ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜   作:神武音ミィタ

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思いつくときに、書けるときに書きまくろうかなと、最近思う所存です。


第56話〜武運と涙〜

「そんじゃ、行ってくる」

 

俺たちは新東京空港にいた。

キャリーケースを手にする、俺……小鳥遊 真と、長瀬 飛鳥と、そのプロモーター、季崎 火乃。

見送りに明崎民警のメンツと徳崎 紅音が来ていた。

 

「マコちゃん……気をつけてね」

 

「無理はなさるなよ」

 

「わかってる。あくまで俺の目的は心音を連れて帰ることだからな。テロリストはそのついでだ」

 

今回は俺一人で行くことにした。明崎民警の仕事もしてもらいたいし、正直な話……金も無いしな。

長瀬民警と関係を築けて成功だったな。

 

「じゃあ……お気をつけて‼︎」

 

「ご武運を、真様」

 

俺と飛鳥と火乃は飛行機に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

アメリカ ロサンゼルス空港から、バスに揺られ、私……徳崎 心音はデトロイトエリアに到着した。

アメリカも日本と変わらない。ただ土地の面積が広いのもあるのか、モノリスは日本のものと比べると巨大だ。

 

「さて……と」

 

私はキャリーケースを引き、予約した近くのホテルに向かった。

 

 

 

ホテルの部屋でパソコンを開き、蓮から聞き出した情報を元に、アジトの場所を特定。

 

「これは……軍事基地?」

 

軍事基地にテロリストが潜んでいる?

……民警の身分証明はあるから、いけるかな。

コーヒーを啜る。

 

「真……」

 

ダメだ。忘れなきゃ。

私にはもう……

 

「真に愛してもらう資格なんか、ない……」

 

 

 

 

 

「飛鳥……寝ちゃった」

 

飛行機内にて。あと3時間ほどでロサンゼルスに到着らしい。

通路側の飛鳥は少し前までは本を読んでいたが、寝てしまった。

 

「……」

 

「……心配、だよね。相棒のこと」

 

火乃が、俯いていた俺の顔を覗き込む。

 

「そうだな……あいつ、走り出したら止まるのに時間かかるからな」

 

「……ねぇ、小鳥遊。前から聞きたかったんだけど……」

 

頬を赤らめ、尋ねる火乃。

 

「何だ?」

 

「あんたってさ……犬派? 猫派?」

 

「……は?」

 

「いや……その、なんというか……」

 

何を聞いているんだこいつは。

ま、暇だし答えとこう。

 

「どちらかといえば……犬かな。基本嫌いな動物はいない」

 

「そ、そっか……え、えへへ……」

 

火乃は尻尾が露わになり、荒ぶっていた。

 

「おい、尻尾」

 

「はっ⁉︎ みっ、見るなスケベ‼︎」

 

 

 

 

 

 

キャリーケースの中身をクローゼットに入れ、武器の手入れをする。逆手刀を砥石で磨く。

 

「……」

 

『も……、…めっ‼︎』

 

ここ数日、頭の中で呼びかける声が響く。恐らく、私が蓮から洗脳されていたときに聞いていたものだろう。

何と言っているかは鮮明には分からないず、途切れ途切れだが……。

 

「……よし」

 

私は武器を携帯し、ホテルの部屋を出た。

 

 

 

 

 

「……」

 

機内放送の音楽番組を聴きながら、物思いに耽る。

心音のことだ。

何であのとき、あの場から去ったんだ……何も言わずに。

その理由を考えるも思い当たる節が見つからない。

 

「……はぁ」

 

考えても無駄な気がしてきた。

とりあえず、もう直ぐ到着だろう。

俺はイヤホンを外した。

 

 

 

 

その頃の日本……

 

 

 

「んー……良い天気、だな」

 

この俺……桐生 荘司は買い出しに行っていた。今日の夕飯のだ。

なんだかんだ言って平和な奴らだよな、民警って。

敵であった俺を許し、受け入れている。

 

「あの坊主……無事に着いたかね……」

 

俺は買い物を済ませ、スーパーを出る。

 

「……雨か」

 

雨が降ってくる。折り畳み傘を開き、歩く。

 

「……お?」

 

視線の先……自販機の近くで、雨に打たれ項垂れながら歩く少女が。俺はそいつに歩み寄り、傘に入れてやる。

 

「嬢ちゃんどうした。こんなとこでずぶ濡れになってると、風邪引くぞ」

 

少女は顔を見上げる。雨なのか涙なのか……少女の両眼からは一筋の水が。

 

「……何故泣いている?」

 

「……見捨てらたんです。マスターに……」

 

マスター……?

とにかく、放っておけない。

 

「……来な」

 

「え?」

 

俺は少女の手を引き、歩く。

 

「……名前は?」

 

「……ユノ。緋月 ユノ(あかづき ゆの)、です」

 

「ユノか。お前、何者だ?」

 

「マスター……プロモーターを失った、イニシエーターです」

 

イニシエーターだと?

 

「……プロモーターを失った、のか」

 

「……正確には捨てられました。君はもう要らないって」

 

酷い話だな……。俺はユノの頭を優しく撫でてやった。

 

「……とりあえず、飯食うか?」

 

ユノは頭を縦に振った。

 

 




次回より、熱くなるかな……?
いや、熱くしてみせる。

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