ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート 作:468(ヨルハ)
Part21 純白の少女①『天と雪と白銀と』
ゴールデンウィーク。
それは年度のはじめ、4月の終わりから始まる生きる人すべての夢見た期間。祝日という祝日が重なり訪れる超大型連休。
学校から、職場から、あらゆるものからひと時の間解放されるまさに黄金週間。
日々の苦労から解放された人たちのゴールデンウィークの過ごし方は様々である。
思いっきり羽を伸ばして安らぐ人もいればこれを機にと自身の趣味に没頭する人もいるし、はたまた寝る間も惜しんで鍛錬に明け暮れる人もいるだろう。実家から離れて暮らしてる人は帰省し家族団欒を過ごしたり、人によっては仕事を入れて金を稼いだりもする。
要はみな普段ではあまりできないようなことをすることが多いのだろう。
では悠の周りの人たちはどうかというと。
「あたしは休んでた傭兵稼業の復帰でいったんここを離れるよ。割のいい仕事もあるし、それで装備も新調したいからね」
ぼたんは
「コノ時期はオヤジが帰ってこいってしつけーノヨ。マアあっちでやりたいこともアルシ今年はむこうで過ごすカナー」
「ンムム」と唸りながらココは家族と過ごすために帰省。
「白上は最初の数日は実家の事情で幽世に帰るかな~。でも戻ってきたら残りの時間は溜まってた積みゲーを消化していく予定だよ!ゆうくんも一緒にどう?」
フブキも帰省を選択。やはり実家から離れて過ごしてる面々は帰省を選んでる人が多いようだ。
ではでは帰省を選択しなかった悠を含めた他の面々はというと…
ドドドドドドドッ!!!
「もー何やってんですかノエル先輩!!!」
「いやーははは…申し訳ない…」
「2人とも言ってる場合じゃないから!ラミィ、まだ走れる?」
「も、もう…限界です……」
「ラミィちゃーーーーーん!!!」
閑散とした森の中をイノシシたちに追われながら全力疾走で駆け抜けていた。
「ごめんくださーい。星宮悠くんいますかー?」
事の発端は数日前、学園でのお昼休憩まで遡る。
いつも通りに1-Aの教室で卓を囲って悠がラミィ、かなた、ココ、ぼたんとともに食事をとっていると、控えめなノックとともにのびやかな声を上げて1人の女生徒が扉をわずかに開けながら教室内に顔をのぞかせていた。
「あ、教室の扉って全力で開け放たなくてもいいんだ」とクラスメイト達の偏った知識がひとつ矯正された中、少年少女たちの意識は一瞬でその女生徒の
それは、2年生を示す緑色のネクタイではなく。
それは、制服姿に優し気な印象を持つ女生徒が持つには少々似つかわしくない鈍色に光る一振りのメイスではなく。
それは、窮屈さゆえに開かれているブレザーにより殊更にその存在を強調している圧倒的なまでの大胸筋(意訳)である。
「でっっっか…!」
「やべ、鼻血が…」
「あ、あと1年あればボクだって……!」
突然の事態に大興奮のクラスメイト達(主に男子)のざわめきが巻き起こる。それに交じってなにやら悲しい友人の言葉が聞こえた気がしたがひとまずそれは置いておいて、予期せぬ人物の登場に真っ先に反応したのはその件の女生徒に呼ばれた悠であった。
「ノエル先輩?」
「あ、よかった悠くん。いてくれたんだねー。ここにいなかったら連絡入れるところだったよー」
探していた人物を見つけて女生徒―――ホロライブ学園2年の白銀ノエルはほっと安堵したような表情を浮かべて悠に駆け寄る。
ノエルが一歩歩み出すたびに女性の象徴が揺れ、それを見た男子生徒は湧き立ち、女子生徒は己のそれと見比べ、
ちなみに
そのままノエルは悠の前までやってくると、フフーンとどこかイタズラめいた表情を浮かべてその圧倒的な膂力を秘めているとは思えない細い手をおもむろに悠の頭に乗せて撫ではじめた。
「えへへ、やっぱり好きだな〜悠くんの頭撫でるの」
「なぁ!?」
先ほどとは打って変わってご満悦な表情のノエル。
これを見て男子生徒は嫉妬し、女子生徒は黄色い悲鳴をあげ、
「っな、何やってるんですか人前で!?」
「あ、じゃあ2人きりの時はいいんだね?」
「~~~~~っ!!!あまりからかわないでください!」
突然のノエルの行動に悠は動揺しいらぬ墓穴を掘ってしまう。
そもそもノエルとはフレアも含めてこれまで携帯端末でのやり取りがほとんどたった。学年が違うのもあるし、ノエルは
久々に会って最初にされることがまさか
あとなまじ撫でられるのもやぶさかではないと一瞬でも思ってしまった自分自身を全力で殴りたくなった。
もう何を言っても返しの言葉で封殺されるのがオチだろうと諦めた悠はせめて赤くなった顔は見せまいと机に頭を突っ伏して顔を隠す。そんなことをしてもバレバレなのは分かりきったことではあるがそこは気持ちの問題である。
そんな悠を見たノエルはニコーッと満面の笑みを浮かべて頭撫でを続行しようとするが、そこに待ったをかける声が上がった。
「ちょ、ストーップ!!!いいいいつまでやってるんですか!?」
「そそそそうですよ不健全です!!!」
「おぐっ…!」
ゴキッという音とともにあがった声は2人分。
1人目は悠の手を無理矢理引きながら自身の元へ引き寄せ声を荒げたハーフエルフ。
2人目は悠の頭を引っ張りノエルからはがして顔を赤くしながら叫ぶ天使。
誰であろう
ちなみに事の元凶たる悠はラミィとかなたからそれぞれ逆方向から引っ張られたため首が曲がってはいけない方向に曲がって悶絶していた。ちなみに先ほどの快音は首の関節が鳴った音であり決して首の骨が折れた音ではないことをここに明言しておく。
「えー、悠くんの頭って撫でてると触り心地よくて気持ちいいんだけどなぁ~」
「「…!」」
「…え、ちょっと待ってラミィにかなた、眼が怖いんだけど…」
ノエルの発言でラミィとかなたは一瞬固まるとグルンと顔を悠に向ける。しかしその瞳に映るのはこんな日常風景からは考えられないわずかな狂気、まるで狙いを定めた肉食動物のように悠の頭をロックオンしていた。
突如襲われた首の痛みからようやく復活できたと思ったらジリジリと近づいてくる2人を見て恐怖、どうにか2人の興味を逸らすために悠はノエルの話の続きを促した。
「そ、それでノエル先輩は何の用事で?」
「あー、そうだった!つい忘れるところだったよ~」
そう言いながらノエルは懐から1枚の紙を取り出して悠たちに見せる。その動作に悠たちは仮想訓練練習場に誘ってくれた時のフブキと重なったが、見せてくれた紙の内容を見てまず抱いたのは疑問符だった。
「…
「うん。この学園には課外活動の一環で様々な依頼が発行されていて、それを生徒たちは自由に受けることができるんだ~。依頼者は様々で、学園の教師だったり生徒だったり、あるいは学園外から依頼が舞い込んできたり。当然報酬も出るし、学園からの評価も上がるから人によっては精力的にやってる人もいるんよ」
なるほど、と納得した。
この学園は武を磨き、競い合う。
なればその武の力を有効活用しない手はない。それは学園側の認識であり、同時に学園外からの認識でもあるのだろう。
学園としては外部からの評価も上がるし、外部とのつながりが増えれば生徒たちの卒業後の進路の手助けにもなる。外部の人たちからしてもいざという時の信頼できる依頼先があるのはありがたいし、未来の即戦力を見繕うことができるまさにwin-winの関係性である。
「それは分かったんですけど…どうしてそれを自分に?こう言っては何ですけど誘われる理由というのが思い浮かばなくて…」
納得と同時に浮かんだのはその疑問だった。
たしかに悠は第1学年バトルロワイヤルの優勝者である。
戦った人たちがいる手前さすがに自身を過小評価するつもりはないが、しかしこの優勝は決して1人でつかみ取ったものではないし、これはあくまで1年生の中での話だ。
2年や3年といった上級生ともなれば自分より強い人、信頼できる人など数えきれないほどいるであろう中でノエルが悠を選んだ理由が悠には分からなかった。
「いやー、この依頼って団長に指名が入った依頼でね。ホントはフレアと一緒に受ける予定だったんだけど『GWは世界樹の防衛隊の方に顔を出さなきゃいけないから』って断られちゃって。それに依頼内容のことも考えると悠くんが一番かなって思っちゃったから」
「依頼内容?…!」
「そう、依頼場所はガルナ村。白銀聖騎士団管轄の
「…行きます!行かせてください!」
悠にとってはまさに渡りに船な内容だった。
3回連続で襲撃があったことからはずれの森に関してはいつかどこかでは調べなきゃいけないところだったし、それが依頼としてやってくるなら願ったり叶ったりだ。
「うん、それじゃあ決まりだね!この依頼の参加上限は4人までだからできればあと2人誘いたいところなんだけど…」
「「い、行きたいです!」」
「へ?」
ふと零したノエルの言葉にラミィとかなたが即座に反応する。
言ってしまった後でこう思うのはなんだがいきなりすぎたかなと2人は若干の反省をしていた。
2人のこの行動はほぼ反射的なものだった。ただ件の先輩と悠を2人きりにさせたくないという浅ましくも年頃の少女らしいわずかな独占欲。
先のことなんて何も考えていない衝動的な行動であったが、それでも2人は後悔はしていないのだろう。
予想してなかった言葉に一瞬面食らうノエルだったが、わずかな思案顔のあと笑顔を浮かべた。
「雪花ラミィちゃんに天音かなたちゃん…だよね?」
「え、名前…」
「バトルロワイヤルって参加者以外の人は観戦することができるんよ。2人のこともちゃんと見てたし学年内トップクラスの実力者なら不足もなし、悠くんが大丈夫なら2人にも頼もうかと思うけどどうかな?」
「断る理由はないです。2人のことは信頼してますし、一緒に戦ったこともあるので連携もできますから」
悠のその言葉にラミィとかなたはパッと花が咲いたような笑顔を浮かべる。
信頼されているというのはどうしたって嬉しい言葉である。それを言われたのが人としても異性としても気になっている相手からであればその嬉しさもひとしおだろう。
現にラミィは顔を赤く染めながら指先で髪をクルクルといじりだし、かなたも平静を装おうとしているが背中の羽がパタパタと動き出しその心情を露にしていた。
「よーし、じゃあ参加メンバーも決まったことだし、細かい話はまた後で連絡するね!団長は教室に戻ってお弁当食べてくるから!もうお腹ペコペコなんよ~」
グウウッとまるで予定調和のようにノエルの腹の虫が鳴る。タハハと恥ずかし気に苦笑いを浮かべ教室を去ろうとするノエルにラミィが声をかけた。
「あの、突然のお願いだったのに受け入れてくれてありがとうございます!えっと…」
ラミィが言葉を詰まらせたことでノエルはようやく自分がやらかしていた失敗に気が付いた。
「ああ、そういえばなんやかんやでまだ自己紹介もしてなかったね、失敬失敬。団長は2年生の白銀ノエル!秩序と安寧を守護する白銀聖騎士団の団長でもあるよ~。改めてよろしくね!」