我拳は銃なりて   作:秋華

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第二十六話:また逢う日まで…

 

エヴァside

 

私が武と逢ってから、何日経ったのだろうか?

おそらくまだそんなに経ってないとは思うが、なんだか長い間武と一緒にいた気がする。

つまりいつの間にか私は、そう思えるほどに武の事を信用してしまったと言う事になるのだろう。

 

珍しい事もあるものだ。

 

本当にそう思う。

私が吸血鬼になってから、人を信用するなどまったく無かった。

無かったと言うよりは信用できなかったと言う方が正しいだろう。

何せ信用しようとしても、すぐに裏切られて今までの人達は私を襲ってく来た。

そんなんだから、私はいつの間にか人を信頼するという事を諦めて、闇にまぎれて一人で行動するようになったのだ。

チャチャゼロを創ったのも、従者が欲しかったと言うよりは、もしかしたら一人で居るのが辛くなって、話し相手が欲しかっただけかもしれない。

あの時はそう考えもしなかったけど、今思うとそんな感じがする。

もしかしたらそう考えるようになったのも、武と一緒に行動するようになったおかげかもしれない。

そう思うとちょっとくやしいが、嫌な気持ちじゃなかった。

だってゼロはゼロで、龍牙といういい話し相手が出来たみたいだし、私は私で、こうして一緒に居て楽しい人と出会えることが出来て今生まれてきて一番楽しい時間を過ごしていると私は思うからだ。

 

だが、そんな彼にも弱点がある。

それは寿命だ。

 

私は吸血鬼にして不死の魔法使い。

寿命で死ぬ事などありえない。

 

武は人間。

時が経てば、老いていきそしてやがて寿命が来て死んでしまう。

 

そんなのは嫌だ。

だから私は、武を私の従者にして、私と同じ吸血鬼にしたいと、何時しか思うようになっていた。

私のわがままだって言うのは、分かっている。

でも…それでも…武に恨まれるのは嫌だけど…たとえそうなったとしても、私は武を失いたくない!

 

そう思い始めたのが数日前。

そして今日は、久しぶりに町の宿に泊まる事になって、ゆっくりと休む事が出来る日だ。

何時もだと、野宿と言う事で常に周りに気を遣ったりして、今一落ち着いて話す時間は取れなかった。

まぁ、大半はゼロとか龍牙におちょくられて、そんな雰囲気じゃなくなったと言うのがもっともな理由だけど…。

…とりあえずあいつらは一度氷の棺にでも閉じ込めてやる。

 

ともかく、今日は願っても無いチャンスなんだ。

冗談で言ったり、無理やりなんて私は武に言いたくないし、したくない。

だから今日の夜にでも、素直に私の気持ちを伝えよう。

 

”私の従者にならないか?”って

 

たとえそれで、”嫌だ”といわれても、私は諦めるつもりは無い。

 

この長い年月の中で、初めて心から信頼できそうな人を…

 

私が、好きになった人を、諦めるなんてできない。

 

もう一人は嫌だ…。

 

だから武…どうか私の願いを、聞いてくれないか?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・

 

すぐに宿を見つけた私達は、武に連絡を取り宿で大人しく待っていた。

いつもなら外に出るのだが、今日は武に気持ちを伝えると決めていたので、そんな気分になれなかった。

武達が宿へ帰ってきてからは、何時もと同じ様に振る舞いながら過ごすようにした。

だけど、内心緊張と不安で一杯だった為、正直どうやって自分が寝る部屋に移動したのか覚えていない。

私ともあろうものが、まったく情けないばかりだ。

 

だが、ここからはちゃんとしないと…。

 

別に、今日断られたからと言って、諦めるつもりは毛頭無いが、それでもやっぱりこれを伝えるのは緊張してしまう。なにせ人にこんな事を言うのは初めてだから…なおさらだ。

100人私を狙う人に囲まれても、別に何も感じなかったのに、ただ一人の男にこれを伝えようとするだけで、こんなに緊張しているのだ。

私とした事が、なんと滑稽な姿なんだ。

……笑いたい奴は笑えばいいさ。

 

「アーッハッハッハ!オカシイゼゴ主人」

 

そんな事を思っていると、横に居たゼロが急に笑い出した。

 

「ゼロ!何を笑っている!」

 

「ン?ゴ主人ガ笑ッテイイト言ッタカラ、笑ッテルダケダゼ?」

 

私が強めにそうすると、“何を言っているんだコイツ?”と言わんばかりにゼロがそう返す。

 

「何?そんな事私は言って無いぞ!?」

 

「…サッキカラ心ノ声ガ、外ニ漏レタンダケド…気付イテ無カッタノカヨ」

 

「なんだと!?」

 

ゼロの一言に一瞬にして顔が熱を持ち、真っ赤になってしまった。

そ、それでは私が、さっき思っていた事は、すべて声に出していたとでも言うのか?

一体どこからだ!?

せめてあの告白まがいの事を、言った後だという事だと信じたい。

 

「マァ、別ニ声ニ出テ無クテモ、ゴ主人ハ、分カリヤスイケドナ」

 

「そんな…バカ…な…」

 

私は、その場で思わず膝を付いてしまった。

そんな私を見て、若干めんどくさそうだが、ゼロが肩を叩いてくれる。

 

「気ヲ落スナヨ、ゴ主人。アル意味デソレハ長所ダゼ。ソレヨリモ武ノ所ニ行クンダロ?」

 

「あ、あぁ…そうだな。」

 

ゼロの励まし?によって少し気持ちを取り戻した私はゼロの質問に答える。

すると、ゼロもそれを見てちょっと笑うと言葉を続けた。

 

「俺モヨ、ゴ主人ノ意見ニ大賛成ダゼ。アノ二人トハ、一緒ニ居タイゼ。」

 

「お前の場合は龍牙だろ?」

 

「マ…マァソレモ有ケドヨ。ゴ主人ヲ”吸血鬼”トカ、”悪ノ魔法使イ”ッテダケデ見ナクテ、他ノ人間ト同ジヨウニ、見テクレル奴ナンテ他ニハイネーカラナ。……好キナンダヨナ武ノ事?」

 

龍牙の事を出されて、少し顔を赤くしたゼロがそう私に言ってきた。

その声は、何時も私をからかっている時とは違ってとても真剣だった。

つまりゼロは、私の口から直接本心を聞きたいのだろう。

今までずっと、私と一緒に過ごしてきた従者として…。

だから私ももう聞かれてしまったが、改めてゼロに本心を打ち明けた。

 

「…あぁ。そうだ。フフッ…我ながら始めてなんだよ。ここまで一人の男を好きになったのは。アイツを逃がしてしまったら、もう二度とこんな気持ちにならないだろうとさえ、思ってしまうぐらいにな。」

 

そう私がゼロに伝えると、ゼロはちょっと嬉しそうな表情をしながら私に言う。

 

「…初恋ッテ奴ダナ。ダッタラ早ク行コウゼ!迷信カモ知レネケードヨ、初恋ハ実ラナイッテ言ウカラナ。」

 

「確かにそう聞くな。…だが!このエヴァンジェリンA・Kマクダウェル、一度狙った獲物は絶対逃さない!我誇りに賭けてな!」

 

「ソノ意気ダゼゴ主人!」

 

そう意気込んで、私は武が寝ている部屋へと向かう。

そこにはもう誰も居ないと言う事を、知らずに…。

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・

 

コンコン

 

「武?ちょっといいか?」

 

私は、武の部屋のドアを叩く。

でも中からの反応は無い。

 

コンコン

 

「武もう寝ているのか?」

 

もう一度扉を叩く。

だけどやっぱり中からの反応は無かった。

 

…おかしい。

もし武達が中に居て寝ているとしたら、絶対私が来たことに気付くはずだ。

少なくとも龍牙は幻獣。その察知能力は動物…ましてや人間の比じゃない。少なくとも私とゼロがここに来た時点で、気配や匂いを察知しているだろう。

なのに武はおろか、龍牙からも返事がないとなると…。

 

「武?入るぞ」

 

私はそう言ってドア開け、部屋の中に入った。

すると、案の定部屋の中は誰も居なかった。

 

「まったく。どこに行ったと言うのだ…。この町には他に行く所なんて無いはずだが…。」

 

武からこの町の事を聞いていたのだが、それを聞く限り、この町には何も無い。

なので私には、こんな時間に武が何処に行ったのか見当がつかなかった。

 

「ダナ。ダッタラゴ主人。魔力ヲ探ッテ見レバイインジャネーカ?ソレナラ直グニ武達ガ居ル場所ガ分カルダロ?」

 

「そうするか…」

 

ゼロにそう言われて、私は意識を集中させて魔力を探ってみる。

あいつ等は、普段魔力を抑えてはいるが、それでも普通の魔法使いよりは魔力量が多い。

それに何より特徴的なのだ。

魔力とは人によってかなり違うのは、魔法を使う者としては当然の知識だ。

流石に指紋とかのように、誰一人同じ者がいないとまではいかないだろうが、その人の性格や内面が出るとでも言えばいいのだろうか?おそらく得意の魔法にも関係があると思うが、一人ひとり感じ方が違うのだ。

その中でも、武の魔力は特徴的で、しいて言うなら…すべてを焦がすような真っ赤な炎なのに、恐れや熱さはあまり感じず、むしろその魔力を感じるだけで、優しく暖かい炎が私を包み込んでくれるようなそんな魔力だ。

本当に不思議な魔力だと私は思う。

それに龍牙。

アイツは幻獣だから、一番特徴的で分かりやすい。

魔法世界なら幻獣も沢山いるだろうが、ここは旧世界だし、何より人と一緒に居る幻獣なんてこの世界には龍牙しかいないだろう。

だからこそ見つけるのは簡単だったのだが…。

何で町の外れの方でその魔力を感じるんだ?

しかもその近くにある魔力は……

 

「…見つけた。」

 

「オ?ダッタラ早ク行コウゼ!」

 

「…ああ。だが、ちょっと様子が変だ。」

 

「ハ?ドウイウ事ダヨ?」

 

私がそう言うと、ゼロが首を傾げる。

 

「あいつ等が居る場所にもう一つ魔力を感じる。…それもおそらく私よりも魔力は上だ。こんな強大な魔力今まで感じだ事が無い。」

 

「!!!!ナンダト!一体何ヲヤッテルンダ、アイツ等ハ!」

 

その一言に、ゼロが驚愕する。

それも当然だ。

この世界で私より強い魔力を秘めている奴なんていない。

おそらくそれは、魔法世界でも同じだろう。

武も人としては最高峰の人間で、破格の魔力を秘めているが、それでも真祖の私と比べると少ない。

つまり今あいつは、少なくとも人では無い何かと一緒に居るのだろう。

私は一瞬最悪の場面を想像してしまったが、すぐにそれを振り払ってゼロに言う。

 

「わからん!とにかくここで考えていても仕方が無い。急いでいくぞゼロ!」

 

「オウヨ!」

 

そう言って私達は、部屋の窓から外に出てその場へと急行するのだった。

 

(一体何をやっていると言うのだ武は…。しかもあの強大な魔力…。どう考えても人間が発せられる魔力なんかじゃない!特に戦っているといった感じは無いが、どうなるかわからん。しかも何だこの胸を指すような苦しみは…私は…私は何を感じているというのだ!)

 

訳の分からない胸の苦しみを感じながら、武達が居る町のはずれへと向う。

今日は都合のいい事に満月。

私の力が、最も発揮される日だ。

直ぐに武達が居る場所へ行ける。

もしあの強大な魔力を持つ者と、戦闘をする事になったら…いくら武といえど、苦戦は免れない。

最悪…死……。

いやいや、そんな事考えるな。そうなる前に私がその場に居ればいいのだ。

相手がいくら強くても私が居れば戦況は変わる。

だから待っていてくれ武!今すぐ私が行くからな!!

 

あっという間に、武が居る場所の近くへと着いた私達は、すぐに武の姿を確認すると、そこに向かう。

その姿を見るに、戦闘を行った形跡はないし、今の所争うような雰囲気じゃなかった。

その事で一安心した私は、武にどういうことなのか聞くために、武に声を掛けようとした。

しかし、声を掛けようと少し近づいた瞬間、聞こえてきた声は私を絶望の淵へと落とす一言だった。

 

 

 

…つまり俺は、このクロノスの力を借りて、未来にタイムスリップしろって事で、いいんですね?

 

 

 

何を言っているんだ武?

タイムスリップ…?

それは…つまり……

 

オマエモ、ワタシノマエカライナクナルッテコトナノカ?

 

「…主人…ゴ主人!!」

 

「…ハッ!何だゼロ。」

 

武が言った一言で、目の前が真っ暗になってしまった私に、近くにいるゼロが声をかけてくれる。

 

「何ダジャネーダロ!ドウスルンダヨ!!」

 

「…どうするとは?」

 

必死な表情でゼロが私にそう言うが、私にはゼロが何を言っているのか私には分からない。

 

「止メネーノカヨ!」

 

そうゼロが言ってくれるけど、何故そんな事を聞くのだろうか?

 

「……どうして止める必要があるんだ?やっぱりアイツも、今までの奴らと同じ私の前から消えるんだ。それならそれでいい。」

 

「……!!!」

 

ドゴッ!!

 

私の口から出た言葉を聞いたゼロが、行き成り私の顔を殴りつけた。

その拳を受けて、私は思わずよろけてしまう。

 

「何をするんだ!!」

 

頭に血が上ってゼロに掴み寄ろうとするが、行動する前にゼロが叫ぶ。

 

「ア゛ァ!?何ッテ意気地無シデ、嘘付イテイルゴ主人ヲ、正気ニ戻ソウトシタダケダ!」

 

「何だと!?」

 

「ゴ主人ノ気持チッテ奴ハ、ソンナモンダッタノカヨ!!サッキオレニ言ッタ言葉ハ、嘘ジャネーダロ!誇リニ賭ケテ手ニ入レルンダロ?武ヲ!ダッタラ、相手ノ事情何カ無視シテ、力ズクデモイイカラ、手ニ入レルクライノ気持チデイケヨ!ジャナイトキット後悔スルゾ!!今ハマダ、手ヲ伸バセバ届ク距離ニイルンダ。ダッタラ見栄トカ、恥ナンカ気ニセズ伸バセバイイコトダロ!」

 

セロの叫びに、武の一言で真っ暗になってしまった視界に、ほのかな光がさしたような感じがした。

そしてその光によって、私の想いはまた燃え上がる。

 

「………そう…だよな。私がそう言ったんだもんな。誇りにかけて武を手に入れると…。」

 

「ソウダヨ。ッタク手間ヲ掛ケサセヤガッテ…シッカリシテクレヨ、ゴ主人!」

 

私の言葉を聞いて、“ヤレヤレだぜ”と言いたそうな動作をするゼロ。

それを見て、私は苦笑してしまった。

そうだ。

何目の前を真っ暗にしているんだ。そんな事をしている場合じゃない。

さっき目の前が真っ暗になったせいで、その後の会話は聞いてなかったし、そもそもどうして武が未来へタイムスリップしなくちゃいけないかは知らない。

というか、そんなものもうどうでもいい!

 

ただ私はアイツを手に入れたい。

ずっと傍に置いときたい。

ずっと…ずっと…私と一緒にいて欲しい。

 

だから…

 

「ちょっと待ってもらおうか!!!」

 

逃がさんぞ武!

 

武side

 

「…おいおい。居たのかよ。エヴァ…」

 

俺はこっちに寄って来るエヴァの姿を確認して、苦笑してしまう。

こんなに近くまでエヴァが着ていたのに気づかないなんて、よっぽど俺は神様の話に動揺していたらしい。

そんな事を思っていると、エヴァは俺に触れるぐらいまで近づくと、改めて俺に言ってきた。

 

「何私の許し無く、何処かへ行こうとしているんだ?」

 

「いや…エヴァはん。そもそも許しを請う必要あるn…」

 

「龍牙は黙ってろ!それかゼロといちゃついてろ!」

 

「ソーダゼ。ソレニ龍牙。オ前モダ。私ノ許シ無ク、何処ニ行クツモリダ?」

 

「いやゼロ?ちょっと落ち着いてくれんか?…頼むからその手に持っているナイフ、下ろしてくれんか?後、目が獲物を狩る目になっとるんやけど…」

 

俺の事を弁護してくれた龍ちゃんが、ゼロに詰め寄られて顔が引きつっていた。

でも…気持ちは分かるかな。俺も今エヴァに睨まれて怖いし、それに今のゼロマジで怖いもん。

人形の癖に目が反転してる。…魔眼でも発動したんだろうか…う~ん謎だ!

 

「おい聞いているのか!?」

 

「あ、わりぃ…。あまりに展開が急すぎたから、ちょっと現実逃避してた。」

 

近くに居たエヴァにそう言われて、改めてエヴァへ意識を向ける。

どうやら現実からは逃げる事は出来ないみたいだ。

 

「いやソレはこっちの台詞だろ?ちょっとしか聞き取れなかったが、未来にタイムスリップするらしいな?一体何がどうなったらそんな事しなくてはならないのだ!!説明しろ!」

 

「あーいやーそのーどうやって説明したもんかな…。えっと神様?俺どうしたらいいんでしょうか?」

 

”神様だと!?”と俺の前で驚いているエヴァはとりあえず置いといて、神様に俺は助けを求めた。

すると、神様はしばらく考えた後、うんうんと頷いて答える。

 

「そうじゃの。いっその事お前のことを全部話してしまったらどうじゃ?」

 

「はっ?えっ…でも話していいんですか?こういうのって普通話したらいけないんじゃ…。」

 

一瞬神様が何を言っているのか分からなかった。

けど、すぐその意味が分かると、神様に俺はそう質問をする。

しかし、俺の質問がおかしかったのか、少し驚いた表情をしながら神様は答えてくれた。

 

「何を今更。もしダメなら、龍牙が知っている時点でもうだめじゃよ。それとも武はこの子の事を信用してないのか?」

 

「いや別にそんな訳じゃ…」

 

神様にそう言われて俺は口篭ってしまった。

正直に言えば、俺はエヴァの事をもう信用している。そもそも、原作の時から好きなキャラだったし、その考え方とかもいろいろ共感していた。

そしてそれは、こっちの世界で本物と出会った時も変わらなくて、むしろさらに印象が良くなったと言えると思う。

でも…そんなエヴァを、俺に巻き込んでいいのか?

おそらくこれからも色々な事に巻き込まれてしまうだろう。

その中には、最悪命を懸ける場面も出てくると思う。

だいたい、この世界に来た時にもらった解呪の力は、エヴァに人として幸せになってほしいと思ってもらった力だ。

そんな事を思っている俺が、なるかもしれない危険にエヴァを巻き込むのはどうかと思う。

そう思うと…言えない。

それに俺の秘密を知ってしまったら、きっとエヴァの事だ。文句を言いながらも俺の問題に付き合ってくれるだろう。

そんな事になるなら俺は…

 

「私は武の事を信頼しているぞ。今そこにいる神?がいる事といい、その神にそう言われても悩んでいる事といい…それはおそらくとても重要で危険な事なんだろう。だったら余計に話して欲しい。どうせ武が嫌だと言っても、お前に関わるつもりだったんだ。話してくれ。……それとも武は、本当に私のことを信用してないのか?」

 

俺の考えている事を、遮るかのように話すエヴァ。

その目には、少しだけ涙が浮かんでおり、それでいて真剣な目で俺を見つめてくる。

…それを見てしまった俺は、もう選択肢が一つしかない事に気がついてしまった。

 

「はぁ~。お前そんなキャラじゃねーだろ。なんだよそのデレっぷり…ツンが一個もねーぞ。」

 

頭に手を置きながら俺がそう言うと、エヴァは少し顔を赤くしながら答える。

 

「うるさい。こうでも言わないと、お前話す気にならないだろうが!…それに素直になるって決めたんだよ私は。武の前ではな…。」

 

「ったく。…負けたよ。」

 

降参とばかりに俺は両手を上にあげると、エヴァにそう言う。

するとエヴァは嬉しそうな顔をしながら、さらに俺に詰め寄った。

 

「!!なら教えてくれるのか?」

 

「ああ。ただしこれから言う事は、正直信じられねーことだと思うけど、先に言っとく。俺の頭がおかしくなった訳じゃねーからな。」

 

俺はエヴァにそう言うと、今までの事。そして俺が何者なのか。そのすべてをエヴァに説明するのだった。

ちなみに、さっきまで龍ちゃんに迫っていたゼロも、いつの間にか俺の近くに来ていた。

龍ちゃんは………しばらく起き上がる事はできなさそうだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・

 

「なるほど。だったら私もお前達といっしょにタイムスリップする」

 

俺の話を聞いた後、最初にエヴァが言った言葉がこれだった。

 

「いやちょっと待てよ。今説明しただけで本当に信じたのか?」

 

普通なら信じられない事を言った俺の事を簡単に信じたエヴァに対して俺は驚いていた。

特にエヴァは人を簡単に信用する奴じゃない。

それは、今までの経験からきている所があるのだろうけど、別に悪い事じゃ無いと思う。

そんなエヴァがこうも簡単にこの話を信じる事が俺にはどうしても信じられなかった。

するとエヴァは、俺の考えている事なんかおみとうしとばかりに、腰に手を当てて説明してくれた。

 

「フン…まぁ普通なら信じないだろうがな。だがここに居る神様といい、精霊といい。お前の言っている事をすべて肯定しているようなものじゃないか。いくら疑り深い私でもな、こうまで目の前に証明するものがあれば、納得せざるおえんだろ。」

 

「確かにな…」

 

そう言われてみれば確かにそうだ。

だって今ここに神様がいるんだもん。

これ以上の証拠は無いだろうな。

 

「で?」

 

「で?とは?」

 

「本当に俺についてくるつもりなの?」

 

「当たり前だ。私は嘘つきじゃない。」

 

「何時も言葉と言動があってないくせに?」

 

「うるさい。それは………そんな事はどうでもいいだろ!行くったら行くんだ!」

 

おい。自覚があるなら、それどうにかしろよ。

っとまぁそれは置いといて。

 

「真面目な話し無理だろ。」

 

「何故だ!!」

 

「それは……クロノスどうなんだ?エヴァは行けるのか?」

 

「えっ?あっ…私のこと忘れてなくて良かったなの。えっと……無理なの!」

 

すいません。殆ど忘れてました。思い出したのも、エヴァと視線を外した時に、視界に入ったからです。でもやっぱり無理か。

正直その答えは想像が出来ていた。

けど、エヴァからしたらそんな事は認められる訳が無く、クロノスに詰め寄っていた。

 

「無理なの!…じゃないわ!何故なんだ、理由を言え理由を!」

 

「それは、貴方には代償を肩代わりするモノが無いからなの。それに…貴方は“真祖の吸血鬼”種族として分けるなら“魔族”になるんだけど、その場合普通よりも代償が多くなってしまうからなの。…古来より、“悪魔”…“魔族”を呼ぶ為に生贄を用意したって話があると思うけど、それは“魔族”を此方の世界に呼ぶ為の代償を生贄に肩代わりさせる為なの。今回の事だって、タイムスリップって言うよりは、時間を跨いだ召還に近い感じなの。いくらなんでも、そんな大きな代償を肩代わりするモノなんて創れないの。」

 

「そんな…」

 

それを聞いてその場で膝を付いてしまうエヴァ。

でもそこで俺は、ある事に気がつく。

 

(あれ?だったら俺がこの場でエヴァを人間に戻せば、大丈夫って事なのか?)

 

そう思いつくと、その考えをお見通しのように神様から念話が届く。

 

(それは無理じゃな。)

 

(どうして?)

 

(まぁさっき説明したように、人以前に時渡りを行うには代償が必要なのじゃが、お主は“解呪”龍牙は幻獣としての特性でそれを何とかしておるのじゃ。さすがに今この場面でエヴァ様に“カシオペア”みたいな物を造れん。あれは魔法だけでできている訳じゃないからの。それに、そもそも何故エヴァが、真祖の吸血鬼になれたか…。その理由は、彼女自身にその素養があったからじゃ。つまり、人より闇の素養が大きかったんじゃ。普通なら人から魔族になるなど、ありえんことなのじゃ。しかしたまにこうして、それを成功してしまうだけの器と、素養があった者が生まれる。それがエヴァじゃ。だから、たとえ今お主が人に戻した所で、普通の人と同じぐらいの代償で、すむようになるまでは、かなりの時間がかかってしまう。その時間は、流石のワシでもわからん。すぐかもしれんし、何十年かかってしまうかも知れん。しかも、数日で済むと信じ、人に戻したとして、もしそうでなかったら、どうするつもりなのじゃ?嘆かわしい事だが、吸血鬼と言うだけで、エヴァは世界中から狙われておる。その時たとえばエヴァとかが、人だと言っても、それを信じる人はいるのか?もしかしたら、好都合と思われ、逆に殺されてしまうかもしれん。それでもいいと言うのかお主は?)

 

(……それはダメだ。いいわけない!!)

 

(だったら辛いじゃろうが、ここは我慢するのじゃ。エヴァが吸血鬼ならまたきっと出会える。原作の舞台である、あの麻帆良学園でな。)

 

神様にそう諭され、俺は視線を目の前に向ける。

そこには、クロノスに何か方法は無いのかと聞いているエヴァがいた。

 

意地っ張りで、わがままで、素直じゃなくて、たまに抜けてる所があって、でもそれ以上にやさしくて、笑うとかわいいエヴァが…。

そんなエヴァを、みすみす不幸な目に合わせたくない。

俺は決心してエヴァの肩を掴むと、此方に顔を向けさせる。

 

「な…なんだ?いきなり…」

 

「エヴァ。聞いて欲しい。」

 

「嫌だ。聞きたくない」

 

俺の顔を見て、俺が何を言うのか気付いたのか、顔をそむけて俺の言葉を否定する。

 

「いいから聞いてくれ。…俺はお前を連れて行くことは出来ない。」

 

「そんな事、認めない。」

 

そっぽを向いたエヴァの顔をもう一度俺の方に向けて話すが、すぐさま同じように顔をそむける。

 

「…本当に悪いって思ってる。急に居なくなるんだもんな。…でもさ、方法が無いんだ。仕方が無い。」

 

「そんなはず無い。私に少しでも時間をくれれば、きっと一緒に行ける方法が見つかるはずだ!!だから、もう少し時間をくれ!」

 

「エヴァ!本当は分かってるんだろ?」

 

俺は、強めに言葉を発する。

すると、その声にビクッ!っと反応し、その後すぐさま、フルフルと小さな体を震わして、エヴァが叫んだ。

その目に、一杯の涙を浮かべて。

 

「……なら。なら認めろとでも言うのか!?一緒に行けないって!!ふざけるなよ!私はそんな事絶対に認めないぞ!」

 

「すまない。…その代わりといっちゃなんだけど、俺と約束しないか?」

 

「約束…だと?」

 

“約束”と言う言葉に反応して、先程まで涙を流しながら取り乱していたエヴァが一旦落ち着く。

 

「ああ。俺がタイムスリップする終着点は、ここから約15年後の世界だ。そして俺は、旧世界の麻帆良学園という場所へ行く事が決まっている。そこで再会する約束をしよう。」

 

「そんなにも待てるか!!それに…言葉だけでは到底信じられん。」

 

「いや…そう言われるとなぁ…。そうだ!ならこれをやるよ。」

 

そう言って俺は、懐から銀の指輪を取り出す。

これは旅の途中で、暇になったので、手遊びとして作った指輪だった。

しかし、最初こそ遊び程度の物だったのだが、途中から妙に熱が入ってしまって、細かな細工はもちろんの事、魔法媒体になるうえに、”紅き翼”に渡したリングと同じように、広範囲の念話も出来る。

それともう一つ。実験として魔力を溜めておけるかどうか、実験した指輪でもあり、その結果は見事成功。

魔力の貯蓄が出来る指輪になったのだ。

 

その指輪をエヴァに渡す。

 

「これは…指輪?」

 

「ああ。俺が作った特製の指輪だ。色々機能があるから、詳しくは一緒に渡す紙を見てくれ。これは絶対俺が約束を守ると言う証だ。…これを持って待っててくれないか?」

 

そう俺が言ったが、エヴァは何故か指輪をじっと見たまま、固まっていた。

しかもよく見ると、顔が赤い。

えーっと…もしかして俺やっちまったのかな?

その…フラグ的な意味で。

 

「あっ…やっぱり別の…。」

 

「………こんなの貰ったら信じるしかないじゃないか。ずるいな武は…。わかった。」

 

あーダメだ。今更返して別の物を渡すとか言えない。

…意気地無し?

だったらやって見ろよ。嬉しそうにはにかみながら、両手でギュッと、指輪を握り締めてるんだぜ?

そんなエヴァから取り替えせる奴なんかいるもんか!!

ロリコン?

………何かもう言われ続けていて、諦めそうだよ。流石に今回は、そう言われても仕方が無いと思うしさ。

 

「だたし!」

 

「はっはい!」

 

行き成り強くそう言われて俺は思わず直立不動になってしまった。

するとエヴァが、息が掛りそうなぐらいまで、顔を近づけると、俺の眼を見ながらこう宣言した。

 

「信じると言っても、私は気が長い方じゃないからな。待つのに飽きたら、こっちからお前を迎えに行くぞ。」

 

「いや…おとなしく待ってた方が…」

 

「行・く・か・ら・な!」

 

「あー…もう好きにしてくれ。」

 

…俺って押しに弱いなぁ。

でも、なんだかとっても魅力的だった。

そう言えば、アリカ姫の時にもこんな様な気持ちを感じた事があったっけ?

後の時は、憧れだと思ってたんだけど…違うのかな?

それとも、今さら俺はエヴァに憧れているとか?

…まさかね。

 

エヴァに詰め寄られて少し顔を赤くしながらそう思っていると、一部始終を眺めていた神様から声がかかる。

 

「話はまとまったようじゃな。…さて、もうそろそろ夜が明けてしまう。人が起きる前に向かった方がいいじゃろう。」

 

「そうですね…。龍ちゃんそろそろ行くよ。」

 

神様にそう言われて、俺はゼロと話していた龍ちゃんを呼ぶとエヴァ達から少し離れる。

 

「準備は出来たなの?それじゃ行くなの~~!」

 

ちょっとテンション高めなクロノスが出発の合図をすると、俺達はキラキラした何かに包まれる。

 

「んじゃゼロ。また逢う日まで元気でな!」

 

「オウ!龍牙モ元気デナ。……浮気スルンジャネーゾ。」

 

「ははは…いってくるわ!」

 

「返事シネーノカヨ!!……イッテラッシャイ。」

 

お互いに笑いあいながらそう言いあう二人。

それにしても龍ちゃん、もう尻に敷かれてるんだ。

…詠春さんとナギの姿がダブって見えるよ。

 

「武!…今度逢った時。…その時は、ちゃんと返事させてもらうからな!」

 

「あーそのーなんだ。……別ニ気ニシナクテイイヨ?」

 

「バカ…。私が気にするのだ。…待ってるからな。」

 

どうやら俺は完璧にエヴァにフラグを立ててしまったらしい。

しかも、どう考えても結婚まで行ってしまうぐらいのフラグを…

あーどうすっべかなぁ…。

ま、とにかく…。

 

「あぁ…。じゃぁ元気でな。行ってきます」

 

「…いってらっしゃい。」

 

こうして俺は、エヴァと再会の約束をして、この時代を旅立った。

次麻帆良学園で再会するのを楽しみにしながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでゼロ。お前のその腕についている物は何だ?」

 

「コレカ?コレハ龍牙ノ毛デ編ンダ、特製ノミサンガダ。」

 

「ほう…。」

 

「ソノ代ワリニ、龍牙ニハ、俺ノ髪ノ毛ヲツカッテ編ンダミサンガヲ渡シタゼ。…ゴ主人ハ何ヲ武ニ渡シタンダ?」

 

「………しまったぁぁぁ!!!何も渡してない!!」

 

「オイオイマジカヨ。アイカワラズ、ドッカヌケテンナ、ゴ主人ハ…」

 

「ちょ…待ってくれ!ええいクロノスは何処だ!神様は何処だ!もう一度ここに武を呼び戻してくれーーーーー!!!!!」

 

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