しかしナギ達の策略により、何故かガトウと戦う事に…。
小話Ⅱとなります。この話は長いので疲れてしまうかもしれませんが、最後まで読んでもらえるとうれしいです。
あの飲み会から夜が明けて、その日俺は、影にしまっておいた魔法球を取り出して、部屋に集まっていた皆を招待した。
メンバーのほとんどが、俺が影魔法を使える事を驚いていたが、ゼクトやアルなんかは、何処か納得していた。
その事で少し疑問に思った俺は、二人に理由を聞いてみると…。
「闇の魔法を扱える。つまりは闇の素養を持っているということじゃ。ならばコレくらいは出来て不思議ではない、むしろ当然じゃろ。」
「ええ。それにこの魔法は便利ですからね。もっと修練すれば影を自由に行き来できますし、そうじゃなくても、物を保管するには最適。せっかく素養があるのですから、覚えない方が損というものですよ。」
と、得意げな顔で俺に理由を話してくれた。
実際、荷物の保管場所で、いろいろ考えなくてすむからこの魔法は重宝しているし、本当に覚えてよかったと思っている。
それに、どうやら二人の話から、影の中を移動する魔法…。つまりは原作でエヴァなんかが使ってた魔法だと思うけど、アレはてっきり吸血鬼だけの、特殊な魔法だと思っていたけどどうやらそれは違うらしい。
それなら、二人ともその魔法の事を知っているみたいだし、“然”の修行のついでに教えてもらいたいと思う。
便利そうで、ちょっといいなって思ってたし…。
さてさて、そんな事を思いながら、全員で魔法球の中に入ったのだが…。
驚いたことに、まず誰よりもはしゃいだのが、詠春さんだった。
「これはいいなぁ。すごい癒されるよ。日本の風景そのままだ。別に魔法世界が嫌いなわけじゃないけど、やっぱり生まれ育った景色が、一番落ち着く。ここにはちょくちょく邪魔させてもらいたいね。」
そう言って、一人でそこら辺を散策し始めた。
詠春さんの言う通り、俺の魔法球の中は、純和風の世界となっている。
少し大きな武家屋敷に竹林。その近くには、滝と川が流れている。遠くには、山や海があるのだが、かなりの距離がある為、家の近くに作った魔方陣を利用して移動できるようにしてある。
魔方陣は全部で3つ。
一つ目は険しい山と崖がある場所。
二つ目は海の砂浜。
三つ目は年中雪が積もっている山の中腹。
どれも修行と癒しを目的として、俺の想像で作ったものだ。
時間が出来たらもう一つぐらい増やそうかなとも考えてるけど、実行に移すのはもう少し後の事になるだろう。
それはともかく、今は思い思いに散策している皆を武家屋敷に呼んで、これからのことについて話しをしないといけないな。
そう思って、すでに俺の傍からいなくなっていた皆を呼びに行った。
「さて招待したけど、まずこれからどうしようか?」
武家屋敷に全員が集合した所で、俺はお茶を皆に配りながら、そう話を切り出す。
すると、やはりと言うか…。まず最初に発言したのはナギだった。
「そんなの決まってるじゃねーか。タケルとガトウが戦うんだろ?」
「はぁ…ナギよ。タケルは、まだ完全に調子を取り戻してはおらん。そんな状態で、戦わせるのか?」
「う゛…。じゃあどうすればいいんだよ。」
「そうですね…。ここは魔法球の中ですから、そこまで時間を気にする必要は無いでしょう。まずは全員日ごろの疲れをとったり、各々好きな事をしながら時間潰して、タケルの体調が完全に戻ったら、勝負をすると言う事でどうですか?」
「俺はそれでかまわんよ。正直、最近働きづめで、まともに休んでも無かったんだ。だから体を休める事ができるのは、正直ありがたい。それに、タカミチの修行を見てやりたいしな。」
「師匠…ありがとうございます。」
「私もそれが良いと思う。これからどんどん戦争が激しくなってくるだろうし、まともに休めるのも今のうちだけだ。」
「そりゃそうかもしれないな。だが詠春よ。休みたければ、タケルに魔法球出してもらえればいいんじゃねーか?」
「それは難しいだろ。今は、外にある魔法球の周りに強力な結界や障壁。更には認識障害の魔法をかけて隠している状態だ。比較的安全な場所でも、コレだけ警戒してるんだ。他の場所だとコレだけではすまないだろう。戦争中には使えないよ。」
「そうやでラカン。コレは無いものとして考えた方がええ。それにこの中は外の世界より時間が早く進む。つまりや…。外の世界より何倍も歳をとることになるんやで?ワイはかまわんけど、嫌やろ?」
「さすがに歳はとりたくねーな。」
まぁ、歳については魔法具をつくれば心配は無いんだけど、それは言わない方が絶対に良い。
だって今の状態で魔法具なんか渡したら、絶対にここに入り浸るだろうから。
もしあげるとしても、詠春さんとタカミチ、ガトウぐらいなものだ。後は歳をとっても平気な人たちだし、ナギとラカンは論外。
絶対にあの二人には渡さない。
「じゃ、さっきアルが言ったようにしよう。それでタケルは何時ごろ全快するんだ?」
「んー正直俺にもわかんないけど、そこまで時間掛からないと思うよ?」
「ふむ。ワシもその意見に同感じゃ。もう肉体的には問題ない。後は魔力と気が戻ればいいだけじゃ。そうじゃのう……あと2~3日といった所か。」
「うし!じゃ3日後ガトウとタケルが戦って、その時に出来た傷次第で外に帰る時期を決めることにするか。」
「ええ。ちなみに時間差はどれくらいなのですか?」
「今はあっちの一時間がこっちの二日だね。コレは設定をいろいろ変えることができるよ。」
「わかりました。やっぱり便利なものですね。魔法球とは…。」
「じゃ。皆解散!!」
最後にナギがそう〆て、一旦俺達は解散する事になった。
解散した後、早速ナギとラカンは、魔法球の中を探検してくるとか言って、魔法陣に飛び込み別の場所へ行き、ガトウとタカミチの二人は、先程言っていたように竹林の中で修行をするらしい。
詠春さんは、しばらくここでボーっとして、その後、滝に打たれてこようかなと言っていた。
そして俺は、と言うと…。昨日の内にアルとゼクトに頼んでおいた、魔法の修行をさっそく開始する事にした。まぁ、修行と言っても実際に魔法を使う事はまだできないので、座学なのだが…。
でも、こうして誰かに教えてもらいながら勉強するのは、とても久しぶりな事で、昔高校とか通っていた事を思い出して、懐かしい感じがした。
「ほら、タケル。ボーっとしている場合じゃありませんよ?知らなくてはいけない事は山ほどあるんですからね!!」
ただ一つ誤算だったのは、いつの間にかメガネに黒板を指す棒を装備したアルが、とてもウキウキしていた事だ。
これもある意味懐かしいのかな?
…龍ちゃんとか、開始してからまだそんなに時間経ってないのに、もう寝てるし…。
はぁ~。“ワイも魔法の事知りたいんや!!”って目を輝かせていた龍ちゃんはどこに行ったんだよ。
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【第三視点】
恰好はアレだったけど、かなり魔法の事を真面目に教えてくれたアル先生の授業から2~3日が経ち、約束通りガトウと仕合いをする日がやって来た。
場所は、武家屋敷から少し歩いて、滝がある所で、ギャラリーが見守る中、武とガトウは少し距離を開けて対峙していた。
「待たせてごめん。」
「いやいや。こっちこそ無理をいってすまない。それに疲れた体も休めたし、タカミチの修行も見れたから、とても有意義な時間だったよ。」
「それならよかった。……じゃ、はじめようか。」
「ああ」
そう言って、二人はお互いに構えあう。
くしくもその構えは、似ており唯一違う所といえば、ポケットに手を入れているかいないかぐらいである。
「なぁ詠春。ガトウの構え…っていうかポケットに手を入れてて大丈夫なのか?」
「私に聞かれても困るぞナギ。だが…ふむ。わざわざポケットに手を入れているのだから、それなりに理由があるのだろうが…ちょっと予想がつかないな。」
ガトウ独特の構えに皆困惑しているが、弟子であるタカミチだけは当然その理由を知っており、内心ほくそえむ。
皆がどんな反応をするのか楽しみで仕方が無いといった感じだ。
「……こないんですか?」
「君こそ向かってこないのかい?」
「まぁ…攻めても良いんだけど。ここはガトウさんの為の戦いだろ?だから先手は譲りますよ。」
「俺より年下の癖に言うじゃないか…。では、お言葉に甘えさせてもらうか。」
ガトウがそう言った瞬間、武とガトウの間の空間から”パンッ”という音が聞こえ、空気が弾ける。
「!!!これはすげぇぜ。…タケルに譲るんじゃなかったな。」
その一瞬の攻防に、ラカンが目を輝かせる。
ラカンと詠春、そしてナギの目には今の攻防がどんなものなのか、分かったみたいだが、それ以外は何が起こったのか分からず、ラカンに今あった事を尋ねる。
「ラカンは見えたんか!?ワイにはガトウの手がブレたようにしか見えんかったんやけど?」
「ワシもじゃ。」
「魔力を感じなかったので魔法じゃないと思いますが…なんでしょうか?」
「ガトウはポケットから高速で手を出しただけだ。まぁ、多分気かなんかで強化してるんだろうが、俺様でもかなり神経を使ってないと視覚できない速度とは驚いたぜ。」
「なるほど。居合いか…」
「へっ…なるほどあの構えはダテじゃねーって事か。」
そう言って”紅き翼”は口々にガトウをほめる。そんな中、タカミチ一人が今の出来事に唖然としており、そして我に返ると慌てて叫ぶ。
「いや…いやいやいや!確かに師匠はすごいのは知ってますけど。何で皆タケルさんには驚かないんですか!?あの師匠の居合い拳を初見で防いだんですよ?」
それを聞いて皆タカミチに”何言ってるんだ?”って顔をしながら顔を向ける。
「へぇ…居合い拳って言うのか。まぁ確かに驚いた事は驚いたけどよ。タケルが防いだ事については別に驚くほどでもないぜ?」
「ええそうですね。なにせ彼もまたやり方は違いますが同じ様な事ができますから。なら防げるのも納得できますよ。」
そう言って再び戦っている二人に顔を向ける。
それを聞いてタカミチは、自分の常識が崩れる音が聞こえるような気がした。
だが、すぐさま意識を覚醒させると、とにかく二人の戦いを見ようと必死になって目を凝らし始める。
この高速の戦いを、少しでもこの目で追える様に。
「…これは驚いたな。まさか初めてで反応できるなんてね。」
「まぁ、俺も同じ様なことが出来ますし。でもまだ本気じゃないんでしょ?」
「…なるほど。やはりあの噂は嘘じゃないってことか。…これは俺も様子見とは言ってられないな。」
そうガトウが言い、気を引き締めなおす。
一方タケルの方といえば、口ではあんな軽口を言っては見たものの内心では心臓をドキドキ鳴らしまくっていた。
(は~なんとか反応できてよかったよ。にしてもなんて速さなんだよ。クイック・ドロウできなかったら絶対あたってたよ。しかもやっぱり分かりづらい。今は様子見で速さ抑えてたんだろうし、今度はもっと隙なんてなくなるんだろうな。となると…やっぱりアレしかないか。)
「フッ!!」
ガトウが息を短く吐くと、今度は様子見なんかじゃなく、本気の居合い拳が武に向かって放たれる。
しかも複数。
それに対しタケルがとった行動は、両方でクイック・ドロウをして弾幕をはる事だった。
”下手な鉄砲数うちゃあたる”
ということわざもある通り、見えないのなら、自分の前に弾幕を張ることで防げばいい。
しかしコレは銃闘技を使える武だからこそ出来る防ぎ方であり、しかも重大な欠点があった。
「攻撃ができない……ですか?」
「ああ。タケやんのあの攻撃はあくまで迎撃専用。言ってみれば近距離でしか攻撃できへんのや、でもガトウの居合い拳は中・遠距離の攻撃や。このままやったらジリ貧になるやろうな。」
「たしかにな。…だがタケルもそれ分かってるだろうし、なによりこんなんで終わるわけがねーだろうがな。」
ラカンがそうやって話をしめると、またジッとタケル達を見る。
タカミチもそれに習ってジッと見つめる。タカミチにはもう殆ど攻撃など見えていないのだが、それでも一生懸命に見続ける。どうすればあそこまで強くなれるのかを考えながら…。
“パパパパパパッン!”と乾いた音があたりに響きわたるが、その音の原因である拳の姿は見えない。その為、はたから見ればそこに立っているだけに見えるだろう。
しかし熟練者から見れば、その光景は息をもつかせぬ攻防戦である。
そんな中、タケルはこれからどうするか考えていた。
(このままじゃダメだな。何かきっかけがほしい所だけど…相手のミスをまってもたぶん無理だしな。ここはやっぱり突っ込むしかないのか。…でもなぁ、痛そうだよね。はぁ…仕方が無い。)
「ガトウさんそろそろ疲れてきたんじゃない?」
「フッ、まだまだ大丈夫さ。それよりもタケルこそどうなんだ?いい加減腕が上がらなくなってきただろ?」
「まさか。まだいけますよ。」
「そうかい。なら、そろそろ噂の実力をみせてほしいな?こんなもんじゃないんだろ?」
「あらら。同じ事言われたか…。ならしょうがない。ビックリしないでください……ね!!」
そう言った瞬間タケルの姿がぶれて、そしてその場からいなくなる。
ナギ達はそれを見てニヤリと笑いタケルの行方を追う。
タカミチはすでに見失ってしまった。
タケルの目の前のガトウといえば、一瞬目を見開いたが、すぐさま姿勢を整え何もない空間に居合い拳を放つ。
しかし、二三発放ったところで、ガトウはハッとした顔になったかと思うと、急いでその場から下がる。
すると、その場に大きなクレーターが出来、その中心にはタケルの姿があった。
「アレ?結構うまくいったと思ったんだけど…はずしたか。」
そう言って首を捻る。
「その歳でたいしたものだ。まさかここまで完成度の高い瞬動を見れるなんて思わなかった。」
「よく言うよ。すぐに俺の姿見つけられたくせに。しかも攻撃まで当ててくるしさ…。」
「それくらいはやらないと、君に失礼だろ?だが…それ以上に驚いたのは、その拳の威力さ。まさか当てに来た拳がここまですごいなんて…。自信が無くなる。」
「それなら奥の手見せればいいじゃないですか。まだあるんでしょ?」
「観察眼まで一流か…。分かったそうさせてもらおう」
ガトウは武の言葉を聞いて顔をニヤリとすると、その場から少し下がりフゥと短く息を吐く。
「”右手に魔力”、”左手に氣”……合成!!」
「感卦法か…。(原作知っているから分かってたけど…すごいな。俺が使う感卦法なんかよりずっとうまく使えている。年季ってやつなんだろうな。)ならば、こっちも…”右手に魔力”、”左手に氣”……合成!!」
ガトウが感卦法を使うと、武もそれに習うかのように感卦法を発動させる。それを見たガトウは驚くがすぐに気を取り直してタケルを睨みつける。
「まさか感卦法まで出来るとはな。…コレでも究極闘法とか呼ばれていて身につけるのはかなり難しいはずなんだが…。」
「ガトウさんの感卦法に比べると、まだまだ粗が目立ちますけどね。じゃ行きますよ!!」
そう言って、またガトウに向かって突進する武。ガトウはそれを見て、適度に距離を取ろうとバックステップをして迎撃できる態勢をとる。
「”豪殺居合い拳”!!」
ガトウからまるでレーザーのような一発が武に向かって放たれる。
しかし武は、それをよけずに真正面からぶつかって行く。
どうやら拳で、この攻撃を撃ち砕くつもりなようだ。
「”リボルバーマグナム”!!」
そう叫んだ武は、体を回転させながら“豪殺居合い拳”三発拳を当てて、やっと相殺すると、その勢いのままガトウの懐に飛び込む。ガトウもそう簡単に入れさせないと、居合い拳を放ってくるが、体を回転させながら懐に入ってくる為、なかなか良い所に当てる事が出来ず、そのまま懐に入れてしまう。
「くっ!!」
「残り三発!まとめてくらえぇぇ!!」
ガァン!ガァン!ガァン!
金属音のような音が響き渡ると、二人はさっきまでいた場所から少しはなれて対峙しており方膝を付いていた。
「えっ!いったい何がどうなったんですか!?」
何があったかまったく見えなかったタカミチが近くにいたほかの人に聞く。
「二人ともさすがだな…。いいかいタカミチ?さきほどの大きな居合い拳をタケルが相殺し、その勢いのままガトウの懐に飛び込こんだ。…ここまではいいかい?」
詠春がそう言うと、タカミチは黙って頷く。
「その後タケルは、ガトウに対して攻撃を仕掛けようとしたんだが、ガトウは更にタケルに接近してその攻撃を潰そうとしたんだ。しかも気を込めた拳のおまけつきでね。タケルもガトウの考えが読めたんだろう、すぐさま拳ではなく肘の攻撃に変えてそれを迎え撃った。結果急所には当たらなかったけどタケルの攻撃はガトウに三発あたり、タケルの方もガトウの気の込めた拳をまともにくらってそのまま距離を取ったんだよ。…わかったかな?」
そう詠春には説明されたが、頭では何とか理解できても、気持ちが全くついて行けず、タカミチはただただ愕然としていた。
(あんな一瞬でこんな攻防があったなんて…。僕もいつか師匠のように戦ってみたいと思っていたけど、今の僕じゃ師匠の背中さえ拝ませてもらえない。ましてや才能なんてない僕なんて…。)
そんな事考えながら顔を下に向けていると、横にいた龍牙がタカミチの考えを見透かすように声をかける。
「タカミチ。大体今何考えとるんかは、想像できるけどな。勘違いしたらあかんよ?」
「えっ?」
「確かにタケやんもガトウも強い。でもそれは、今まで血のにじむような鍛錬をしてきたからや。それについては、ここにいる皆かてそうやろうけどな。確かに才能ちゅーもんはあるやろうけど、そんなもん戦いの場では絶対的な有利になんかならし、役に立つかも微妙な所や。なぁ詠春はん?」
「そうだね。才能っていうものは、言ってみれば人よりも早くうまくなれるだけだからね。それイコール強さとは何の関係も無い。むしろ遠回りした人の方が強くなる場合だってある。そもそも武術と言うのは”努力が才能を陵駕するためにつくられたモノ”と言う格言があるくらいだからね。私はその言葉にこそ武の神髄が込められていると思うよ?10の努力で勝てなければ、100の努力をすればいい。簡単な事だよ。」
「10でなければ100の努力…。」
「それにな。タケやんの強さを才能っていう言葉だけで片付けられるのは、許せんよ。ワイはタケやんと一緒におったから分かるけど、毎回ぶっ倒れるまで鍛錬して、やっとあそこまでの強さを手に入れたんや。確かに魔法球は使ったけど、結局はやらんければ意味は無い。それをやり続けた努力は決して才能なんかやない。タカミチはまだそこまでやってないやろ?」
龍牙の言葉は深くタカミチに突き刺さる。
今までの自分は、ちっとも上達しない事に対して才能が無いからと決め付けていたのではないか?
たとえ無いとしても、勝手に自分で限界を決めて倒れるまで努力をしたことがあるだろうか?
そう考えた瞬間、タカミチは今まで自分がやってきた事を恥じる。
そしてその事があまりにも情けなくて、いつの間にか涙があふれてきた。
「タカミチ。君はまだ若い。…いや若すぎるといってもいいだろう。これからいくらでも取り戻せるさ。でも今流している悔し涙は忘れないようにね。それさえ忘れなければきっと君は強くなれるよ。」
「…あ゛い」
「ま、今はタケやん達の戦いをしっかり見ることやな。お?そろそろ動きそうやで?」
龍牙と詠春の言葉に、ごしごしと乱暴に涙を拭うと、武たちの戦いをジッと見つめる。
その目は、いつかあの場所に立ちたいという戦う男の目をしていた。
「なんか隣でとても青臭いことやってますが…フフッ嫌いじゃないですよ。そういうの。」
「俺様もだな。漢は悔し涙の数だけ強くなるってかぁ?」
「お?ラカンにしてはいい事いうじゃねぇか。まっ俺様にはカンケーねーけどな。」
「はぁ…ナギの馬鹿は少しぐらいタカミチを見習って欲しいのう。」
ナギたちがそんな事を言っている中、ガトウと武は互いに方膝を付きながらこれからのことについて考えていた。
(何とか急所は外れているけど、それでもこの威力か…。まったく恐れ入るよ。”銃神”とは良く言ったものだ。まさに銃弾の拳。いや食らったのは肘か…それにまだタケルは手の内をすべて見せていない。もし”炎帝”の異名とされる技なんて使われたら…考えただけで嫌になるな。)
表情に出す事はけしてしないが、内心冷や汗びっしょりのガトウ。
しかしタケルもそれは同じだった。
(普通あんな場面でそんな事考え付くか!?やっぱり経験の差ってやつなのかな?それにしても、正確性だけで言ったら、たぶんここにいる誰よりも上だろうな。きっちりとダメージが残る場所へ当ててきやがった。こっちは全弾撃った反動が来て頭がくらくらしてるって言うのに…はぁ。どうしよか。)
そうして二人してにらみ合いながら考えていると、お互い考えている事が一緒なのが分かったのか。ニヤリと笑い合ってその場で立ち上がる。
「ガトウさん。たぶん考えている事は一緒だと思いますけど、そろそろ感卦法もきれますし最後の一発になりますかね?」
「そうだな。年寄りにはそろそろきつくなってきたから、終わらせたい所だ。」
………それじゃいくか!!
二人が同時にそう言葉を発すると、ガトウは突撃しながら、片手で普通の居合い拳を出しながら牽制をする。対する武は右腕をハンマーコックし、それを可能な限りよけながらガトウに接近して行く。
そしてガトウは武を十分に引き付けると、残っていた力をすべて使ってない右手に集中し先ほどよりも特大な居合い拳を撃つ。
武はそれを見て、相殺するのは無理と判断し、体を捻りながらそれを交わそうとした。
しかし、特大の”豪殺居合い拳”の前では避けきれず体をかすってしまう。
かすっただけでも、その威力は絶大で後ろに吹っ飛ばされそうになるが、それを体を回転させる事で何とかやり過ごしガトウの懐に入った。
「これは…俺の負けだな。」
「いっけぇぇぇ!!44マグナム!!」
ガコォォォォン!!
大きい音が当たりに響き渡り、他の人達は勝負がついたと思い二人によっていく。
するとそこには、背中にマグナムがあたった証拠の弾痕が残っているガトウと、倒れそうなガトウを抱えている武の姿があった。
「この勝負タケルの勝ちだな。」
それを見たナギが武の勝ちを高々と宣言する。
それを聞いた武は、気が抜けたのか、その場でしりもちをついてしまった。
良く見ると肩で息をしており、かなりの接戦だったと言う事が分かる。
「何とか勝てた。ガトウさん強いわ。」
「おいおい…。お前にはまだ”炎帝”があるのに何とかって…。」
武がそう呟くと、近くに寄ってきたラカンが、呆れた顔をしながら話しかける。
そのすぐ傍では、詠春がガトウの状態を確認している。
表情を見るにどうやら、深刻な怪我なんかは無いようだ。
あの戦いで、相手をなるべく傷つかせないように戦うなんて高度な事は、今の武にはできない。
なので、ガトウが無事と分かって武はホッと一安心した。
そして、武はラカンの疑問に答える。
「ラカン。”炎帝”出した所で変わらないさ。魔力を使うか気を使うかの違いでしかないし、それに単純な能力アップじゃ感卦法の方がいいんだぞ?」
武がそう説明すると、さらにゼクトが補足する。
「まぁ、そうじゃろうな。確かに魔法を取り込むことによるほぼ無敵状態になるのは魅力じゃが、単純な力でいったら感卦法の方が上じゃ。何せ魔法と氣の融合じゃからな。」
「そんなもんか?なら何で戦闘で感卦法をあまり使わないんだ?」
ラカンの当然ともいえる質問に、アルが答える。
「簡単な事ですよラカン。タケルが使う銃闘技は、相手を行動不能に出来ますが、あくまで肉弾戦。個人との戦闘に適していますが、集団にはむかない。たとえ強化してもです。だけど”炎帝”など”闇の魔法”は魔法が付加されることで、広範囲にわたって攻撃ができるんですよ。例えば炎とかね。」
「なるほど。なっとくだぜ。じゃぁ何で俺様と戦う時はそれを使ったんだ?」
「あの時はまだろくに感卦法も使えていなかったし、”炎帝”がどれほど使えるか試したかったんだよ。」
「へー」
「ま、そういうこっちゃ。それで詠春はん。ガトウはどないや?」
「ふむ。まぁ2~3日安静と言ったところだろう。命に別状はないさ。」
詠春の言葉にタカミチがほっと息を吐く。そしてしばらくガトウを見ていたと思うとキッ!っと表情を引き締めて武の前まで来る。
「武さんお願いがあります!!」
「へっ!?お…おう。何?」
「僕に銃闘技を教えてください!」
「…………マジで言ってる?」
タカミチの突然のお願いにあっけにとられる武。
ナギたちも同じようにあっけに取られていた。
だけど、ラカンだけはどうやらこうなる事を予想していたらしく、にやにやと笑っている。
「マジです!」
「何でまた?銃闘技なんかより、ラカンからもっと実践的なこと教わったほうがためになると思うぞ?」
「俺に教わりたいなら金を用意しな(キラッ」
「ラカン空気よめや。」
ラカンの言葉に皆あっけに取られていると、近くにいた龍牙がラカンの言葉に龍牙が突っ込みを入れる。
「……まぁ、ラカンは後からシバくとして、そうじゃなくてもガトウさんからいろいろ教わってるんだろ?それじゃだめなのか?」
「いえダメじゃないです。でも僕は銃闘技を学びたい。…憧れなんです。最初は才能がないから無理だと勝手に自分であきらめてました。でも龍牙さんや詠春さんにいろいろ言われて決めたんです。憧れを憧れで済ますんじゃなくて、自分の物にするって。…だからお願いします。」
そう言って土下座をしながらお願いをするタカミチ。
その姿を見て武はしばらく目をつぶって考えるとタカミチに向かって問いかける。
「タカミチ…。銃闘技を覚えたいという熱意は伝わった。けどそれは生半可な鍛錬じゃすまないぞ?」
「覚悟してます。僕には才能なんてたぶん無いけど、努力すれば身に付けられないものなんてないですから!」
「………わかった。教えるよ。」
「!!!ホントですか?」
「ただし!!ガトウとの鍛錬もしっかりやる事が条件だ。…いいか?あくまで俺が教えれるのは銃闘技の基礎だけだ。今使っている銃闘技はその基礎の上に俺が使えるものと組み合わせてつくりあげたまったくの別物。それは俺にしか使えないものでもある。それを見に付ける事は不可能だろう。」
武がそう言うと、タカミチは泣きそうな顔になる。
憧れである銃闘技は自分には使えないといわれているのだから当然だろう。
しかし、武が言った次の一言でその顔は一変した。
「何泣きそうな顔してんだよ。言っただろ?あくまで俺が使っているものは…だ。だからお前はお前だけの銃闘技を作り上げてみろ。ガトウとの鍛錬をしっかりやるって言うのもそれが理由だ。ガトウの技と銃闘技を組み合わせる事で、俺にも出来ない銃闘技が生まれるだろ?それが出来るのはお前だけだ。基礎は俺が叩き込んでやる。そこには銃闘技のすべてがある。それじゃ不満か?」
その言葉にタカミチは一生懸命首を横にふる。
「よし。なら、まずは特別な筋トレとかをして、銃闘技が使える体に作り上げないといけないんだけど、でもその前に、銃闘技を教えるにあたって一つ課題を出したいと思う。」
「課題…ですか?」
「そうだ。課題と言ってもすぐに答えられるものじゃないけどな。銃闘技…。いや、戦うという事に対してとても大切な事だ。タカミチ。お前はその拳に何を込めて戦う?」
「何を込めて…。」
「覚悟…信念といってもいいか。それをしっかりともってない限り、銃闘技は完全には扱えない。なぜならそれこそが銃闘技の強さの源だからだ。何のために戦い。何のために拳を振るうのか…。それを考える事だ。これは多分すぐには見つからな事だと思う。そしてこれに答えなんてない。なぜなら、人によってそれは違ってくるから、何が正解で、何が間違っているなんて言う事は出来ないんだ。だから、これは俺も含めて、たぶん一生の考え続ける事になると思う。だからタカミチ。お前が銃闘技を使って戦うと言うなら、とにかく考え続けろ。いろんなものを見て、いろんな人の考えを聞いて考え続けろ。そのお前が出した答えを、いつか俺達に迫るぐらいまで強くなった時に、聞かせてくれ。それが最初の課題だ。ちゃんと覚えておけよ?」
「はい!」
こうして、ガトウと武の勝負は幕を下ろした。
その勝負を見て自分の進むべき道を見つけたタカミチ。
ひょっとしたらタカミチにそれを教えるために、二人は戦ったのかも知れないが、それは武達には分からない。
だけど、ただ一つ確かな事で、分かってる事がある。
それは、ここにまた一人英雄の卵が生まれた
ただそれだけだ。
今日はおそらくこれで更新は終了になるかと思います。
前話していた、武の詳細などはもう少し後に投稿する予定です。
感想お待ちしております。