ええ、興が乗りました。
母が倒れてから数十分が経過した。承太郎の体感にしてみれば一週間にも感じられる、地獄のような間だったと言える。
今では母親ホリィの容態も落ち着いてきて、熱も少しだけ下がった。しかし、体から噴き出る汗の量と、呼吸の荒さは未だに変わらない。エジプトに旅立つ前に見た母親よりも、悪い状況だ。それだけは医学の知識がない承太郎にも分かった。
ひとまず己ができることをやろう。
そう考え抜いた承太郎は今一番頼りになる祖父ジョセフへと電話をかけていた。
『承太郎。落ち着いて聞いてくれ。先程、お前に言われて久方ぶりに念写してみたが、どうも曖昧な写真しか出てこん。D I Oの写真と言われればそう見えるし、違う男の写真と言われればそうも見える。とりあえず、この写真を
ジョセフの念写に、原因解明の糸口があると考えていた承太郎からしてみれば、なんともやるせない返事だ。つい、内心で舌打ちを繰り出してしまった。
「他に手がかりは何もないのか、ジジイ」
思わずイライラとした気持ちが承太郎の表面へと発露し、そう尋ねた。
それにジョセフも答えたい気持ちはあるが、如何せん彼にも分からないことは多い。この段階で憶測ばかりで話を進めても良いことがないのは、長年の経験で分かっていた。
『一度落ち着け。奴は確かに死んだ。それはお前がよく分かっておるはずじゃ。で、あればホリィがスタンドに蝕まれている原因は他にある。例えば、一度開花仕掛けたことによって、定期的にスタンドが悪さをする、とかのう。今となってはアブドゥルもいないため、わしもスタンドについて詳しいことは言えん』
承太郎はその説明を受けてアブドゥルのことを思い出していた。
最初にホリィが倒れた時、それを発見し原因を突き止めてくれたのも彼である。こう言う時にアブドゥルがいてくれれば、何かしらの解決策を提示してくれたのだろうか。
だが、彼は今この場にはいない。
正確にはこの世にいない。
どれだけ望もうと、アブドゥルを頼ることはもうできないのである。
「……そうだな。今はとりあえず、医療チームが着くのを待つぜ」
現実を直視し、冷静な判断ができるようになった承太郎は深い息を吐いた。
そっと横目を向けてみれば、さっきまで冷静さを忘れて開けてしまった、壁の穴がある。ここで再び冷静さを欠いては数分前の自分と何ら変わらない。今は極力思考を放棄せずに考える必要があるのだ。
『それでいい。一応、他にもお前が言っていた原因かもしれない
アブドゥルの知人だった者ということは、きっと何かしらの特異な力を持っているのだろう。ジョセフもその手に詳しいと明言していることだし、力になってくれるのは間違いないと思える。
だが、そこでふと承太郎は疑問に思った。今話している祖父はあまりにも他力本願すぎるのではないだろうか。数ヶ月前の時、自身の娘が倒れたと知るや、動転のあまり落ち着かせるために承太郎に頭突きを喰らわしていた男だ。ここまで冷静になっているというのはあまりにも不気味である。
「テメーはどうするんだ」
その疑問を口にした瞬間、電話越しでもわかるくらいの鈍い音が聞こえた。
『……ワシもそっちに行く。が、今回は原因の調査はできん。お前の言う通り、ホリィの体調が前よりもひどくなっておるのなら、ワシが波紋で看護する必要もあるじゃろ。医療チームとは一日遅れになるが、スージーと一緒に渡航し、面倒を見るつもりじゃ』
多分だが、さっきの鈍い音は「わし自らが解決する」という気持ちを堪えた結果なのだろう。ジョセフにとってホリィはたった一人の愛娘だ。それを自分の手で救ってやれないことに罪悪感を感じているのかもしれない。
しかし、ホリィの体調を任せられるのも波紋を使えるジョセフだけである。いついかなる時も、最悪のケースを想定して付きっきりでいなければならない。そう考えれば、彼の采配は妥当としか言いようがなかった。
『承太郎……なんとしても原因を解明してくれ』
ひどく震えた声。なにかを堪えているのか、それとも悲しみにくれているのか、どちらともとれる声。
承太郎はその言葉を受けて静かに決意した。
「あぁ、安心しな
それだけ言うと、承太郎は祖父の返答を待たずに電話を切るのであった。この言葉をどう受け取るかは相手側次第。承太郎の気持ちは、きっとあの旅を一緒にした祖父ならば、間違えず受け取ってくれることだろう。
「さて、水でも換えるか。チッ、早く黙って治せってんだ……」
無駄にひろい家にいつも咲いていた笑顔は既に消えていた。
☆★☆
倒れたホリィを発見した翌日。夜が明け、昼も過ぎ、夕方に差し迫ろうとしていた時刻に、来訪者を教える機械音が空城邸に響いた。S P W財団の医療チームであればもっと音が聞こえるため、昨日ジョセフが言っていたアブドゥルの知人がやってきたのだろう。
承太郎は母親の看病を一旦中止し、玄関へと赴く。
がらがらと横スライドの戸を開けば、そこにはサングラスをしたタッパの良い男が一人立っていた。
「よう、あんたがジョースターさんの孫、空条承太郎ってやつかい?」
愛想良く笑った男は、サングラスの位置をくいと直す。体を動かした際、血や火薬の臭いがしたことに承太郎は気が付いた。そんな日常生活ではまず嗅ぐことのないそれが身に染みているということは、男はそれ相応の修羅場を潜ってきたのだろう。風貌からして、只者じゃないことだけは分かる。
「アンタは?」
念の為、承太郎は男に名前を聞くことにした。
ジョースターという名前を出している時点で、アブドゥルの知人なのは間違いないが、これも念の為である。
「初めまして、俺は獅子劫界離。アンタのじいさんジョセフ・ジョースターの紹介で力になりにきた、フリーランスの魔術使いだ」
「魔術、か」
ジョセフに言われた時も思ったが、そう言えばと承太郎は記憶を掘り返す。あのアサシンと名乗る少女も、承太郎の力を見て「魔術」と言っていた気がした。
何かしらの関連性があると見て間違いないだろう。とりあえず、そのことを踏まえて色々と情報が欲しい承太郎は、獅子劫を家の中へと招くことにした。
「上がりな、話が聞きたい」
承太郎はそのまま顎で指図すると、獅子劫はそれに従い家屋の中に入る。
一瞬、土足のまま上がろうとしたところを、承太郎が目で制すと、獅子劫は思い出したかのようにいそいそと玄関口で靴を脱ぎ始めた。
「すまん、すまん、海外生活続きでついうっかりな」
「……別にかまわん」
最初の頃はジョセフもよくそのまま家に入って、ホリィに怒られていた。
そんな懐かしい子供の頃の思い出を再生させながら、承太郎は客室へと歩いて行く。獅子劫もそれに後続し、懐かしい日本家屋に視線を方々へと飛ばしていた。
「あ、そうだ。まずはアンタの母親から見せてくれないか」
思い出したかのように獅子劫が繰り出す。
承太郎はその言葉を受けて数秒考え込んだ。見ず知らずの人間に、今弱っている母親を見せても良いものか、どうなのか。だが結局のところ、診てもらわなければ分からないこともある。それに何かしようとするのであれば、その時、自分が止めれば良いだけだと裁定した。
「分かった、ついてきな」
承太郎は男に言われるまま母親が眠る部屋に連れて行く。襖を開けて中に入れば、いまだにうなされている女性が布団の上で横になっていた。これでもマシになった方だと承太郎は思っている。
獅子劫はその様子を見るなり、横になっているホリィのそばに腰を下ろすと、腕を触ったり、首を触ったりと検診を始めた。承太郎はそれを襖の近くで見ながら、検診の結果を待つ。
数分後、ある程度見終わったのか、獅子劫はため息をつくと、場所を変えるよう打診してきた。
「ここは病人の部屋だし、場所を変えるとしよう」
「ああ、そうだな。居間に案内しよう」
ホリィの部屋を出て、居間へと続く廊下を歩きながら、獅子劫は早速と言わんばかりに本題へと切り込んだ。
「まずは、お前さんが見たサーヴァントという者について説明させてもらう。サーヴァントとは俺たちの世界で簡単に言うところ、聖杯戦争——いや今回は聖杯大戦か。まあ、呼び方は何にせよ、その戦いのために召喚された英雄の影法師のことを指す」
「聖杯大戦だと?」
聴きなれない単語が出てきたため、承太郎は説明を求めるように聞き返す。
「ああ、聖杯——これも簡単に言うと万能の願望機だな。それを俺たち魔術使いや魔術師の連中が、七つのクラスで現界した英雄の使い魔を使って奪い合うんだ。それが聖杯戦争。あんたが見たのは暗殺者のクラスの英雄だろう」
「よく分からねーな。つまり、その聖杯とやらの争奪戦がここで起ころうとしているっということか?」
承太郎は途方もない話に疲れを感じながらそう聞いた。
彼としては、己が生まれ育った街で、そんな意味の分からない戦いをして欲しいとは思わないのだ。しかも、あのアサシンとかいう猟奇的殺人鬼があと六人もいる。それがのさばっているというだけでも度し難いこと事実だ。タチの悪い冗談で済ませられない。
けれど、獅子劫はそんな承太郎の言葉を否定するように、チッチッチッと人差し指を左右に振った。
「いいや、それがそうでもねえ。今や亜種聖杯戦争っていって、小規模な聖杯戦争もどきは各地で行われているが、ここにはそう言った類のものはなかった。多分、現在行われようとしているルーマニアの聖杯大戦。それに参加するサーヴァントをマスターである誰かさんが、ここ日本で召喚したんだろ」
獅子劫がそう言い終わる頃には居間についており、承太郎と獅子劫はそれぞれ席につく。ちゃぶ台に置かれた灰皿を見た獅子劫は、にこやかな笑みを浮かべタバコの箱を取り出した。承太郎もそれに倣い、自身の愛用タバコから一本だけ取り出し、火をつける。
「じゃあ、今頃あのアサシンとかいう奴はルーマニアに行ったんだな?」
「多分な。聖杯戦争に参加する英雄もまた、聖杯にかける望みがあるからな。開催地でもないところで延々暴れたりせんさ」
とりあえず、あのアサシンのサーヴァントはどこか国外へといってくれたらしい。それだけでも肩の荷が少し降りたと喜ぶべきだろう。
「それともう一つ、あんたの母親についてだが、あれはかなり危険な状態だ。後10日もしないうちに死ぬ可能性がある。今は痛みを和らげる暗示をかけてやったが、俺にできるのはそれくらいだ。こればっかしは俺が見ても原因の一つも分かりやしねー。あんたの言ってた通り、そのD I Oって男が原因なのかもな」
ぷかりと煙を吐き出した獅子劫の顔には、面目ないと思われる気持ちが浮き彫りになっていた。
ここで彼を責めるのは御門違いだろう。そもそも原因が分からなくて当たり前。一人に聞いたところで、解明できる問題だとは承太郎も思っていない。そもそも、母親があと10日は保つと診断してくれたことに感謝するべきかもしれない。それでも短すぎるスパンに承太郎は思わず悪態をつきそうにはなったが。
とりあえず、これで目の前の男では母親を救えない。その原因も突き止められないと言うのは分かった。であれば、次の手段を求めて承太郎は奔走しなくてはならない。承太郎は獅子劫の役目はここまでだと断定することにした。
「獅子劫……とか言ったな、世話になった」
承太郎はそう告げると、吸っていたタバコの火を消して立ち上がる。
話は終わった。相談も終わった。あと10日でできることを承太郎は今から全て行うつもりでいる。スタンドに詳しい人間と言えば、あとはポルナレフであろう。彼なら今はイタリアにいると思われるため、早速医療チームが到着次第、渡航しようと考えていた。
だが、それを止めるように、獅子劫が承太郎を呼び止める。
「まぁ、待て。なんで母親の容態を話す前に、俺が聖杯大戦の話をお前にしたと思っている」
獅子劫は思わせぶりな言葉を撒き散らし、タバコを指でくいと上げた。
そんな調子に承太郎はつい向かっ腹が立つ。
「勿体ぶるんじゃあねーぜ。何かあるなら、さっさと言いな」
人を射殺すかもしれない目力。
流石の獅子劫も、その睨みには逆らおうと思えないのか、両手をあげると、すぐさま話を再開させた。
「英霊として死者を呼び出す戦争に、D I Oという死んだ男に苦しめられているかもしれない母親。極め付けには、お前の目の前に現れたアサシンとの縁。これら全てを偶然と片付けるには、流石にできすぎだと俺は思う」
「……」
獅子劫はニヤリと笑い、承太郎の顔を見る。
承太郎としても、確かに獅子劫の考えは頭の中をよぎっていた。
今までD I Oを倒してからと言うもの、ホリィのスタンド能力が暴発したことはない。ジョセフの言う通り、これがスタンド能力に一度目覚めかけた後遺症のようなものなら、この数ヶ月間の間に一度くらい発症していてもおかしくないはずだ。
けれど、ホリィはこの数ヶ月間、何事もないように過ごしていた。
出来過ぎだ。数ヶ月間、後遺症とも思えるものもなかったホリィが、この時期に突然倒れるのも。まるで運命のように死者が参戦する大規模な戦争が開幕しようとしているのも。その参加者の一人が、承太郎と邂逅してしまうのも。全てが出来過ぎだ。
だが、この偶然の重なりにはおかしな点が一つある。
「英雄と言ったな、獅子劫。一つ教えといてやるが、俺の知っているD I Oと言う男は、その正反対の人物像をしている。とても英霊と呼べる奴ではない」
もしかしたら、聖杯大戦にD I Oが召喚されて蘇ったのかもしれない。その副産物によるせいで自身の母親をまた苦しめているのかもしれない。
だが、それはありえないと承太郎は断言できる。それだけの理由がこれなのだ。
だが、その理論に獅子劫は肩を竦めて答える。
「ああ、実際、俺もD I Oなんていう名前聞いたこともなかった。だが、ジョースターさんからそのD I Oっていう奴の話を聞いて、もしかしたらと思った」
「どういうことだ」
そう言うと、獅子劫は顔写真付きの書類をテーブルの上へと提示した。
承太郎はそれらを手に持って確認すると、そこには顔写真だけじゃなく、いくつかの写真がクリップで止められていた。
その中に、一つだけ昔聞いたことのあるような遺物が承太郎の目に留まる。
肉眼で見れば、画質は荒いし、暗闇のせいでろくにどんな物体なのかは分からない。けれど、スタープラチナで見た承太郎にはそれがくっきりと見える。
——石仮面。
祖父ジョセフが、高祖父とD I Oについて話してくれた時、登場した物体。D I Oを吸血鬼へと昇華させた、闇の一族が発明した遺物である。
ジョセフは全ての石仮面を闇へと葬り去ったと言っていたが、まだ現存する物体がこの世にあったのだ。
「それが今回、聖杯大戦を引き起こした主犯ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアが使った触媒だ。名を石仮面。戦場となるルーマニア、その国が誇る大英雄が愛用していたとされる歴史的遺物だ」
「ルーマニアの英雄だと?」
承太郎は写真とともに渡された書類の方にも目を通す。
「ああ、そしてルーマニアの英雄でもっとも知名度があるのは一人しかいない。ヴラド3世。
そこまで言われた時、承太郎はクシャりと紙を握った。
何故だか分からない。
さっきまでそんな訳が無いと思考していたはずなのに、突如頭の中に可能性が湧き上がる。モヤモヤと霧が掛かっていた脳裏が、急にクリアになったように澄んでいく。
間違いない。ここに居る。
古城と思われる写真を見ながら、承太郎は激しくそう思った。ここに行けば、全てが解決すると、そんな気持ちになれた。
確証なんてないけれど、この肉体が、魂がそう叫んでいる。
ならば、承太郎にとってそれで十分。どうするべきなのかはすぐに分かった。
「これは全て憶測にしかすぎんが、余りにも偶然が重なりすぎている。俺はこの線しかないと睨んでいるがね。まあ、あとはお前さんがどうするか次第だが?」
獅子劫は試すように承太郎に問いかける。
しかし、その質問を疑問に思った承太郎は、獅子劫を睨み付けながら質問を質問で返した。
「逆に聞かせな、テメーはその聖杯大戦に参加するのか?」
「ああ、そのつもりだ」
その質問にさも当然のように答える獅子劫。
承太郎もそれには何も言えず、獅子劫の質問に大人しく返答することにした。
「どっちにしろ、ジジイの念写も使えない今、賭けでも何でも動くしかねえって状況だ」
承太郎は手に持つ書類を睨みながら自身が行うべき行為を見据えていた。自身の母親を救うため、D I Oに引導を渡すため、承太郎はその身を戦いの渦へと投入することを決意したのだ。
「そうなれば、出発だな! ダーニックは俺の敵でもある。そのサーヴァントもお前さんの敵だ。つまり、共通の敵を持っているということだ。協力は惜しみなくするぜ。サーヴァントともやりあえる人間なんざ、こっちにいて損はねえ」
「随分とはっきりと物を言う奴だな、お前は」
裏表もなく自身が計画している打算を全て打ち明ける獅子劫に、承太郎は眉を曲げながらその真意を問う。
「なーに、お前さんをチマチマと説得するのは骨が折れそうだからな。それなら互いに利害関係になった方がいいってもんだ」
「ふっ」
しかし、そんな態度をまるで意に返さないように獅子劫は笑いのけた。承太郎はそれを見て、自身も不敵な笑みで返す。
「なら俺もあんたを利用させてもらうぜ」
バーーーン!
「それじゃ、ここいらで一つよろしく頼むぜ、ええと? なんて呼べば良いんだ?」
「空条承太郎。好きに呼びな、俺は獅子劫とでも呼ぶ」
「あー、じゃあ、空条の“条“に、承太郎の”承“でジョジョだ! よろしくな、ジョジョ! がははは」
ガサツな大笑いをあげる獅子劫に、承太郎は思わず帽子を目深く被った。
ジョジョ。
どこにいっても、このあだ名はジョースター家に付き纏う宿命らしい。
「やれやれだぜ」
獅子劫との対談を終えて1時間後、SPW財団の医療チームが家に到着した。承太郎はそれを確認すると、祖父から預かった写真を受け取って、責任者と思われる主治医から母親の状態を知らされる。やはり獅子劫がいった通り、あまり時間はないとのことらしい。
これから獅子劫と承太郎はルーマニアに旅立つが、その間は、この財団の医者たちが24時間体制でホリィを看護する。前回のエジプトの時と変わらないが、今回はそこに波紋を使えるジョセフが加わる。ホリィの安全性もさらに増すだろう。
「じゃあ、あとは頼む」
「ええお任せください。ホリィ様の命はSPW財団の名をかけて保証させていただきます。何かありましたらすぐに連絡を」
「ああ」
承太郎はそれだけがわかると急いでルーマニアに飛ぶことにした。獅子劫もそれに賛成らしく、家の前には既に獅子劫のレンタカーが止まっている。
獅子劫は車の運転席から出てくると、承太郎の顔を伺いながら質問してきた。
「母親との挨拶は済ませたのか」
その気遣いを承太郎は鼻で笑い飛ばしながら質問に答える。これは馬鹿にしていると言うわけではなく、聞くまでもない、といった様子だ。
「フン、余計なお世話だぜ」
「それもそうだ。あまり他所様の家庭にズケズケと入り込むもんじゃあないな」
「アンタも準備はできたのか?」
承太郎の問いかけに獅子劫はトランクを指差しながら笑顔で答えた。こちらも聞くまでもないといった様子である。
「あとは現地で何とかするさ。そう言えばジョジョ、俺はお前の戦闘能力を知らないが、まあ、追々見せてもらうとしよう」
「任せな、D I Oの野郎をぶっ叩くまでテメーの手伝いをしてやるよ」
空条承太郎。スタンド名「スタープラチナ」
能力は精密な動きと豪快な力。時を数秒止めることも可能。
獅子劫界離。フリーランスの死霊魔術使い。
能力は指弾や心臓爆弾などの、戦闘においては攻撃特化型の魔術を使う。
「よし、それじゃ……」
二人で家の門を見上げていると、承太郎は当時のことを思い出していた。今は亡きあの二人とともに出発した地点。今度は違う人物とまた出発することになるとは思ってもいなかった承太郎は、なんとなしに帽子の鍔を少し下げるのであった。
「行くぞ!!」
バーーーン!
ここから彼らの聖杯大戦が始まろうとする。