あなたが選ぶ競争馬の道   作:6LD

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競争馬名募集は終了しました。

採用された馬名はにかわさんの「サイレントロード」となりました。
どれも良い名前でとても悩んだのですが、

・主人公の初馬ということであまり捻った名前にはせず英単語2つの組み合わせ
・競争馬命名基準にて「馬主自身の名称は冠名として認められる」ということから今回は冠名無しでの募集であるため「コマバ」はNG
・親トウカイテイオーと関連付けられポエム実況が作りやすい(メタ)

ということで自分の好みと合わせて決定しました。
皆様本当にありがとうございます。

そしてまだまだ説明回ですが、いよいよデビュー戦を決める段階となりました。
本格的な競争馬生のスタートです。是非皆様の手で歴史に名を残す名馬としてもらえれば幸いです。


目標3:新馬戦に出走

「ん?」

 

2月の春季キャンプ中、午後全休の日で身体をほぐしていた所に電話が来た。

この番号は……調教師さんか。定期的な経過報告をするという話でまとまっていたもののそのタイミングとはまた違う。はてさて良い報告か悪い報告か。

 

「もしもし、駒場です」

『お疲れ様です、池尾です。今お時間よろしいでしょうか?』

「構いませんよ、どうされました?」

 

休憩のタイミングとしては丁度いいので、とりあえず話を聞くことにする。……む、スポーツドリンクが切れている。持ってこなければ。

 

『先日育成牧場さんの方にサイレントロード号の様子を見に伺いまして。お話というのはサイレントロード号のデビュー戦についてです』

「もうデビュー戦の話ですか。仕上がりが早いのですか?」

『そういうわけでは無いのですが……』

 

なんでも、競走馬にはデビューする時期も大事らしい。

 

新馬戦というものは6月中旬がスタート時期となる。所謂素質馬と呼ばれる、例えば血統や馬体に見るべきものがある馬というものはこの6月から8月といった「早い時期」にデビューさせるのが現在の主流となっているらしい。現にここ数年、日本ダービーという競走馬に関係する仕事に携わるものとして目指す最高のレースにおいて好走している馬はこの時期のデビューが多いそうだ。

日本ダービーだけでなくそれを始めとした3歳限定のレースを目標に据えるのが競走馬調教においての基本となっており、それを見越して早めのデビューが好まれる。

 

特に競走馬生産と馬主を兼ねている、それこそ茶台系列の複数の牧場やヒュージブラッドファームのような所にとっては幼駒が6、7月に勝つというのはセレクトセールにおいての値段に直結する。

そういう商売事情も加味して、特に種牡馬デビューして1年目の産駒は早い内から走らせることが多いようだ。

 

今年は2010年、つまりは2008年生まれが2歳としてデビュー戦を行う年。ということは2007年種付けデビューが初年度産駒ということだ。

つまりは2006年夏頃~年末に引退し種牡馬となった競走馬。競馬に携わる者なら誰でも、そしてそうでなくても知っているビッグネーム。

 

「なるほど、今年はディープインパクトの初年度産駒のデビュー年なんですね」

『そういうことです。まあもちろん傾向というだけなので必ずそうであるという訳ではないのと、単純に早めにデビューすれば賞金を積むチャンスが多いというのもあります』

「賞金ですか。確かにお金はあって困るものではないですしね」

『あー……なるほど。まあそれもそうなのですが、そうではなくてですね』

 

なんでも、レースの出走登録自体には有料でこそあるが制限が無いものの、例えばじゃあ18頭しか参加できない日本ダービーに200頭も300頭も出走登録してそこからランダムで出走する馬を選ぶとかそういうことはあり得ないのである、とのこと。

言われてみればなるほどそれはそうであるが、ではどうやって出走する馬を決めているのかと言えば、そのレースまでに獲得した賞金を下に決められているそうだ。

 

賞金には「本賞金」と「収得賞金」の2種類が存在している。

前者はレースごとに着順に応じて支払われる賞金。例えば新馬戦なら1着700万円、2着280万円、3着175万円……といった具合だ。

そして後者は重賞レースであるGⅠ~GⅢの1着か2着、それ以外のレースの1着馬に加算される記録としての賞金であり、これはその馬が今どれくらいのランクにいるのかの基準となる。

 

あまり長くなっても困るから端折るが、新馬戦と未勝利戦で400万、所謂条件戦と呼ばれる500万以下戦では500万、3歳の7月以降から参加できる1000万以下戦では600万、1600万以下では900万円。簡単に言えば「3歳の6月までなら900万円以上、7月以降なら2500万円以上の収得賞金を稼げば出走除外の憂いを少なく賞金の高いレースに出走登録できる」というわけだ。

 

そして早めに走らせることが出来れば、それだけ純粋に賞金を積むチャンスが増える。まだ馬が少ない2歳限定のオープン戦や重賞戦に勝てれば今後、特に3歳限定戦……所謂クラシックでのレース選択に余裕が出る。

遅めのデビューの馬をクラシックを目指して無茶なスケジュールで条件戦に走り詰めにさせれば怪我のリスクも増えるし、パフォーマンスにも影響が出る可能性が高い。

 

特に2歳の早い内は500万以下戦の選択肢が少ない分そのクラスの強さの馬と一緒に2歳限定重賞を走ることになり、本当に強い馬にとっては賞金を早い内に多く積めるチャンスでもある。

もちろん、そこまでの実力が無くても早い内から走れば賞金がもらいやすいというのもあるが。

 

 

 

ふむ。

 

「仕上がりが早いわけではないんですよね」

『そうですね』

「クラシックを目指せるほどの馬ということですか」

『……』

 

そう、もし所謂素質馬でない……将来に期待が持てない馬であればこんな話をする必要は無い。条件戦を走らせてあわよくばオープンにいければいいなと思っていればいいし、事実自分もそういう考えでいた。

 

『……調教が順調、というよりは順調すぎると言ってもいいでしょう。調教助手時代から数えても、育成牧場でここまで早いペースで調教メニューを熟している馬はいませんね』

「そんなにですか」

『とにかく賢く大人しく、そして人懐こくよく従う馬ですね。こんな馬は初めて見ました。

ですが、どうも手を抜いている様子があるのですよね』

「手抜き?」

 

手抜き。

意味は分かるが、「調教が順調」という話と少々つながらない気がするが。

 

『教育のための軽い調教と、スピードを出すための強めの調教があるんです』

「はい」

『軽めの調教では騎手の言うことを聞いて真面目に走ってくれるんですが、しかし強めに追うと全く指示を聞かないんですよね。

自分の走りたいように走るというか……基本的には遅れすぎない程度に付いてくるんですが、「ここからスピードを出してくれ」という指示は全く聞かないんです。他の馬の同じような調教を見させたりして色々試してはいるのですが、あまり効果は無いです。

調教後に疲れを見せないことから、能力は間違いなくあるんですが』

「なるほど……」

『気性の問題だとは思うのですが、例えば去勢するなり馬具を取り付けるなりで対処できる問題とは思えず……自分が関わった馬にも実はこの馬は手抜きをしていたんじゃないか?と思える馬はいましたが、ここまで露骨に外から見てわかるのは初めてですね。私も正直どうしたらいいか困っているというのはあります』

「なるほど」

 

 

 

 

という問題点の下、改めてデビュー戦についてだ。

現在の調教では調教助手という厩舎に所属するスタッフが勤めているが、現役ジョッキーに依頼し現役馬と同じような調教を行うことを検討している。実戦での騎乗に慣れたベテランに依頼すれば何かが変わるかもしれないからだ。

だがベテランジョッキーというのは当然他の厩舎からも引っ張りだこなので、実際話が進むのは月単位で先の話となるかもしれない。

そして一人目のベテランジョッキーで上手く行くかも当然わからないので何人かに依頼する予定で、最初は池尾さんの友人の方から声をかけてみるそうだ。

 

 

 

 

 

まず池尾さんからは、馬体の作りを見るに距離としては短すぎると相性が悪そうで、将来のクラシック戦線を見据えるのであれば1800mや2000mといった新馬戦としては長めの距離のものに出た方が良さそうということ。

そして自分からは、折角の初の所持馬であるため自分で会場に脚を運んで見に行きたいということ。これに関しては「口取り式」とも呼ばれる勝利した際の記念撮影に関わるため、新馬戦だけでなく顔を出せるレースは出来れば顔を出してほしいとも言われた。もちろん自分も行けるなら行きたいがあくまで本業はプロ野球選手なので、そっちを優先するとは伝えておりそれを了承されている。

このことから早めデビューをするならオールスターゲームのある7月終盤となる。

 

それを踏まえて、新馬戦の候補として挙げたのは以下の4つだ。

 

 

 

1.7/25新潟1800

早めの新馬戦に挑むケース。この時期はプロ野球はオールスターなので自分は縁が無く休み。

7月終盤の長めの距離の新馬戦で自分が見に行けるのはここ以外に選択肢無し。

直線が長くスローペースになりがちな競馬場で、脚の形や馬体と走り方を見ると比較的相性の良さそうな競馬場で、活躍は期待できるとのこと。

懸念点は輸送距離が長く体調が心配であること。輸送の問題から基本的に新潟新馬は関東の美浦所属の馬が良く利用する場所だそうだ。

 

 

 

2.10/2阪神1800

秋開催の主要競馬場。

なんといっても栗東所属厩舎であるため輸送が楽というのがポイント。自分も自宅から遠くないので見に行くのが楽なのは嬉しい。

ここからのスタートでも順調に勝てれば2歳GⅠである朝日杯や年明けの2000m重賞京成杯に十分間に合う他、負けても未勝利戦は時期が後になるほどに距離が伸びていく傾向にあるため、勝っても負けても除外されたとしても次走の選択肢が幅広い。

特にこれといった懸念点が無いことが強みだ。強いて言うなら早めに輸送を経験させ慣れさせたいというならそれは出来ないという点か。

 

 

 

3.11/28東京2000

東京競馬場としては年内最後の開催で、ジャパンカップの当日同会場。

輸送の問題はあるが、ダービーを始めGⅠなど重賞が複数あり一度は経験させておきたい競馬場。

ジャパンカップ当日ということで複数の有力ジョッキーが会場に顔を揃えており、もし手が空いていれば騎乗依頼が通る可能性が他と比べて高いのが利点。

ここで能力を披露しその有力ジョッキーにそのまま後のレースにも乗ってもらえれば文句無しだろう。

問題は上記は絵に描いた餅であることと、最終開催ということで芝の調子が悪いであろうことか。

 

 

 

4.12/25中山2000

年末の中山で、有馬記念の1日前。

後の皐月賞と同じ舞台同じ距離で、主要競馬場での出走に慣れさせるのであればここからというのも悪くは無い。

ただここに出て皐月賞を目指すなら、休養も考えると連勝か格上挑戦しない限りはローテが厳しい。順調に勝利したとしてもここ→1月に1勝クラス→2月休養→3月にトライアルから短期放牧→4月皐月賞→5月ダービーと使い詰めになるかもしれない。

結果と体調次第で皐月賞を捨ててダービー1本に絞るか、1勝クラスを捨てOPや重賞に直行など、ローテを捻るのもやむなしだろう。

懸念は新潟ほどでは無いが輸送の長さ、そして人気のある主要競馬場であるため多少除外の可能性が残る。

逆に言えば他頭数という重賞など人気レースと同じ条件になりやすく、地力を図るためにちょうど良いとも見れる。

 

 

 

 

といった具合だ。年明けデビューは現状考えていない。

 

阪神を除きどれも一長一短だが、そもそもとして「素質がある」というものの実際それがどれくらいなのかとかは自分にはわからないので、ある程度調教が上手く行ったという確信を調教師さんが持てるまで待つというのは個人的にはかなりありな気がする。

しかし早めデビューの利点はさっき説明されたとおりで、それに関しては自分もかなり納得できる。

うぅん悩むが……新馬戦は……。

 




>ディープインパクト初年度産駒
最終的にこの年2010年、初年度産駒の2歳戦獲得賞金ランキング(5.37億)と初年度産駒2歳戦勝利数ランキング(41勝)において父サンデーサイレンスを越え単独1位。
初年度産駒の数がサンデーより多いというのもあるが、それでも凄まじい記録なのは間違いない。

>500万以下、1000万以下、1600万以下
現在における「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」。この年代ではまだこの表記。
収得賞金に関するルールは変わっていないので、未勝利戦勝利+重賞2着とかで1勝しかしてないけど3勝クラスにいるっていうことは現在でもあり得る話。

>池尾さんの友人
池尾さんの同い年幼馴染で現役ジョッキー。
一体どんなレジェンドなんだろう……。

>アンケートについて
選択肢の後に「!」が複数付いていますが、これは「後の展開に影響を及ぼす度合い」を示しています。最大5で多ければ多い程影響が大きくなります。
この影響は良い方向である可能性もあれば悪い方向である可能性もあり、「これを選べばOK」という訳ではないです。
悪い方向にわかりやすい例だと、この選択肢が選ばれると予後不良確定という場合最大の!!!!!表記となります。
安定を選ぶか波乱を選ぶか。皆様の選択を楽しみにお待ちしております。


>新馬戦アンケート
期限を7/11の12:00とします。
次話投稿は7/12の12:00予定です。

新馬戦はどれを選びますか?

  • 7/25新潟1800(!!!!)
  • 10/2阪神1800(!!)
  • 11/28東京2000(!)
  • 12/25中山2000(!!)

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