ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート   作:468(ヨルハ)

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Part24 純白の少女④『悪魔の子』

 

 

 

 

 

「改めて、依頼を出させていただきましたガルナ村村長の相良(さがら)クロナです。この度は依頼を受けていただいて、そしてマシロを…儂の孫を助けてくれて、ありがとうございます」

 

 2人の護衛は家の前で待機させており部屋の中には村長とノエルとラミィ、そしてスクリーン越しの悠とかなただけ。

 備え付けられた椅子に向かい合うように座ると、クロナと名乗った老人が再び深く頭を下げた。

 

 そこに虚偽の感情は見られない。

 ただひたすらの感謝と安堵。先ほどのマシロを見ていた氷のような冷たい瞳はどこへやら、悠の背中で未だに眠っているマシロを見る瞳は温かさを感じる柔らかなものだった。

 そのあまりの変化に悠たちは戸惑いを隠せない。

 

 畏怖や嫌悪はないのか?

 先ほどのマシロを見る瞳は何だったのか?

 どうして、今こうやって頭を下げているのか?

 

 未だに何も言葉を発さない悠たちを見て大体の心情を察したのか顔を上げたクロナはあくまで冷静に言葉を続ける。

 

 

 

「重ねて申し訳ない。立場上、護衛(あの2人)がいる前では下手なことは言えないものですから」

 

「それは、どういう…?」

 

「そうですね、依頼の話の前にマシロと、この村の現状についてお話しすることにしましょう。彼女はまだ眠ったままですね?」

 

『え、ええ……』

 

 スクリーン越しのかなたと悠がマシロを見て頷く。

 クロナは悠たちに嫌悪されるであろう胸糞悪い話に苦い顔をしながらもその重い口を開いた。

 

 

 

 

「『悪魔の子』と、あの子はこの村では呼ばれています」

 

「悪魔…ですか?」

 

「ええ、みなさんもすでに理解しているとは思いますが、あの子…マシロはこの村において迫害の対象になっています」

 

「それは…はい」

 

 苦い顔で悠たちは頷く。

 村に入ってからクロナの家に入るまで、齢10にも満たないであろう幼い少女が村人という村人全てに畏怖と嫌悪を向けられるその光景は、間違いなく異常なものだった。

 それは個人の感情にとどまらない、村全体の共通認識の感情であることに他ならない。

 

 マシロは嫌悪されて当然だと、そうあってしかるべきともはや魂に刷り込まれたような狂気。

 

 

 

「そうなった原因はいくつか存在しますが、その中でも大きいものはガルナ村の環境と…そしてマシロの眼にあります」

 

「…!」

 

「『魔眼』というものは…あの学園にいる者ならご存じですね?」

 

 

 

 魔眼。

 それは読んで字の如く、魔の力を秘めた特別な目のことを指す。

 その眼自体に特有の魔力回路が存在し、魔法陣や詠唱といった魔法を扱ううえで必要な過程を飛ばして魔法を行使、あるいは『視る』ことで超常的な現象を引き起こすことができる先天的な特異体質。

 持ち主がその力に気付くのに時間の違いはあれど先述の通り先天的…つまりは生まれながらにして持つものでありそれを人工(後天)的に生み出した例は今現在でもただの1つとして存在しない。そのためその希少性は極めて高く、『魔眼持ち』と呼ばれる存在は常に表裏を問わずその類の研究者たちから標的とされており、表立って有名な魔眼持ちはほぼいないと言っていいだろう。

 

 伝承で語られているもので有名なものを挙げるならば視たものを石化させる「メドゥーサの眼」などがあり、ホロライブ学園においても魔眼持ちはごく少数ながら存在する。

 

 

 

『それって、まさかマシロちゃんも…!?』

 

「…その通りです。マシロもまた『魔眼』の持ち主なのです」

 

 悠たちはマシロを見ると息を吞む。

 クロナはそれを見ながらもあくまで冷静に続ける。

 

 

 

「マシロの魔眼の能力は『未来視』。その名の通り視たものの未来を見ることができる、魔眼の中でも破格といっていい代物です」

 

『っあ…!』

 

 それを聞いて一同は思い出した。

 森の中を歩いていた時のマシロのとある発言。

 

 

 

───…あ、おねえちゃん、危ない。

 

 

 

 あのマシロの発言の直後、かなたはロープトラップに引っかかってしまった。そのときはかなたを探すのに必死で深くは考えていなかったが、今思えばそういうことかと納得した。

 あの後悠が『エリアサーチ』で調べてみたところ、悠たちが通った道にはかなたが引っかかったものと同様のトラップがいくつも仕掛けられていた。その中には偶然引っかからず通り過ぎていったものもあり、もしマシロがトラップの存在を知っていて警告を飛ばすのであればかなただけでなく全員に向かって言っていたはずだ。

 

 つまり、マシロにはかなたがロープトラップに引っかかるという『未来が視えていた』のだろう。

 それ故の、あの発言。

 

 

 

「どうやら身を以て知っていたようですね」

 

「…はい」

 

「子どもというのは純真です。分かっていても抑えるべきことがあるということをまだ知らない。そしてそれが…もうひとつの理由につながります」

 

 そこで言葉を切ったクロナは一層顔をしかめる。

 同情、哀れみ、無力感。あらゆる感情で押しつぶされたように影が差した表情をするが、意を決してクロナは表を上げる。

 

 

 

 

 

「それこそがこのガルナ村の根幹をなすとも言っていい…閉鎖環境故に育った圧倒的な内輪主義です」

 

『…っ!』

 

 それを聞いた瞬間、悠たちの脳内にフラッシュバックしたのは村を訪れた悠たちに向けられた村人たちの視線。

 村人同士小声で話しながら向けられたのは排他的な感情。

 それは好き嫌いの類のものではなく、自身の仲間以外の存在を()()()()というものだ。

 そこに個人の感情が付け入るスキはない。仲間という境界線は周囲の環境によって形作られる絶対的な線引きなのだ。

 しかしそういうことだと疑問が残る。その疑問を真っ先にぶつけたのは悠だった。

 

 

 

『でも、村長(クロナ)の孫であるマシロちゃんもガルナ村の出身なんですよね?内輪主義ということなら村長さんが入っててマシロちゃんがそこに入っていない理由は一体…』

 

「…簡単な話です。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っど、どういうことですかそれ!?」

 

 クロナから放たれたあまりにもな事実にラミィが思わず立ち上がり声を荒げる。

 しかしそんな反応も当然だろう、ラミィがそうしたおかげで抑えられたが悠たちも思ったことはラミィと同じだ。仲間であったが外された、つまりは外されるだけの何かがあったと考えるのが妥当だろう。

 その答えを示すように、クロナは席を立ち棚の中から1つの写真立てを手に取った。

 クロナはそれを悠たちに見えるようにテーブルにかけ立てる。

 

 そのに映っていたのは四人。

 1人の老人と2人の若い男女、そしてその女性に抱きかかえられている1人の子ども。

 

 

 

「それって、村長さんとマシロちゃんですか?」

 

「ええ、今から3年ほど前の写真です。儂とマシロ、そして残る2人の名前は相良グレイと相良ユウリ。儂の息子と義娘であり、マシロの両親です」

 

 写真を見つめるクロナの表情は柔らかく、それと同時にどこか悲痛なものだった。

 誰も言葉には出さなかったが、()()()()()()なのだろう。

 悠たちは静かにクロナの言葉を待った。

 

 

 

「…そんな2人が亡くなったのは1年前。義娘のユウリはガルナ村の外から嫁入りした子で、旅行が大好きな子でした。家族水入らずでの旅行中の事故だったそうで、帰ってきたのはマシロ1人でした」

 

『………』

 

「生まれがこの村のグレイはもとより、嫁入りで入ってきたユウリもとても気が利く子で瞬く間に村の人気者でした。それこそ、村人全員が2人の死を嘆き悲しむほどに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして…その感情がすべてひっくり返ってしまった要因が、マシロの『未来視』の発現なのです」

 

 拳を固めて体を震わせる。

 それは己の無力をかみしめるように、起こってしまった現実を受け入れたくないと言うように。

 

 

 

「っ、どういう…ことですか?」

 

「見ればわかる通りガルナ村は古く、その思考は極論を言ってしまうと村の外から入ってきた儂やユウリからすれば前時代的でした。他者を認めず、変化を恐れる。そして、仲間を奪ったものを認めず、理解が及ばぬものを恐れて、排斥したがる。

 

 これは時代に残されたものの防衛本能です。理屈じゃない、古くから刻まれてしまった負の遺産。決して取り除くことのできない思想という名の傷跡(タトゥー)」 

 

『ちょっと待ってください!それって…!?』

 

 クロナの発言に割って入ったのはかなただった。

 この先の発言が予想できたから、できてしまったから。

 しかしそれはあまりにもマシロにとっては残酷で、無情で、無慈悲で。

 そうじゃなくあってほしいと願う中で、しかしクロナの表情がそれを完膚なきまでに否定してくる。

 

 

 

 

 

「…マシロの『未来視』を恐れた村人たちは、『そんな眼がありながらグレイとユウリを守れなかったのか』と、『お前が殺したも同然だ』とマシロを責め始めたのです」

 

「そ…そんなのただのこじつけじゃないですか!?大体『未来視』と事故に何の関係があるって…!」

 

「ええ、ただのこじつけです。そもそもマシロが『未来視』の力に気付いたのだって2人が亡くなった後のことで、関連性なんてあるはずもない。でも…村人たちにとってはそんなのどうでもよかったのですよ」

 

「…理由付けが欲しかった…ってことですか?」

 

 そう推測を語ったのはノエル。

 その推測は、聖騎士団として活動していた中で培った経験則。

 不条理に立たされた人たちは決してその全てが気丈に奮い立てるほど強い人だけではない。大切なものを失い、負の感情に囚われた人たちがどういう思考に走ってしまうのか、ノエルはよく知ってしまっていた。

 

 

 

「…はい。2人は事故死です、責める相手なんていない。だが村人たちは怒りを、悲しみを何かにぶつけたがる。そんなときに自身の理解が及ばない魔眼(モノ)を持った存在が亡くなった2人のすぐそばにいたのだとしたら…」

 

『…怒りの矛先がそこに向かってしまう……』

 

『そんなの…』

 

 

 

 そんなのあんまりじゃないか。

 誰よりも嘆き悲しみたいのはマシロのはずなのに。

 それすらも許されない負の嵐。両親を亡くし、暖かな場所が奪われ、残されたのは祖父と得体のしれない魔眼(望まぬ力)だけ。

 

 

 

「儂はマシロを連れてすぐに村を出ようとしました。しかし、村長という立場がそれを許してはくれなかった」

 

『それが…護衛の前でのマシロちゃんへの態度ということですか』

 

「罵られても何も文句は言えません。事実儂はマシロにそれだけのことをしている。表立って庇えば長がいなくなりこの村は崩壊し、かといって村の意識を変えるだけの力が儂にはなかった。あの護衛たちも、半分は儂の監視のためなのですよ」

 

「…マシロちゃんは、今どうやって暮らしているんですか?ここで暮らしてるわけじゃないですよね?」

 

 ノエルがそう切り出す。

 少なくとも村の中で暮らせるような状況ではないだろう。だがマシロは「ガルナ村から来た」と言っていたはずだ。

 であれば村に隣接したどこかなのか、送り届ける以上それを知る必要がある。

 

 

 

「…今は村を囲う柵の外側、はずれの家屋で暮らしています。1人ではなく、とある老人と一緒に」

 

「…?それはガルナ村の人…ではないですよね?」

 

「ええ、今から半年ほど前に村にここに住まわせてほしいと1人の老人がやってきたのです。本人は村人の前では名前と遭難した経緯以外は頑なに語ってくれませんでした」

 

『…怪しすぎません?』

 

 いかにも怪訝な表情を浮かべてかなたが言い、クロナもそれに否定せずに頷く。

 

 

 

「その通りです。ですがこのまま捨て置くわけにはいかない。当然村人たちは認めたりはしませんでしたが、そこで村人の1人がこんな提案をしたのです」

 

 

 

この娘(マシロ)と一緒ならばはずれの家屋に住まわせてやってもいい』と。

 

 

 

「それって…」

 

「体のいい厄介払いです。村人たちからすれば自分たちに関わらない場所で暮らす分には何も関係ないですし、何より儂がどうにか暮らす家だけは守っていた扱いに困るマシロを村の外へ放り出せる」

 

「………」

 

「儂も了承せざるを得なかった。ただでさえ酷くなるマシロへの扱いに加えてジェイルと名乗ったその老人を放っておくわけにもいかない。せめてもの譲歩で定期的に物資を提供する確約をさせるので精一杯でした」

 

 それにジェイルさんからマシロの様子も秘密裏に教えてもらっていますから悪いことばかりではありませんよ、と悠の背中で眠っているマシロを見て微笑む。

 その瞳に映るのはどこまでも深い慈愛。

 たとえともに暮らせなくとも、嫌われようとも、幼い心に傷をつけることになっても、その命だけは守るという意思に悠たちはもう何も言えなかった。

 

 するとクロナは面持ちを真剣なものにする。

 

 

 

「そして先日ジェイルさんから教えてもらったのが、あなた方へ頼む依頼の内容になるのです」

 

『「…!」』

 

 そこにつながるのか、と悠たちは意識を切り替える。

 そこにはもう村の現状を憂うものはなく、依頼を遂行せんとする表情。

 

 

 

「近頃森に食材を取りに行っていると獣が暴れたような跡が多くなっている言われたのです。加えて村人からもその手の報告が相次いでいました」

 

「それの調査、並びに駆除…ということですね」

 

「はい。…村のために、そしてマシロのために、どうかよろしくお願いします…!」

 

 クロナは深く頭を下げる。

 悠たちはスクリーン越しに顔を見合わせる。

 そしてひとつ頷くと未だ頭を下げたままのクロナに向かって宣言する。

 

 

 

『「全力を尽くします!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして悠たちは村の入り口で合流後、マシロと老人が住んでいるというはずれの家屋に向かっていた。

 さすがに村の近くで獣も少ないのか会敵は特になく、風に乗ってさえずる森の音と足音だけが聞こえてくる。

 

 

 

「マシロちゃん、つらかったよね…」

 

「うん…でも、話を聞いただけのラミィたちじゃ共感なんてできないし…」

 

「…団長たちはいつも通りでいいと思うな」

 

「ノエル先輩…?」

 

 ノエルは「んっ」と体を伸ばして凝り固まった体を軽くほぐすと未だ眠っているマシロを優しく見つめる。

 

 

 

「騎士団の仕事の関係上、こういった子はたまに見るんだ。事故や天災、あとは魔物の襲撃にあったりって理由は様々だけど」

 

 その表情はどこか歯がゆそうで。

 現世における秩序と安寧を守護する『白銀聖騎士団』。当然平和を脅かす事案の際には出撃に駆り出されるし、それでもなお助けられない命というのはどうしても存在し、それはそう簡単に避けられるものではない。

 そして取り残された命に対して、ノエルたち騎士団ができることなどほんの些末なものでしかないということもまた現実である。

 

 親元探し、孤児院の設立と運営。

 できることはこれからの生活の援助でしかなく、傷ついた心の寄り添うことなどできない。

 守れなかった自分たちに、そんな資格などないのだから。

 

 

 

「結局のところ立ち直れるかどうかはその子たちの気持ち次第でしかない。それでもなお団長たちが何かできることがあるとするなら、それはきっといつも通りであることなんだと思う」

 

 子どもというのは感情の変化には過敏という話も聞く。下手な気遣いは余計な感情の機微を悟らせることになりかねない。

 乗り越えて歩み出すのはあくまで本人たち。

 であれば、必要なのは本人たちが自由に歩みだすための環境だ。

 

 誰かに話しやすい環境。

 行きたいところにいきやすい環境。

 その子たちがしたいと思えるようなことがすぐにできる環境。

 

 

 

「だから、特別なことはきっと必要ない。団長たちは団長たちがしたいことをすればいいと思う!…まあ、ただの持論だけどね」

 

 あははと恥ずかしそうに顔を赤らめるノエルに対して悠たちは吹っ切れたようにそれぞれの思いの丈を吐き出す。

 

 

 

「じゃあボクはどこか広い場所で一緒に遊びたいな!」

 

「ラミィは花冠を作ってみたいです。きっと似合うと思うから」

 

「僕は、一緒に空を飛んでみたい…かな。森の中からじゃ見られない景色もあると思うし」

 

 願うのは未来への希望。

 憂いではなく、期待を込めた願い。

 いつも通りに戻った面々にノエルが安堵の表情を浮かべると、悠の背中から「んん…」と声が聞こえてくる。

 それに真っ先に気付いたのはマシロを背負っていた悠と隣にいたかなた。

 

 

 

「あ、起きたかな」

 

「あれ、ここ…?」

 

「おはよ、マシロちゃん!」

 

 もたれかかっていた悠の体から身を起こしやや寝ぼけたような目で周囲を見渡すマシロ。

 そして覚めてきた頭で眠ってしまう前の記憶を思い出したのか、目を伏せてか細い声で呟く。

 

 

 

「…ごめんなさい。わたしがいたから……」

 

 悠たちにもたくさん向けられた村人たちからの忌避の視線。

 自分がいなければ、『悪魔の子』と呼ばれている自分がいたからと己を責めるマシロに対してノエルを皮切りに悠たちはあっけからんと答えた。

 

 

 

「何かあった?」

 

「え…?」

 

「んーん!それにマシロちゃんに不躾な目線を送っていた護衛たちは悠くんが鉄拳制裁…」

 

「してないからね?」

 

「それにそういうこと真っ先にしそうだったのはかなたちゃんの方…」

 

「何か言ったラミィちゃん?」

 

「ナンデモナイデス…」

 

 そう軽口を叩きあう悠たちは本当に何も気にしてないようで。

 神秘的な銀眼をパチクリとさせるマシロに代表してノエルが話しかける。

 

 

 

「マシロちゃん。団長たちはこの森でやらなきゃいけないことがあるんだけど、泊まれるところがなくって…もしよかったらマシロちゃんのお家にお邪魔させてもらえんかな?」

 

 お願い、とマシロの前で手を合わせるノエル。

 マシロが負い目を感じているところにお願いをするのはちょっと申し訳なく思うが困っているのは事実だし、なによりこれでちょっとでもマシロが感じている負い目を軽くできれば一石二鳥にもなる。

 そんなわずかな打算が混じったお願いにマシロは必死に顔を頷かせた。

 

 

 

「…うん、うん!わたしも、おじいちゃんにおねがいする!」

 

「…ありがとう、マシロちゃん」

 

 

 

 そう話しながらも足を止めなかった一行はほどなくして目的地にたどり着いた。

 

 失礼なことを言ってしまうと想像したよりもずっと立派な家屋だった。

 村の外、それもガルナ村のような古いと言わざるを得ない技術で作られた家を見た後だと余計にそう感じてしまうほどのもの。

 高さこそ村の中にあった家とさして変わらないが、何より広い。軽く倍くらいの広さがあり、使われている木材も腐っておらず加工された跡が見受けられる。

 さらに周囲には森の木で作られたであろう薪が雨風にさらされないように薪小屋に入れられており生活水準は相当高いものだと想像がつく。

 

 

 

「なんか、村のものとはずいぶんと違いますね」

 

「うん。こう言っちゃなんだけど本当に厄介払いだったのか分からなくなるくらいには」

 

 マシロは悠たちが茫然としている間に悠の肩から降りるとガチャッと無造作に扉を開けて中に入っていく。

 そして数分後、マシロは一人の老人を連れて家の中から出てきた。

 

 

 

「おじいちゃん。この人たち…」

 

「おお、これはこれは。初めましてご客人。私はジェイルと申します。まずは中で、お話をしましょうか」

 

 その老人は細い目を悠たちに向けて、なんとも朗らかな声でそう言ってきた。





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