ホロライブラバーズ『数多の星を照らす者』獲得ルート   作:468(ヨルハ)

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Part30 純白の少女⑩『迷ってはいけない選択肢』

 

 

 

 

 

 

(くっそ…展開速度優先だったとはいえ『エクセリオンシールド』ですら完璧には受けきれないのか…!)

 

 

 

 強力無比な矛と盾が火花をあげてぶつかり合う。

 その度に漆黒の凶刃と光の障壁が軋み、弾け、音を上げる。

 

 ラミィとかなたの命を刈り取らんとした異形の悪魔の双刃をまさにこれ以上ない間一髪というタイミングで多層障壁の魔法陣が受け止める。

 そしてその間に割り込んだ魔法陣の主───星宮悠は自身の最高の盾の様子を見て険しい顔を浮かべた。

 

 

 

 チリチリと、光が弾ける。

 漆黒の凶刃が多層障壁の魔法陣にほんのわずかに食い込み始める。

 

 互いの十八番(おはこ)。無論確実に仕留めるために全開(フルパワー)まで溜められた矛と防御を間に合わせるために展開速度を優先した盾とではフェアじゃないし比べるべきではないのは分かっているが、それでもなお全幅の信頼を置く『エクセリオンシールド』がほんのわずかにでも傷が入った事実に悠は内心で舌を打ちつつわずかに体勢を変える。

 

 

 

 思考の停止は戦いの場では致命的な隙であるとフブキから学んだだろう。

 事実をしっかりと受け止めろ。そして、持てるもので乗り越えるしかないんだ。

 

 それに僕は1人じゃない。

 僕は、決して1人で戦っているわけではないのだから。

 

 

 

「…ノエル先輩!!」

 

「おっけーい!」

 

 刹那、悠の背後から飛び出した影が陽気な声とともに異形の悪魔を吹っ飛ばした。弾かれたように後方へ吹き飛ばされた異形の悪魔は、腹部を片腕で抑えながら木々に激突して視界のはるか先へ消えていった。

 それを見た影───白銀ノエルは鈍色に光るメイスを片腕で振り抜いた状態で驚きの声を上げた。

 

 

 

「おお…あれガードするんだ。不意を突いたと思ったんだけどなあ」

 

「魔獣の群れとは根本的に違いそうですね。防ぐ動作を見せたってことは本能か知能がある」

 

「悠くん…ノエル先輩も……!」

 

 こちらを呼ぶ…というより存在を確かめるようなかなたの声に反応して、伏している2人に目を向けた悠はその様子に悲痛な表情を浮かべるとともに一先ず安心した。

 

 怪我は2人して酷いものだった。

 着ている服は土を被り、いたるところが切り裂かれたかのように破けている。そこからさらに血が滲んでおりなんとも痛々しい。かなたにいたっては右腕が一文字に長く裂かれており学園制服を今もなお濃い深紅に染めあげている。

 呼吸もやや浅く、顔色も悪い。

 

 だが間に合った。

 そこには確かな命があった。

 最悪の状態だけは、どうにか避けることができた。

 

 

 

「かなた、ラミィも…生きててよかっ…!?」

 

「………ゔ~~~~~!」

 

 2人に駆け寄った悠に、ラミィが抱き着いた。

 思わず声を失う。

 

 震えていた。

 傷だらけの体も、言葉にならない声も。

 そこには異形の悪魔への恐怖と、何も為せなかった自分への無力感がありありと浮かんでおり、そして堪えきれなかったそれが透明な雫となって白磁のような頬をつたう。

 

 怖かったのだろう。悔しかったのだろう。

 その場にいなかった悠ではラミィの激情は推し量れない。彼女の恐怖をぬぐいとることも、彼女の無力を否定することも、今の悠にそれをする資格はない。

 

 それでも、気付けば悠は自分の胸に顔をうずめるラミィをゆっくりと抱きしめ返していた。

 

 

 

「あ…」

 

 腕の中のラミィが小さく声を漏らす。

 片手は頭に、反対は背中に、どこか小さな子供をあやすようにポンポンと撫でる。

 

 この行動は悠が意識して行なったものではなかった。

 使命感でもなく、同情でもなく、ただそうしたいと自分ですら自覚していなかった願望。ただもう泣かないでほしいという願い。それが悠の体を無意識に動かしていた。

 

 心と体に流れ込む温かさにラミィは無意識に体を悠に寄せ、悠に抱き着く腕に力が入る。じんわりと滲んでいた恐怖心を溶かしていく。凍り付いていた心臓が動き出し高鳴りを訴えるように強く脈打つ。

 

 震えは、いつの間にか収まっていた。

 

 

 

「遅れて、本当にごめん。生きててくれて、本当に良かった」

 

「……うん、うん…!」

 

 震えが収まったラミィが温もりを惜しむようにゆっくりと離れる。

 その顔にもう恐れはなく、二へっと緩やかに笑顔を浮かべる。

 

 

 

「よし、じゃあ2人は…って、どうしたのかなたにノエル先輩…?」

 

「かなたちゃんコーヒーある…?」

 

「手持ちにないので後で淹れます…」

 

「「…?」」

 

 振り返ってみるとノエルとかなたが2人して何とも言えない表情でこちらを見ていた。不快感というよりかはなにか甘いものを過剰摂取させられてしまったかのような訴えの表情。

 悠とラミィは顔を見合わせて「???」とハテナマークを浮かべる。

 

 

 

 直後、4人の背後で轟音が鳴り響いた。

 

 

 

「「「「!」」」」

 

 そこからの行動は速かった。

 ノエルが我先にと3人の眼前に立ちふさがりメイスを構え、悠は未だに立てない2人の周囲に結界を施す。

 

 

 

「かなた、魔力はまだ残ってる?」

 

「!うん」

 

「じゃあ2人は今は回復に専念して。いけそうなら後で合流を、無理なら…」

 

「合流するよ。絶対!」

 

「…分かった。この結界は内から外へは出られる。…待ってるよ」

 

 悠はそれだけ言い残すともうこちらへは振り返らずノエルの隣に並び立つ。

 その直前、どうしても聞いておきたかった疑問を投げかけた。

 

 

 

「そういえば、悠くんたちはなんで助けに来られたの?そっちも魔獣はいたんじゃ…」

 

 かなたは悠の性分を知っている。

 困っている人は放っておけない。そこには種族も立場も関係ない。自分の手に届くのであればその全てを守ろうとする、そんな気質。

 そんな彼が自分とラミィがピンチだからとはいえそこら中に巣くっている魔獣を放置するとはとても思えない。結界が張られているとはいえそうしてしまえばガルナ村の人たちと、そして何よりマシロに危険が及ぶのは言うまでもない。

 

 そんな心情を察したのか悠は「あぁ…」とひとつ零して表情を緩める。

 それは大丈夫と言わんばかりの顔。

 

 

 

「…頼もしい狐と妖精が、助けに来てくれたからね」

 

 記憶に新しいとある2人の顔を思い浮かべて、悠は敵を迎え撃つために己が魔力を解放して魔法陣を展開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど…けえ!!!」

 

「じゃ、まぁ!!」

 

 時間は遡り4人の合流前、悠とノエルは焦る気持ちを抑えられずに迫りくる魔獣たちをひたすらに屠っていた。

 悠は右手に片手長剣(ストライクセイバー)を握り突貫を仕掛け、ノエルも『武装強化』で強化したメイスを振るい魔獣をまとめて吹き飛ばす。

 

 ストライクハートから知らされたラミィとかなたの危機。

 魔力反応で位置自体はすでに判明していたから迷うことはなかったが、まるでこちらの意図を把握しているかのように進路上に魔獣が大量に湧いてくる。

 

 空を飛んで一直線に行くのも考えたが、下手にガルナ村まで近づいてしまった関係上この場に魔獣を放置してしまえばその魔獣たちの矛先は十中八九村に向かってしまうだろう。結界こそ張ってあるが未だに保っていられるのは自分たちが魔獣の大部分を相手しているからだ。その枷がなくなってしまえば瞬く間に村へ魔獣がなだれ込んでしまうのは自明の理。

 故に、どうにかここの魔獣たちを一掃してから向かわなければならない。

 

 

 

「ラミィとかなたのとこに急がなきゃいけないんだ。だから…そこをどけえ!!!」

 

 悠が必死の形相で吼え、振られた長剣が光の軌跡を残して魔獣を両断する。

 時間がない。もうどれくらい経った。まだ2人は無事なのか。

 魔力制御に集中しているためストライクハートからの続報はない。聞いている時間がもったいない。1分でも、1秒でも、可能な限り早く先に進まなければ。

 

 焦りは冷静さをなくす。四方を敵に囲まれた現状でその心理状況は危険だ。

 ノエルは悠の様子を見てそれを察すると悠の背後に回りフォローする。

 

 

 

(圧倒的に人手が足りない…3人、いやせめて2人だけでもここを任せられる味方がいてくれれば…)

 

 無いものねだりは愚の骨頂。

 分かっていてもそう愚痴をこぼしてしまったのはそれだけノエルも今の状況に余裕がない証拠である。

 

 決して不利なわけじゃない。敗北する未来が見えたわけじゃない。

 だが、目の前の魔獣によって現状から前に進めていない事実がノエルの焦燥感を掻き立てる。

 

 ラミィとかなたはノエルにとっても大事な後輩なのだ。

 守りたい。それは騎士としての本懐であり、同時に白銀ノエル個人としての願望でもある。

 

 振りかざされた熊の魔獣の爪を屈んで避けて、一転攻勢のメイスを熊の無防備に晒された腹部へ思いっきり叩きこむ。たったそれだけで衝撃波を生む威力、あまりにもな過剰攻撃(オーバーキル)に断末魔を上げる間もなくその輪郭がブレるが、もはや黒い霧へ変わるのを見届ける暇もなくノエルは増え続ける後続へ目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那、ノエルの目に映った魔獣たちが不意に空より飛来した矢によって体を貫かれていた。

 

 

 

 

 

「え…これ……!」

 

 断末魔を上げて魔獣たちが霧となって消える。

 だがそんなことは今のノエルにとってはどうでもよかった。

 

 知ってる。

 ノエルはこれを知っている。

 誰よりも時間を共にして、誰よりも信頼している、そんな人物の得意技を分からないわけがない。

 

 後ろを振り向く。

 まず目に映ったのは、自身と対を為すような煌びやかな黄金の長髪。続いてこっちを優しく見つめるガーネットの瞳。矢を撃ち放った体勢で自分たちを見るその表情は安心と安堵が入り混じっていた。

 そこにいた想像した通りの人物の姿に思わず声を漏らす。

 

 

 

「…フレアぁ…!」

 

「や。助っ人その1、不知火フレア参上ってね」

 

「ナイスだよぉ…!で、でもどうしてフレアがここに?」

 

 ふわりとノエルの隣に降り立ったハーフエルフの少女───不知火フレアがパチッとひとつウインクをする。

 感涙を浮かべて思わず抱き着きそうになるが、さすがに状況が状況なので自粛。

 

 

 

「うん、本来はエルフの森の『(ゲート)*1の護衛をしてたんだけどね。突然空に砲撃が撃ちあがるし見てみたら森一帯が黒い霧で覆われてるしで、緊急事態だろうって来てみたわけ」

 

「なるほどー…ってそうだ!悠くんの援護いかないと!」

 

「あ、悠くんの方も大丈夫だよ」

 

「へ?」

 

「言ったでしょ?()()()()()()だって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白狐一刀流…『細雪(ささめゆき)』!!」

 

 

 

 目の前で、魔獣たちが瞬く間に両断されていく。

 突然起きた現象に悠は頭に昇った血が下りてゆき冷静さを取り戻した。

 

 今目の前に映る光景に戦場の只中だというのに思わず目を奪われる。目にも止まらない速度で1人の影が縦横無尽に駆け、繰り出される超速連撃が数多の白銀の剣閃となって暗闇の中で美しく煌めく。

 暗い森の中に浮かび上がるそれはどこか幻想的で、同時に綺麗だと思ってしまった。

 

 キンッと、刀が鞘に収まる小さな金属音が響き、目に見える範囲のすべての魔獣を切り払ったその影が悠の前に姿を現す。

 ピョコンと跳ねた白い狐の耳にゆらゆらと揺れる大きな尻尾、悠を見つめる翡翠の瞳はなんとも誇らしげ。白を基調とした服装に、すべてが白で統一された一振りの刀の名は『ムラサメマル』。

 

 

 

「…フブキ」

 

「うん!助っ人その2、白上フブキ!ババンと参上!なんてね」

 

 コンコンと両手で親指と中指薬指をくっつけた狐のマークを見せるその正体は狐の獣人───白上フブキその人である。まったくもって普段と変わらない様子にこんな状況だというのにふと笑みがこぼれてしまう。

 

 なんでこんなところにいるのかとか、聞きたいことはいろいろある。

 ああ、でもまずは、これは伝えなきゃいけないだろう。

 

 

 

「…ありがとう、フブキ。助けられちゃったね」

 

「いえいえ!困ったときはお互い様ってことで!」

 

 

 

 フレアとフブキの助太刀によって一呼吸置くことはできたが、依然として余裕はない。

 ラミィとかなたの救助は目下最優先の事項ではある。しかしそれをするにしてもまだまだ増える魔獣たちを放るわけにはいかない。

 

 

 

「フブキ、フレア先輩。その…」

 

 悠は開こうとした口を閉じて言いよどむ。

 悠からしても今から言おうとしているのは事態の押し付けだ。

 まだ何も知らないであろう2人に難題を押し付けようとしている。

 

 あの2人を助けるためには言わなければいけない。

 でも、それはひどく身勝手で、我儘な行為。

 自分たちの問題にフブキとフレアを巻き込んでいいのかと考えがまとまらない。

 

 そんな葛藤の中悠が拳を握りしめていると、バチンと額に衝撃が走った。

 

 

 

「………へ?」

 

 額に受けた衝撃で顔が自然と上がる。

 そこに映ったのは、やれやれと呆れ顔を浮かべるフブキとフレア。

 なにを迷っているんだと言わんばかりにフブキが五指をこちらに向けた状態で軽くため息をつく。おそらく彼女がデコピンをかましたのだろう。不意の事態に変な声がこぼれた。

 

 

 

「フ、フブキ…?」

 

「…例えば白上がすっごくピンチで困っていて、でもなにも知らないみんなを巻き込めないと誰にも声をかけられずにいたとします。それを見たゆうくんはどう思う?どうする?」

 

「え…あっ………」

 

 当然助けになると答える前に、納得した。

 どうするかなんて考える前に、理解した。

 

 同じだ。今の自分と、問いかけたフブキのシチュエーションは。

 ラミィとかなたを助けるために少しでも急がなきゃいけなくて、でも状況も知らないであろう2人に押し付けるのは抵抗があって。そうしなきゃいけない状況に陥った自分自身に嫌気がさして。

 でも逆の立場だったら自分がどうするかなんて、フブキたちがどう思うかなんて、そんなの当然分かりきっていた。

 

 

 

「白上たちだって同じだよ。迷惑とか、面倒とかそんなこと考えたことすらない。大事な人が困ってるなら助けたい、力になりたい。それっていたって自然な感情(コト)でしょ?ね、フレア」

 

「うん、困ってるなら頼ってほしい。友達に頼られるって、それはとても嬉しくて、誇らしいことなんだよ」

 

「………でも」

 

「でもじゃない」

 

 フブキが両手で悠の頬を抑える。

 下を向きかけた顔を無理矢理あげて翡翠と瑠璃の瞳が交錯する。

 

 

 

「ゆうくんは人を頼るのが下手になっちゃった。…いや、正確には自分のせいで誰かが傷つくのが怖くなっちゃったんだ」

 

「…!」

 

「それは誰だってそうだと思う。自分のせいで誰かが傷つくのは怖くて、想像するだけで苦しい」

 

 それは、確かに正常な感情だ。

 自分にとって大切な誰かが傷つくのが嬉しい人なんていやしない。いるとすればそれは狂気に染まった異常者だけだ。

 怖くて、苦しくて、だから頼らない。傷つくのは自分だけでいい。

 

 そして悠は、その考えが人より少し過敏なのだ。

 自分の手で守ろうとする意志が強いが故に。自分の手が届くところで守ると決めた人の命が散ってしまうことを究極的に恐れるが故に。

 それはきっと、過去に守りたくて、それでも守れなかった大切な人がいたから。

 

 これが自分だけの問題だったら、悠は2人を頼ろうとはしなかっただろう。葛藤することすらしなかったはずだ。

 

 だけど違う。

 この選択には自分以外の命が関わっている。今まさに風前の灯火となっている存在がある。

 ラミィとかなた。2人とも悠にとっては大切な存在で、守りたい人なのだ。そしてそれは、今目の前にいるフブキとフレアとて同じ。自分より強いと分かっていてもなおその想いは揺るがない。

 

 故に、心に迷いが生じてしまった。

 誰も危険に晒させない方法が、悠には思い浮かばなかった。

 

 

 

「ゆうくんは優しいもん。迷ったってことは、白上たちに助けを求めなかったらゆうくんじゃない誰かが危険なんでしょ?」

 

「そうなの、ノエル?」

 

「…うん。ラミィちゃんと、かなたちゃん。フレアたちが来てくれる前に2人の魔力反応が急に弱くなったんだ。今どうなってるのかは分からない。でも、ここの魔獣を放置しちゃったら依頼を受けた村が危険になる」

 

「ゆうくんは2人を助けたいんでしょ?何が何でも守りたいんでしょ?じゃあなおさら、これは迷っちゃいけない選択肢!」

 

 フブキは最後に悠の頬をパンッと軽く叩くと笑顔を浮かべる。

 悠たちのところへは行かせないというように再び現れた魔獣たちの前に立ちふさがり、ムラサメマルの柄を緩く握りシャランと淡い音色を奏でながら鞘から白銀の刀身を抜き放つ。

 それにフレアも続くように矢筒から一気に矢を5本引き抜き弓につがえる。

 

 その2人の凛とした表情には、悠たちを助けるというたったひとつの強い決意が宿っていた。

 

 

 

「悠くん。悠くんは多分納得しきってないだろうし、ここは悠くんから私たちへの依頼ってことでどうかな?」

 

「依頼…?」

 

「あ、じゃあ白上はGW(ゴールデンウィーク)中に1日ゆうくんの時間をちょうだい!ゲーム祭りじゃい!!」

 

「私は…いつかお弁当でも作ってもらおうかな。ノエルから聞いたけど料理できるんでしょ?」

 

 なにやらトントン拍子で進む話に疑問符が抜けない。

 いや、言ってること自体は理解できる。

 このまま何も返せず2人に任せるのは自分が納得しないだろうから、()()()()()()で2人に対して自分が報酬を用意するといったところだろう。たしかにそれならまあ一応の納得はいく。無論いきなりすぎて追いついていない節はあるのだが。

 

 しかし自分が言いたいのはそういうことではなく…と考えていたところで2人がそろって悠に振り返り挑発的に口角を上げる。

 

 

 

「それとも…白上たちがやられると思ってるのかい?」

 

「学園の序列は結構上の方なんだけどな~」

 

「………」

 

 

 

 ああ、もう。ズルい言い方をする。

 ここで首を振れば、それは僕が2人の実力を信用していないということになるじゃないか。

 

 ここまで言われてしまえば、頼らないわけにはいかないじゃないか。

 

 

 

「…分かりました。ここは、任せていいですか?」

 

「白上に任せとけー!」

 

「うん、ラミィちゃんにかなたちゃん、助けてあげてね」

 

「…はい!ノエル先輩、行きましょう!」

 

「分かった!」

 

 悠はノエルの手をとると『アクセルフィン』を展開して即座に加速、音を置き去りにする勢いで飛翔していった。

 加速している最中に「のわああぁぁぁ…!」というノエルのなんとも珍妙な声が聞こえた気がするがまあ気のせいだろうとフレアはひとつ頷いてフブキとともに改めて眼前の魔獣の群れを見据える。さっき救援に入ったときは標的(ターゲット)が悠たちに向いていたから楽に取れたが、こう向かい合ってちゃそう簡単にはいかないだろう。

 

 でも、まあさして問題はあるまい。

 

 

 

「じゃあフレア、いこっか」

 

「りょーかいフブちゃん、援護は任せてよ」

 

 フブキが自然体のまま駆け出し、フレアがつがえていた矢を狙いを定めて解き放つ。

 その次の瞬間、魔獣の首が跳ねとび、眉間に容赦なく風を切る矢が突き刺さった。

*1
現世から幽世、天界、魔界などの世界間をつなぐ場所。世界間の歪みを固定化している存在のため実際に門の形をしているわけではなく見た目はワープホールのようなものである。




駆けつけた光、つながる希望。

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