我が名はマドカ。聖剣に選ばれし✝︎漆黒の黒騎士✝︎ 作:めど
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「クラス代表とは名の通り、各学年の組ごとに選出された代表を指す。面倒事を任された委員長のようなものだ」
うむ、上出来だ。
次に私の出番がしばらく無ければ、この前置きを存分に使うとしよう。
──おっと、今はそんなことをしてる場合じゃなかったな。
やぁ、全国459億9694万人*1のマドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼルファンの諸君。
長らく振りですまなかったぞ。
何せ前回から約五ヶ月、こいつがアニメならもうワンクール以上も空いてしまったからな。まるで万策尽きて完走された世界線のウルトラマンネオスのように──ん? 時間的に1日ぶりの間違いだって? フッ、それもそうだな。無闇矢鱈と第四の壁を破壊するのはよそう。*2
みんなも、一万字の三人称ばかりに辟易してそろそろ私の
ただし。私に宿った幻魔の瞳に魅せられないよう、用心することだな。
「えぇ……面倒事かぁ……」
「は? 千冬様の命令だぞ? どれほど貴重なものかゆっこはお解りでない?」
「うるさいよリコリン」
「お前らやかましいぞ」
「「……うっす……すみません……」」
ことに善悪が重なった場合、ミス・ブリュンヒルデは後者から話すタイプらしい。
一部の生徒は明らか顔に出ていたが、それとは真逆で、『あの千冬様の頼みならば』と乗り気な強者もいる。まぁ両方とも、忠告されるオチなのだが。背後の二人みたいにな。
「無論、イベントや諸々の会議にも出てもらうが……直近でいえば、再来週だ」
黒板に目をくれてやると、各クラス代表の戦闘記録と思わしき画面が投影される。ほう。
「前期クラス代表トーナメント。代表の生徒が一対一の真剣勝負で競い合う、最初のISバトルイベントです!」
「あっ、レイン様だ……」
「レイン先輩!? 何してんすか、(フォルテ先輩と結ばれるの)やめてくださいよ本当!」
「いやもう学園生活終わりにしたいんですよね」
「でも私の恋心は……もう一生無いねんで? わかるこの罪の重さ?」
「(嫉妬心で)狂う^〜〜〜!!!!」
「おい、黙れ」
『 』
その中に師匠や師匠の恋人が映っていることから、間違いない──いずれにせよ、私の勇姿も記録される運命だろう。
「やりたい奴は挙手しろ。誰でも構わん。自薦他薦も自由だ」
「はい、織斑くんを推薦します!」
「はいはいはーい! 私も織斑くんが良いでーす!」
「いや早っ、!? てか俺が!?」
織斑一夏:5票
ふゥん、いきなりカウントされたな。
生徒は全員で31人だから……残り20と半数。珍獣だからという理由で選ばれてしまっては、いささか不本意か。
だが選ばれた以上、拒否権はないだろう。敬愛せし姉の前で、そんなことが出来るとも思えない。男児たる故の、世知辛さだな。
「だって面白そうだし?」
「男だし!」
「映えるし!」
「諦めるアル」
「この状況で、お前に自由はない」
軽快な五拍子は無慈。
まぁ、自薦他薦問わずの時点で予想出来たが……織斑一夏には少し荷が重すぎるかな?
仕方がない、代表候補生である私の力で少し票を分散させてやろう。
「失礼。このマドカ=ヴォヴェンスポート・ミューゼルは、自らを推薦させて貰う。私に賛同する者がいるなら、今がチャンスだぞ?」
「チッ」
「お、織斑先生……?」
マドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル:1票
織斑一夏:10票
うむ。
立ち上がって宣言するや否や、皆黙り込んでしまった。指折りの刻を数えるも、自分以外のポイントが加算される気配が無い。
……やれやれ、こうも恥ずかしがり屋ばかりだとはな。
「戦績がね……」
「ガバガバどころかスカスカ。無芸者の末路」
「まったくトレなしテクなし操縦センス、ドン引きなのよね」
「ミューゼルをクビになる恐れはないのかな?」
「弱い子」
「哀れ」
「はーい、まどっきーに一票いれま〜す」
『!?!?!??????』
マドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル:2票
私に対する畏怖の囁きをかぎ分けて、追加の票を付与したのは……あろうことかノホ=ホンだった。
おい貴様、どういうつもりだ……この私を挑発しているのか? 策士であるこの私を、『ダシ』にしようと企んでいるのか?
何を考えているか微塵も読めないその風体、やはり
間違いなく、『裏切りの魔剣士』について何かを握っている。
今はまだ推定無罪だが……。
貴様の正体が明らかになり次第、我が魔眼射程に入れば即ッ! 始末してやる……!
「…………やるしか、ないか」
如何にしてノホ=ホンに立場を理解させ、我がISの錆にしてくれようかと思考を巡らせていたところ。織斑一夏が呟いた。……そうか、君は意を決したか。
腹を括り始めた、その時だった。
「分かった、じゃあ俺が──」
「ちょっと、よろしくて?」
「!」
「……ふッ」
やはり君が来たか──セシリィ。
永遠の好敵手の名乗りに、少し笑みが溢れてしまう。
真の主役は最後にと。演出家としても抜かりない君のことだ、必ずこのタイミングで出ると思っていたよ。
「わたくしセシリア・オルコットも、
ほう……私を差し置いて最強とは、また大きく出たな。
その言の葉に説得力があるのは事実。
何せ君は、序列24位。
『トップ・オブ・ディース』の序列17位こと──レイン・ミューゼル師匠へと近付きつつあるのだから。
私の序列は、だと?
その事だが、少し残念な事実があってな。
どうやらこの私の潜在能力が常軌を逸脱する余り、
よって、今の私は何処にも属さない正体不明の枠組み、だそうだ。
故に私は、特異な存在である織斑一夏の気持ちを。多少なりとも理解しているつもりだ。
「……どうした相川清香、私の頭にゴミでも付いてるかな?」
「えっ、い、いや、何も……」
左隣に座る出席番号一番、相川清香が絶句していたので正気に戻してやる。
さっき言ったろう。魔眼に魅せられたら、
「確かに、物珍しいという理由で彼を推薦するのは一理あります。ですが今後の学内イベント──優勝したクラスにはどのような施しがあるか、皆様ご存知でいらして?」
そんな茶番も束の間。
セシリィお得意の演説が始まったようだ。
振り向いた織斑一夏に、華麗なウィンクを送る。心臓を鷲掴みにするその仕草、威風堂々と相まって男共からすれば恐怖以外の何者でもないだろう。
だが、今のセシリィの思惑は……ふッ。私と同じ考えのようだな。嬉しい──
「例えば、次に行われるクラス
「やっぱり私せっしーにしまーす!」
「のほほんさんが裏切ったぁーっ!」
「だってデザート食べ放題だし!」
セシリア・オルコット:1票
マドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル:1票
織斑一夏:10票
────貴様ァ!!
裏切り者、もとい記念すべきオルコッ党……とでも名付けておこうか。その一はノホ=ホン。*5
生粋の甘味処好きなら誰もが、学食スイーツに靡いてしまうだろう。各国から腕利きのプロが集うと聞く。
……が、奴の場合は真意が読めない。
いずれにせよ。
無意味な箔付けでこの私を愚弄したこと、必ず後悔させてやる……!!
「それに冬季の総括対抗戦では、ISGPの特等席無料招待券なんかも」
「わ、私オルコットさんにします!」
「相川さん!?」
「だってGPの特等席だよ? 特等席だよ!? いっつも転売されるんだよ!!? あぁ思い出しただけで……!!」
「お、おちついてキヨちゃん……」
……その二は出席番号一番。 趣味はスポーツ観戦なだけあって、見事堕ちた。
興奮気味に訴えているが、確かにチケット転売は厄介だな。
「さぁ皆様、このわたくしに清き一票を……あぁ、そうでした。秋に開かれるキャノンボール・ファストの景品は──」
「じゃあ私もオルコットさんにしようかな……」
「(織斑くんが)勝つ(のは)……難い……」
「辞めんな。何のために千冬様を推してきてん」
「うーんやはり千冬様の弟だし裏切る訳にはいかんな、そうだろバルクホルンちゃん」
「だからバルクホルンじゃないし、谷本癒子さんだし。私はオルコットさん派かなぁ」
「は?」
『モノで釣る』というアクセントを加えただけだ。が、それだけで外野は盛り上がった。
状況を俯瞰してみれば……この空気は見事、セシリィに操作されているとも見て取れるな。
手段を選ばず、君臨を目指す孤高の姿──やはり、ゲームメイカーの異名は伊達ではない。
セシリア・オルコット:7票
マドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル:1票
織斑一夏:13票
「……流石はセシリィ、何時の間にか鰻登りの支持だ。だが、私がいることを忘れてもらっては困るな」
「自薦含めてもお前が最下位なんですがそれは……」
「(算数が)哺乳瓶……」
「へ な ち ょ こ」
「────95戦95勝。無論、わたくしがあなたを下した回数です」
……懐かしい記録だな。
だがそれは、次の96戦目への布石に過ぎない。
他国の干渉を許さんこの晴れ舞台なら、心置き無くリミッターを外して君と本当の──
「もうわたくしはあなたを信じない」
──ん?
セシリア・オルコット:9票
「わたくしは更なる高みを目指すため──ISの修練のために、此処にいます。決してあなたのような、宇宙人とサーカスするためではありません」
セシリア・オルコット:10票
ひとつ、またひとつ。
セシリィが言の葉を紡ぐ度に、得票が自ずと増えていく。彼女への同意が加速していく。
つまりこれは、私への宣戦布告か……やはり君は最高の好敵手。面白い、続けてくれ。
「それすら理解せず、この『誉れ』ある聖域を踏み荒らすようでしたら──」
セシリア・オルコット:11票
銃口に見立て、此方へ人差しを向けるセシリィ──かと思えば、飛来した銃弾を捻る如く。爪先をめり込ませ、強く握り締めた。
その真白な拳に。私への熱い想いを込めて。
「
セシリア・オルコット:15票
……決めたか。
ものの数分で、セシリィは二倍の得票を遂行。見ろ、織斑一夏の支持を呆気なく超えてしまったぞ。
周囲も料理人解体殺戮ショーの始まりのような、喝采の拍手で歓迎している。
「やっぱ、我々の代弁をしてくれるオルコットさんを……最高やな!」
「あ げ る わ あ な た に」
「気持ちよかったんだよね、よかった。じゃあ、(クソ雑魚予備候補は)死のうか(ン・ダグバ・ゼバ)」
「あぁ Heil Heil Heil…………(敬礼)」
「(国が)違うだろぉ?」
無論、ここに至るまで。
実績とカリスマ性……そしてこのクラスの女子共が、
全てセシリィの計画通りといえるだろう。
彼女も私と同じく、策士の適性が非常に高いことで有名だからな。*7
──さて、残り二票。
投票権を持つ最後の二人は、織斑一夏と……篠ノ之箒か。
「………………」
織斑一夏:14票
……ふッ。
どさくさに紛れて追加したか、全く以てシャイなウブ子だな。
目を泳がせているが、私にはお見通しだ。そもそも君が彼を好いて肩入れしているのは、周知の事実だというのに。
「残りはあなただけです、織斑一夏さん」
「────まさか、
「であれば、
「っ! ここで俺が自薦すれば──」
こちらもとうとう、気付いたようだな。
一本食わされた顔で振り向き、
そう、君は術中にハマったのだ。
本来は私が仕掛ける筈だった、データ収集の為の口実。少し可哀想な真似をせねばなるまいが……これも祖国の特命の為だ。
君の実力を試させて貰おう。
「そう。わたくしとあなたが同列になり」
「つまりじゃんけんで」
「“
「あっはい」
──っ、クククク……。
いや、失礼。水晶のような純粋さ故、無意識に口角が吊り上がってしまったらしい。
世界の裏側で暗躍する我々にも、あんな無垢な時代があったのだと、な。
「あなたも中々、お察しの悪い方で……前世で唐変木と罵られた覚えは?」
「…………」*8
「……わたくしを弄ぶなら、もう少しユーモアを磨いてから──」
「んん゛っ」
「───お説教している場合ではありませんわね」
そうだな。
ミス・ブリュンヒルデが痺れを切らし始めている。悠長な尺を使っていられるのも今の内だ。
時間切れで刃向かおうものなら、片ッ端から首を刎ねられかねない。そうなればこの箱庭は、瞬く間に返り血の死海と化すのだが……まぁ、最悪の場合は創造と破壊を司る我が禁術で『無かったこと』にしてやるとも。
「立候補するかしないか──先ほど言い損ねていましたが、撤回しますか?」
「…………いや、男に二言はない。俺も自薦する」
セシリア・オルコット:15票
織斑一夏:15票
マドカ=ウォヴェンスポート・ミューゼル:1票
一同、ざわめき。
これにて
整然としたこの並びは、波乱による偶然だっただろうか──否。幾千の可能性から導き出された収束、必然だ。
こうなれば、セシリィはもう止まらんぞ。
「……織斑先生、わたくしから一つ──」
「好きにしろ。
「──えぇ、感謝いたします」
一見廻りくどく、蛇足に見えた一連の顛末。
しかし、過程をすっ飛ばしては美しくない。それがセシリィなりの、筋の通し方。
「……山田先生、少しだけ席を外す」
「皆様。このままでは決着がつきそうにありませんので──決戦投票を提案したいと思います」
折角良い落とし所に入ったというのに、此処で
寧ろアレか。そういった駆け引きに、ミス・ブリュンヒルデは微塵も靡く筈もなく……というワケだな。手厳しい……っと。
「至ってシンプル。わたくしと織斑さんと……そこにいるウォヴェンスポートさんも含めて。
チェック。またの名を『詰み』。
助け舟を出そうとしているのかと、当初織斑一夏は思っていたのだろう。しかしそれは、
「この場をお借りして、改めて伺います。織斑一夏さん……」
あとはもう、赤子を捩じ伏せるより簡単だ。
トドメの決め言を添えるだけで、四方八方を塞いで紡ぐものなら……確変の蒼き風が、勝手に吹き荒ぶ。
「わたくしと一曲、踊って頂けますか?」
女尊男卑という世間をしろ示すように、男を叩きのめしたいのか。
単に圧倒的な力を、翳したいのか。
それとも振る舞いに反して、格下狩りが趣味なのか……さぁ、どれだと思う?
セシリィの目的は、最初からただひとつだ。
可能性に満ちた彼と一戦、交える。祖国の命やらお構い無しにな。
……何故お前如きに解るか、か。フッ、愚問だな。
これでも沈みゆく夕日のもと、殴り合いをした仲だぞ。それに、私の本心だって──同じ感情を抱いているさ。
「…………────」
差し出された
「──その覚悟、承りましたわ」
運命を受け容れたかのように、迷いなく掴み取った。
打って変わって、眼差しは鍛え上げられた真剣そのもの……やはり、聖剣士に相応しい。
手を交わす両者。
私も混ざろうとしたが、咄嗟に払われてしまった。
その拍子に、乾きの音が教室に木霊するが……やれやれ、セシリィはツンデレなところがあるからな。
「あなたがISの世界から消え去ることは、世界中の誰もが望んでいること。ならばわたくしの手で、ひと想いに葬ってあげましょう。白日の下に晒し上げます」
白き日の下、か。
だが、私は漆黒。決して白には染まらない、光在るところに揺蕩う影。
足元を飲まれぬよう、気を付けることだ。
「……せめてわたくしが絶対英雄となるための、
ふッ、それはどうかな。
「言っておきますが。あなたに本気を出したことなど一度たりともありませんので」
私も同じさ。
この真の
──どうした織斑一夏。明後日の方角を見ながらそんなに青ざめて。
何か良からぬ未来でも幻視したのだろうか。であれば、私の幻魔心眼と
因みに皮肉の投げ合いのことなら、安心しろ。日常茶飯事のじゃれ合いに過ぎな
「学園がなんだって?」
……そういうことか。
「……んんっ。教室の一つや二つくらいは」
「教室がなんだって?」
「……例えですよ、ミス・ブリュンヒル」
PERFECT KNOCKOUT
CRITICAL HEADSHOT!
ちょうど一年前から計95回も勝負を挑まれたりとマドカにダル絡みされているが……仮想空間での模擬戦闘・AI予測を含めると対マドカ戦のみ述べ4003勝分くらいの瞬殺パターンを専用機に記録している。
つまり操縦者がマドカである限り、
セシリアが敗北することは300%有り得ない。
「……オルコット、織斑。……そしてミューゼル。お前たち三人の決選投票は、代表決定戦として執り行う」
いつの間にか戻った千冬がマドカを始末し終えたところで、ようやく結論。
で、マッスル化と鋼鉄化が常時上乗せの会心の一発をぶち込まれたそいつは。無事に伸びている。安易に滾らせるとこうなるので、知っておこう。
「ところで。ハンデはどうなされますか?」
「ハンデ? えっと、俺が」
「わたくしがですけど」
「えっ」
「えっ」
……。
幾度となく気まずい雰囲気を醸し出してきた両者。肝心なところは絶対に外さない、百発百十弱中の地雷の踏み抜き。
故にセシリアの頭痛が酷くなりつつあるのも、残当の運びである。
「……オーバースペックの専用機を使うなんて、アンフェアの極みでしょう。ですので、同じ条件で戦う。わたくしの日本語ちゃんと通じてますか?」
多分想像に委ねている限りは頓珍漢な答えが返ってきそうなので、行間なく一から十まで説明した方が良いのかも知れない。セシリアは諦観していた。
それすなわち、学園に配備された訓練機では、どう足掻いたって
人を選ばないオーソドックスなモデルでありながらも、訓練機は型落ちの第二世代が主流。
一方、セシリアの所有する専用機は……言わずもがな。正直、背比べをしようにも話にならないのが明らか。
「無論どのような足枷があっても、お二方を倒せると確信していますので……不得意な日本製『打鉄』でも構いませんわ」
秒速でケリをつけても良い、が。本国のお偉いさんに怒られるのは、セシリアも不本意。この戦いそのものが、織斑一夏の第一期戦闘データ収集も兼ねているからだ。
故に、諸々の事情を含め。極めて合理的に譲歩している。
「……いや、ハンデは──」
「少し口を挟ませて貰おう」
けれど、一夏は逆の考えだった。
セシリアがくれてやった数少ない『勝ち筋』を、自らの意思で拒絶しようと──その矢先、千冬の口が開く。
「手前の敷居を下げてやるのは勝手だが……オルコット、その必要はない。
「つまり織斑くんにも専用機が……ってコト!?」
「ええやん、なんぼなん? 車でいえばどれくらいだ?」
「そちら、専用機の開発予算は平均14兆3000億円となっております」
「14兆!?(国家転覆予算)」
外野が物凄く適当なぼったくり数値を宣っている。ぶっちゃけ遠からず、な気がする。
ただでさえ速度がマッハ2から修正されまくったり曖昧なのに*9、一々考察していると頭がおかしくなるがもう手遅れだ。
「場所は第三アリーナ、一週間後の六限目を利用する。オルコットは代表候補生として、こいつらに手本を見せてやれ」
「えぇ。わたくしの実力が陶酔でないことを、今一度証明しましょう」
「……ミューゼル、貴様の殺生与奪は私が握っているも同然だ。少しでも不審な動きをすれば、人であることを辞めさせてやる」
因みにマドカはあと一時間気絶したまま。
「最後に織斑。お前には午後から──『倉持技研』へ行って貰う。迎えが来るからそのつもりでいろ」
再び周囲がざわつく。一夏もその宣告に息を呑んだ。
事の重大さを伺えば、誰もが『逆に何故驚かないのか』と返すだろう。日本で、否。全地上を探しても、倉持を知らぬ人はいないと揶揄される程。
つまり──
「お前の専用機が、完成したそうだ」
──かつて千冬が所属していた、世界最大クラスのIS企業に招致されたことを。
そして、織斑一夏が現時刻を以て。日本予備代表候補生となることを意味していた。
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