ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート   作:468(ヨルハ)

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Part19 秘密結社holoX①

 

 

 

 

 

 ホロライブ学園を擁する巨大都市、その中心地からわずかに外れた住宅区。

 俗に「ベッドタウン」と呼ばれるその場所に()()はある。

 

 

 

 古ぼけた4階建てのビル。

 設置された窓ガラスには堂々と『秘』『密』『結』『社』と書かれた文字ステッカーが貼られており、それを見るたびに秘密結社という意味を問いたくなってしまう。

 ちなみにこれはそのビルを所有する組織の長たる総帥のご意向で、わざわざ付けた理由が

 

「え、だってカッコいいだろ?」

 

 だったのには構成員の過半数がため息をついていた。

 

 

 

 そしてそこに入り込む1人の少女。

 両手に段ボールを抱えているがその足取りは非常に軽く鼻歌もこぼれており浮かれているのがよく分かる。カンカンカンッと階段を一息に駆け上がり、主な生活スペースになっている3階に一切息を荒げずに辿り着くと勢いよくその扉を開け放った。

 

 

 

「ただいま戻ったでござる〜!」

 

 バァンッと音が鳴り響く。

 水晶のような浅葱色の瞳に後ろでひとつに束ねられた淡い金髪、瞳と同じ浅葱色の羽織を身に着けている独特な語尾を持つ少女の正体は風真いろは。

 本人曰く"しがない侍"でありこのビルを拠点として活動する組織『秘密結社holoX』の用心棒である。

 

 

 

「お、戻ったかサムライ」

 

「おかえりいろは。荷物取りありがとね」

 

 そんないろはの帰宅の言葉に返事を返したのが2人。

 

 1人は銀の長髪をなびかせるあどけなさが抜けない見た目童女のような少女。しかしてその頭には実にその容姿からは不釣り合いな2つの大きな角を生やしている彼女の名前は『ラプラス・ダークネス』。

『秘密結社holoX』を設立した張本人であり、総帥。

 

 もう1人は短く切ったワインレッドの髪にマントを羽織ったラプラスとは正反対の大人を感じさせる女性。頭に折りたたまれた鳥の羽と彼方を見通す鷹の目を有する彼女の名前は『鷹嶺ルイ』。

 『秘密結社holoX』の女幹部にして交渉事やその他諸々(面倒事)を担当する実質的な組織の司令塔。

 

 

 

 ここにいる3人にあと2人を加えた5人が『秘密結社holoX』の構成員。

 そして『秘密結社holoX』とは、総帥たるラプラス・ダークネスの夢である「世界征服」を目的に活動する少数精鋭の秘密組織である。

 

 …と銘打ってはいるが、実際のところラプラスの考えている「世界征服」とは一般に思われている権力や恐怖による世界征服とは全く異なるし、holoXの活動内容ももっぱら資金調達のために要人護衛からアングラ系まで様々な依頼をこなすいわゆる「何でも屋」のようなものだ。

 総帥のラプラスとしても仲間と過ごす現状には割と満足しているし、いろはやルイ、そして他の二人もそれが分かっているからこそみなを仲間として、もうひとつの家族として認識しそれぞれが思い思いに過ごしている。

 

 

 

 

 

 いろはは持っていた段ボールを床に置くと逸る気持ちをどうにか抑えて背中に差していた愛刀『チャキ丸』を握り一閃。直後、ピッと音がなったと思うと段ボールを固定していたガムテープがその切れ目に合わせて切り裂かれていった。

 

 

 

「あの一瞬でガムテープだけ切る腕前はさすがだが、たかが開封に使われる刀の気持ち考えろよ」

 

「チャキ丸は刀だから物事を考えたりはしないでござるよー?」

 

「そーゆーことじゃねえよ」

 

 すでに関心が段ボールの中身に向いていることによるいろはの雑な返答にラプラスはツッコむ。

 そんなラプラスをよそにいろはは段ボールの中を漁りだし、ルイはそろそろ残りの2人も帰ってくるであろうとお風呂と夕飯の用意を始めた。

 

 

 

「おおぉ、やっときたでござる~!」

 

 段ボールを漁っていたいろはが中身を取り出し歓喜の声を上げる。

 その手に持っていたのはシャツにブレザーにスカート…要は学園の制服であった。いろはが取り出したもの以外にもサイズの違うものが段ボールの中に入っており、その数は計4つ。

 いろはは鼻歌を歌いながらその場で目にもとまらぬ早着替え、あっという間にその装いを新たにしていた。

 早着替えは侍の嗜み(本人談)らしい。

 

 

 

「じゃーん!どうでござるか?」

 

「テンション高くね?」

 

「転入も2週間切ってるからね、逸る気持ちも分かるよ。あ、それとも…()()に会えるのが楽しみだったり?」

 

「ちょお、ルイねぇ!?いきなり何言ってるでござるか!?」

 

「あ、フライパンの様子見なくちゃ」

 

「ルイねぇ!!?」

 

 いきなりルイからぶち込まれた爆弾にいろはは顔を真っ赤にして大慌て。もうその時点で墓穴を掘ったも同然ではあるが、追撃と言わんばかりにあからさまな話題ずらしでその場から立ち去ったルイを見ていろはは膝から崩れ落ちた。

 ラプラスはそれを見て大爆笑である。

 

 と、どこか漫画のようなワンシーンの光景が巻き起こる中、入口の扉が開き2人の人が入ってきた。

 

 

 

「たっだいまーって、なーにこの状況?」

 

「ただいまー!あー!いろはちゃんカワイー!!」

 

 そこにいたのは2人の少女。

 

 ふわふわとしたピンクのロングヘアーに薄紫の瞳の獣人の少女。試験管のついたベルトや白衣を身に着けたいかにも研究者然とした格好の彼女は『博衣こより』。

 『秘密結社holoX』の頭脳にして格好通りの研究者。

 

 もう1人はラプラスよりやや暗いシルバーグレイの髪に深紅の瞳を持つ少女。黒いフード付きのパーカーが特徴的な彼女は『沙花叉クロヱ』。

 『秘密結社holoX』では一番の新人で研修(インターン)生にして掃除屋。

 

 これにて『秘密結社holoX』、全員集合である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いろはちゃんそれってホロライブ学園の制服だよね!もう届いてたんだ~!」

 

「ちょ、さかまたばっちいでござるよ」

 

「ねえええ!!!なんでそんなこと言うの!!?」

 

「はいはい、クロたんはまずお風呂入っちゃおうね~」

 

「やあだあああ!!!」

 

 いろはに抱き着こうとしたクロヱが抵抗むなしくこよりによってお風呂場に連行される。

 任務帰りだったのか沙花叉の体にはいたることろに血が付着していた。本人がいたってケロッとしていたし彼女の実力はみなが認めているので返り血だろうとだれも心配しなかったが、そんな状態で抱き着いてこようとすればさすがのいろはもこの反応である。

 

 

 

「相手は?」

 

「畑を荒らしてた害獣。向かわせたのはクロヱだけだったけどこよりは多分別件で動いてたのかな」

 

「ふーん」

 

「聞いておきながらそれか。みんなも順番にお風呂入っちゃいな」

 

「了解でござる~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 お風呂も終わり夕飯の時間。

 全員がそろってテーブルにつくと手を合わせて食事を開始した。

 

 

 

「んー、やっぱルイルイの料理はおいしい!」

 

「ありがと、こよ」

 

「あーラプ殿、お野菜も食べなきゃダメでござるよ」

 

「現在進行形でナスを生食してるおまえも大概だろうがちゃんとメシ食えよ」

 

 ちょっとした雑談交じりの食卓。

 和気藹々とした雰囲気の中、話題は食卓に乗ったある料理に行きついた。

 

 

 

「そういえばルイルイが揚げ物って珍しいね、洗い物が面倒だからって普段あんまり作らないのに。何かいいことでもあった?」

 

 こよりが箸で皿に乗ったコロッケをとりながら問う。

 それに対してルイの返答は何とも意外なものだった。

 

 

 

「あ、これ用意したの私じゃないよ。これはラプ」

 

「ええ、ラプラスが!?」

 

「おいしんじん、後で吾輩への態度について話す必要がありそうだな」

 

 いかにも信じられないといった表情のクロヱにラプラスは圧をかけながら自身もコロッケに箸を伸ばす。

 

 

 

「まあ別に吾輩が作ったわけじゃないんだけどな。これは貰いもんだよ」

 

「貰いもの?」

 

「ああ、なんか帰り道の公園でコロッケ食ってるやつがいてな。じっと見てたらなんか貰った」

 

「…ラプ、それは強請(ねだ)ったってやつじゃ」

 

「目は口ほどものを言うってやつでござるな」

 

「やかましいわ、お前らも食ってる時点で同罪だよ同罪」

 

「まあそれを言われると…それよりちゃんとお礼は言ったの?名前とかは?」

 

「さすがの吾輩もそのくらいの常識はあるっての!名前は確か…」

 

 

 

 

 

 瞬間、フッとアジトの電気が消え、視界が暗闇に染まった。

 

 

 

 

 

「「「「「!」」」」」

 

 それを知覚した瞬間にholoXの面々は警戒状態へと移行する。

 いろはとクロヱは己が得物を手に取り、ルイとこよりはラプラスを守るように寄り添う。

 

 

 

「敵の気配はなし」

 

「変な音も匂いもしないよ、少なくとも、今すぐ何かを仕掛けられるわけじゃなさそう」

 

 少数精鋭の通り、それぞれの行動は的確で明確。

 すると、背後に設置してある大型モニターがひとりでに起動した。

 

 そこに表示してあったのは一人の人間の黒いシルエットと背後の謎の機械群。

 すなわち、ハッキングによる強制的な回線の接続だった。

 

 

 

「やあ、食事中だったか。これはすまないね」

 

 聞こえてきた声はなんとも皺がれた老人のような声だった。

 その声に覇気はなく、圧力も感じず、そしてそれゆえにどこか不気味さを感じさせる。

 

 

 

「ああ、実に傍迷惑だ。早々に切ってくれるとありがたいが?」

 

「ふっ、そう邪険にしないでくれたまえ。一つ仕事を頼みたいのだよ。『秘密結社holoX』の諸君」

 

「…チッ」

 

 ラプラスの言葉にも老人は一切動じず要件を告げる。

 その傍らで簡易キーボードを操作していたこよりに目配せてみると、返ってきたのは首を横に振る否定の意。

 ただの古ぼけたビルと侮るなかれ、holoXの頭脳たる博衣こよりが作り出した電子的なセキュリティは強固なものである。少なくともそこいらのハッカーに破られるほどやわではなかったし、それは今日までの実績が証明している。

 すなわち、異常なのはそれをここまで容易くこじ開けた相手側の方である。

 

 

 

(はかせ力作のセキュリティウォールを易々と突破してきて、カウンターも現状不可能。ここは話を聞くしかないか)

 

 ラプラスは次にルイに視線を送る。

 それに頷いたルイは一歩前に出ると凛とした声を張る。

 

 

 

「それで、わざわざハッキングしてきてまでの要件とは?」

 

「なに、そんな難しいことではないよ。私が頼みたいのは、とある人物の始末だ」

 

「!…随分と物騒ですね」

 

「予想くらいはしてたのだろう?それに、諸君らはこういったアングラ系の依頼もこなすと聞く」

 

 始末、すなわち人の命を刈り取る事案だ。

 無論、この手の依頼は裏稼業に足を踏み入れている者にとっては切っても切れぬ縁である。

 復讐、正義、あるいは快楽的理由から度々彼女らのところにもそういった依頼は舞い込んでくる。

 そして、その中のいくつかを、彼女たちはこなしてきた。

 

 

 

「…対象は?」

 

「ほう、受けてくれるのか。嬉しいねえ」

 

「勘違いしないように、受けるかどうかはこちらが決めます。依頼であろうと罪なき人の命を摘み取るほど私たちの天秤は軽くない」

 

「これは手厳しい。が、いいのかね?自分たちが今現在どういう状況か、よもや分からないわけではあるまい」

 

「ッ…!」

 

 ルイが歯がゆさから唇を嚙む。

 要は引き受けなければおまえたちから始末する、ということだ。

 前触れもなく引き起こされた停電(ブラックアウト)、電気系統は完全に掌握されている、すなわちここは敵の胎の中といえるだろう。

 こちらとて素人ではないが、何が起こるか分からない以上ここで逆らえば誰かが犠牲になる可能性は完全には否定できない。

 

 それが分かってしまうから、そしてそれを覆すだけの力がないことが、子どもを守る大人であり生徒を導く教師である自分が守ると言い切れないことがどうしようもなく嫌になる。

 

 

 

「なに、依頼をこなしてくれればいいだけの話だ。報酬もしっかり用意しているとも」

 

 

 

 

 

「それに、ヤツは罪人だ。民を見捨て、我が国の至宝を盗み出し、取り返そうと放った我らが同胞を殺した大罪人だ!」

 

 老人の声に初めて感情が宿る。

 そこに込められたのはただひたすらの憤怒。

 抑えられぬ負の感情が言葉に乗って発露する。

 

 

 

「…その対象とは?」

 

「ああ、そうだったな。私としたことがつい昂ってしまった」

 

 老人はそう言うとモニターに新たなウィンドウを表示させる。

 そこに映っていたのは一人の少年の顔写真とプロフィール。

 

 それを見た瞬間、holoXの全員の顔色が変わった。

 

 

 

「……」

 

「なっ…」

 

「!……」

 

「ふーん…」

 

「…うそ………」

 

 

 

 

 

「始末してほしい対象とは、ホロライブ学園1年…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星宮悠だ」






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