我拳は銃なりて   作:秋華

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第十九話:ネタバラシ

ウィスペルタティア崩落から一夜明け、俺達はまた皆無事で、アリアドネーに帰ることになった。

あの後、アリカ姫は避難した人達に真実を伝え、”今まで黙っていてすまなかった”と全員の前で頭を下げた。その光景を見て皆驚いていたが、謝罪する時はしっかりと謝罪をするのが上に起つ王族として必要な事で、名君としての器だと俺は思う。

頭を下げられた民達と言えば、話の最初こそ非難をアリカ姫にぶつけていたが、最後アリカ姫が頭を下げる頃には、アリカ姫にお礼の言葉を次々と投げかけていた。

 

それから、正式にアリカ姫達から俺達に向けてお礼を言われたが、ナギが代表で”俺達は俺達がしたいと思ったから勝手にやっただけだ。”と言っていた。

案の定、周りから歓声や黄色い悲鳴などが飛び交っており、やっぱ主役になれる奴は違うなぁ…と一人でどこか納得していた。

ただ…男の俺からしてもかっこいいと思わせるとは……反則だよな。

 

そんな事があってからしばらく経ち、今はアリカ姫も含め俺・龍ちゃん・ラカンが何をやっていたかの報告会…と言う名目の断行裁判が戦艦の中で開かれていた。

 

「さてタケル?そろそろ教えてもらえませんか?何故幻獣達が力を貸してくれたかを…。」

 

「それと、今もこうして一緒にアリアドネーに向かっておる理由もじゃな。」

 

もう当たり前となっている、進行役のアルとゼクトの最年長組がまず話を切り出す。

そのほかの皆は、俺達を囲んで逃がさないようにしていた。

そんな事をしなくても逃げる気がないので、正直やめて欲しいんだけど?

威圧感がハンパ無い事になってるから…。

 

「分かったから。だから正座やめてもいい?てか何で正座?」

 

「ワイ虎なのに正座しなあかんのか?人よりきついんやけど…」

 

「なんで俺様まで!」

 

「ああラカンはついでだ。それとドラゴンの上で馬鹿な発言をした罰でもあるがな。」

 

「ちくしょーー!!」

 

「ちなみにタケルと龍牙。崩すのはすべて話し終えた後だ。あと正座なのは、ギリギリまで私達に黙っていた罰だ。」

 

詠春さんに、とてもいい笑顔でそう言われ、これ以上話しても無理だと悟った俺は、正座のまますべてを話すのだった。

 

「まず、ぎりぎりまで龍ちゃんが居なかった理由だけど、それはウィスペルタティアに住む幻獣にコンタクトを取って、協力を取り付けるためだったんだよ。」

 

「ワイ達がウィスペルタティアで、簡易魔法球が使えるかどうか確かめに行った日の事や。」

 

「あの時か…しかしなぜわざわざ幻獣に?保険をかけるならもっと別な方法もあったでしょう。」

 

「出来れば幻獣達も助けたかったからさ。」

 

アルの質問に俺が答えると、全員の頭からクエッションマークがうかぶ。

 

「どういうことだよそれ。」

 

「確かに、もしもの為に幻獣の力を借りたいと思ったのは事実だけど、それだけじゃないんだ。もしあのまま幻獣達にコンタクトを取らなかったら、十中八九あそこにいた幻獣は全滅していたんだ。」

 

「まて!幻獣達なら自分達で勝手に避難するんじゃないのか?空を飛べない奴は分からなくもないが…。」

 

詠春さんが言う事はもっともだった。

私達人間と違って、幻獣には魔法を使わずともその場から避難できるだけの力を持っている。

それこそドラゴンなど羽をもっている種族であれば、空を飛べばいいことだ。

詠春さん達が疑問に思うのも無理は無かった。

 

「詠春はん、それは勘違いしとるで?幻獣達は避難なんかせいへん。なぜなら、幻獣は自然に逆らう事は絶対しんのや。だから、その場が滅びるならそれに逆らわず一緒に滅びる。人が侵略してきて、その場が滅びようとしているなら別やけどな。今回は人が直接関与したのが理由やけど、幻獣達はその事を知らん。魔力が無くなったのは、あくまで自然現象やと思ったはずや。実際ワイと話した時もそう言っとったからな。せやからワイが話しするまで、島と一緒に滅びるつもりやったみたいや。」

 

「そうだったのですか…。でもなぜ危険を冒してまで幻獣を助けるのですか?」

 

「今回のことは人が100%悪い。そんな人の勝手な都合で死なせたく無かった。っていうのが一つ。もう一つは龍ちゃんと俺の共通の夢のためだ。」

 

アルの疑問に今度は俺が答える。

それは、自分が望む理想であり、最初に神と約束したハッピーエンドの最終的な形でもあった。

 

「夢?」

 

「うん。前に龍ちゃんが話してくれたんだけど、”いつか俺と龍ちゃんみたいに人と幻獣が互いに助け合いながら笑い合える未来が来るとええな”って言ってたんだ。俺もそれに賛同したんだよ。確かに幻獣の中には、人を襲う者も沢山いる。でもそれは、人が無理やり住処を犯したせいだったり、必要に駆られて止むおえず襲ったりした結果なんだ。」

 

「どういうことじゃ?」

 

ナギ達の頭に、またクエッションマークが浮かぶ。

人にとって幻獣とは災害や言葉は悪いが害虫と同じ様なもので、人を仇名す者と言うのが共通の認識だったからだ。

もちろん龍ちゃんを見てからと言うもの、その考え方は変わってきており、幻獣の中には話し合いが出来る奴がいるぐらいまで改善はされているが、やはり最初からある常識を全否定するのは難しいだろう。

 

「皆が幻獣の事をどう思っとるかは、だいだいはわかっとる。でもそれは殆ど間違いなんや。幻獣は皆争いなんて好かん。今おる場所で穏やかに暮らしとる。その世界を壊されん限り何にもせいへんのや。大体ワイみたいに言葉を喋れる幻獣は沢山おるんやで?もちろん頭がええ奴もおる。そんな奴がわざわざ争うまね何かするわけ無いやん。」

 

「つまり幻獣は、己の住処と身を守る為だけに戦うと言うわけじゃな。」

 

龍ちゃんの説明で、他の皆は幻獣と言うものがどういったものかを大まかに想像することが出来た。

幻獣は人と同じようなものなのだ。

人はある程度人数が集まると、その中で取りまとめる長が誕生し、小さいながら国が生まれる。そして身の安全を守るため外から来るものには警戒を…そして攻めて来るのなら迎撃するものである。

人と違う所といえば、欲望のまま他の国を侵略しないと言う事だろう。

もしかしたら縄張りを持つ動物に近いものかもしれない。

 

「そうや。なのに幻獣だからと言ってむやみやたらに怖がり、人から攻撃を仕掛けてくる。だからやむなくこっちも攻撃を仕掛けなあかんと言う訳や。」

 

「耳が痛い話ですね。確かに幻獣=危険と勝手に判断してしまいこちらから攻撃を仕掛けています。人とは本当におろかな存在ですね。」

 

「なるほどな。もし俺もその話を聞いていたらタケルと同じように助けにむかっただろうな。」

 

「わたしもじゃな。」

 

説明したおかげで、どうやら俺達の気持ちを分かってくれたようだ。

できれば俺達の夢に賛同してくれれば嬉しいけど、流石にそこまで求めるのは都合が良すぎる。

今は幻獣に対して変な偏見をなくしただけでも良しとしないと。

ここからは時間が解決してくれる問題だと思うから…。

 

「ま、そんな理由で龍ちゃんには説得に言ってもらったんだよ。」

 

「最初はもちろん頷いてくれんかった。まぁ…当たり前やけどな。自然と共に生きて、自然と共に死ぬ…コレが幻獣の生き方でもあり矜持なんや。”自分達は豊かな自然の恩恵を受けて生まれ、生きていける、住まう大地に尽くし、感謝する事こそ我らにとって何よりも重要な使命であり、生きがいなのだ”ワイも生まれたばかりの頃よく言われたわ。その気持ちは今も変わってへん。」

 

「・・・・・・・・・・」

 

皆言葉を発することが出来なかった。

それほどまでに龍ちゃんの言葉は重く、響くものだったからだろう。

 

「それでも今回の事で一緒に滅びるのは、ワイも納得できんから必死に説得した。”一緒に死ぬ事がだけが、尽くす事じゃない。自然の恵みによって生まれてくる子供達を守る事もまた尽くす事ではないか?”ってな。それを聞いて、何とかあそこを避難することは納得してくれたんや。でもや、人を助けるという事にはまったく賛成してもらえんかった。皆”人間なんて信用できない””なんで助けないといけないのだ”っていってな。」

 

「今までの話を聞くとそれも当然といった所ですね。彼らからしたら、私達は平和に暮らしていたのに、いきなり攻撃をしてくる侵略者。さらに言うなら、この大地を壊した張本人でもあるのですから。」

 

「そういうことや。そんでもギリギリまで幻獣達を説得してな。その甲斐あって、ある条件を出されたんや。」

 

「条件?」

 

「そう。ワイが心底信用しとる人間…この場合は相棒のタケやんの事やけど、その人間を連れてきて話をさせろ。それが条件やった。ワイがあまりにも人を擁護するもんやから気になったんやと思う。だからこの条件をだしてきたんやろうな。」

 

「そのことを聞いた俺は、龍ちゃんの下に向かったって訳。ちなみにラカンを連れて行った理由も、ラカンなら幻獣だからって変な目で見ることはないと思ったからだ。なにせ龍樹の友達がいるくらいだからね。」

 

「なっ!ラカンそれは本当ですか?」

 

皆案の定ビックリしている。

俺は原作でそんな事書いてあったのを知っていたため、そこまで驚く事は無かったけど、それでもラカンから聞かされた時はマジだったんだ…ってちょっと引いた記憶がある。

龍ちゃんも同じ感じだった。

強さも位もあきらかに龍樹の方が上なため、龍ちゃんからしたらかなり驚く事なのだろう。

まぁ今龍ちゃんと龍樹が戦ったら、勝てなくてもラカンと同じく引き分けにはもっていけると思っているけど…。

 

「本当の事だぜ?お前達と旅をする前に一度やりやった事があってな。そんときに仲良くなった。それ以来飲み友達だぜ。」

 

「なんと…流石”紅き翼”じゃな。私の常識をかるく覆してくれるわ。」

 

アリカ姫がそう言ったが、勘違いしないで欲しい。

これに関してはラカンが異常なだけ。

普通ありえないだろ?

人同士なら喧嘩して仲良くなったって話は良く聞くけど、幻獣でなんて……。

あ、そういえば俺も龍ちゃんと喧嘩して仲良くなったもんなのか?

……俺も大概常識外れなんだなぁ。

 

「ま、そんな理由で着いて来てもらった訳。それで俺とラカンがその長らしき幻獣…今横を飛んでいるドラゴンと話してね。協力してくれるって言ってくれたんだ。」

 

「えらく簡単に信じてもらえましたね…。」

 

「そこについては俺も判んない。ただその長としばらく見詰め合って、その後力を見せてたら急に笑い出して、力を貸してやろうって言ってくれたんだよ。」

 

「力を見せる?……戦ったのか?」

 

「戦ってはいないよ。ただ普段抑えてる気とか魔力を解放しただけ。それを見たらだから…何か感じるものがあったのかも知れない。詳しくは時間も無かったし聞いてないよ。」

 

案の定、皆疑問に思っているよな。

正直俺も訳がわからない。

龍ちゃんから、幻獣の事少しずつだけど教えては貰っているけど、まだまだ分からない事ばっかり。

それに幻獣は、種族によって色々違ってくるし、それを全部把握するのにはかなり時間がかかると思っていいと思う。

だって、聞いただけじゃ数百種類いるらしい。

いくらなんでも、全部覚えきれるとは思えない。

 

「龍牙は何か思い当たる節とかは無いのかい?」

 

少しでも疑問を解決させようと、詠春さんが龍牙に聞いてみるが、龍牙も困った表情で頭をかく。

 

「と言ってもやなぁ…。そもそも龍族と虎族はあんま仲良うないねん。と言っても交流が少ないってだけで、敵対してるって訳や無いけど。それもこれも、その場所の長は大体龍族か虎族になる事が多いからな。そのせいもあるんよ。」

 

「へぇ…そうなのか。」

 

「んで、質問の答えやけど…。確か龍族には、その者の気や魔力を感じる事で善悪を見分ける事ができるらしいわ。それが本当かどうかは分からんけどな。ちなみに虎族の場合は匂いでそれが出来る。まぁこの場合匂いというのはワイらの感覚でなんやけど、多分雰囲気的なもんと考えてくれてええと思う。」

 

「それは興味深いの。時間が出来たら幻獣について調べてみるのもおもしろいかもしれん。」

 

龍ちゃんの話にゼクトが興味を持ったみたいだ。

まるで、子供が新しい玩具を見つけたように、好奇心満々といった目をしている。

まぁ…見た目からして子供なんだけど、それは今言わないほうがいいだろう。

 

「それで話は戻るけど、幻獣が力を貸してくれるのはきまったんだけど、それに対して条件があったんだよ。」

 

「条件じゃと?なんじゃそれは?」

 

条件と聞いてアリカ姫が身を乗り出す。

この中だけで、その条件を満たせるのならそれでいいが、それが無理だとした場合。

あちらの条件をクリアできそうなのは、王女としての肩書きを持つアリカ姫しかいない。

それを分かってか、真剣な表情でタケルを見つめる。

早く続きを話せと目で訴えてきた。

 

「これはアリカ姫の力も借りないとできない条件だと思うけど、新しい住処を用意して欲しいって言われたんだ。」

 

それを聞いた瞬間、皆の表情が少し曇る。

 

「それは……でも当然ですね。」

 

「今の私にそれが出来るかといわれれば難しいとしか言えんのじゃが…それぐらいなら何とかしてやりたい。彼らがしてくれたことに対する謝儀としてはむしろ少ないくらいじゃと思うぞ。」

 

「まぁ、いざとなったら俺の魔法球の中とか、テオドラに頼んでみるとか色々考えてはいるんだけどね。」

 

「なるほど。確かに帝国の土地は自然が多い。ある程度縄張りなどあるじゃろうが、幻獣の住処としては最適じゃな。」

 

「まぁそういう訳なんだ。説明も終わったし正座崩してもいいよね?」

 

「ん?まぁ…いいだろう。」

 

そろそろ本格的にきつくなったので、俺は詠春さんに確認を取って、俺達はやっと正座から解放された。

龍ちゃんはよっぽど苦しかったのか、その場に寝そべってぐてーっとなっている。

と言うか、虎なのに正座できる龍ちゃんがおかしい思う。

今更ながら漫画の世界なんだなぁ…としみじみ思った。

 

その話から数時間が経過した所で、俺達はとうとうアリアドネーへ帰還することが出来た。

犠牲者を誰一人出すことなく、しかも助けたかった幻獣も助ける事が出来た。

まさに大団円という所だ。

さらに嬉しい事が一つ。

龍ちゃんから幻獣の話を聞いたアリカ姫が、俺達の夢である幻獣と共に暮らす世界を真剣に考えてくれた事だ。

幻獣の思い、その矜持に深く感銘を受けたのか…あの話の後、龍ちゃんをつかまえては幻獣について色々教えてくれと頼んでいたみたいだ。

龍ちゃんもその気持ちが嬉しいのか色々話をしたらしい。

 

もう既に自分が知っている未来と違うのでコレからどうなるか分からないが、俺はそれでいいんじゃないかと思っている。

 

自分の進むべき道は、先が見えないからこそ面白い。

 

今になってそれを感じる事が出来た。

これからかなり苦労するとは思うけど、それもまた面白いと思う。

 

本当にこれからが楽しみだ。

 

 

 

 

そう思っていた矢先の事だった…

 

 

 

この平和を楽しんでいた俺達の元に最悪と言っていい知らせが舞い込んできたのは…

 

 

 

「大変です!!アリカ姫様が国家反逆罪、さらにこの大戦を引き起こした首謀者として逮捕されました!しかも何故かあっという間に裁判が終り…判決は死刑。ケルベラス無限監獄に二年収容した後、処刑されるとの事です!!!!」

 

 

『!!!!!!!!!』

 

 

どうやら、俺達は平和を楽しむ事さえ出来ないらしい…

 

 

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