我拳は銃なりて   作:秋華

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第十五話:願い託して

フェイトとの戦闘を終えて、俺はナギ居ると思われる場所へ移動していた。

正直、ナギが何処に居るかなんて、正確には分からないけど、おそらく爆発している所が、”紅き翼”が居る場所だろうと考えて、とりあえずは騒がしい所に行く事にした。

すると、途中で意外な人物と、最初に合流する事が出来た。

 

「意外なんて失礼ですね?」

 

「思っていることを読まないで欲しいなアル?」

 

最初に合流できたのはアルだった。

話を聞くと、どうやら俺に近い所へ飛ばされたらしく。自分の相手を倒してから、まず俺に合流しようとしていたらしい。

なぜアルが正確に俺の場所がわかったかというと、アルのアーティファクトである”イノチノシヘン”のおかげらしい。

俺が知っている原作では、そんな能力はなかった気がするけど、アルから聞いた話では、ある程度の距離ならば、その人物が何処に居るか把握できるとか。

意外に便利だということが判明した。

ちなみに、なぜ俺が登録されているかというと、”然”の修行に付き合った見返りとして、ほぼ無理やりに登録させられた。正直嫌だったのだが、魔法の修行に関して、かなり助けてもらった事もあって、断る事ができなかった。

 

「それで?そのフェイトが言っていた事は、本当に信用できるのですか?」

 

アルと合流した所で、俺はフェイトから聞いた情報を、アルにも話しておいた。

アルとしては、黒幕についてはそんなに驚く事はなかったが、フェイトから聞いたナギを狙っているという情報だけは、今一つ信用できないらしい。

でも、俺が聞き出した訳じゃなく、フェイトが自ら喋ってくれた事だから、信じることが出来ないのも無理はないのかもしれない。

 

「俺はそう信じているかな。なんていうか、命かけて戦ったせいかな…。俺には、あいつが嘘言っているようには思えなかった。」

 

「なるほど。…まぁ、いいですよ。フェイトについて私は到底信じることは出来そうにありませんが、貴方なら信じることはできますから。」

 

「うぇ…まさかアル…。」

 

「何を想像しているか、分かりたくありませんが、私は幼女が好きなノーマルですからね?男にはそういった興味はありません。男の娘は大歓迎ですけど…。」

 

「わざわざ力説しなくても…。」

 

まさかいきなりそんな事を言うとは、夢にも思わなかった。

正直あの必死さは、ドン引きせざる終えない。

 

「……こほん。ともかくですね。ナギを狙っているにしろ、そうでないにしろ、一度皆と合流するのは良い事だと思います。とりあえずは念話で皆に呼びかけることにしましょう。あとタケルの傷もある程度回復しておかないといけませんね?」

 

そうアルが言うと、俺に向かって回復魔法をかけてくれる。

正直ありがたいと思った。

フェイトの戦闘でおった石化で、解呪を使ったせいで魔力をかなり消費している。

多分ラスボスの創造主(ライフメイカー)と戦うとなると、”然”になる必要が出てくるだろう。

そうなるともう魔力を使う事は出来ない。

ゼクトやアルと修行をしていて分かったこと、それは”然”の活動時間やその後の状態は、使う前の魔力と気に比例するという事だった。

そして現状の魔力を考えると、これ以上使ってしまうと、最大稼動である30分持たない所か、その後の後遺症がかなりひどくなってしまうことになる。

それだと非常に困った事になる。

だってラスボス倒して、終わりって訳じゃないから。

真のハッピーエンド目指すなら、オスティア墜落は阻止できなくても、せめてそこにいる住人すべて退避させる為の、仕掛けぐらいはしないといけないと思う。

もうこの戦争で亡くなる人は、無しにしたい。

それぐらいこの戦争では、もう人が死にすぎてしまったのだから…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・

 

しばらくして、ラカン・詠春さん・ゼクトそして龍ちゃんが合流した。

皆所々怪我などをしていたが、たいした事はなく戦闘にも支障をきたすものはないようだ。

 

「みんな集まりましたね?じゃナギの所へ向かいましょう。先ほどナギと連絡を取ってみたのですが、敵がなかなか強いらしく、まだ少し時間がかかるそうです。それまでになんとしてもナギの下にたどりつきましょう。」

 

「そうじゃな。タケルが敵から聞き出した黒幕…もしそれがおって、ナギを狙っておるなら、目の前の敵をナギが倒した瞬間に現れるじゃろう。」

 

「なるほど。勝利して油断した所で…ということだな。ならすぐにでもナギの下へ行かないとな…。」

 

「やけど、ワイらも多少なりとも体力や魔力を消費しとる。もし黒幕と戦うなら、少しでも回復せなあかんとちゃうんか?」

 

「龍ちゃんの言う通りだな。でもどうやって…。」

 

「あ~うだうだ言っててもしかたがないだろ!?とにかく今は行動あるのみだ。アル!ナギがいる場所はここから遠いのか?」

 

「いえ…そこまで遠くではないようです。」

 

「なら移動しながらでも休めばいいだろ。遠くじゃなかったら気や魔力を使わなくても移動できるからな…。ともかく急ごうぜ。…俺様はあまりこういったこと信じねぇんだが、なんか嫌な予感がするんだよ。」

 

ラカンがそう締めると、皆頷いて行動を開始した。

ラカンが言った”嫌な予感”というのは、きっと”創造主”のことを指しているんだと思う。

しかも、いつも戦闘では余裕綽々といった表情でいるラカンが、こんな真剣な顔をしているのだから、かなりやばいのだという事が分かる。

事実他の皆も、ラカンの顔を見て同じ事を考えていたのか、回復に努めながらも今まで以上に神経を尖らせていた。

ナギ……!!頼むから俺達がつくまで無事にいてくれよ!!

 

【ナギside】

 

「いい加減死になよ”千の呪文の男”!!」

 

そう叫び、俺に向かって魔法を放ってくる敵。

 

「そいつは聞けねぇ頼みだな。それと”千の呪文の男”っていい加減いいづらくないのか?」

 

その魔法に対して俺は、魔法で迎え撃ちそれを迎撃する。

本当なら、こんなめんどくさい事しなくても、でっけぇ魔法一発ぶっ放せば、すぐにでも決着がつくんだろうけど…アルに止められているからな。

 

しばらくこの敵と戦闘をしていた時に、アルから連絡があった。

なんでも、今戦っている奴らが黒幕じゃなくて、こいつらに命令している真の黒幕がいるらしい。

まぁ、聞いてて確かにありえそうだと思いながら、”そんなの関係ねぇ!全部まとめて相手をしてやる”とアルに返事をしたら……おもいっきり怒られた。

タケルが敵から聞き出した話だと、その親玉はどうやら俺を狙っているらしい。俺的には望む所なんだが、手下でさえこれだけ強力なんだ、親玉は俺が思っている以上に強い、だから皆と合流するまで戦闘を引き伸ばせ!と言われた。

はっきり言って、戦闘を長引かせるのは、そんなに難しい事じゃない。

たしかにコイツも結構強いが、だからと言って普段ケンカしているラカンやタケル、詠春に比べると見劣りしてしまう、そんなやつが俺に敵うわけがない!

きっと親玉もアルが勝手に心配しているだけだと、俺は思っている。

だけど、アルは”紅き翼”の参謀で俺よりも遥かに頭がいい。

そんなアルがここまで言っているんだから、きっとそれは正しいのだろう。

けどなぁ……。

 

「…力をセーブして戦うのは、結構ストレスが溜まるんだよな。…大体細かい事、俺は苦手だしよ…。」

 

「何か言ったい!?」

 

「あ?いや~オメーよ。確かメガロで一回戦った事あるよな?確か元老院議員に化けてて…だけどなんっか違うんだよなぁ~。」

 

「僕は君と戦った事なんてないよ。君達と戦ったのは別の奴さ。たぶん今頃あの”銃神”と戦っているはず…まぁもう決着がついて”銃神”は死んでいるだろうけどね。」

 

そう言って奴は、また俺に向かって魔法をぶっ放してくる。

なるほど。前戦った奴はタケルと戦っているって訳か…あいつはかなり強そうだったからちょっとタケルがうらやましいぜ。

でもコイツは何を言っているんだろうか?

 

「タケルが負ける?……ハッ!そんな事笑い話にもならねーぜ?いいか俺達”紅き翼”は最強無敵だ!そいつは今頃思い知っているだろうぜ?”銃神””炎帝”の名を持つ意味って奴をなぁ!!」

 

それによ。もう念話で聞いてんだよ。

アイツは多少怪我とかしているっぽいけど、勝ったってな!

それをわざわざアイツに教える義理なんてねーから、いわねーけどよ。

 

「フン。それはどうかな…。”紅き翼”のリーダーである君でさえ、こんな力でしかないんだ。どうせ今頃ズタボロになって殺されているだろうさ…他の皆も同様にね。所詮”銃神”とかたいそうな名前、所詮贔屓目で見られただけなんだろ?だいたい、君達がやっている事は、所詮無駄な努力でしかないのさ。僕達は、世界を救う為にやっているのに、何で君達は邪魔をするのかな…理解に苦しむよ。」

 

……………わりぃアル。

さすがに今の言葉は、頭にきちまった。

もとから鼻につくやつだったけど、今の言葉は許せねぇよ。

俺を同等と勘違いしたことや、俺の仲間を侮辱した事も理由にあるけど…それ以上に頭に来ていることがある。テメーは今なんって言った?

 

「…世界を救う?……ふざけるな!!世界を救う為なら、何でこんなに大勢の人を殺す必要がある!戦争を起こす必要がある!無駄な努力?…無駄なんかじゃねぇ!人ってもんをバカにするなーー!!!」

 

「なっ!!」

 

ドゴォォン!!

 

俺の魔力を込めた一撃で、アイツがぶっ飛ぶ。

その際何か驚愕したような表情をしていたが、今さら何を驚いているのやら…。

俺がわざと戦闘を長引かせる為に、力を抑えていたのにも気付かない奴が、俺に勝てる訳がねぇだろ?

アル…皆…多分もう近くまで来てるんだろうけど、はやく来てくれよ?

俺はもうとまらねぇ…。

さぁ……ここからは本気でやってやる。

俺を…いや人間をなめた落し前つけてもらおうか!!

 

【ナギside終】

 

 

 

 

 

 

 

 

【タケルside】

 

「これはちょっとまずいですねぇ…」

 

「どうしたんだアル?」

 

体力の回復に努めながら移動をしていると、さっきまで真剣な顔で何かをやっていたアルがそう呟く。

 

「いえ…皆合流したので、ナギにもう一度報告しようと念話を飛ばしたのですが、通じません。」

 

『!!!!!』

 

アルの一言で俺達の顔が歪む。

 

「それって…ナギがやられたってことか?」

 

「いえ…それは無いでしょう。先ほど話していた限りでは、ナギが相手しているのはナギに言わせればそこまで強くない敵のようですし、それにあの時にしっかり言い聞かせましたから”時間を稼げ”と…。」

 

「それならいったいどうして…。」

 

詠春は、皆が思っているであろう疑問を口にする

するとアルはすこし考えるような仕草をして、自分の考えを口にする。

 

「考えられる事は二つ。一つ、今戦っている敵と同時に新たな敵…多分黒幕でしょうが、そいつが一緒になって攻撃を仕掛けてきており念話をする余裕が無い。二つ、頭に血が上るような事があって念話を自ら無視している。これのどちらかでしょう。」

 

「ふーむ。いつもなら二つ目と断言できるのじゃが…今の状況からじゃと、どちらもありえそうじゃな。」

 

「どちらにせよ、ナギの奴がそう簡単にやられるわけがねぇ…が、急いだ方がよさそうだな。」

 

ラカンの言葉に、皆頷き移動する速度を上げる。

すると、爆発の音が段々近くなっていき、遠目でナギが戦っている姿が見え始めた。

どうやらまだ無事らしい。

敵さんの方は………アレはもうだめだな。

ナギの圧倒的な火力の前に何も出来てない。たまに魔法とか撃っているみたいだけど、それを魔法で相殺…いや逆に押し込んで攻撃を当てている。

まったくあんなことできるのは世界でもナギだけだろうな…さすが元祖バグ。

 

そして俺たちが十分に近づく事が出来た頃には、ナギは敵の首を持って持ち上げていた。

 

「ナギ!!」

 

「お?皆無事だったか。…へへっ!まぁ、知ってたけどよ。」

 

「まったく…。私があれほど戦いを伸ばせと言っておいたのに…暴走して…。」

 

「わりぃアル。…でもよ。コイツがどうしても許せねぇ事言ったもんでな。さすがに頭にきちまったんだよ。でもこうして間に合ったんだし、結果オーライじゃね?」

 

『は~…。』

 

ナギの言葉に、皆ため息が出る。

俺だってそうだ。何か心配するのが損だと思ってしまう。

 

「クククッ…確かに僕の考えが甘かったみたいだね。だけど君達は僕が黒幕だと本当に思っているのかい?」

 

俺達の姿を見て、最初は驚いたような顔をしていた敵だが、すぐに冷静さを取り戻したのかナギに向かってそんな言葉を投げかける。

 

「いや?思ってねーぜ?って言うか、それを知ってるから、少しでも戦いを有利にしようと、わざわざめんどくせーのに、戦闘を長引かせてたんだしな。」

 

「なっ!なんだと!!」

 

お~敵さん驚いてるな。

まぁ、そりゃそうだろう。敵からしたら、真の黒幕がいることはトップシークレットだったろうし、今それを言ったのも、きっと俺達の戦意を少しでも無くす為だったんだろうしね。

なんていうか…哀れ。確か一番目の人。

他の人達も、なんだかかわいそうな目で敵を見つめていた。

その場の空気が少し緩みかけたそんな時、いきなり大きな黒い塊が俺達を襲った。

 

ゴオッ!!

 

「チッ!味方も関係無しって事かよ!!」

 

ナギが先ほど掴んでいた敵を放し、後ろにバックステップをする。

 

「障壁最大じゃ!!」

 

ゼクトはナギの前に躍り出て、最大の障壁を展開する。

 

「ナギは下がって魔法をあの黒い塊に撃って相殺してください。タケル貴方も遠距離からの攻撃を!」

 

ゼクトの後ろではアルが結界を張りながら、皆に指示を出しゼクトと同じく障壁を展開する。

 

「オラァ!!」

 

ラカンは誰よりも前に出て気を最大限解放し、自らの肉体で黒い塊を押さえ込む。

 

「くっ…私の護符で、どれだけ食い止められるか…。」

 

詠春さんは、アルが張った結界に、更に護符で結界を張り、護符に気をめいいっぱい注ぎ込んでいく。

 

「ナギ!龍ちゃん!」

 

「おう!」

 

「わっとる!」

 

そして俺とナギ、龍ちゃんは、魔法とガンブレットを、炎を黒い塊に向けて放つ。

 

「くっ…この…いいかげん止まりやがれー!!!!」

 

「!!あかん!タケやん!!」

 

ドゴォォォォン!!!!

 

大きな爆発が起こり、俺はその爆風によって吹き飛ばされる。

そして目の前が大量の煙で埋め尽くされる。

 

「痛っ…くっ…皆!無事か!!!」

 

俺は叫んで皆の無事を確認する。

さっきの衝撃で、体中が傷だらけになって血が流れている。

どうやら致命傷は避けれたみたいで、何とか動く事などは出来るようだけど、それでもかなりのダメージを受けてしまった。

他の皆は…!?

視界が悪すぎて、皆がどこにいるか…生きているかどうかも分からない。

だから声を出して叫んだ。

皆はやられちゃいない!そう信じて…。

 

「ゴホッ…タケル。俺様は何とか生きてるぜ!」

 

「わいもや……体中痛いけどな」

 

最初に返事をしてくれたのは、俺の近くに飛ばされていたラカンと龍ちゃんであった。

やっと煙が無くなり始めてその姿を確認できた瞬間、俺は言葉を失ってしまった。

ラカンは口から血を流し、体中血だらけになって地面に横たわっていた。そしてあの太い腕が両方ともなくなっており、そこから滝のように血が流れている。

龍ちゃんはいつの間にか”赤王”が解除されて、普通の白い虎になっていたのだが、その毛は所々赤く染まっていた。それでも、何とか立とうとしているのだが、足が震えてうまく立つ事が出来ないみたいだ。

 

「龍ちゃん…俺をかばって…。」

 

あの爆発の瞬間、近くにいた龍ちゃんは、俺の前に立ちふさがって炎を全開にしていたのが見えた。

つまり龍ちゃんは、身を挺して俺を守ってくれたって言う事だ。

それにラカンも同じだ。一番先頭にいて、皆を守るために自分の体を盾にして守っていた。

そのせいでこんな大怪我までして……。

 

「ははっ…。かっこよくタケやんを守ろう思ったんやけどな…。うまく守れんですまんかった。」

 

「俺様も…ちょっと無理しすぎたみたいだな。」

 

「バカやろう……無茶しやがって…。」

 

涙がどうしても流れてくる。

今は泣いている場合じゃないのに…。

敵が目の前に迫ってきているって言うのに…。

 

「くふっ…皆さん無事ですか?」

 

今度は、アルの声が聞こえた。

声から察するにかなり辛そうだった。

 

「私は生きてるよ。…立てそうに無いけどね。」

 

「わしも無事じゃ。」

 

「俺…もだぜ…ちょっときついけどな。」

 

煙が完全に晴れて皆の姿が確認できると、そこはまさに死屍累々といった光景が広がっていた。

皆所々血を流しており、かろうじて動けそうなのは俺とゼクト、そしてナギぐらいだった。

他の皆はどうにか起き上がれそうではあったけど、とても戦闘なんて出来る体じゃないことは一目で分かる。

そんな光景に、また俺は言葉を失っていると、近くから俺たちではない声が聞こえてくる。

 

「クククッ…まさか生き残っているとはな。正直驚きだ。」

 

その声の方向に視線を向けると、そこには黒い外装を纏ったモノが悠然とそこに佇んでいた。

 

「けっ…親玉登場って訳か。」

 

体を起こしながら、ナギが敵を睨みつける。

 

「我名は創造主〈ライフメイカー〉。…よくぞここまで辿り着いた。その褒美といっては何だが、そこで指をくわえて見ているがいい。世界の救済を…。」

 

創造主はそう言って、消えるようにその場から立ち去った。

 

「くそ…まちやがれ!!」

 

「フン…。もう魔法は発動し始めている。止められるものなら止めて見るがいい。…追って来られるものならな。」

 

姿はもう消えているのに、言葉だけ聞こえてきた。

一瞬見ただけで分かる。

アレはあきらかに俺たちより強い。

 

「………アル。俺に残りすべての魔力を使って、回復魔法をかけてくれ。」

 

「ナギ!?」

 

ナギが何かを決意したような目でアルにそう話し、それを見た他の面々は驚く。

 

「無茶です!いくら貴方でも、そんな無茶な治癒では……。」

 

「30分持てば十分だ!!やってくれ!」

 

「ふふ良かろう。わしも行くぞ。この中では比較的傷は浅い方じゃ。十分戦闘は出来る。」

 

「お師匠…。」

 

「ゼクトまで…。」

 

「ナギ!ゼクト!待て!アイツは別格だ!死ぬぞ!ここはいったん引いて、体勢を立て直してだな…。」

 

ラカンも一目でその強さが分かったのだろう。普段言わないような事を言い、ナギ達を止める。

だけど…それじゃ意味が無い。

時間はもう無い。さっき創造主が言っていたが、魔法が始まりかけているんだ。だったらもうここで倒さないと、今までやってきた意味がなくなっちまう。

それに…俺達はこのくそったれた戦争を終わらせる為に、世界を救うとか言いながら多くの生物を死なせた、あのクソ野郎をぶったおす為にここに来たんだ。

ここは絶対に引いたらいけない!

だから俺は……。

 

「ん?…タケル!?」

 

「心配するなよラカン。俺達は死なねぇよ。ここで全部決着をつけてやる。」

 

ラカンの肩に手を置いて、俺はニカッと笑いながらそう言う。

すると、案の定ラカンは俺を止めてきた。

 

「ばっ…!!バカやろう!お前まで死ぬつもりなのかよ!」

 

「だから死なねぇって。……行ってくる!」

 

まだラカンが何か言いたそうな目をしていたけど、俺の顔見て、もう止められないと思ったのか、口を閉じる。

俺は、それを見ながら心の中で“ありがとう”とラカンに言って、そして創造主がいるであろう、奥に目を向ける。

するといつの間にか、目の前にさっきまで倒れていた龍ちゃんが座っていた。

 

「どうせ止めても無駄なんやろ?」

 

「さすが俺の相棒!わかってるね。」

 

「当たり前や。…本当ならワイも一緒に着いて行きたいけど、この傷じゃ足手まといになってまう。だからここで皆と待っとる。」

 

「ああ。待っててくれ。すぐ戻って来るさ。」

 

「絶対やで?あ、そうやった。一つお願いがあるんや。」

 

「何?」

 

「あの創造主とか、いけすかん馬鹿に、これでもかって言うくらい拳叩き込んで、撃ち貫いて、ぶっ飛ばしてきてや。」

 

「約束する。」

 

「頼むわ。」

 

龍ちゃんの頭を撫ぜながら約束を交わし、前へと足を踏み出す。

するとそこにはナギ・ゼクトが俺を待っていた。

 

「おいおい。やるのはかまわねぇけどよ。俺の分も残しておいてくれよ?俺もこれでもかって一発叩き込みたいんだからよ。」

 

「相変わらずじゃの。…じゃが、それがナギとタケル。いや、儂等らしいかの。」

 

「違いない。」

 

そう三人で言い合うと、タイミングを計ったように一斉に笑い出す。

今から死ぬかも分からない場所へと行くというのに、何故か笑いがこみ上げてくる。

それを見ていたアルたちも最初あっけに取られていたが、しだいにその顔には笑みが浮かぶ。

 

「クククッ…やっぱ俺達は最高だぜ!…それじゃいくか!」

 

『オウ!!』

 

何時も通り、俺達はナギの掛け声で、創造主、そして黄昏の姫御子がいると思われる奥へと向かった。

俺はこの世界が好きだ。

だから…この世界を壊そうとする創造主。

 

お前だけは……この手で必ずぶっ飛ばしてやる!!!!

 

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