第三新東京市、海の日。
ネルフの食堂のテレビでは海を映していた。
「海かあ…。」
シンジはそれを黄昏た様子でみていた。
そういえばいったことがないな。
あんまり。
ミサトさんはいったことあるんだよな。
ここに来る前に送ってきた写真、あれは学生時代のミサトさんと聞いた。
とっても、キレイだった…。
「なにをしている。」
この声は父、碇ゲンドウだ。
シンジは慌てて振り返った。
「とうさん?」
「お前、旅館の際に葛城君と相部屋になったよな。」
ああ、そんなことがあったけ。
あの時のミサトさんの傷。
凄い大きかった。
戦場でついたものかな、それともセカンドインパクトで。
ボクに彼女のことをまだ知らない。
もっと知りたい、ミサトさんの全てを。
そんな純真な愛情を胸に抱いた息子に対して父は詰め寄った。
「何もしなかったそうだな。」
ゲッ!!!またその話か!!!
この髭爺はいつもこうだ。
「だ、だって僕まだ子供だよ!」
ゲンドウは大きくため息をつくとシンジをにらんだ。
そしてこういった。
「お前には失望した。」
「なんでだよ!!!」
「何もせんのは無礼というものだ。どうせ何も発展しなかったんだろう。呆れたものだ。全くそれではその内他の男にとられてしまうぞ。」
「夏祭りにいったよ。」
「それもセカンドのアイデアだろう。どうするのだ、自分から攻めないという事は…やる気がないということだぞ。」
「じゃあ、どうしろっていうんだよ!!」
ゲンドウは息子に微笑んだ。
「これだよ。」
ゲンドウが指を指す方向には海がうつっていた。
海?
青い海。
目の前には水着の美女たちがうつっていた。
「この青い海だ。」
「まさか、そこで・・・・。」
「彼女との距離を近くする、それが作戦というものだ。」
「でも、ミサトさん。お腹に傷があるから嫌がるんじゃないかな。」
ミサトさんのお腹にあったあの大きな傷。
恐らく彼女は嫌がるだろう。
自分の腹部の傷が恥だとおもっているから。
でも、それは大きな間違いだ。
彼女の生きてきた人生。
それは恥ずかしいことなんかじゃない。
「全然、恥ずかしい事じゃないのに…。」
そんなシンジを見て、ゲンドウはふと思いついた。
「シンジ、この世界にはプライベートビーチというものがある。いいか、よく聞け。私もユイをそれで落とした。」
「そうなの?」
「問題ない、金は出す。そろそろ時間だ。私は行くぞ。」
ゲンドウの背中は少し誇らしげにみえた。
しかし、最近父さんはずいぶんと僕に優しいなあ。
そんな時だった。
「最近、碇司令と仲いいね。シンジくん。」
ミサトさんだ。
全部聞いていたのかな。
シンジはそんなことを考えながらミサトの顔をみた。
「あの、聞いてました?」
「え?」
「あっ・・・。」
聞いていない。
ミサトさんがうそをついている時は顔に出る。
顔に嘘をついているという文字は浮かんでいない。
「あのっ・・・。」
シンジは頬を染めて、ミサトをみつめた。
そして、小さな声でいった。
「海いきませんか?」
「海?」
「あまり記憶ないんです。海で遊んだこと…。ずっとミサトさんといきたかったし。」
ミサトの表情は暗かった。
ダメかな。
当たり前だよな。
勇気を出そう。
僕は初号機パイロットだ。
どんなことでもできるんだ。
「わかってます。ミサトさんに傷があることも…。」
ミサトは腕をとめた。
そう、私はこの子にみられた。
傷を。
腹部の傷を。
「でも、ボクはあなたといきたい。海に。他の人の目が気になるというなら…プライベートピーチに行きましょう。」
ミサトは微笑んだ。
この子無理しちゃって。
「わかったわよ。じゃあ、海の日でいい?」
「弁当作ります!一番おいしいの!」
「シンジ君の料理はなんでも美味しいから大好きよ。」
褒めてくれた。
ミサトさんが僕を…。
褒めてくれた。
嬉しい。
「ミサトさん…。」
シンジはミサトの顔をみつめた。
ミサトもシンジのことをみつめた。
目と目が合った。
「あなたの過去に何があったとしてもそれは僕には関係ない。今のあなたが好きだから。」
やだ、シンジ君。
こういう時なんでかわからないけどとびきり男らしいのよね。
ミサトはそう思うと、胸の高鳴りを抑えられなかった。
なんでこんな中学生相手にこんなドキドキしてるんだろう。
昔からかわいい子だと思っていたし、好きだったけど。
こんなにドキドキするのは初めてだわ。
「ご、ごめんね・・・仕事あるから!」
「ミサトさん・・・。」
ミサトは足早に去った。
まるで恥ずかしそうだ。
その翌日、シンジはゲンドウに頼んで金の工面をしてもらった。
そして、ゲンドウが以前から所有していたプライベートビーチに行くことに決めた。
やがて、当日になった。
ミサトの愛車アルピーヌに乗り、二人は海へと訪れた。
そこには一面見渡す限りの海と砂がそこにあった。
だれもいない。
なんとここだけが今はミサトとシンジのものなのだ。
「すごい。」
シンジは思わずつぶやいた。
ミサトも思わず同じことをいいそうになった。
シンジ君の前だから、ちょっと大人っぽくしないと…。
なんてガラじゃないわよね。
「ね、シンちゃん。」
「何?」
「私が服脱ぐところみたい?」
「な、なにをいってるんですか!!!」
「あなたならみてもいいけど。」
「やめてくださいっ!本気ですか!」
「からかっただけ。」
シンジは顔を赤くそめあげた。
ミサトさんいつもこうだ。
大事な時にボクをからかってごまかす。
気が付くとミサトが手早くテントを設置作業をしていた。
流石軍人だ。
こういう時は手早い。
頼れるときは頼れるけど、ダメなところはダメな人だよなあ。
「私が見ないうちに着替えていたら?」
「すいません…。」
シンジは少し謝るとせこせこと服を脱いだ。
ミサトがこっちを見ていないか、少しみたがどうやらミサトは見向きもしていないようだった。
手元にある作業に集中しているようだ。
その目つきはすっかりずぼらなミサトではなく軍人のものになっていた。
シンジはそんなミサトを想わずみつめていたが、いつまでもこうしていられないという事を思い出すと水着に着替えていった。
青葉が選んでくれた青色のサーフパンツ、シンジはそれに着替えた。
「着替え終わったよ、次はミサトさんの番だよ。」
「はいはい。」
シンジはふと気が付くともうテントとチェアの設置に完了していたことに気が付いた。
さっそくなのでシンジはチェアの上に座ってみた。
「ミサトさん、こういう時手早いよね。」
「戦争に言った頃にこういうことは慣れていたからね。」
悲しそうな声。
しまった。
ミサトさんの触れちゃいけない過去に触れてしまった。
「ごめんね、ミサトさん。」
「気にしてないから心配しない。」
ミサトは着替えが終わっていた。
それをみてしまったシンジはびっくりした。
ミサトの大きいバストははちきれんばかりに膨らんでいた。
そして、鍛え上げられた肉体と、それに浮かぶ傷も彼には美しくみえた。
黒いビキニ…。
こんなの着てるのって海外のモデルぐらいしかいなよ。
でも、それでもあっている。
やっぱり、ミサトさんってすごいんだ。
「ミサトさん…。」
シンジは思わず固唾をのんでしまった。
そんなシンジをみて、ミサトはいたずらに微笑んだ。
「えっち。」
「え?!」
その時シンジは気づいた。
自分の『それ』が膨張していることに。
「ぐあああああああああっ!!!」
ミサトはそんなシンジをみつめて微笑み、顔を近づけた。
「誰もいないから、ここで…。」
「み、ミサトさ…」
その時だった。
ミサトのスマホが鳴り響くのがみえた。
メール、リツコからだ。
『シンジ君に手を出したら減給~by副司令~』
げげ!みている!!?
ミサトは周囲を見回した。
そういえば、ここは碇司令所有のプライベートビーチ。
「…とりあえず、泳ぎましょう。」
「そうだね…。」
海にきたんだから泳ごうか。
シンジとミサトは海の中へと飛び込んだ。
冷たい水はシンジとミサトを温かく迎えこんだ。
やがて二人の水泳合戦が始まり、ミサトはその巧みな運動神経の数々をシンジにみせつけた。
その時、彼は感じた。
やはり、ミサトさんは凄い。
本物の軍人なんだ。
シンジにはミサトの鍛え上げられた腹筋がりりしくみえた。
すごい。
まるで、豹みたいだ。
水泳合戦はミサトの圧勝で終わった。
二人は時間を忘れ泳いでいた。
泳ぎつかれた二人はテントのほうへと向かっていった。
その下にあったクーラーボックスからシンジが作った弁当を開いた。
ミサトの手にはビールがあった。
「ミサトさん、飲酒運転はダメですよ!」
「いいのよ、ネルフは超法規的な特務機関だから。」
ふと、またミサトのスマホに着信がかかった。
リツコのメールだ。
『飲酒運転も減給』
ミサトはためいきをつくとビールを戻した。
シンジの弁当をつまみながら、ミサトはふと考えた。
シンジの作る手料理はおいしい。
「おいしいわ。シンジくん。」
ミサトはそういった。
シンジはそれだけでおなかいっぱいになった。
「シンジ君、お嫁さんだったらすごい理想的よね。」
「ミサトさんも旦那さんだったらすごい理想的だとおもいます。」
二人はそれぞれの皮肉を確認すると、ゲラゲラと笑いあった。
「ね、シンジくん。」
「はい。」
「あなたがもしも、ほかの女の子が好きになったら黙って私のことは捨てていいのよ。」
シンジは震えて叫んだ。
「バカにしないでください!」
「いいえ、真剣に言ってるのよ。あなたに相応しい相手がどこかにいる。私は年齢がいきすぎてるでしょ。」
「ミサトさん!!」
「それにみて、この傷。」
ミサトは自分の腹部を指さした。
「こんな傷持った女、誰が欲しいの?あなたはきれいで優しくて穢れのない純真な少年なの。こんな傷持ちの穢れた女はふさわしくないわ。アスカやレイ、ヒカリちゃんのようなきれいで優しくて純粋な子たちがいっぱいいる。彼女たちこそあなたに相応しい。そうよ!奇麗なあなたを私で汚してしまったら…」
「いい加減にしてくださいっ!!!」
シンジは立ち上がり、ミサトに近づいた。
そして、黙ってミサトの唇に近づきキスをした。
ミサトは予想外の出来事にあっけにとられた。
シンジは素早くミサトの唇から離れると、背中を向けた。
「年齢がどうとか、傷がどうとか、そんなのは知らない。確かに傷もあるかもしれない。年齢も年上すぎるかもしれない。でもね・・・・どうでもいいよ。」
「シンジくん」
「そんなの知ったことじゃないよ!!!!」
シンジは泣いていた。
ミサトの言葉に傷ついたんだろう。
ミサトはシンジに近づいた。
「ごめんなさい、私…。」
「二度といわないでください。」
「ありがとう、シンジ君…。」
ミサトはシンジを後ろから優しく抱きしめた。
ふとテーブルに食べかけの弁当があるのに気が付いた。
「食べよ。」
「うん。」
二人はテーブルにつくと弁当を再び食べ始めた。
「僕、ミサトさんに褒められたくて料理はじめました。」
「え?」
「エヴァパイロットとしての自分じゃない居場所がほしくて…。だからミサトさんと暮らしてすごくよかったと思います。きっとあの時ミサトさんに引き取られなければ気っと早くエヴァをやめていた…そしたら世界は…。」
ミサトはそんなシンジをみて、優しく微笑んだ。
「ありがとう。私もシンジ君がここにいて本当に良かったと思うわ。だからね、シンジ君。もしもエヴァが必要じゃない世界が来たとしても…あなたは私のそばにいてね。」
「はい、絶対に。」
「ありがとう。」
ミサトはシンジを抱き寄せると、抱擁を交わした。
彼女の鍛え上げられた腕はシンジを包み込んだ。
シンジは顔を染め、赤くより赤く紅潮していった。
「ミサトさん、好きです。」
「あたしも、あなたが好き。」
シンジはミサトの『好き』という言葉を再確認できたことを心から嬉しく感じたのだった。
二人は浜辺にシートを引くと、地面に寝そべった。
青い空は広がっていった。
「僕はあの空のように、あなたのすべてを受け止めます。そして、あなたに相応しい男になってみせます。」
「もうなってるわよ。」
そんなやり取りをしながら二人は地面に寝そべった。
そしてそのままだらしなくいびきを立てながら昼寝をしてしまったのだった。
その後、二人は見事にくっきりと日焼けをしてしまった。
ミサトもシンジもその夜は背中に焼け付いた跡で苦しみそろって眠れなかったのであった。
あるいは、それだけではなくお互いの関係について何かしら発展するのではないかという期待もあったのかもしれない。
いずれにせよ、その夜二人の胸はお互いに高鳴りがとまることはなかった。
一応今回でこの作品は終わりますが、またいずれミサシン物をpixivかここであげますのでその時をお楽しみください。