あまりの急展開さに、良く状況が理解できてないが、どうやら俺はテオの騎士になったらしい。
アリカ姫の事がうらやましくなったのか、それともただ騎士が欲しかったのか。それは俺には分からないが、テオが本気で俺の事を騎士にしたかったという事だけは、良く分かった。
なぜなら、あれから事あるごとに俺を連れまわし…もとい護衛としてそばに置き。
俺が用事で出かけると、よっぽどの危険がない限りは一緒に行動するようになった。
まぁ、その度に甘えたり、龍ちゃんにちょっかいをかけているのはご愛嬌なのだろう。
でも、こうして俺に甘えたりする事について、最近はこれでいいんじゃないかと思っている。
だって、いくらテオが偉い立場の人物だとしても、やっぱり歳を考えると、いろんなことに興味を持ったりと、遊びたい盛りの年齢なのだ。
きっと帝国に帰ってしまえば、また皇女としての仮面をかぶりそれっぽく振舞わないといけなくなる。
ならその時がくるまではこうしてわがままいったり、やんちゃしたりしていてもいいと思う。
やっぱり子供は笑顔が一番だと思うから…。
ただし…言っておくが俺はロリコンじゃない!!
アルと一緒にして欲しくないので、コレだけは声を大にして言いたいと思う。
……こほん。
少し取り乱してしまったが話を進めたいと思う。
ナギ&俺の宣誓が終わってから、俺達は”完全なる世界”に対して反撃を始めた。
ガトウ&アルを中心とした情報収集、そして作戦発案組みは、敵の拠点や陰謀に加担しているものを暴きそれを潰すための作戦を立案。
ナギ・ラカンなど行動組みは、それに従いながら敵を強襲・迎撃をする。
ちなみに俺は主に行動組みなのだが、時と場合によってアル達の組で行動している。
俺達自身にできる事はそう多くない。でも全員で頭を捻り行動していけばきっと光が見える!それを信じて今は必死になってできることをしていた。
そんなある日。
次の作戦まで何日か暇な時間が出来た為、弟子のタカミチと一緒に魔法球に入ることになった。
タカミチが弟子になってから、殆どを筋トレや、的に向かっての打ち込みをさせており、それを見るにそろそろ次のステップ…技の段階に入っていいだろうと思ったのが理由だ。
なぜか当然のように、ナギ・ラカン・テオそして詠春さんが一緒に魔法球に入ってきているのだが、そこは突っ込まない方向でいきたいと思う。
「さて…これから技の修練に行きたいと思うけど、覚悟はいいか?」
「はい!」
「ん。いい返事だ。ならまずコレを渡しておこう」
そう言って俺は、タカミチに指輪を渡す。
「これ…一体なんですか?」
「それは、この魔法球に入っても歳をとらなくする為の指輪だ。技の修行には、それなりに時間が掛かる。ある程度形になれば、外で修行していけばいいけど、それまではココで修行する事になると思うからな。…嫌だろ?現実世界に戻った時に老け顔になってるの。」
「それは…その……はい。」
苦笑いしながら、返事をするタカミチ。
まぁ、原作を知っている俺から言わせてもらえば、あの強さの引き換えとはいえ、あそこまで老け顔になるのは、正直かわいそうだと思う。
もともとの歳でそうなるのだったら仕方がないけど、魔法球に入り浸ったせいでそうなるのぐらいはせめて変えてあげたい。
…優しさって奴だな。
「よし。じゃぁ始めるか!」
「よろしくお願いします!」
指輪をちゃんとはめて律儀に頭を下げるタカミチ。
さて…一体何から教えようかな…。
「いいよなーあの指輪。俺にもくれねぇかな~」
「本当だぜ。そうすれば気軽にこの魔法球の中に入って戦えるのによう…。」
「は~そんなんだからくれないんだろ?私はもらってるけどな。」
『なに!?くれ!!』
「やるか馬鹿者が!!」
「ま~妾は別に年取ってもいいがの。長寿の種族じゃし、今更一年や二年は変わらんからの。」
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「そうだ…。まず、技の修行に入る前に、そもそも“銃闘技とはどういったものか”と言うのを説明しないといけないな。」
「どういったもの…ですか?」
「そう。銃闘技は他の格闘技とは違う。本来あれほどの威力やスピードを出す為には、気や魔力の補助が絶対条件になってくるけど、この銃闘技はそんなものは一切使っていない。」
「……ええ!!じゃぁどうやってあそこまでの…」
「血液だよ。」
「血液…ですか?」
「ああ。銃闘技は、己の血液の流れを利用した格闘技なのさ。独自の鍛錬によって作り上げられた筋肉と心肺機能。それによって生み出される強力な血流を操作して、あそこまでの威力スピードを生み出しているという訳だ。」
「たしかに…筋トレについても、的撃ちについても聞いた事がないものばかりでしたけど…。」
「だろ?だけど、その鍛錬をしっかりとこなさないと使えないんだよ。だからこれからもあの筋トレと的撃ちは続けておこなうように。技の修行に入ったからといっても、体作りが終わったわけじゃないからな。」
「はい!」
「よし!じゃ…まずなじみが深そうな、近距離系の技から入ろうか。」
まだ話しておかなくちゃいけない事は沢山あるけど、いきなり一片に話しても、おそらく頭の中が整理できないだろうから、ここで一度話を打ち切って、技の修行に入る事にした。
近距離系から始めたのは、居合い拳を撃つための格好と似ているし、やっている事もさほど変わりがないから、うまくいけばコツがつかめるだろうと思ったからだ。
「いいか?まず教えるのはマシンガン。俺も良く使う技の一つだ。この技は、とにかくスピードが命だ。相手に反撃を許さないぐらい数を撃たないと、意味がない。スピードを突き詰める為に、威力・正確性を犠牲にしてるからね。」
「マシンガン…。それってやっぱり、銃火器のマシンガンをイメージすればいいんですか?」
「正解。っというか、銃闘技って言ってるぐらいだから、実際の銃火器を体で再現している格闘技だから、技名と同じ銃火器をイメージすれば、どういった技なのか想像できるし、どんな場面で使うと効果的なのかそれも分かってくるだろう。…本来なら、実際にその銃火器を触ってみたり、実際に撃ってみたりすると、もっと効果的なんだが…。さすがにそれは無理だろうから、俺か詠春さんにいろいろ聞くと良い。詠春さんも旧世界の出身だから、それなりに知ってると思うぞ?」
「分かりました。」
「じゃ、一回手本見せるから、その後に真似してやってみて。」
「はい!」
こうしてタカミチ強化の修行が、本格的に始まった。
技の修行のやり方は、大体こうだ。
まず最初に、どういった技か説明し、目の前で実戦。
その後、タカミチが同じようにやってみる。
それから直すべき所を指摘して、またタカミチがやる。
これの繰り返しである。
なんにせよイメージと、とにかく数をやらせる事が一番大切だと思う。
イメージについては簡単。目指すべき物がはっきりした方が、どんどん前に進む事が出来るから。
数については、自分でコツを掴むしか技の習得は難しいと思っているからである。
出来れば、俺が知っているコツを教えてあげたい所なんだけど、俺とタカミチではきっと体の感覚とかが違ってくる。それだと、せっかくコツを教えても意味が無くなってしまう。だから、こればっかりは数をこなさせるしかない。
もちろん、ある程度形になってきたら、参考程度に俺が掴んだコツなんかも言っていくつもりだ。
そうする事で、さらに上達できるだろう。
だから、形になる前までは、自分でコツを掴み、完成へと導いていくしか方法がない。
それが、銃闘技を見につけた俺の結論だった。
今は手探りで、しかもなかなか思うようにいかなくて苦しいだろうけど、そこを乗り越えないと銃闘技は使えない。
俺から言えることは”頑張れ”の一言だけ。
あの時俺に向けた目と、言葉が本当だったら乗り越えられると思う。
だから頑張れ!
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「よーし。今日はここまで。」
日も傾き、辺りが暗くなり始めた所で、俺は今日の鍛錬の終了を告げる。
「はぁ…はぁ…あ…ありがとうございました。」
苦しそうな顔をして、その場に倒れこむタカミチ。
きっと今体中が重くて動けないんだろうな…。うんうん。俺も経験したよ。
「タカミチそのままで良いから、ちょっと話を聞きな。」
「は…はい。」
「今、体中が重くて、しかも目の前がチカチカしてるだろ?違うか?」
「してます。」
「それが銃闘技の弱点だ。」
「へ…?」
「たとえ話をしよう。本来銃というのは弾を火薬で打ち出す兵器だ。そのため弾や火薬が無くなれば兵器としては役に立たない。そしてそれは銃闘技も同じ。銃闘技にとって弾とは血。火薬とは心肺機能…いやスタミナだな。そのことを言う。それがどういう事かわかる?」
「えっと…血が無くなれば使えなくなるって事ですか?」
「まぁ、概ね正解。実際血が無くなるなんて事はまず無いから、血が通っている血管。特に腕の血管を傷つけられたりすると、うまく使えなくなる。スタミナについてはそのままで、数を撃つ為に他の格闘技とは桁違いのスタミナが必要となってくる。それと同時に、マシンガンのような連射技は突き詰めて行くと無呼吸運動になり、結果すぐに酸欠になってしまうんだよ。」
「なるほど。」
「タカミチの今の状態は、酸素不足が大体の原因。うまく酸素が頭に行き渡ってない為に、目の前がチカチカしてるんだよ。これは銃闘技を使っていく限り、避けられない事だから良く覚えておくように。もちろん鍛錬をしていけば、鍛えられてそう簡単にこうなる事はなくなるけど。そうだな…弾数が増えるって言えばいいのかなぁ。だから、日々自分の限界を超えるのを目標に鍛錬に励むこと。わかったか?」
「はい!」
「よし。じゃ、さすがにここで寝るのはどうかと思うから、家に言って柔軟して風呂に入って寝な。」
「はい。」
タカミチが、そう元気よく返事をすると、体を動かそうとするが、思うように体が動かないのか、立てないみたいだ。
それを見た俺は、近くでタカミチの修行を見ていた龍ちゃんを呼ぶ。
「龍ちゃん。」
「了解や。…ほらタカミチ。ワイの背に乗り」
近くで見守っていた龍ちゃんは、本来の姿に戻りタカミチを背に乗っける。
「ありがとうございます。龍牙さん」
「ええて。…それとワイに敬語はいらん。呼び方も龍ちゃんでええで?」
「ありがとう。龍ちゃん」
「そっちの方がしっくりくるわ。…なら落ちんように気いつけや」
タカミチを背に乗せた龍ちゃんは、明かりが見える家へとゆっくり、なるべく揺らさないように移動して行く。きっとテオやナギがメシを食べているだろう。さっきアルとかゼクトも、こっちに来てたから誰かご飯ぐらい作れるだろうしな。
「お疲れさん。」
「酒とつまみ、後、メシもってきたぜ」
「ついでにタオルも、持ってきてやったぞ。」
タカミチを見送って一息つくと、ご飯と酒をもって詠春とラカン、そしてガトウがこっちにやってきた。
「ありがとう。それにしてもガトウさんは何時こっちに?」
「ああ。結構前にな。お前たちの修行の邪魔にならないように、声はかけなかったけど、少し見せてもらった。お前の強さに納得したよ。あれほどハードな鍛錬をすれば、強くならない方が嘘だ。」
「ははっ。俺はもう慣れましたけどね。まだ最初の内は、体がうまく使えなくて辛いでしょうが、慣れていけば、そこまで辛くは無くなりますよ。」
「なるほどな。…それでタカミチの奴はどうだ?」
お酒を俺に渡しながらガトウが聞いてくる。
きっとそれが聞きたかったのだろう。詠春さんもラカンもこっちに顔を向けてくる。
「…下地は順調に出来上がっています。技については今日始めたばっかりだから、正直まだわかりません。ただやる気と意気込みがすごいので、もしかしたら、すぐにでも形はできるかもしれないです。」
「そうか…。」
どこかうれしそうな顔をしながら呟くガトウ。
そばで聞いていたラカンや詠春さんも、同じように何処か嬉しそうだった。
「あいつは、他の奴らからいつも才能がないと言われ続けていた。…生まれた時から魔法が使えないせいでな。魔法なんて選択肢の一つでしかないって言うのに、この世界じゃそれしか評価するものがないと言わんばかりだ。」
「まぁそれは…なんとなく分かりますよ。」
俺も正直そこがよく分からなかった。
確かに生まれた時から魔法と言うものが身近に存在していて、それが使えないとなると、その結果どういう事になるか安易に想像がつく。
現に”サムライマスター”と呼ばれ、英雄扱いされている詠春さんでさえ、ごく一部の人間からは、あまりいい印象をもたれていない。
俺から言わせてもらえば、詠春さんの力と技こそ、真に評されるものだと思うんだけどな。
「そんなタカミチに俺は、タカミチに居合い拳を教えた。魔法なんか頼らなくても強くなれる。そう思ってほしくてな…。だからあいつが必死になって強くなっていくのを見ると、うれしいんだ。」
「私も同感かな。才能だの、魔法だのと、たかがそんなものに胡坐をかいて、偉そうにしている奴らより、タカミチの方が何倍も素晴らしいと思うし、尊敬できる。」
「ハッ…そんなの当たり前だろ詠春。魔法を習ってそれが使えた…。それだけで強くなったと勘違いしている奴らと、今のタカミチを一緒するなんざ、タカミチに失礼ってもんだぜ。本当の強さってのは、数え切れないほどの鍛錬と経験、そして意志の強さって決まってんだよ。」
「へぇ…ラカン言うじゃないか。でも、俺も賛成だよ。あいつはきっと強くなる。それはけして才能と言う言葉だけで片付けれるモノじゃない。」
そう言って、みんなで顔を見合わせてニヤリと笑う。
何の因果かしらないが、ここにいる全員魔法というものにあまり頼っていない。
全員が全員、己の肉体と鍛え上げた技で戦っている。
…まぁ、俺は魔法も使ってはいるが、あくまでそれは技の威力をあげる為のもので、普段の戦闘では殆どといっていいほど使ってはいない。
「…ただ勘違いして欲しくないのは、俺もここまでいろいろと魔法を認めないような感じで喋っているが、別に魔法が嫌いって訳じゃないからな?」
何を思ったかガトウがそう皆に言うと、一瞬あっけにとられそのまま大爆笑する。
「それぐらい分かっているさ。…それよりも」
一通り笑い終わった後、詠春さんがそう話、酒を注いだ杯を上に持ち上げる。
それを見ていた俺達は、詠春さんが何をしたいのかが分かって、同じく杯を上に持ち上げ、詠春さんの言葉を待つ。
「タカミチのこれからの成長を。」
詠春さんがそう言い
「タカミチの修行の成功を。」
ガトウがそう続け
「タカミチが俺様達に追いつけるように。」
ラカンもそれにあわせるかのように話し
「タカミチが、タカミチだけの強さを手に入れれますように」
俺が最後に締める。
そして全員タイミングを計ったかのように叫ぶ。
『『乾杯!!』』
タカミチのこれからの成長に期待し、男達は酒を飲む。
いつかこの場所にタカミチが入って同じように酒を飲めるように…
そんな事を願いながら…