我拳は銃なりて   作:秋華

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第二十話:別れ

「……ふ…ふざけるなぁぁぁ!!!!」

 

報告に来た兵士に対し、ナギが大声を上げながらつめよる。

報告に来た兵士は、ナギに首元をつかまれ持ち上げられ、小さくうめき声を上げる。

普段なら詠春さんやアルがそれを止めるはずなのだが、二人とも報告の内容に衝撃を受けてしばらく動けなくなっていた。

ここにいる誰もが、その報告を信じたくないようでしばらくその光景を眺めるだけになっていた。

 

しばらくして、やっと意識をとりもどした詠春さん達によってナギと兵士が引き離される。

 

「すまない…。大丈夫か?」

 

解放された兵士は息を荒げながら、地面に膝を付いているとガトウが心配して兵士に声をかける。

 

「ごほっ…ごほっ…だ…大丈夫です。それに謝られる必要はありません。いきなりこんな事報告されればこうなる事は予想できました。」

 

「そうか…。ありがとう。……さて詳しくその事を教えてくれるか?」

 

「はっ…了解しました。」

 

そう兵士が言うと、立ち上がり姿勢を正してナギ達に説明をするのだった。

 

 

事のあらましはこういうことらしい。

 

アリアドネーへ帰還したアリカ姫は、まず議員達を招集してこれからの事について話し合いをする予定だったそうだ。

そして、会議の日。

議員達は全員招集していたのだが、その場にはいるはずの国王の姿が見えない。

コレについては一緒に会議に参加していたガトウも確認していた。

疑問に思ったアリカ姫は、議員達にそのことを聞くと、どうやら国王は体の調子が悪いらしく、この場にはこれないらしい。なので、ここで決まった事を後から報告に来て欲しいと言われたそうだ。

その旨を聞いてアリカ姫は会議を始め、それが終わった後、話し合った事や決まった事を国王に報告に行った。

 

事が起こったのはその後。

アリカ姫が、国王がいる部屋へ報告に行き、部屋の前でノックをしていたのだが、返事が無い。不信に思ったアリカ姫が中を確認しようと部屋に入った後、いきなり悲鳴が聞こえたそうだ。その悲鳴を聞き何事かと思った兵士が部屋に入るとそこには血まみれになって地面に倒れている国王と、それを必死になって起こそうとしているアリカ姫の姿があったらしい。

 

それを見て、しばらく兵士達が呆然としていると、騒ぎを聞きつけたのか、議員の一人がここへ入ってきて状況を確認。いきなりアリカ姫を国王暗殺の容疑者として逮捕したそうだ。

アリカ姫は動揺していたのか、たいした抵抗せず逮捕。その後すぐにでも裁判が開かれその結果先ほど報告してくれた状況になってしまったと言うことだ。

 

 

「いや。ちょっと待ってくれ。国王が死んだのはまず間違いないのだろうが、何故それでアリカ姫が逮捕される事になるんだ?」

 

皆が疑問に思っていることを詠春さんが口にだす。

事情を説明してくれている兵士もその疑問は予測済みだったのかスラスラと話し出した。

 

「はっ…。それについてなのですが、裁判に立ち会った兵士達の話を聞くと、アリカ姫と”完全なる世界”との繋がりを記した書類や、国王を殺害したと思われるナイフがアリカ姫の部屋から次々と見つかったそうです。それともう一つ。何故かアリカ姫がその場で弁明をしなかったそうです。なのであっという間に裁判が終り、刑が決まったということらしいです。」

 

ありえない。

 

ここにいる全員がそう思っただろう。

 

大体アリカ姫は俺達”紅き翼”と一緒に行動をしていたし、むしろ俺達の弱みとして”完全なる世界”から何度も襲撃を受けているのだ。

それがフリだったという可能性も確かに無くは無いが、それはあまりにも暴論だろう。

第一アリカ姫が”完全なる世界”と結託するメリットなど無い。

 

だがそれよりも気になるのは…。

 

「…なぜアリカ姫は弁明をしなかったんだ?」

 

タケルがそう呟いた。

 

そう。

 

何よりもおかしいのは、アリカ姫が弁明をしなかった事。

たとえ証拠が色々出てきたのだとしても、それを否定する事ぐらい簡単に出来るだろう。

特にアリカ姫の部屋から出てきたナイフ。

これが一番怪しい。

王がいる部屋に、アリカ姫が入ってすぐに悲鳴が上がったと、この兵士は言っていたが、もし見つかったナイフで殺されたのなら、流石に争った音が聞こえてくるはずだし、王だって抵抗出来たはずだ。しかも凶器はその場に無いとおかしい。

しかし聞こえたのはアリカ姫の悲鳴だけと言っていた。

コレはあきらかにおかしい。

 

今この短時間でコレだけの矛盾が思いつくのだ、アリカ姫だって当然思いついただろう。

 

だからこそ分からない。

なぜアリカ姫が弁明をしなかったのかを……。

 

皆アリカ姫の奇妙な行動について頭を悩ませていると、先ほどまで呆然としていたナギが呟く。

 

「……ここで考えててもしょうがねぇ。直接アリカ姫のとこに行くぞ!」

 

 

 

三人称side

 

それからの紅き翼の行動は早かった。

すぐさま泊まっていた宿から出ると、アリカ姫がいると思われる建物へと向かっていく。

 

今は一刻も早くアリカ姫に真実を聞かねば…

 

皆考えている事は一緒だった。

その中でもナギはその思いが強いのだろう…ここにいる誰よりも必死な表情で飛んでいる。

まるで、さっきまで聞かされたことを信じたくない!何かの間違いだ!

そう自らに思い聞かせるかのように。

 

もしからしたらそれは当然の事なのかもしれない。

誰よりもアリカ姫と一緒に行動し、その姿を見続けてきたのだ。

そして自分の杖と翼を預けると、唯一誓った人物なのだから。

 

しばらくして、アリカ姫がいると思われる建物に着いたのだが、そこには最低限の兵士しかおらず、アリカ姫の姿はどこにも居なかった。

その場に居た兵士に、アリカ姫がどこに言ったのか聞くと(脅して聞き出すと)どうやらもうこの場を去り何処かへ護送するため空港へと連れて行かれたらしい。

 

それを聞いて、今度は都市の外れにある空港へと飛ぶ。

 

どこに行くかはわかっていないが、おそらく船に乗り込んでしまったら刑が執行されるまで普通には逢う事が出来ないであろう。

 

だからこそ急がなくてはいけない。

 

急いで、急いで、急いで……

 

なぜこんな事になったのかアリカ姫から聞き出さないくてはいけない。

 

だから今はとにかく全速力で飛べ!

 

皆考えている事は同じだった。

 

すると、目の前には空港が見えてきた。

目を凝らして見ると、その中でも一番豪華な船に誰かが乗り込もうとしていた。

 

アリカ姫だ。

 

”紅き翼”のメンバーは、アリカ姫の姿を確認するとそのすぐそばに降り立ちアリカ姫の下へと走る。

しかし、その歩みはとまってしまう。

なぜなら、悲痛な顔をしながらアリカ姫が”紅き翼”に叫んだからだ。

 

「来るなーーー!!!!!!」

 

 

タケルside

 

やっとの思いでアリカ姫の所へ着いたというのに、俺達に待っていたのはアリカ姫の”来るな”という叫び声だった。

何故?

そんな言葉が頭の中をぐるぐると回り、思わず足が止まってしまう。

あたりを見渡せば、同じように皆その場で立ち止まってしまっていた。

 

一瞬、時が止まってしまったかのように誰も動かない。

そんな中、ただ一人動く事を許されたかのように、ナギがアリカ姫へと近寄っていく。

 

「来るなといっておるじゃろうが!!」

 

近寄ってくるナギに向かって、アリカ姫がまた叫ぶが、ナギは少し困った顔をしながらも近寄っていき、手を伸ばせばアリカ姫に触れる事が出来るくらいまで近寄ると、自分の頭をかきながらアリカ姫に語りかけた。

 

「なぁ…何そんな怒ってるんだよ。それによ、聞いたぜ?父親を殺したらしいじゃねーか。しかも”完全なる世界”と繋がっていたというオマケ付きでよ。……一体何があったんだ?」

 

ナギの言葉に何も答えないアリカ姫。

すると近くに居た、男が答える。

その身なりからして、かなりの権力を持った人物…多分元老院だろう。

どうやらいきなり俺達が現れた為少々驚いているようだった。

 

「ふ…ふん。何があったかなど明白だろう。この者は自らの欲望の為に戦争を引き起こし、影で操っていたのだ。それはこの者の部屋からも証拠が出てきている。しかしその戦争では王は死なず、自らの立場も変わらなかった為、王を殺すという暴挙に出たのだ。」

 

「……なぁホント何があったんだよ。答えてくれねーのか?」

 

しかしナギは、その男の言葉を無視し再度アリカ姫に尋ねる。

だがアリカ姫は、視線をナギに合わさず、黙ったままだった。

 

「だから言っておるだろうが!この者は…」

 

無視された事を怒ったのか、少し声を荒げながら話す。

しかしそんな言葉を遮ってナギが叫んだ。

 

「うるせぇ!!!お前になんか聞いてねーんだよ!俺は姫さんに聞いてんだ!黙ってろ!!」

 

「な…なんだと。…こ…この私を誰だと……な、何をしておる!今すぐこの者を……」

 

「何をやっておるかナギよ!!何故そなたがここにおるのじゃ!!」

 

元老院の男が回りに居た兵に指示を出そうとした瞬間、まるでそれを遮るかのようにアリカ姫がナギに掴みより声を上げる。

それを見て少し嬉しそうな顔をしながらナギが笑う。

 

「やっと目を見て喋ってくれたな。ようやくいつもの姫さんが戻ってきたみたいだ。」

 

「そんな事はどうでも良い!それよりも何故ここに来たのじゃ!」

 

「だからさっきから言ってるだろ?姫さんが捕まったって聞いたから急いで来たのさ。俺は姫さんの騎士だぜ?誰がなんと言おうと姫さんの言葉を信じる。だから何でこんな事になってるのか聞きに来たんだよ。」

 

ナギに真正面からそう言われ呆気に取られ、思わず顔を背け言葉に詰まるアリカ姫。

しかし、すぐさま厳しい顔つきになりナギに向き合う。

 

「……なら今この場でナギ達”紅き翼”を私の騎士から除名する!」

 

「!!おい!いきなりなんだよ!」

 

「いきなりも何も無いわ。もう戦争は終わった。つまりお主達の役目も終わったという事だ。元は私の騎士でもなかったわけだから、もう私に仕える必要など無い。これからは自由にするが良い。ご苦労じゃったな。」

 

「ちょっとまてよ!俺は別にこのままでも…」

 

「聞く耳は持たん。質問も許さん。…じゃが願う事ならお主達の力を民の為、そしてこの平和を守るために使って欲しい。じゃがコレは命令ではなく願いじゃ。幻獣達の件については責任を持って何とかするから心配するな。話は以上じゃ。元老院殿、話は終わりました。さっさと連れて行ってくれぬか?」

 

「……はっ!う…うむ。わかっておるわ」

 

そうアリカ姫が言い放つと、これ以上喋る事は無いとばかりに、俺達に背を向けて船へと歩いていく。それに続くように元老院の男が周りに指示をだし、船へと向かっていく。

それを見たナギが、アリカ姫を止めようとその背中に向かって走り出したが、近くに居た兵士たちに体をつかまれ動けなくなっていた。

 

「く…っそはなせよ!離しやがれ!姫さん待てよ!俺は納得してねーぞ!!おい聞いてんのか!?……お前はこのまま処刑されてもいいって言うのかよ!!!」

 

ナギの言葉が届いたのか、アリカ姫の歩みが止まる。

そしてもう一度俺達の方に顔を向ける。

その顔は涙を流しながらも笑顔で、今まで見たことも無いくらい綺麗だった。

 

「今までありがとう”紅き翼”よ。そしてナギ…。短い間じゃったが楽しかった。嬉しかった。面白かったぞ。お主に逢えて本当に良かった。これからも私の……いや私達の英雄であってくれ。」

 

 

それでは……元気での…

 

 

 

そんな言葉を残しアリカ姫は船へと乗り、しばらくして船は空へと旅立ってしまった。

その光景を俺達は黙って見ているだけだった。

ただ一人兵士に止めながらもナギは飛んでいく船に向かって手を伸ばし、叫んでいた。

まるで何かを掴もうとしているかのように…

 

こうして俺達”紅き翼”は騎士の役目を下ろされ、また傭兵に戻ったのであった。

 

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