ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート   作:468(ヨルハ)

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Part15 迷子の侍注意報

 

 

 ノエルとフレアとの禍根がなくなり無事に友人関係となった。

 心配してくれていたみんなにそう報告すると笑顔で祝福してくれた。まあ一部では「そのノエルって先輩に頭を撫でられたってどういうことかな、かな?」と詰め寄られたりもして伝えるべき情報の厳選は大切なんだなと思い知ることになったが。

 

 そんなこんなで学園生活は充実して過ぎてゆき、今日はホロライブ学園に入ってから初めての週末。

 すなわち休みの日である。

 

 今日の悠の予定は何もなし、完全にフリーな1日となっていた。

 実際にはラミィやフブキから誘い自体はあったのだが、それぞれ急に家の事情が入り断念することになった。2人の家の大きさを痛感した瞬間だった。

 

 

 

 朝の内にやるべき日課を終わらせてすることがなくなった悠は近くの商店街まで足を運んでいた。

 具体的に何かを買いたかったからというわけではなく、何かいいものがあればいいなという行き当たりばったりな理由からである。

 しかし今までの経験則からしてこう思って出かけたらその度に有用なものが見つかったりするので、意外とこういう感性というのは馬鹿にできないなというのが正直なところ。

 

 休日ということでいつもよりにぎやかな喧騒が鼓膜に響く。

 見えるのは子連れの女性に老夫婦、商店街という場所なだけにやはり自分のような未成年の学生の姿は少ないようだ。

 

 

 

 ふと、視界の端に映った小さな露店に視線が固定される。

 無造作に広げられたブルーシートに乱雑に商品が提示されており、胡坐をかくフードを被った店主といういかにもな()()()()()感が漂ってくる。

 普通であれば特に何も思うことなくスルーするところではあるが、視線が吸い込まれたようにそこから外すことができず、気づけばその露店の前まで歩を進めてしまっていた。

 

 

 

「らっしゃい」

 

「あ、どうも…」

 

 顔をこちらに向けることもなく店主は短くそう言う。

 それに何とも言えない気持ちになるが、まあせっかく来たということで商品を見てみる。

 

 

 

 まあハッキリ言ってガラクタばかりであった。

 悠は自宅の地下に大規模な工房を持っており、繊細なインテリジェントデバイスであるストライクハートの改修、メンテナンスを1人でできるほどである。機械系統にはめっぽう明るく造詣も深い。

 そんな悠の眼から見てもこの露店の商品はまともなものは少なかった。

 

 ただし、それはあくまで商品をトータルとしてみた場合ではあるが。

 確かに一見すれば最初の感想通りガラクタばかりである。商品単体で使えそうなのはまともになく、見た目も煤けているものは多い。

 しかし使われているパーツが非常に珍しいものが多いのだ。

 少なくともこの町で手に入るパーツはほとんどなく、流通数も少ないものが多い。

 まさに知る人ぞ知るといった宝の山。

 

 しかしだからこそ悩ましい。

 現在の悠の手持ちは多くない。提示されている金額も正体を知っている人からすれば破格だが、それでも現状ただの学生である悠にとっては決して安いものではなかった。

 

 あーでもないこーでもないと悩み、ふと一つの指輪を見つける。

 小さな鉱石が埋め込まれた素朴な指輪。だが魔力を扱う人からすればそれがただの鉱石出ないことは一目瞭然、それは魔力を秘めた鉱石───魔石だった。

 

 

 

「店主さん、この指輪は?」

 

「ん?…ああ、それは曰くなんらかの魔術的な加護を秘めた魔石の指輪らしいんだが…その加護が何だか分からん妙なシロモノさ」

 

「分からない?」

 

「ああ。少なくとも付けた奴はそれが何の加護なのか分からんかったらしい。んでつけても何の意味もない、下手したら呪われるかもしれないシロモノなんぞ誰も持ちたがらん。そんな経緯で流れ着いたもんだ。一緒に買うならまけておくが?」

 

「…」

 

 悠は顎に手を当てて思案。

 確信はない。持って帰って工房で調べてみないと正確なことは分からないが、なかなかに希少な能力がありそうだと悠の機械工学者としての勘が言っていた気がした。

 

 

 

「…じゃあこの指輪と、コレとコレを」

 

「まいど。またご贔屓に」

 

 結局購入を選択。

 これが正解かどうかは分からないが、買ったことをいまさら言うまいと待機形態のストライクハートに買った指輪とガラクタを収納する。

 店主に1つ礼をすると、悠はその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからはぶらりぶらりと特にあてもなく商店街を練り歩く。

 時折お得な商品を見つけては購入しストライクハートに収納。それを何度か繰り返し、商店街の中央付近に着くと、なにか焦りを含んだ少女の声が聞こえてきた。

 

 

 

「ぽこべぇ~どこでござるかー!」

 

 目にしたのは1人の和のイメージが先行する衣装をまとった少女だった。

 淡い金髪を木の葉のようなリボンでポニーテールにしており、瞳もまた色素の薄い浅葱色。身に着けている羽織も髪と瞳に似通ったカラーリングをしている。

 そしてなによりは背中に差している一振りの刀。

 純朴そうな少女ではあるがその刀が相まって周囲の人は彼女を恐れて距離をとっている。

 

 悠は周りの人たちの対応にわずかに嘆息をつく。が、今はそんなことをするより優先することがあると少女に近づいて声をかけた。

 

 

 

「あの、誰か探しているんですか?」

 

「へ?」

 

 少女がこちらに振り向き、その拍子にまとめられた金髪が揺れ光を跳ね返す。

 目をパチクリさせて周囲をきょろきょろを見渡す。そしてようやく自分に話しかけているのだと気づいた少女は慌てて頭を下げた。

 

 

 

「あわわ、ごめんなさいでござる!かざまのことだとは気づかずつい…」

 

「気にしないでください。それより誰かを探しているのでは?」

 

「そう、そうなのでござる!ひじょ…お供の『ぽこべぇ』という狸を探していて…さっきまでは一緒だったのが気付いたらいなくなってしまっていたのでござる…」

 

「ひじょ?」

 

「聞かなかったことにしてほしいでござる」

 

「あっはい」

 

 初対面の人に圧を感じたのは初めてである。

 それにしても尋ね人ならぬ尋ね狸だとは思わなかった。

 しかしまあだといって聞いてしまった以上手伝わないという選択肢は悠にはない。

 

 

 

「探すの、手伝いますよ」

 

「え?いや、気持ちはありがたいでござるがそんな見知らぬ人に…」

 

「悠。星宮悠です。これで、見知らぬ人ではないですよね?」

 

 それは些か強引ではないだろうかと少女は思った。

 悠もまたそれは自覚していたが、少女のような手合いは多少強引に行かなければ手伝わせてはくれないというのを悠の経験が物語っていた。無論これでもなお遠慮されたり嫌がられたりしたら悠としても引き下がるつもりではいたが。

 そしてその考えは彼女に対しても例に漏れず

 

 

 

「…分かったでござる。わたしは『風真いろは』、しがない侍でござるよ。よろしく頼みます悠殿」

 

「はい、よろしく頼まれました。さっそくなんですけどその『ぽこべぇ』の大まかな特徴って分かりますか?魔法で探すので教えていただけると」

 

「魔法が使えるでござるか!?」

 

 魔法という単語が聞こえた瞬間いろはは目を輝かせて詰め寄る。

 

 

 

 

「あの、近い…です……」

 

「へ?…っあ………」

 

 さしもの悠もさすがにたじろぎ赤面しながら曖昧に返事を返す。

 すると興味津々といった様子だったいろははピタッと立ち止まり今の状況を再確認する。

 いろはの両の手は悠の手をしっかりと掴み、体はあと数センチ進めば触れてしまうほどに近い。魔法という存在に興奮してしまったとはいえどう考えても初対面の異性相手にやっていいレベルを超えていた。

 

 いろははスススッと悠から離れて1つ咳払い。耳まで赤くなった顔を深呼吸することでどうにか落ち着かせるとぽこべぇの特徴を伝える。

 それに対して悠はこの1ヶ月で多少女性の扱いを理解してきたのか、特にツッコむこともなく胸元からストライクハートを取り出し魔法陣の構築を開始。杖形態(アクセルモード)にしていないため多少構築まで時間がかかったが、完成させた魔法陣を足元に展開、索敵魔法『エリアサーチ』を発動させた。

 その一連の光景にいろははさらに目を爛々とさせる。さすがにもう悠に詰め寄るようなことはなかったが。

 

 『エリアサーチ』とは索敵機(サーチャー)を生み出す索敵魔法である。

 しかしその範囲は探し物をするには少々狭い半径100m。よって悠は索敵のエリアを今いる中央エリアを含めた悠が通った道の反対側に限定した。

 理由としてはいろははぽこべぇとは先ほどまで一緒にいたと言っていた。であれば距離自体はそこまで離れてはいないはずだし、ゆっくり商店街の道を練り歩いていた悠がいろはたちの姿をここまで見ていないということはいろはたちが来たのは悠が通った道とは反対側だろうという読みだった。

 

 案の定ぽこべぇなる狸はすぐに見つかった。

 悠たちのいる場所からほど近くの裏路地で頭を抱えて震えている。なんとも人間臭い仕草だなと思ってしまったが、そんなぽこべぇに近づく影に気づいた悠は即座にいろはに警告を飛ばした。

 

 

 

「見つけた…けどまずい。誰かががぽこべぇに近づいてる。物珍しさから見てるだけならいいけど、タチの悪い輩だったら…」

 

「!すぐに行かないと!!待ってるでござるよ!!」

 

「ちょっと待った!!」

 

「どうしたでござるか!?早くいかないと…」

 

「そっち、ぽこべぇとは逆方向」

 

「………」

 

「………いきましょう」

 

「…………………………はい」

 

 『エリアサーチ』の情報はいろはにもしっかりと伝わっている。

 ああ、方向音痴なんだな。と思った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠を先頭に手をつかまれたいろはがそれに追従する。

 手を握って移動している理由としては単純に「はぐれそうで怖いから」である。

 そしてほどなくしてサーチャーに反応があった裏路地に入るとそこには今まさにガラの悪い男に連れていかれそうになっているぽこべぇの姿があった。

 悠はそれを見ると加速、ぽこべぇを掴んでいる腕を掴まえて睨みをきかす。

 

 

 

「その手を放してください」

 

「あぁ?てめぇには関係ねえだろ!こいつは俺のペットだ、なんか文句あっか!?」

 

「…は?」

 

 男の口から息をするように出たデタラメ。

 そのあまりの自然さに何も知らない悠であれば一考する程度の時間は稼げたであろうが、今回に限って言えばものの見事に一瞬で嘘だと看破されてしまった。

 

 チラッとぽこべぇを見てみる。

 見られた狸は悠と目が合うとブンブンブンと全力で首を横に振る。ますます人間臭いと思ってしまった。悠は男をすごく残念そうな人を見る目で見ると後ろにいたいろはに視線を投げかけて促す。

 いろははそれに頷き1歩前に出た。

 

 

 

「ぽこべぇは風真の大切なひじょう…お供なのでござる!返してもらうでござるよ!!!」

 

 やはりこの少女、お供たるぽこべぇを非常食として見てないだろうか。

 そんな悠の視線は華麗にスルーされた。

 

 

 

「うるせえ!たてついてんじゃ…ねえ!!!」

 

 男はぽこべぇを掴んでいないもう片方の手をいろはに向ける。

 男としては今時珍しい生き物だから売れば多少の金になるだろうという軽い気持ちで今回の犯行に至った。それが突然やってきた男女にここまで邪魔をされたことでただでさえ短い堪忍袋の緒がいとも簡単に切れてしまった。

 

 衝動的なうえにあまりにも雑で大振りすぎる拳。

 避けるのは簡単だがいろはとて人間、気心知れたお供を連れ去られようとして腹の内に何も溜まらないわけではない。

 背中に差した愛刀『チャキ丸』に手をかけようとして

 

 

 

 パアンッ!

 

 

 

 振りかぶっていた男の腕が乾いた音とともに弾かれたことによりその手が止まった。

 

 

 

「は…?」

 

「え……?」

 

 2人して弾かれた腕の先を見る。

 そこには1つの光る球体。色は鮮やかな瑠璃色で、それが魔力によって作り出されたものだとすぐに気づいた。

 その球体───魔力球はヒュンヒュンとその場を高速機動、すると弾かれたように上に跳ね上がって…すさまじい勢いで男の脳天に落ちてきた。

 

 

 

「おぶ!」

 

 パコォン!と先ほどとは違う軽快な音を立てて男は地に伏し完全に沈黙。

 いろはもさすがに毒気を抜かれて「ええ…」みたいな顔。

 魔力球はそのまま悠の手元にまで飛んでいき、淡い光とともに消えた。

 悠はどこか苦笑いを浮かべながら謝罪する。

 

 

 

「邪魔しちゃったならごめんなさい。でもこんなところで刀を振るうと後々面倒なことになりそうだったので」

 

「あ、いや。助かったでござる。…あ、そうだぽこべぇ!」

 

 いろはは思い出したかのようにぽこべぇの元に走ると持ち上げて抱きしめる。

 どうやら怪我も特にないようでいろはは安堵の息を漏らす。

 

 

 

「よかったですね」

 

「うん、本当に良かったでござる。それもこれも全部悠殿のおかげ。感謝するでござるよ!」

 

 いろははそう言って悠に屈託のない笑顔を向ける。

 それにつられて悠もはにかんだ。

 

 

 

 

 

 裏路地から抜け出して今は商店街の入り口。

 自分も商店街での用事は終わったのでいろはに別れを告げて帰ろうとすると、袖を引っ張られて止められた。

 

 

 

「…風真さん?」

 

「…いろは、でいいでござるよ。さんもいらないでござる。見たところ年も変わらないと思うし…かざまだけ名前というのはちょっと距離を感じてしまうでござる」

 

「あ、ええと……じゃあ、いろは」

 

「うん、それでいいでござる!」

 

 いろはは悠の言葉に対して満面の笑み。

 そしてすぐさま恥ずかしがるような申し訳ないような顔になってモゴモゴと口を開く。

 

 

 

「それで、ええと…お願いついでで申し訳ないのでござるが…」

 

「?…どうかしたの?」

 

「…駅までの道、教えてほしいでござる」

 

 「1人ではちょっと…」と声を小さくしながら指をツンツンとさせて言ってくるいろはに悠は激しいデジャヴを感じ、乾いた笑いをしながらいろはの手を引いて駅までの道を連れ添った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれと同時刻、雪の一族の令嬢たる水色のハーフエルフが盛大なくしゃみをかましていた。

 

 

 

「ふえっくしょいあー--い!!!」






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