ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート   作:468(ヨルハ)

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Part25 純白の少女⑤『Short Break』

 

 

 

 

 

 

 ジェイルと名乗った老人に招かれて足を踏み入れた家は外装に違わず綺麗なものだった。

 テーブルに椅子にタンスと生活するのに必要なものは揃っており、使い込まれているのがよく分かる。

 さらに周囲を見渡してみれば一部金属や石材で作られているものも存在し、その中にはキッチンや窯なんかもある状態だ。

 

 どう考えてもガルナ村で見た生活水準を大きく超えており、悠たちの疑問は尽きない。

 そうして周囲をキョロキョロと見回していると、ジェイルが一足先に椅子に腰を掛けて悠たちのことを微笑ましく見ていた。

 

 

 

「ほっほっほ。そんなに意外でしたかな?」

 

「あ、えっと…ご、ごめんなさい」

 

「気にすることはありませんよ。村から外れた場所でこんなものが建っていれば疑問に思うのは自然でしょうから。ちなみにその疑問の答えは…」

 

 ジェイルはそう言うとコンッと軽く目の前のテーブルを叩く。するとそのテーブルが淡く光ると同時にわずかに地を離れ浮き上がる。

 ピクッと悠たちが眉を動かしたのを見るとジェイルはどこか得意げな表情を浮かべてテーブルを元に戻す。

 

 

 

「こういうことです」

 

「魔法…ですか」

 

「正確には物体に埋め込んだ魔石の効果です。と言ってもそんな大層なことはできません。せいぜいが軽く物を浮かしたり動かしたりといった程度です」

 

「あ、じゃあもしかして村長さんたちに名前以外を語らなかった理由って…」

 

「魔法を知らず、『魔眼』を忌避するあの村で魔石なんてものは見せられるものではないですからな」

 

 なるほどと納得した。

 要するにその魔石を使って長い時間をかけてここまで増築してきたということなのだろう。

 他にやることもなかったものでしてなとジェイルは語ったが、悠としては柔軟な発想というかよくここまでやれたなというのが正直な感想だった。

 

 本人曰く昔は魔石を研究していた研究者だったそうだ。本来何の効果も持ち合わせていない魔石を分析し、改良し、魔法を持たぬものでも魔の力が使えるようにする『魔道具』を生産していたらしい。

 しかしそれも世代が変わることで進化し発展していく。いい加減年も重ねて潮時だろうと研究職を引退し隠居生活、その矢先に遭難しこの村に辿り着き今に至るのだという。

 それはまあなんというか…

 

 

 

「随分と波乱万丈というか…」

 

「ほっほっほ。もう親戚もいないもので意外と気楽なものですよ。それに今は一緒に過ごしてくれる子もいることですし」

 

「……?」

 

 ジェイルはそう言うと傍にいたマシロの頭を撫でる。

 対してマシロは話の内容をよく分かっていないのか撫でられてなお首を傾げるだけである。

 それを見てふっと軽く笑いをこぼしたジェイルはそのままマシロに話す。

 

 

 

「マシロや、私はこの人たちと少しお話をしなければならんのでな。少しの間外で遊んでいてくれるか?」

 

「…うん」

 

 マシロはそれを聞くと特に疑うこともなくパタパタと外に駆け出していく。

 それに真っ先に反応したのはかなた。

 

 

 

「ちょ、大丈夫なんですか!?外の森には狂暴化した獣が…」

 

「心配には及びませんよ。家の周りには獣が嫌う魔力の波を放つ魔石を設置していますから」

 

「ですけど…」

 

「…それじゃあジェイルさんとの話は団長と悠くんで聞いておく。かなたちゃんとラミィちゃんはマシロちゃんについていてあげて?」

 

「!…分かりました!」

 

 マシロちゃーん一緒に遊ぼー!と置いていかれないように急いで駆け出したかなたと慌ててそれを追いかけるラミィ。

 それを傍目に見ながらノエルと悠はジェイルの対面側に座った。

 

 

 

「ごめんなさい、あなたのことを信用していないわけではないんですが…」

 

「構いませんよ。私も少し過信してしまっていたのかもしれません。現状が変わっている中いつ想定外(イレギュラー)が起こるか分からないというのに…申し訳ない」

 

「そう、僕たちが聞きたかったのはそのことについてです」

 

 ジェイルの言葉に反応したのは悠の方だった。

 そこから話し合ったのは情報のすり合わせ、ならびに現状の森の様子についてだった。

 

 一体いつ頃から森に異変が起きたのか。

 その異変の前後でなにか変わったことはなかったか。

 実際に何がどう変わったのか。

 

 村を出る前に村長のクロナからも同様の話をしたが、やはりより近い場所で過ごしていたからかその情報は細やかで分かりやすかった。

 当然ながらジェイル自身は獣に対して正面から対抗できる力は持っていないので獣たちが通った後の痕跡などからの推測というのがほとんどだったが、それでもその情報量には舌を巻く思いであった。

 そしてその話を総合すると…

 

 

 

「…つまり、森の獣たちが獰猛化し始めたのは今から1週間ほど前、場所は不規則でその頻度は日を追うごとに増していってる…っと」

 

「あまり時間はなさそうですね。加速度的に増えていってるなら一刻の猶予もない。だけど…」

 

「これといって原因に手掛かりはナシか~」

 

「いやはや申し訳ない…」

 

 現状を理解できたのはいいが問題はやはり原因が特定できていないことだろう。

 原因が分からなければ対策も立てられない。その原因を探るにしてもこの広大な森の中から獰猛化した獣の目を掻い潜りつつともなればその難度は相当なものだ。砂漠の中から一粒のダイヤモンドを探し出せと言っているようなものである。

 悠としては今日の会敵やその状況を鑑みて多少の憶測を立てられなくはないのだが、如何せん憶測に憶測を重ねたもので自分で言っておきながら信憑性はあってないようなものだしその信憑を得るにしても実際に森の中を散策(フィールドワーク)を行う必要がある。

 そしてそれをするにも…

 

 

 

「ここまで暗くなると今日の探索は厳しそうですしね…」

 

「だねえ…行動するにしても明日からかなぁ」

 

「そういうことでしたら本日の宿はここを使われるといい。マシロからも聞いていましたからね」

 

「ありがたいです。ありがとうございますジェイルさん」

 

 壁に備え付けられた窓から外を覗くとそこには雲ひとつない満天の星空が広がっていた。

 空気や環境の問題なのだろうか都市部で見るより幾分か鮮明に映る星々は己の存在を証明するかのように強く光り輝く。その中に大きな星や小さな星が線を結び繋がることで星座が生まれる。

 

 悠はこの星々を見るのが好きだった。

 あの星たちは悠が目指す夢であり、憧れでもあるから。

 

 悠は星を見つめてひとつ深呼吸をすると勢いよく立ち上がる。

 

 

 

「ジェイルさん、もしよければ台所をお借りしてもいいですか?」

 

「ええ、構いませんが…如何様で?」

 

「せめてものお礼返しと言いますか…今日の夕飯は自分に作らせてもらいたいなと」

 

「あ、そういえば悠くんお弁当は自分で作ってたもんね~」

 

「…そういうことでしたらどうぞお使いください。私はなにぶん家事は総じて得意ではなく…マシロも喜ぶでしょう」

 

 幸い泊りで行くことは想定していたためあらかじめ持ち込んだ食材や調味料一式はあるしチラ見した限り火を起こすだけの設備はあった。

 これならそれなりにいいのが作れるだろうと悠は意気揚々と台所に向かってその姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マ、マシロちゃん体力あるなぁ~。そんなイメージなかったけど…」

 

「子ども特有の遊びに対するエネルギーなのかな…?特にマシロちゃんは今までそういうことはできなかったと思うから余計にそうなのかも…」

 

 時間は少しさかのぼり場所は家屋のすぐそばの広場。

 そこでは初めて触ったゴムボールを持って走り回るマシロと、それを眺めながら息も絶え絶えで豪快に地面に寝そべるかなたと手元に集めた花たちでなにやらチマチマと作業をしているラミィの姿があった。

 

 マシロを追いかけて一緒に遊び始めたのが1時間前、それから今の今までほぼノンストップで動き続けた結果である。

 かなたはそのマシロのエネルギーに当てられて今はもう動く体力が残されていないのかうつ伏せで軽く息を荒げながら顔だけ動かしている状態である。

 ちなみにすでに陽は完全に落ち、今かなたたちがいる広場はこれまた木に設置された魔石の明かりによって照らされている。便利すぎないかとかなたとラミィは思った。

 

 2人してマシロを見るとそこには疲れた様子を一切見せないままボールを一心不乱に追いかける姿が映る。

 表情が希薄なため分かりずらいところはあるが、夢中になってボールを追いかけているあの姿はなんとも楽しそうで。それを見て2人は嬉しそうに笑いあった。

 そうしている間にラミィが「よし!」ととある作業を完了させるとマシロを呼ぶ。

 

 

 

「マシロちゃん、ちょっとこっち来て〜!」

 

「…?うん」

 

 ボールを抱きしめながらマシロが2人のそばまで走ってくる。

 そんな姿にどこか庇護欲をくすぐられるが、ラミィは気を取り直すとその手に取っていたものをこちらをじっと見つめるマシロの頭に慎重に乗っけた。

 そこに乗っていたのは色とりどりの花によって作られた花冠だった。

 森の中ということで自生している花はあまり多くなかったが、そこはラミィの魔法の使いどころ。『武器錬成』を習得する過程で一緒に練習していた小さな氷の花を作り出し、それを織り込まれた花冠は魔石の光に反射して煌びやかなティアラのようにも映った。

 

 

 

「なに、これ…?」

 

「お花と魔法の氷で作った花冠だよ。とってもよく似合ってる!」

 

「うん!妖精さんみたいで可愛いよマシロちゃん」

 

「はな、かんむり…きれい…!」

 

 そうしてマシロが零した言葉と表情にかなたとラミィは思わず瞠目した。

 

 ほんの一瞬のことだった。

 だけど、マシロの顔は確かにほころんでいて。

 神秘的な銀眼を細めて頭に添えられた花冠を眺めるその表情は確かに笑っているようだった。

 

 それはまるで小さな花の妖精のようで。

 かなたとラミィの2人は気が付けば同時にマシロのことを抱きしめていた。

 

 

 

「あーんもうマシロちゃん可愛い!!」

 

()いやつめ~このまま持って帰りたいくらいだよ~!」

 

「わ、わわ…!」

 

 突然2人にもみくちゃにされてマシロは混乱する。

 それでもマシロの心を占めていたのは「嬉しい」という気持ちだった。

 

 『悪魔の子』と呼ばれてから半年間は悲しみに暮れる暇もなく来ることが視えている村の人たちからの罵詈雑言を浴びせられる日々。その後はおじいちゃん(ジェイル)と比較的平穏な日々を過ごしていたが、遊ぶ時はいつも一人だった。

 暗く、不透明で、彩りのない灰色の世界。

 ずっとこんな日々が続くんだろうかと思っていたところに、夢を通じて未来を見た。

 

 学園制服(ヘンテコな服)を着た4人の男女。

 そんな人たちが誰もが負の感情をぶつけてくるマシロに笑顔を向けてくれた。

 震えていた手を握ってくれた。

 一緒に遊んでくれた。

 灰色の世界に、様々な色を与えてくれた。

 

 そんな夢なら覚めないでと願ってしまうくらいに眩しい夢。

 

 だからマシロは探した。

 夢が夢じゃなくなるように。

 夢で焦がれてしまった温かさをもう一度感じるために。

 

 

 

 そうして、マシロは再び悠たち(夢の未来)と出会うことができたのだ。

 そんなマシロの心を埋め尽くす感情が『嬉しい』以外に存在しなかったのは、ある意味必然だったといえるのだろう。

 

 

 

「…えへへ」

 

その嬉しさは微かな笑顔となってマシロを色鮮やかに輝かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーさっぱりした―!あんなお風呂があるなんでビックリだったよ!」

 

「ですね、五右衛門風呂っていうんでしょうか?」

 

「みたいだね!でもいざ入るときは胸が引っかかりそうで大変だったよ~」

 

「あ、ラミィもです。やっぱりお風呂が大きくてもさすがに4人で使うのは無理がありましたね…」

 

「………」

 

「さっぱり…」

 

 お風呂上り特有の湯気を立ちこませながらマシロ含む女子4人組が悠とジェイルのいるリビングに入ってきた。

 さっぱりした表情のノエルとラミィ、普段と表情が変わらないマシロに対してかなたは2人の発言を聞いた瞬間に目線を下に下げてその表情はやや暗い。決して風呂に満足できなかったわけではないのだが、その理由は先ほどの会話から推して知るべしだろう。

 現在はそれぞれが持ち込んでいた部屋着を着用しておりそのラフな格好に年頃の男子(星宮悠)は極力彼女たちを見ないようにやり過ごしていた。

 

 その後は悠も五右衛門風呂を堪能し夕飯の時間。6人で囲うにはやや小さいテーブルに所せましと並べられた料理を見てラミィたちは「ふわぁ…!」とため息を漏らした。

 

 

 

「お弁当のおかずもらった時から知ってたけど本当に悠くんの料理どれも美味しそ~!」

 

「うん!どれもこれも…って、悠くん、このお肉って…」

 

「ああ、あの時の『アサルトボア』の肉だよ。ちゃんとストライクハートに検査してもらって毒や残存魔力の有無は確認済み。まあ他の料理も含めて借りた設備と持ち込んだものじゃそんなに手の込んだものは作れなかったけどね…」

 

「じゅる…っは!いけないいけない!ここは立派な先輩として我慢我慢…じゅる」

 

「ノエルおねえちゃん、だいじょうぶ…?」

 

 テーブルに並べられた料理はアサルトボアの肉野菜炒めやキノコ和えに一口ハンバーグなどが大皿に乗せられていた。

 人数も多かったためドカッと作ってそれぞれが手取り皿に取って食べるスタイルである。

 悠の料理は初体験であるノエルがそのかぐわしい匂いによって飢えた獣のようによだれを垂らしている。どうにか自制しようと試みているようだが既に片手にはお椀に寄せられたご飯が握られており後は待ったが解かれれば即座にその口いっぱいに料理を放り込むことだろう。

 

「あはは…引き延ばしてもあれだし早速食べちゃおうか。それじゃあ…」

 

 

「「「いただきます!」」」

 

 しっかり手を合わせて合掌。それぞれが気になった料理を皿に寄せながら口の中にかきこんでいく。

 

 

 

「ん~~~!美味しい!イノシシのお肉なのに臭みもないし柔らかい!」

 

「キノコ和えも触感が残ってて美味しいよ!ほら、マシロちゃんもどうぞ」

 

「うん…お、おいしい……」

 

「お口にあったならなによりだよ」

 

「いやはやこんな美味しい料理を食べたのは久方ぶりですな」

 

「あびゃびゃびゃびゃ!!!」

 

 みな一様にその美味しさに舌鼓を打つ。

 ある者は味わうようにゆっくり食べたり、ある者は豪快にかきこむようにとんでもない勢いで食べたりと楽しみ方は十人十色だったが美味しいという感想はもれなく全員が零しており、それを聞いた悠は嬉しそうに頬を緩めていた。

 と、食事を続けていると悠は隣にいたマシロを見て懐からハンカチを取り出す。

 

 

 

「マシロちゃん、動かないで。口元汚れてるよ」

 

「んぅ」

 

 パクパクと木のスプーンを使って食べていたマシロの手を止めると悠は手に持ったハンカチを使ってマシロの口元を拭う。マシロはされるがままでじっとしており、悠が拭き終わるのを見ると「あり、がとう」とぎこちなくお礼を言って食事を再開する。

 そんな2人の様子はどこか年の離れた兄妹のようで、それを見たラミィたちはほっこりした表情を見せるとともにとある邪推をしてしまう。

 

 

 

(は…!もしかして同じことをすれば…)

 

(ボクもマシロちゃんみたいに…!?)

 

 どう考えてもこんな純真無垢な少女がいる前でやる想像ではない。というかそれ以前の問題である。

 悠もマシロであったから自然にできたのであってそれがラミィやかなたが相手であれば流石にその手は止まってしまうだろう。年下にするのと同年代にするのとでは意味合いも心構えも全く変わってくるのである。

 さすがにわずかの逡巡のみでそれを察したとある2人は申し訳なさと恥ずかしさで悠から視線を外し頬を朱に染める。

 

 

 

(さすがにこんなこと想像しちゃうのは…)

 

(人前じゃなくても恥ずかしすぎる…!)

 

 当然の帰結というべきか、食事の終わりまでとある2人は悠とマシロに対して目を合わせることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜もすっかり更けて就寝の時間、幸いにして部屋の数には余裕があったので一人一部屋をとってもらって寝ようという話になるところだったのだが。

 

 

 

「えっと、マシロちゃん?」

 

「…いっしょが、いい……」

 

 

 

 というわけである。

 もっと具体的に言うとそれぞれが部屋に分かれようとしたタイミングでマシロが悠の袖をつかんで離さない状態。ラミィたちも予想していなかったのかやや困り顔である。

 別にマシロと寝ることに問題があるわけではない。そもそもマシロは最初から誰かと一緒にという話だったし、それをマシロから言ってくれるなら話も早い。

 では何が問題なのかというと

 

 

 

「マシロちゃん、やっぱり()()()一緒がいい?」

 

「ん………」

 

 誰か1人ではなく全員でという点である。

 鈍いとはいえ当然ながら悠は年頃の男子であり、同じ部屋で同年代の女子が一緒に寝るという状況はさすがに気恥ずかしさと抵抗感がある。そしてそれはラミィたち女子側も同様だろう。

 無論ラミィたちは悠が手を出してくることなどないとは思っているが、それで「じゃあできますか?」と問われればそれはまた別問題なのである。

 

 

 

「……だめ…?」

 

「ん〜…!みんな、いいかな…?」

 

 答えを出し渋っている悠たちを見てマシロは少し寂しそうな顔と消え入りそうな声で聞いてくる。

 まあマシロにこんな顔をされてしまえば抵抗できる人間なんてこの場にいるはずもなく、ノエルのその質問に3人はどこか仕方がないというように苦笑いをこぼして返事をする。

 

 

 

「恥ずかしいけど…分かりました!」

 

「まあマシロちゃんのためだもんね。悠くん、手出しちゃだめだからね~?」

 

「分かってますって…」

 

 やや諦めの表情を浮かべて、悠はマシロの頭を軽く撫でた。

 

 

 

 

 

「マシロちゃん、どう?寒くない?」

 

「へいき…」

 

「ラミィちゃんもうちょっと詰めて―」

 

「はーい、このくらいで…」

 

 マシロを中心にして用意してもらった敷布団に全員が一列に並んで寝そべる。

 マシロの両隣に悠とかなた、そのさらに隣にそれぞれノエルとラミィという順である。ちなみにこの位置は厳選なるくじ引きの結果であったりする。

 

 悠は深く意識してしまう前にさっさと寝てしまおうと瞳を閉じる。

 幸いというべきか戦闘から長時間の移動となかなかに体力を使っていたため眠気はすぐに襲ってきた。

 この眠気に逆らわず意識を落としてしまおうと身を委ねていると、ふとマシロの声が聞こえてきた。

 

 

 

「おにいちゃん、おねえちゃん…」

 

「…マシロちゃん?」

 

「どうしたの?」

 

 両隣の悠とかなたがマシロの顔を覗き見る。

 それに対してマシロはどちらかに顔を向けるわけではなく天井を、その奥の空を見上げていた。

 

 

 

「…わたし、たのしかった」

 

「…!」

 

「おにいちゃんたちとあそんで、ごはんたべて…」

 

 その表情の変化は希薄だが、やはりどこか嬉しそうにしていて。

 それが分かったから悠たちもまた顔をほころばせる。

 

 

 

「…ありがとう。…おやすみなさ…い……」

 

「…寝ちゃったね」

 

「仕方ないですよ、今日はいろんなことがありましたから」

 

「うん、団長たちも明日に備えてもう寝ちゃおう!早く問題を解決して、マシロちゃんを安心させないと!」

 

「…はい!…おやすみ、マシロちゃん。よい夢を」

 

 悠はマシロの手を握って願う。

 

 夢の中でもどうか幸せでありますように、と…





前話とはうって変わって平穏でした。
そうだよこういうのでいいんだよ(洗脳済み)
ちなみに就寝時の並びはラミィ、かなた、マシロ、悠、ノエルの順でした。


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