我拳は銃なりて   作:秋華

27 / 41
小話Ⅴ:それぞれの二年~ナギ・アリカside~

ナギside

 

他のメンバーと分かれてからもう一年が経とうとしている。

この一年俺は、拠点とか作らずいろんな町を転々として旅を続けていた。

もちろん其の町々で、困った事があったら力を貸している。

姫さんも俺達にそれを望んでいるようだったからな。

それに…これは俺の罪滅ぼしでもあるんだ。

 

最初立ち寄った町は、戦争のせいで廃墟に近かった。

どうやら、国からの支援がここまで行き届いていなくて立て直そうにもうまくいってないらしい。

だから俺は、この町を元通りとまでは行かないがある程度元通りになるまで手伝う事にした。

その町でも、俺の名前は有名らしく”英雄”と呼ばれてもてはやされたんだが…中には俺の事を嫌っている人達もいた。

 

「なにが”英雄”だ!人殺しの癖に!”英雄”なら返してよ!私達の村を!私の腕を返してよ!!」

 

最初そう言われた時に、俺は何も言い返すことが出来なかった。

 

”人殺し”

 

それは間違ってない。

俺は魔法で多くの人を殺してきたんだから。

 

そう…俺の手は多くの人の血で真っ赤に染まっている。

 

だから今俺に出来ることは、その人に頭を下げて謝って、少しでもその人の傷が言えるように魔法で癒してあげる事だった。

最初はもちろん。罵倒さて、時にはモノを投げつけられたりもしたけど、根気よく通い続けたら次第にそんな事は無くなって、最後にはこう言ってくれた。

 

”あんな事言ってごめんなさい。少し考えればわかる事だった。貴方達が戦わなかったらもっと戦争は続いていたし、私は死んでいたかもしれない。…今更どの口が言うんだって思うだろうけど言わせて頂戴。…ありがとう。そして、今まで辛い事をさせてごめんなさい”

 

それを聞いた時。思わず涙が出てきた。

自分がやってきた事が始めて報われた気がした。

 

だから俺の方こそ言わせて欲しい。

 

ありがとう。

 

馬鹿な俺にいろんなことを気付かせてくれて本当にありがとうって…。

 

それ以来、俺は立ち寄った町や村で、復興の手助けをしていった。

其の間活躍した魔法と言えば、殆ど回復魔法。

魔法としてはかなりインテリな魔法で、俺も苦手としていたんだけど、その苦手な俺の回復魔法でもこれだけ助けられる人が増えるんだから、毛嫌いせず昔からやっておけばよかったって後悔しっぱなしだ。

こういうのは、アルとかお師匠が得意だったから、この旅が終わったら本格的に習ってみようと思う。

 

でも、こうして旅を続けていていろんなことが分かったのは確かに良かった。

今まで自分がどれだけ視野が狭かったってことも気付けてよかったと思う。

だけど、まだ本来の旅の目的を達成した訳じゃない。

 

俺はどうするべきなのか…

 

其の答えはまだ見つからない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・

 

それから更に時が過ぎ、とうとう姫さんの処刑まで半年となったけど、俺はまだこうして答えを出せないで居る。

刻々と時間がしていき心だけは何時も焦っているが、どうしても行動する事が出来ない。

そんな自分が心底情けないって思う。

 

そして今日も復興の手伝いをしながら、答えを探して考え込んでいると、誰かが俺に声をかけてきた。

 

「ねーねーナギさん。」

 

「ん?おお、お前は確か…大工所の坊主じゃねーか。どうした?」

 

俺に声をかけて来たのは、この町の大工の所の子供。

あの大工のおっさんは、ラカンみたいな性格をしていて一緒にいて飽きないかなりいい人だ。

最近だとそのおっさん一緒に作業したり、仕事終わりにはお酒を飲んだりしている。

そしてそのおっさんには、二人の子供がいるんだけど、今こうして俺の前に居るのは、年上の子供の方だった。

 

「うん。ちょっとナギさんにお願いがあるんだ。」

 

「お願い?いいぜ?俺に言ってみな。大抵の事なら叶えてやるぜ?」

 

「本当!?なら、僕に魔法教えてください!!」

 

そう言って子供は俺に頭を下げてきた。

 

「魔法…か。またどうして魔法なんか…」

 

正直、俺は魔法なんて教えたくない。

この旅でいかに未熟だったかを知った俺には誰かに魔法を教える資格なんてないと思う。

それに…俺が本来使う魔法は広域破壊呪文。

壊す事しかできない魔法なんか子供に教えたくなかった。

 

「守りたいんだ。妹を!父さん、母さんを!何時も僕は皆に守られてばっかりでそれがくやしい。だから今度は僕が守ってあげたいんだ。戦争が終わってからも、妹は何時も泣いてばかりなんだ。僕は、それを見るのはもう嫌なんだ!僕はアイツの兄貴だ!ちゃんと守ってあげたい。…僕はナギさんみたいに強くないけど、せめて家族だけでも守りたい!だからお願いします!僕に魔法を教えてください!!!」

 

それを聞いたとき、頭に雷が落ちるぐらいの衝撃を受けた。

そうだよ…なんでこんな簡単なことを忘れていたんだろう。

 

守りたい奴を守る

 

最初俺は自分の力を試したいだけで、魔法使っていたけど、アルやお師匠、ラカン、タケル、龍牙、ガトウに出会ってから、それは変わっていったじゃねーか。

 

自分の為の魔法から、誰かを守るための魔法に。

 

大体、最初から”英雄”とかそんなんどうでも良かっただろ?

前姫さん助けた時だって、犯罪者だったんだから。

それが今は、どうだよ。

 

”英雄”?そんなの名乗ったつもりはねぇ…

 

”世界を救った”?それはやりたい事をやっていたらそうなっただけ。

 

”犯罪者”?上等だよ。それで俺が満足する事ができるならいくらでもなってやる。

 

 

そうだよ。

何、色々考えていたんだよ。俺が行動するのは、俺がしたいって思うからだ。

誰かに言われてだとか、誰かに命令されてだとかじゃない。

もちろん”英雄”なんて言葉何かのためじゃない!

 

はぁ…俺やっぱり馬鹿だよな。何こんな簡単な事に気がつかなかったんだろう。

流石におちこむぜ…

 

「あーもう!馬鹿だな。」

 

「?」

 

「あ!いや。お前のこと言った訳じゃねーよ。それとだな…魔法の事なんだが。悪いな。俺はこれからやらなくちゃいけない事が出来ちまったから。教える事はできねーんだ。」

 

「そうですか…」

 

「あ、でも心配するな!其の用事をパパっと終わらしてきたら、またここに戻ってきて教えてやるよ。まー俺は人に魔法なんて教えた事無いから、うまく出来るかわかんねーけど…な。」

 

「ほんと!?うん。僕待ってる!」

 

「おう。じゃ、行って来るわ。妹やおっさん達によろしくな!」

 

「いってらっしゃい!」

 

子供に手を振ってわかれ、俺は飛ぶ。

とりあえず、アルとか詠春に連絡をとらねーとな。

それと…タケルか。

アイツが俺に言ってくれた言葉。

正直まだその意味は分かってねーけど、なんとなく答えが見えた気がする。

きっとその答えは姫さんが考えて、願った“英雄”とは違うだろうけど、そんな事はもうどうでも良い。

今はとりあえず姫さんを助ける!

そして、これからも姫さんを守りたい!

あいつの騎士であり続けたい!

 

誰がなんと居ようと、俺の邪魔はさせねーよ。

 

 

 

 

俺が”英雄”?

 

違う違う。俺はまだ英雄じゃない。

 

そう。

 

たぶん俺は”英雄”って奴に今から成りに行くのさ。

 

 

 

アリカside

 

刑執行まで、後一週間か…。

ふふ…歴代の王族でも二度もこうして監獄に収容された姫は居ないだろうな。

まったく、我ながら笑えてくる。

 

だが、後悔などは無いがな。

こうして私が犠牲になることで、多くの人と幻獣が救われる。

ならばこの命惜しくは無い。

 

無い…

 

無いはずなのに…

 

何故こんなにも心が締め付けられるのだろう。

 

そして、何故あの男の顔が頭に思い浮かぶのだろう。

 

ナギ…

 

私が王族だと言うのに、そんな態度を取らず、ただのアリカとして接してくれた最初にして最後の男。

アイツの前では私も一人の女でおれた。

今考えれば、色々無茶な事も言ったな。

 

一緒になって敵のアジトに乗り込んだりもしたな。

あれは、本当に面白かった。あんな体験もう二度とできぬであろうな。

 

そして、私の前で騎士になると誓ったあの日。

あの日ほど、嬉しかった事は無い。

 

それからは、互いに忙しくて一緒に居る機会も減ってしまったが、それでもなんだか守られている気がして心強かった。きっとナギがいたから弱音を吐かずここまでやってこれたのであろう。

 

……ふふっ。

 

なんじゃアリカよ。

 

こんな時になってやっと自分の気持ちに素直になれたというのか?

 

本当にいじっぱりな性格じゃな。

 

まぁ今更どうでも良いか。

 

もうすぐ私は死ぬ。

 

おそらく、この大陸史上最大にして最悪の犯罪者としてな。

 

だがそれで、幸せになるものたちがおるなら、それで良いではないか!

 

 

……!!

 

なんじゃアリカよ。

 

今更涙なんて流してどうしたというのだ?

 

覚悟決めたはずじゃろ?

 

そう…覚悟を決めたのじゃ!

 

だから涙など……悲しいなど……こ…怖い…など…と考えるでない。

 

後はナギ達に任せよう。

 

 

ナギよ…

 

愛しいナギよ…

 

もう、私に逢う事はないじゃろうが、これだけは言わせてくれないか?

 

あんなひどい言葉を投げかけた私の事などもうお主は嫌いになって居るじゃろうが、今この時を使って本心を言わせてくれないか?

 

 

 

 

 

 

 

「ナギ、大好きじゃ。私がただ唯一愛した男。お主の事死んでも忘れはしないぞ。…どうか幸せになってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ……出来ることならナギとまた買い物に行きたかったなぁ…。

 

 

 

小さな窓から見える月に私は話しかける。

 

叶わぬ夢と知っていながらも、私は願ってしまう。

 

素直じゃない私の本心を…

 

消して敵わぬ私の夢を…

 

 

 

 

 

 

私が処刑されるまで後、一週間…

 

 

 




んー短いですね。
あっさりしすぎでしょうか?
けど、あまりここらへんはくどくど書いてもなぁ…という所が正直な所です。
アリカについてはともかく、ナギについてはもう少し書けるかもしれませんが、小話ですからこれぐらいで勘弁してください。

武の時は、どちらかと言えば、普段スポットのあたってない三人の話だったので、多く書きました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。