内容はOTRと同じですが…。
神様が残してくれた手紙の通り、3ヶ月後、俺とその相棒である龍ちゃんは、ラカンと出会う予定になっている目的の町に到着していた。
到着した俺達が、まず最初にした事。…それは、ラカンの情報を得るために酒場へと向かう事だった。
酒場に着いて、適当にお酒を頼むと、俺達は人から少し離れたテーブルに座り、二人で注文したお酒を飲んでいた。
ちなみに、龍ちゃんは今ぬいぐるみサイズになっている為、テーブルの上に座りお酒をなめている状態だ。それがちょっとかわいく見えてしまうのはおそらく俺の気のせいじゃないだろう。
何せ、酒場に来ていた女性の客なんか、目をうっとりさせて龍ちゃんを見ているのだから…。
そんな、女性の視線をひしひしと感じながら、二人してお酒を飲んでいると、周りを警戒しながら龍ちゃんが話しかけてきた。
「なぁなぁタケやん。ここにその…、ヤカン?やっけ?そいつが来るんか?」
「ラカンな。…まぁ、予定ではそうなってるっぽいんだけど…実際はわからん。」
「そうそうラカンな。…でも、わからんとか。いい加減やな。大体なんでそいつに会わなあかんのや?」
「……龍ちゃん。最近帝国と連合が戦争してるのは知ってるよね?」
「まぁ、それぐらいはな。いくら幻獣のワイでも知っとるで?何時の時代も、人間っちゅうもんは争うのが好きな種族やの。いい加減あきへんのかな?」
「耳に痛い話だけど、それは無理だと思うよ。…それでね。ちょっと事情があって、その戦争を起こしている奴を叩き潰さないといけないんだよ。んで、そのラカンっていう奴と一緒に行動していけばその内、そいつにぶつかる可能性が高い。だからラカンに会わないとといけないのさ」
「ふ~ん。正直な話、いろいろ納得できへんけど…。まぁ、タケやんがやらなあかん事やったら、ワイはそれを手伝うだけや。」
「すまんな。龍ちゃん」
「ええて。…ただ何時でもええ。タケやんが、秘めとるもん教えてな。一人で抱えてもええことなんてたぶん無いで?」
「ありがと…。でも、虎に慰められるなんて…人としてどうなんだろ。」
「虎は虎でも、タケやんよりよっぽど歳をとっとる幻獣じゃ!!大体ここでそんな発言かますから二枚目やのうて、三枚目やっていうんやで!!」
「んなっ!!今ここで、そんな話題出す必要ないだろうが!!」
「なんやまたやるんか!?さっきので、懲りたとおもっとったんやけどな。」
「フフフ…人の恐ろしさその身におしえこんだるわーーー!!!!」
――――ただいまぬいぐるみサイズの虎と本気《マジ》ケンカ中――――
俺と龍ちゃんがしばらくケンカをしていると、その光景を遠巻きに見ていた一人の男性が、こちらに向かって来ているのが、気配と横眼で確認できた。龍ちゃんも、それに気付いているようで、俺に目で“どうするん?”と訴えてきたが、相手の目的も分からない状態で、下手に行動しても、あっちに警戒させるだけだし、俺としては、この状態でなぜ近づいて来たのか理由が知りたかったので、龍ちゃんと目配せをして、ケンカを続ける事にした。
すると、やっぱり目的は俺達だった様で、まるでケンカの仲裁をするかのように、その男性が話しかけてきた。
「もし…ちょっとよろしいか?」
「なんや!!ワイらは今取り込み中じゃ後にせんかい!!」
「あほか!!初対面の人になんて口をきいてやがる!!…すいません。このアホ虎が失礼な事を」
「いえ、かまいませんよ。やはりその虎は幻獣だったのですね。それよりも、貴方とその幻獣はなかなかのウデとお見受けしました。」
「ほほう…。おっちゃんワイらに目をつけるとは、なかなかええ目もっとるやないか。」
「お…おちゃ…んん。まぁ、それでなんですが、少し仕事を頼まれてもらえないでしょうか?」
「仕事?いきなりですね。しかも、自分で言うのもなんですが、身元もさだかでない人ですよ?」
「それは別にかまいません。むしろその方が好都合です。実は、少しでも今回の仕事が成功するように、いろんな人に声をかけておりますので…。もし仕事を請けてもらえるなら、今日の夜中、町の中央にある酒場まで来てくれませんでしょうか?仕事が成功した場合、かなりの金額の謝礼を約束します。それでは」
用件だけ伝えると、その男性はこの酒場から出て行った。
その男性が出て行った後、俺たちはケンカをやめて、最初と同じように座り、何事も無かったかのようにまた酒を飲み始める。
ケンカしたせいで、酒場のマスターから凄く睨まれてしまい、迷惑料として少し多めにお酒を注文したのは、当然の配慮だろう。
決して、マスターが怖かったからじゃない。
…怖かったからじゃないからな!
……おほん。それは兎も角として、俺達は新たに運ばれてきたお酒を飲みながら、さっきの男性が言った事について龍ちゃんと相談する。
「にしても仕事ね。なんつうか、こうフラグがビンビン感じるんだけど?」
「フラグなぁ…。それはつまり、あの男について行けば、タケやんが言とった、ラカンっちゅう奴に会えるって事か?」
「確証はないけどね。」
「ふーん。まぁ…、そういう感的なもんは、大体あっとると思うで?」
「と言うと?」
「ワイは人より鼻が利くから分かるんやけど、血の匂いがしたわ。少なくとも、力仕事とか、人探しなんかみたいな、まともな依頼やあらへんやろ。それに、タケやんが言っとったラカンは、傭兵なんやろ?なら、戦いと血の匂いがする場所におるんやないか?」
「なるほど。その予想には、かなりの説得力があるね。…でも、龍ちゃん。何、今更頭良いみたいなキャラつくってんの?ぶっちゃけかなり似合わないぞ?」
「これが普通や!!…まったく。たまに真面目に話したらこれかい」
「すまん、すまん。おもわず…」
「まぁええわ。もうケンカする気もおきんわ。…今日の夜は、いろいろ忙しくなるかも知れんからなぁ…」
「……そうかもね。」
龍ちゃんの言葉に頷きながら俺は、お酒の入ったグラスを口に運んだ。
そして、改めて今日の夜の事について考えてみる事にした。
もし、これが龍ちゃんが言った通りの仕事の依頼とするなら、俺には一つだけ心あたりがある。
それは、ラカンが“紅き翼”に加入する事になった最初のきっかけ。
ラカンが、“紅き翼”をつぶすように仕事を依頼された出来事だ。
詳しい時期とかは、全く覚えていないけど、神様が言っていた事が本当に起こるとするなら、まず間違いないだろうと思う。
だた、神様はこの街でラカンと合流しろと言っていただけで、詳しい事は何も知らされていないから、間違っているのかもしれない。
…けど、何となく予感がした。
俺が、あの原作でも最強のパーティーとして名高い“紅き翼”と出会う日はもうすぐそこまで来ているのだと…。
「ああ…そや。それとやな。あの男、亜人やったで?それも血の匂いの他にも、いろんな匂いがしたからな…。結構いい所の出やないかな?おそらくは…」
「…帝国の人間だって言いたいんだろ?」
「まぁ、そういう事やな。んで、改めてどうするん?あの男から得た情報を総合してみると、十中八九戦争に介入する事になるで?どう介入するとか、どこまで深く関わるかは実際に話を聞いてみんとわからんけどな。」
「…龍ちゃんには悪いけど、行くよ。ラカンに会うチャンスだし。……それにどの道俺は戦争に介入しないといけないからな。」
「…そっか。なんやわからんけど、やっぱりタケやんにも、いろいろ事情がありそうやな。…ま、それをワイに教えてくれんのは少しさみしいけどな。」
「…ごめん。」
「ええて。さっきも言ったけど、ワイはタケやんが話してくれるまで待つわ。…それとや。ワイに悪いとか考えんでええ。…ワイはタケやんと一緒に居たいからここにおるんやし、いややったら最初から言うとるわ。」
「そっか。…なら、ありがとな。」
「おう」
心の中で改めて、龍ちゃんと友達になれた事を感謝しながらお酒を飲んだ。
その後は、約束の時間までまだ、かなり余裕があったので二人して他愛のない雑談をしながら酒盛りをしていた。
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しばらくして、約束の時間になった俺と龍ちゃんは、あの男が待っていると言っていた、中央にある酒場へ向かっていた。
詳しい場所は聞いていなかったので、人に聞かないと分からないかもと思っていたが、中央に着くと、少し大きな酒場の前で、先ほど声をかけた男が入り口に立っていた。
その男は、俺達を見つけると、手を振りながらここだと俺達を呼びよせた。
「おお…。お待ちしておりました。きっと貴方様方なら着てくださると思っていました。」
「まぁ、俺達もお金欲しいからね。お金は大事だよ」
本当の目的は、そこに集まる人…ラカンなのだが、この男にそれを言う必要はないので、適当に出まかせを言ってごまかす。
すると、その男は俺の言葉を信じたのか、何の疑いもせず俺達を中へと案内し始めた。
「それは結構。それではご案内します。…他の皆様はもうこちらにいますので。」
そう言って店の中に入っていくと、そこにはあきらかに普通の客じゃない人達であふれていた。
何せ全員が全員、武器を持っており、体つきもそれなりに鍛えられていた。
おそらくほとんどが傭兵なんだと思う。
「ふ~ん。確かにいろいろあつまっとるなぁ。でも皆なんか弱そうやで?」
「こら龍ちゃん。そんなほんとの……げふん。そんな失礼な事言ったらいかんだろうが。」
「だってやな~タケやん」
小声で龍ちゃんがそう俺達にそう言ってくる。
確かに、そんなに強そうには見えなかった。
傭兵として、おそらく何回も修羅場をくぐってきてる人達なんだろうと思うが、どうしても俺より強そうには見えなかった。
…今まで戦ってきた相手が幻獣ばかりだったから、俺の感覚がマヒしているのかも?
そんな事を考えていると、いつの間にか、後ろに人が居たらしく、しかも俺達が小声で話していた事が聞こえていたのか、いきなり会話に参加してきた。
「その虎の言う通りだな。こんな足手まとい達と一緒に仕事なんてしたくねーぜ。」
『は!?』
「兄ちゃんもそう思ってんだろ?」
そう俺達に笑いかけてきたのは……俺が探していた人物。
「千の刃」「死なない男」「伝説の傭兵剣士」といわれる事となるジャック・ラカンその人だった。
「それよりも兄ちゃん。俺様といっちょ戦ってみないかい?」
俺達が驚いていると、それをまるで無視するかのように話を進めるラカン。
しかもはたから見たら笑っているのに、目が笑ってない。
それどころか俺達にぶつけてくるかのように闘気をだしてきた。
「いやいや。俺なんてあんたには敵わないし、弱いからやめておくよ。」
「HAHAHA!下手な謙遜はよくねーぜ?弱い?よくそんな事が言えるな。俺様の闘気を難なく受け止めていやがるくせによ。」
「これぐらいなら誰でもできるだろ?」
「誰でもねぇ…ならお前の後ろの連中はどう説明するんだ?」
そうラカンが指摘し、俺も後ろを振り返って見ると、さっきまで騒いでいた連中全員が机に突っ伏して眠っていた。仕事を依頼してきた男も同様だった。
するとラカンが依頼人の男に近づいて何かを確かめる
「あ~こりゃダメだな。明日の昼ぐらいまではおきねーわ(笑)ってことは…だ。これからは暇になったってことだろ?」
そう言ってこちらに向かって笑いかけてくる。
ていうか、絶対にわざとだろ。そうなんだろラカン!!
「はぁ…強引だな。そんなに戦いたいのか?」(まぁここでなんやかんや言っても戦うのは決まってるんだろうけどね。…にしても展開が強引な気がするな。…いやある意味らしいのか?)
「おほっ!やる気になってくれたのか?いいねぇ~。俺様は戦いがいのある奴と戦うのが大好きなんだよ。」
「でも一つだけ聞かせてくれ。何で俺なんだ?」
そう、いくら神様が仕組んでいた事とはいえ、何故俺と戦いたいと思ったのか?
その答えが気になった俺は、ラカンにそう聞いてみる。
「そりゃ~俺様がすげーからだよ。」
「は?」
「俺様ぐらいつえー奴になると、そいつがいくら隠していようが、その強さが大体分かっちまうもんなんだよ。兄ちゃんの肩に乗っている虎もかなりつえーだろうから戦ってみたいが…、それよりも気になるのはお前だ。まだ大して歳いってねーくせに、その身からにじみ出ているのは、まるで何年も愚直に目指す物を見据えて鍛え上げた男しかだせねー様な闘気だ。それに、さっき威嚇のつもりで闘気を出したっていうのに、それをまるで何も無かったかのように受け止める胆力。気になるなって言う方がおかしいと思うぜ?」
「なるほど」(あれ?なんかイメージと違うな。ラカンってもっとバカっぽくなかったけ?)
「ま、それでも俺様の方がつえーけどな。HAHAHAHA…」
「そうですか」(あ…いややっぱりバカだわ)
「なーなー。タケやんが戦わんのやったらワイがやってもええで?」
「お!?それも面白そうだな。」
「龍ちゃん!…お前いつの間にそんなバトルマニアみたいな事を言うように…」
「いやいや…そんなわけないやん。でもな?こんな正面きって戦えなんて言って来る奴、そうはおらへん。なら正々堂々戦ってみるのもええんと違うか?」
「ほ~う。良い事言うじゃねーか!」
「龍ちゃん………。一人で男振り上げてる様だけど、それは許さんぞ?」
「だ・か・ら・!なんでタケやんは、こういう所でそんな発言がでるねん!ワザとか?ワザとなんやな!?それともワイにケンカうっとんのかい!!」
「いやそんなつもりはねーけど。…なんか気になって。」
「はぁ~。…だからタケやんは、三枚目や言うんや。ほんまこのバカは…。」
「なんだって!?バカとか言うな!!そっちこそケンカうってんだろ!?」
「なんや、このにーちゃんとやる前に、のしたってもええんやで?」
「上等だコラ!やってやんよ。」
売り言葉に買い言葉。
おそらく今の状態を表すと、この言葉がピッタリだろう。
おたがいにガンを飛ばしあって、今にもケンカが始まりそうになっていると、ラカン笑い声がまた酒場に響く。
「HAHAHA!本当にお前らおもしろいな。ケンカするなら俺様もまぜろや。」
「じゃ町の外に出ようか。そこで決着つけてやる。」
「望む所や!!土下座して“ごめんなさい”言わしたる!」
「どこでもいいぜ?どうせ俺様が勝つんだからよ」
そうお互い言い合って、俺達は町の外へと向かって行った。
ちなみに酒場で突っ伏していた人達は、俺達のケンカが終わるまでずっとそのまんまだったらしい。
後から聞いてちょっと申し訳なくなってしまった。
まぁ龍ちゃんとラカンは笑ってたけど…。