自主トレのコースになりそうな場所は大体把握した。
島の一画なだけあってか、広さも誇らしい。『何でも出来そう』、といった具合だ。
(……にしても、昨日一昨日と色々ありすぎたな……)
1025。同室はまさかの箒。
開けた瞬間に
結局は罰として、後日。図書館でパシリ役を一日中やらされた。『ISについて調べたいことがある』なんて、やはり流石はISの母たる篠ノ之束の妹だと感心したりもした。
一夏も勤勉な(と思い込んでいる)箒に負けじと、国家代表の試合アーカイブから調べてみたのだが……パンドラの箱を、開けたような気分だった。
空に交わった戦乙女の姿。
国の威信を賭けて闘争に興じた、激動の姿。
そして、それらを捻じ伏せた──姉の姿。
無論、その中には。
想い半ばで、倒れる者が。
思わぬ不運で、夢が潰えた者が。
意に反して、再起不能と下された者が。
穿った見方をするなら──全戦無敗・絶対の二冠を掲げた織斑千冬が、皮肉にもそれらの悲劇をもたらしたと言える。
けれど、それが摂理だ。
敗者なき勝者など存在しない。
それを体現して見せた千冬のように、全てのプレイヤーが花々しい成果を飾り、全人に讃えられるなんて──
当然、ISマイスターにも選手としての寿命がある。
それでもなお、自らの誇りのため。祖国のため。夢のために。挑んではまた、無情に消えていく。
執念の躍動に魅入られた一夏は、命を燃やすかのようなその熾烈模様に。終始絶句していた。拗ねた箒にしばかれるまで。
今まではこっそり録画しておいた、千冬の試合しか観た試しがない。視野が狭かったと痛感している。
(けど……俺もいつか『あの空』に立ちたい。千冬姉みたいに)
だからこそ、一日でも早く。
ISに相応しい──
目的は、夢は、誓いは。その先にある決意は。自らの心を突き動かす。
故に、異常とも言える強烈な英雄願望を抱く一夏にとって、今は。立ち止まるわけにはいかない。
「あ、織斑くんだよね? おはよっ」
「おはよぉ〜ふぁぁ」
「……えっと、相川さんと如月……さん、だっけ?」
と、そこに。
同じクラスの相川清香と、彼女のルームメイトである
方やハンドボール部、方や登山部志望とのこと。早朝のウォームアップが被っても、何ら不思議ではない。
「そういや織斑くん、部活とか入る予定ある?」
「……あー、全然決めてなかったなぁ」
「じゃ、じゃあハンドボール部とか、どう、かなっ」
正直、部活に関しては何も考えていないのが実状だが。フリーと聞いた矢先に、相川がもじもじし始める。
『ひょっとしてトイレにでも行きたいのか』とかデリカシーのない疑問符を浮かべていると、如月が耳打ちした。
「そんなに深く考えなくていいよ。キヨちゃんが君のこと狙ってるだけだから」
「ちょっ!?!? なななな、何勝手に変なこと言ってるのさ!?!?」
「あれ興味ないの? さっきすごい勢いでアタックして良いか了承取ってたじゃん」
「い、いや、それは……じゃ、じゃあサラちゃんはどうなのって、話になるけど?」
「予約が埋まってるって聞いたけど」
「え」
「ええ」
こう、ピシッと。
何かが割れる音がした。
「そんな…………ソンナ……」
「ソーナノ」
相川さんの全ステータスが下がった
相川さんのやる気が下がりまくった
相川さんは「偏頭痛」になってしまった
「慰めてやるから元気出しなって──ん? ねぇ、あれミューゼルさんじゃない?」
「うぅ、全然励ましになら…………えっ?」
意図も容易く轟沈した相川に、助け舟を差し伸べようとするが。如月の視線は後ろに90度近く曲がっていた。
こんな時間からあの厨二病が? 無い無い。寮からここまでの移動時間を加味すれば、あいつの漆黒時間込みの計算と噛み合わない。遅くても21時には寝ていることになる。
そんな品行方正なお子様のような規則正しい夜など過ごしている訳が
「いやいやサラちゃん、流石にあの子がこんな朝早くに──」
「いやだって、ほら」
鳴らない言葉を
もう一度描いてェェェェェ!!
い た 。
……とりあえず一夏ら一同は。
世界中に反省を促された、そのひと筋の閃光を見なかったことにした。
せっかく予習しようと思っていたのに、ペンが進まない。朝の多分マドカらしき人物の謎ダンスが、頭から離れないのだ。
まぁ2021年のインターネットミーム頂点に輝いたわけだし、強烈な印象を植え付けるのも仕方ないね。*2
お蔭でイナーシャルキャンセラーとかアクティブなんたらとか広域うんたらとか、今覚えようとしている用語が何一つ入ってこない。
やはりこういうのは、「私を呼べ」と言ってくれたマドカ本人に聞くべきか。……いや、余計にあの謎ダンスが邪魔してきそう。となれば箒か、最悪あのイギリス──
「ほう、勤勉なのだな」
「ぅわぁッ!!?」
噂の主が急に出てきたものだから、一夏はデカ声で飛び退く。そういやこいつの座席は一夏の隣だった。
今度こそちゃんと白い制服を着た、『近い将来生徒会をも敵に回すであろうIS学園第一級監視対象』ことマドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル。
ぶっちゃけこいつは一夏にダル絡みをしている場合ではない。最悪、退学どころかお縄を言い渡される可能性があるからだ。*3
箇条書きが乱立した彼のノートを、舐めまわすように眺める。するとまたもや、分かり切ったかのような口振りで紡いだ。
「決して挑戦を恐れず、精神の向上を失わないその姿勢……フッ、中々いい心構えだ。我ら
「────」
何なんだ、その上から目線は。
言うまでもなく、セシリアは心のドアを施錠しているのでガン無視。目も合わせない。同じ空気を吸うことそのものが、屈辱的な拷問。
「で、随分とうなされていたようだが……何か分からないことでも?」
「……正直、何も」
「なるほど、これは重症だな」
「…………はぃ」
クソカード診療所のような宣告から、しれっと一夏の机の角に腰掛けている。足浮いてるし。
クソデカペンタブレットのようなやたらガチャガチャした机の見た目はともかく、確かに丁度ケツ置けそうな絶妙な形だ。が、周囲の生徒はマドカへの殺意を顕にしているぞ。
「なんで織斑くんにベタベタしてるんだよ、お前ノンケか?」
「田舎(ワイオミング)少女はスケベなことしか考えないのか」
「死にたいのか?」
「この野郎醤油瓶……!!」
「朝敵に討たれろ」
とまぁこのように、マドカの評判は海を空を超え、世界中に遥々と知れ渡っていた。
流石、今年でアンチスレが1040件に達しただけのことはある*4。
そもそも、こいつが変な踊りさえしなければ良かっただけのこと。
「ふむ。少し待ってろ……よし。君にこいつを授けよう。私からのささやかなプレゼントだ」
苦悶を見かねたマドカは、すぐ隣の自分の机から使用感のある古びたノートを取り出した。
「私の師匠──レイン・ミューゼルは君も知っているだろう? 入学式で謝辞を述べた生徒代表の」
「──とまぁ、形式的な挨拶はここまでにして。歓迎するぜひよっ子ども。改めて、レイン・ミューゼルだ。これからお前らに守ってもらいたい約束が三つあるから、よーく聞いとけ。まず──」
一夏は思い出す。
金色の髪で、自分と同じデザインの制服を着た碧い目の。
やや粗暴な口調でありながら、周囲の女子生徒を一瞬で虜にした……元・IS学園最強。
「これは師匠のお下がりになるが……座学から実践まで、ISに必要な知識は大抵そこに書いてある。記憶しておくといいぞ」
「お、おう……サンキュ……」
フィンガージェスチャーを用いらなければ二分も会話が持たないマドカは、こめかみに指をトンと。煽ってんのか。
一応、彼女の落書きでない……というのはなんとなく一目でわかった。
「……おぉ」
──なるほど。
青で書かれているのはその方が覚えやすいから……なのだろうか。聞いたことはあるが真偽は知らん、が。
確かに元・学園最強の直筆なだけあって、自分のような極東面の猿でも分かりやすいまとめ方だ。物凄く失礼だが、マドカが書いたとは到底考えられない。
シールドエネルギーのダメージ計算式やら
皆してこの為に。わざわざ世界標準と化した日本語を学んでいると考えると、何かこう、感慨深いところがある。というのは置いて……時折、ページの角や隅に。
こいつが追記したであろう、謎の呪文みたいな落書きが気になるところだが。それも置いておこう。
「──こほん。わたくしも拝見して良くって?」
「!」
「ごきげんよう、織斑一夏さん」
と、そこに現れたのはセシリア。
一夏に対する営業スマイルは相も変わらずだが、憎きマドカが突っ立っているというのにどういう風の吹き回しか。
「おはようセシリィ。やはり私のモーニングコールが恋しいか」
「かのミューゼルさんが残した手記とは、コレのことです?」
「あ、あぁ、はい……」
やはりガン無視だった。
一夏が恐る恐る手渡すと、持ち主の了承なくパラパラと捲る。食い入るように見開いたかと思えば直後に眉をひくつかせたりと、手短ながら忙しい様子。
異様な集中力を無駄に発揮して瞬く間に読み終えると、またマドカをちらと見る。
「どうだ君も参考になったろう? まさに
誇らしげに最後まで言い切る前に。
セシリアはブリティッシュ由来の皮肉たっぷりの意を込めて、そいつを閉じて返すと。
「──“
豚に真珠、猫に小判、馬の耳に念仏。
最悪の現代語変換をするなら、『マドカにIS』が適当だろう。
文句のつけようがないこれほどの代物を携帯しておきながら。ミューゼルの英才教育を施されている筈のあいつが。公式戦においてあのザマなのが、まっっっっったく理解できない。
“
“
「君の戦いをずっと近くで見てきた。それが逆境超えし者の境地とやらだな、感服に値する」
「!」
「だが私も、自由の国の申し子。同じマイスターのライバルとして、私は私の『究極』を目指すつもりだ……無論、負けるつもりはない」
「……わたくしも、同じ気持ちですわ」
今や穢らわしい、手を交わしたあの日。
思い返せば、これが全ての悪夢の始まり。最悪の初対面だ。ミューゼルだからとまんまと騙された。
──本来なら。
崇高の頂を目指す自分にとって、申し分なき最高の好敵手と……なれたかもしれないのに。
「──ということだな。君も孤高でありながら組織に身を置く『
「もし差し支えなければ、ですが。何が分からないことがあれば、わたくしが教えて差し上げますわ。そこの宇宙人と違って、わたくしはれっきとしたエリートですから」
何度公式戦で滅多討ちにしたか、ぶちのめしたか。それでも次は、次は、次こそはと。散々裏切られてきたのだ。
今更何を期待しようと、時間の無駄なのは承知している。故に。やはり悉くガン無視。
改めて事実を叩き付けるが、セシリア・オルコットはマドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼルが大嫌いだ。
弱いくせに強者を気取る。
無知なくせに媚をへつらう。
学習しないくせに御託が多い。
そして此処に居座るくせに、気高く在ろうとしない。
最も気分を害した、吐き気を催す邪悪の必要十分条件全てを兼ね備えた、ただ一人の女。それが目の前の、無意味な自分語りを続ける世界の面汚し。
そんな救いようのない業人を尻目に。一夏は刹那の思慮のち、再び口を開く。
「一つ、ある」
闇中、線光を引くようにふと思い浮かんだ疑問。
素直な応対を前にされては、清涼剤を浴びたが如き晴れやかな気分となる。セシリアは入学初日のように、続けさせた。
「なんでしょう?」
「
どんがらがらがっしゃーん。
そこは「代表候補生」じゃないのかというツッコミはさておき、教室にいる全員がずっこけた瞬間だった。
「……そ」
「そ?」
「それは本人に聞いてくださいなッ!!」
「すみません」
丁寧極まりないフラグ回収。天丼大盛り。
なんかここに来てからずっと謝っては仕切り直してばかりな気がする。
確かに残念ながら、DYNAZENONの存在しないサブタイトルみたいな疑問の答えは。他人に聞いたところで疑問が増殖しやがるだけだ。
「……ん、ん゛ん゛っ!」
「はい、息を吸って。心を込めてもう一回」
「じゃ、じゃあ」
となれば、伺いは一つ。
「
────蒼き双眸が煌と。
やはり、あんな奴とは違う。
強さを直向きに、見えない答えを愚直に求めようとする、その熱を帯びた眼差し。
性別など関係ないのだ。『男の分際で』と非生産的バイアスをほざく輩もいるこのご時世で、彼は……そう、これだ。これこそが。セシリアの好む、強い人間の『瞳』。
だから
血筋を見れば瞭然、相手として不足無し。鞍替えするには満を持した頃合いだろう。
「……ふふっ。至極、簡単なことです」
蒼き双眸を輝羅と、
何も難しい話ではない。ISだろうがそうでなかろうが、全て同じこと。何時だって勝負の世界は──
「同じ志を持つ敵を全員蹴落として、『代表候補の
── “KILL or BE KILLED.”
『蹴落とす』か『蹴落とされるか』の、二択なのだから。
「あぁ、それと。わたくし達の土俵に立つおつもりなら、『序列の昇格』もお忘れなく」
「……序列?」
「平たく言えば世界ランキングだな。説明しよう」
「……チッ……ふんっ」
また邪魔が入る。
補足を垂れ流そうとするマドカに、小さく舌打ちしては爪を噛み。そのままセシリアは、席に戻ってしまった。
『
「国家代表候補、及び
「序列一位は知っての通り、
四種ある階級の頂点こそ。
未だ破られたことのない、たった一人、個人にのみ与えられた栄誉。……なのだが。
「……同時に
「えっ?」
「織斑千冬の引退後に制度が少し変わってな。序列一位は現在、
きっぱりと、首を縦に振る一夏。
それが何を意味するのか。今後二度と現れないであろう、無敗のまま退いた絶対英雄を讃えるための特例措置か。或いは。
ここらの話は、インターネット上では半ば不敬な玩具と化している。
国家単位で偉い奴が介入しても不思議ではないとか、利権、上級国民、EOSの発端、全身IS人間、影武者、クローン千人、天竜人、etc。なんか一部当たってる気がしなくもないが、篠ノ之束と同じく変な考察が大量に蔓延った始末だ。まるで原作みたいに。
ただし節度を守れなくなったら、二次創作の捏造を原作と思い込んで語ってしまう超悪いオタクみたいになっちゃうぞ。*6
「地上最強のすぐ下には、その王座を虎視眈々と狙う8人の猛者が居る。人は彼女らを『
「定刻だ、席に付け」
「……続きは後で話そう」
更なるうんちくを述べようとするも。冷徹鉄仮面マシーン国家代表殺し、織斑千冬の登場で打ち切り。
「っと。そいつは思う存分有効活用してくれ」
生徒一同がそそくさと着席する中、マドカが顎で指した覇者の聖典。煽られるがままに一夏は続きを捲る。
すると隙間から、一枚の紙がひらひらと落ちた。不審に思い裏返すと──
「げェっ」
「ホームルームを始めるが……織斑、どうかしたか」
「いや、何も!」
絶句も束の間。
見られたら最後、ロクでもない未来が故。一夏は咄嗟にソレを隠す。
「……? くれぐれも、あまり騒ぐなよ」
妙な動きに首を傾げる千冬だが、今回は見逃してやる。
そして一同が静まり返ったのを見計らって、再び。冷たい唇を開くと。
「──さて、本題に入る」
お待たせしました。
ここからが皆様ご存知、親の顔より見飽きた歴史的様式美。
引き金となるこの一声が無ければ、IS学園の序章は始まらないというもの。
紡がれるは無論──
「お前たちには今から、クラス代表を決めてもらう」
──開戦の予兆が、遂に訪れた。
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