我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎   作:めど

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 私事ですがこの度私が参加した同人誌がお家に届いたので初投稿です。あとワクチン2回目の副反応で全く動けなかった(小並)
 ISのえほん 10th Anniversary Anime 1st Series 2011

 ※特殊タグの演出上、今回は挿絵表示のオンを推奨しています※


三日目:汝は〖白椿(白式)〗なりや? I

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 ──織斑一夏がIS学園へ入学する、少し前。

 

 倉持技研第二研究所は、山奥に設立された第一研究所から川を渡った先に聳える。

 倉持といえばコアナンバー001〖暮桜(くれざくら)、そして〖暮桜〗といえば……織斑千冬。言うまでもなく倉持は、橘グルーヴや旧薪嶋重工を凌ぐ日本トップのIS企業であった。

 

 が、近年──千冬の引退により日本代表の後任が伸び悩むと、同時にその煽りを受けたのも事実。次のモンド・グロッソまでに代表が選出されなければ、政府からの予算が、なんてことも。

 

 世界の主流は第三世代。

 シェア率二位を支える第二世代〖打鉄〗では、いずれ限界が来るというもの。

 大人の事情のゴタゴタに巻き込まれ、かつての栄光〖暮桜〗も凍結処分。低迷寸前でいた倉持であったが、ついに転機が訪れた。

 

 今この瞬間。

 その〖暮桜〗の後継となる、新型ISが誕生しようとしているのだ。

 

「……遂に、遂にだ。完成したぞ」

 

 何故かスク水の上から白衣を纏う彼女の名は、篝火(かがりび) ヒカルノ。しかも直前まで川を泳いでいたのか、ズブ濡れだ。何を考えている。

 髪色もあって、まるで淡水にて自生するワカメの擬人化に見えた。

 

 とまぁ冗談は置いて。

 大事の際は決まって、水の中で天命を待つのが彼女のポリシー。これこそ冗談のようだが、本気でそう思っている。

 

「やりましたねヒカルノさん。この日が来ることを、みんな待ちわびてましたよ」

「いやぁ、今日という日は未来永劫語られるだろうよ。なぁリンダくん」

輪那(わな)です」

「亡きお母様の設計書を元に造り上げた新しいIS……その名もGX-01〖白椿(しろつばき)──……!!」

「あの、輪那(わな)です」

 

 "リンダ"と呼ばれ間違えた女性の訂正をガン無視し、ヒカルノはスタッフに呼びかける。

 

「諸君らも喜びたまえ。倉持技研にとって記念すべき瞬間だ……これからもっと面白くなるぞ!」

『おおおおおおっ!』

「……お、おぉーっ……?」

 

 右手を掲げ、それに呼応する一同。

 

「題して、"篝火ヒカルノ伝説"……私は人類最高(レニユリオン)世界最強(ブリュンヒルデ)と並ぶ、唯一無二の星になってみせるぞっ、リンダくん!」

「や、だから輪那(わな)です」

 

 ただし輪那への間違えは、変わらずだった。

 一方で、オペレートが完了したキャリアから顔を出す、新たなISの〖待機形態〗──そのフォルムは。

 

「……ふふん!」

 

 ISコアの元となる時結晶(タイム・クリスタル)、その粒子が詰められた平たい砂時計が連結し、腕輪となっている。

 まさにこの時をもって。産声を上げたISを取り出すヒカルノは、結晶と同じ翡翠の瞳を煌めかせた。

 

「待っていたまえ、宇宙の遥か向こう側に眠りし、まだ見ぬ時結晶(タイム・クリスタル)ちゃんたち……そして千冬の意思を継ぎし、一夏くんよ!」

 

 その奥に映る未来は、人類に齎す新しい希望か。または一個人が抱く、底知れない野望か──

 

 

 

 

 

 "きっと 逢えるよ"

 "笑顔と涙を 抱いて"

 "君と一緒に──"

 

 

 

 

 

「ふふふふ、はははは……あっはははははは! はははヴェっ、ェほッ、エ゛ッ、ヴェ゛ッ゛ふ゛ぇ゛ぇ゛ー゛ッ゛!゛!゛?゛

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

"むせる"

 

 

 

 

 

 

 SAT3   42022

 

 

 FRI3   42022

 

 

 THU3   42022

 

 

 WED3   42022

 

 

 TUE3   42022

 

 

 

 MON4   42022

 

 

 SUN2   42022

 

 

 

 

「授業を始めるが……その前に、クラス代表を決めようと思う」

 

 4月4日。

 例年よりほんの少しだけの猶予を終えて、いよいよ本格的なIS学園生活が始まる。

 そして物語の歯車も。千冬の第一声から、全てが動き出した。

 

「クラス代表の義務は主に二つ。一つは会議の出席で、まぁ面倒事の引き受けだな」

「えぇ……面倒事かぁ……」

「は? 千冬様の命令だぞ? どれほど貴重なものかゆっこはお解りでない?」

「うるさいよリコリン」

「お前らやかましいぞ」

「「……うっす……すみません……」」

 

 千冬は良いこと悪いことが重なった場合、後者から話すタイプだ。

 一部の生徒は明らかに顔に出ていたが、それとは真逆で。あの千冬の頼みならばと、乗り気な者もいる。まぁ両方とも、注意されるオチなのだが。そこのツインテールと眼鏡みたいに。

 

「もう一つはイベントの出場だ。直近で言えば、二週間後に行われる学年別クラス対抗トーナメントに出て貰う……自薦他薦は問わない、やりたい奴は挙手しろ」

「はい、織斑くんを推薦します!」

「はいはいはーい! 私も織斑くんが良いでーす!」

「早っ、てか俺が!?」

 

 自薦他薦の時点で悪い予感はしていた。刹那、確信に変わる暇さえ与えてくれない。

 肩を張って身構えていた一夏であったが、その衝撃波はやはり大きい。

 

「だって面白そうだし?」

「男だし!」

「映えるし!」

 

 軽快な三拍子は無慈悲なもの。

 珍獣だからという理由で選ばれてはなんというかこう、どうなんだという気もする。

 選ばれた以上、残念ながら拒否権はないだろう。それに、千冬の前でそんな巫山戯た真似はできない。ここでふと、箒の方を見るが……即座にそっぽを向かれた。知ってた。

 

「……っすぅぅぅ、やるしかないのか……」

「お待ちください」

 

 ここで「やります」と言えばさっさと終わるかと、腹を括り始めたその時だ。

 

 

 

「わたくしセシリア・オルコットは、自らを推薦いたします」

 

 

 

 このタイミングで颯爽と乱入してきたのは、誰よりも「代表」の二文字が相応しき女傑。セシリア・オルコット以外に誰がいるのだろうか。

 昨日の調べ物でめちゃくちゃにやべーやつと認識していたお陰で、背筋が僅かに凍りつく。だがそんな悪寒とは裏腹に、セシリアの言の葉はまるで、救いのようだった。

 

「確かに物珍しいという理由で彼を推薦するのは一理あります。ですが今後のイベント、優勝したクラスにはどんな施しがあるか──ご存知でしょうか?」

 

 一夏に華麗なウインクを送る。

 どうもサラ・ウェルキン先輩といい、イギリス人のそれは妙な威圧感を兼ね備えているというか。心臓を鷲掴みにするのが上手いと、言えばいいのか。

 

「わたくしが代表になった暁には全戦全勝を保証すると共に、優越感ある最高の学生生活を約束しましょう」

 

 と、セシリアは続ける。

 まさか、集中砲火の如く自分に向いていた票を、分裂させる気なのか。

 

「例えば、次に行われるクラス対抗戦(リーグマッチ)。優勝したクラスには学食スイーツの無料チケットが、半年分配布されますのよ」

「私せっしーにしまーす!」

「のほほんさんが裏切ったぁーっ!」

「だってデザート食べ放題だし!」

 

 裏切り者、もとい記念すべきオルコッ党その一は、モブ界のユダとして有名なのほほんさん。

 生粋の菓子好きなら誰もが、学食スイーツに靡いてしまうだろう。何を考えているかわからない彼女ですら、ここでは至極単純だった。

 

「それに冬季の総括対抗戦では、ISGPの特等席無料招待券なんかも」

「わ、私オルコットさんにします!」

「相川さん!?」

「いやぁだってGPの特等席だよ? 特等席だよ!? いっつも転売されるんだよ!!? あぁ思い出しただけで……!!」

「お、おちついてきよちゃん……」

 

 その二は出席番号一番、趣味はスポーツ観戦の相川さん。昨日のこともあってか見事堕ちた。どうやら特等席の件についてはよろしくない思い出があるらしく、興奮気味に訴えている。

 

 隣の席の如月がなだめるまで続いたが、当然この転売も、例の「ファントム・タスク」の仕業である。転売するのは出来の悪いトリスタンだけにしておけと通告したいところではあるが、畜生はどこにでも絡んでくる。

 

「じゃあ私も、オルコットさんにしようかな……」

「あたしは織斑くん一筋なんだよねー」

「なんか迷ってきたな……」

「うーんやはり千冬様の弟だし、裏切る訳にはいかんな、そうだろバルクホルンちゃん」

「バルクホルンじゃないし、谷本(たにもと)癒子(ゆこ)さんだし。私はオルコットさん派かなー」

「えぇっ!? それは、本当かい!?」

「なんでマスオ兄さんみたいな声になってんのさ」

 

 外野も盛り上がってきた。

 ただ、状況を俯瞰してみれば……この空気は見事、セシリアに操作されているとも見て取れる。

 

「セシリィがそこまで言うなら……ふっ、代表か、ならば私も参加しよう」

 

 もちろん、セシリアが出てくるとなるとこの女が黙っていない。

 額にでっかい絆創膏を貼り付けたアホ毛は、『ウィキペディアよりアンサイクロペディアが先にしゃしゃり出てくるインターネットおもちゃ女優』ことマドカ=ウォヴェンスポート。

 

「ちっ」

「お、織斑先生……?」

 

 対して千冬のデカすぎる舌打ちに、ビビり散らす山田先生。

 こいつの自薦は分かってはいたが、セシリアも呆れ顔である。何せ興味は失せているのだから。

 

「……言っておきますがウォヴェンスポートさん。わたくしは今まであなたに対して、本気を出したことなど一度もありませんわよ?」

 

 念の為の忠告。が、それはかえって。

 イキリ遺伝子が根付いたマドカを、炊きつかせる結果となる。

 

「ふっ、流石はセシリィ。だがそれは私も同じこと。この真の超能力因子(インパクト・ファクター)を解放すれば、学園諸共撫でるだけで消し炭に出来るほどの──」

 

 ──が。

 

「学園がなんだって?」

「……んんっ、教室の一つや二つくらいは」

「教室がなんだって?」

「……例えですよ、ブリュンヒル」

 

 

 

 

 

「織斑先生だこの薄らトンカチが」

 

PERFECT KNOCKOUT

CRITICAL HEADSHOT!

「ゴブフォアッ!!?」

 

 

 

 

 

 会心の一発。

 見事主任である千冬を滾らせたマドカは、筋力(マッスル化)鉄仮面(鋼鉄化)の恩恵を受けたチョークで撃沈した。

 冷たい風がつんざいたその時点で、黙っておけばよかったものを。

 

「……織斑先生、提案があるのですがよろしいでしょうか」

「なんだ、言ってみろ」

 

 突っ伏したマドカを尻目に、ここでセシリアが更に駒を動かした。

 千冬も因縁めいた馬鹿を始末し終えてスッキリしたのか、快く承諾する。

 

「票が割れてしまったこのままでは、決着がつきません。そこで……わたくしと織斑さんと……ウォヴェンスポートさんも含めて、I()S()()()()()()()()()()()()()、というのはいかがでしょう?」

「!!?」

 

 盤面完了(チェック)。またの名を「詰み」。

 助け舟を出そうとしているのかと、一夏は思っていた。しかしそれは、()()()()。酷く浅はかな勘違い。

 

 ブリキの如く振り返る一夏。

 そこには計画が整ったと言わんばかりのブリティッシュスマイルを浮かべた、それはそれは大変ご機嫌なご令嬢。

 

「この場をお借りして、伺います。織斑一夏さん……」

 

 あとはもう簡単だ。

 とどめの一言を添えるだけで、四方八方を塞いで紡ぐものなら……確変の蒼き風が勝手に吹く。

 

 

 

「わたくしと一曲、踊って頂けますか?」

 

 

 

 要は、ハメられた。

 運命付けられた理不尽な選択肢へのフォローに見えて、実態はより都合よく"理不尽"を仕向けたショート茶番劇。

 

 彼女に対していつ無礼を働いたかと、一夏は一瞬脳を回した。

 それとも女尊男卑という世間をしろ示すように、男を叩きのめしたいのか。単に圧倒的な力で捩じ伏せたいのか。振る舞いに反して雑魚狩りが悪趣味なのか。いずれも定かでないが、セシリアの目的はただひとつ。彼と一戦、交える。

 

「…………っ」

 

 ()()()()()()()

 本能が忠告している。固唾を飲めば、無意識の情けない悪魔が、囁く。

 昨日の予習で目の当たりにした現実が、思考にノイズがかった。

 

 それもそう。

 一夏の眼前に突き出されたのは、セシリア・オルコット直々の挑戦状。即ち強制敗北イベントの、地獄片道切符だ。

 こうなってしまった以上、退いても恥。受ける先も恥。さぁどちらの茨に進もうか。

 ……と言っても、答えは既に決まっている。

 

「……わかった

 

 一夏が選ぶは、後者。

 最初から後者しか、有り得ない。

 

「そこまで言われて嫌ですなんて言えるほど、俺も男として腐っちゃいない」

 

 しっぽを巻いて逃げるなど以ての外。

 世界最強の弟であるなら、当たって砕けてでも前進しなければならない。今までもそうやって、愚直に進み続けたのだから。

 

 千冬は唯一の家族だ。本当の両親は顔も知らず、蒸発した。

 比較されるのはもう慣れているが、姉の名が穢れるのは許されざると。16年の人生で根付いてしまったそれは、一種の強迫観念を意味するか。

 

「それが無謀であることを、理解なさった上で?」

「……"何も知らない"は、もう通用しない世界なんだ。だからこの勝負は、何があっても……」

「何があっても?」

「……出せる限りの全力で、挑むしかないと思ってる」

「なるほど……ふふっ、よろしいですわ」

 

 胃が張り裂けそうだった。

 けれど己が、織斑一夏であるなら。

 自暴自棄でも、虚勢であったとしても。いずれこの壁は、必ずぶち当たらなければならない。

 

 どの道、遅かれ早かれの酷な話だ。寧ろ。

 望んでここにいる訳ではないが、自分なりの覚悟を表明する良い機会なのだろう。

 出来るか出来ないかは、関わりなく。

 

 ……というか。

 "逃げ"で醜態を晒そうものなら昨日のインターネット・マドカみたいになってしまうのが目に見えているので、どう足掻いても岐路には立てない。誰だってそうなるのは嫌だ。

 

「…………」

 

 千冬は何も言わなかった。

 正確に表現するなら──()()()()()()()()()

 

「期待以上のお返事、何よりです。条件はどうします?」

「条件?」

「例えば量産機で、限りなくフェアに近づけるなり……端的にハンデと言った方が、ご理解頂けますか?」

「ハンデ……えっ? は、ハンデ……?」

「?」

「……い、いや、ハンデはいい!」

 

 ほんの一瞬、セシリアの言っていることの意味が分からなかった。が、一夏は理解と同時に拒否する。

 確かに今の状態はISもクソもない丸腰そのものだが……その三文字だけは、論外だ。

 

「オルコットさんも、マドカも、お互い真剣勝負でいこう」

「……その覚悟、承りました。決まりですわね、織斑先生?」

「あぁ、良いだろう……織斑、オルコット、ウォヴェンスポート。お前たち三人は一週間後、第三アリーナで模擬戦を行う」

 

 対峙した二人の最終得票は、同数。

 決戦は一対一対一の、バトルロイヤル方式へ持ち越しとなった。

 

 

 そしてセシリアは、未だ伸び続けている0票女に対し、

 

 

「……くれぐれも、わたくしを失望させないでくださいね」

 

 零度の眼差しで吐き捨てた。

 セシリアにも好きな茶番と嫌いな茶番がある。それもマドカが干渉するかしないかだけで、本来の令嬢出力に関わる程の。

 

 今回は絶好調……つまり逆を言えば。

 意識が残っているだけで、また初日みたいな面子丸剥がれグダグダ茶番劇──"嫌いな後者"となっていただろう。

 

「以上だ。さて、授業に戻るが……特別講師としてある人に来てもらった」

 

 決定事項は何事もなく。かと思えば、千冬の一声に応じて。

 自動扉の向こう側で、映る影がやたらそわそわと動いていた──間違いない。教室の外に変なやつがいる。

 

 

 

「どうぞ、()()()()

「やぁやぁ諸君! どうやら代表云々も決まったみたいだね!」

 

 

 

 そうして勢いよく現れたのは、冒頭で高らかに喉を痛めた女こと。

 倉持技研の篝火ヒカルノだった。




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織斑千冬 : マドカに対して殺意を向け続ける史上最強の世界最強女。なぜなら(皆さんご存知のあの)「???」に酷似しているから。クアンタみたいな魔法の横格を使って二回もモンド・グロッソをめちゃくちゃにした

織斑一夏 : 真の主人公。なんとなくマドカの面影に千冬を重ねようとしている。やめろ

マドカ=ウォヴェンスポート : バカ

篝火ヒカルノ : 千冬姉と束さんの同級生。暮桜の次期量産モデルを想定した白椿を完成させたてんっっっさい科学者。ちょっと待って?白式がないやん!どうしてくれんの?

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