我拳は銃なりて   作:秋華

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投稿遅くなりまして申し訳ありませんでした。

えーしばらくの間入院してまして、PCが手元になかったんですよね。
家はノートでは無いので…。

ですが今日から復帰させてもらいます。
いろいろたまったものがあるので、更新は遅くなると思いますが、頑張って続けていくので応援よろしくお願いします。


第三十話:人とは違う女の子

あの後、宴会は昼ごろまで続いていた。

他の皆はありえないとでも言うかもしれないが、これでも大人しい方だ。

何せ大戦中、俺達“紅き翼”のメンバーでやった宴会なんかは、寝ずに三日間宴会を続けていたのだから。

それに比べると…ねぇ?

 

だから宴会自体は、何も問題無いのだが、それ以外で一つ心配な事があった。それは明石教授の仕事についてだ。今日は確か平日だから、大学も学生であふれているだろう。それなのに宴会していて大丈夫なのだろうか?

そんな事を思っていたが、どうやらその心配は無いらしい。

元々、夕子さんが帰ってくると連絡を受けてから、昨日から一週間程休みを貰っていたらしい。

正直そんなに貰えるのか?なんて思ったりしたけど、ここの所休日を返上して働いていた為、その振替の意味合いもあるらしい。(なんでも、裕奈ちゃんが、夕子さんが帰ってきたら旅行に行きたいとわがままを言ったのが始まりらしい。)

なので、昼まで宴会を続けていても大丈夫だったみたいだ。

それなら俺達も、家族水入らずの所を邪魔したら悪いと思い、宴会が終わった次の日にでもここを離れる心算だったのだが、ここで“待った”をかけたのが、誰であろう旅行を希望していた裕奈ちゃんだった。

裕奈ちゃんからしたら、俺は歳の離れたお兄ちゃんで、すでに家族の一員になっていたらしく。ここを離れると言ったら、思いっきり泣いた。まるで魔法世界で別れたアスナちゃんみたいに。いや、むしろそれよりもひどかった。

何せ、泣きながら俺の服を掴み、泣き疲れて寝てしまった後でも、ずっと服を離さなかったぐらいだから。

その姿を見た龍ちゃん達は“またか…”って呆れて、夕子さんは“いっそこのまま裕奈のお婿さんになればいい”と冗談なのか本気なのか分からない事を言っていた。

明石教授も“この年でもう裕奈を嫁に出す事を考えないといけないとはな…。だが武君なら問題ないかな。僕も武君の様な息子がいるとうれしいし…”なんて、もうすでに嫁にやる父親の気持ちになっていた。

好意を寄せられることは嬉しいけど、とりあえず明石夫妻はいろいろと自重して欲しい。

まだ俺は、結婚なんて考えていませんから。

 

とまぁ、そんな事もあり、結局明石教授がとった休みの一週間は、ずっと明石家に厄介になっていた。正直、麻帆良に長くいるのは都合が悪いと思っていたので、すぐにでもここを離れる心算だったのに、脆くもその予定は崩れ去ってしまった。でも、そんな俺の気持ちを察してなのか、どうやら明石夫妻は、此処に住んでいる他の魔法使いの人には俺の事を話していないし、話すつもりもないようだ。ただ、この麻帆良を預かる学園長には、さすがに報告をしないとまずいだろうと言う事で、報告したらしいのだが、その報告の時に、“騒ぎを起こさない為にも黙っておいた方が良いし、本人達もそれを望んでいる”と言ってくれたそうで、学園長の方もそれを了承してくれたそうだ。

ただ、その時に“いつでもいいので、一度会う時間を取ってほしい。今は難しいと思うが、次ここに来る時でも構わないので…”と伝えてほしいと言われたそうだ。

まぁ、そんな事を言われなくても、次ここに来るときには会うつもりだったので、それは望むべき事だろう。おそらくその時には、深く麻帆良に関わる事も覚悟しているだろうし…。そんな事を考えながら、今日も今日とて、龍ちゃんと一緒に裕奈ちゃんの遊び相手になるのだった。

 

そして、一週間が経過し、とうとう麻帆良を離れる時がやって来た。

もちろん裕奈ちゃんに泣かれる事を覚悟していたのだが、どうやら前もって明石夫妻に説得されていたのか、涙を浮かべてぐずりながらも、俺から離れて手を振ってくれた。

ただ…その…あれだ。

おそらくと言うか、確実と言うか…夕子さんに吹き込まれたのだろう。

裕奈ちゃんともアレをやった。

封印すると決めていた、指切りげんまんを…。

 

「ゆ~びきりげんまん。嘘ついたら針千本の~ます。ゆびきった!」

 

「えへへ。これでまた、ちゃんと逢いに来てくれないとダメだからね!約束ちゃんと守ってくれないと、私…私…泣いちゃうから…。」

 

「あ~言ってる傍から泣かないで。わかった。わかったから…。」

 

「絶対だからね!」

 

「ほんま、小さい子にモテるな。タケやんは…。」

 

「そうね~。武君のファンクラブの女性って、実は皆子供じゃないかしら?」

 

「あはは…。あり得そうで怖いわ。」

 

「ファンか…。確か武君のファンクラブは、男性が多いって聞いていたけどそれも納得できたよ。一人の男として、彼の行動と心意気にはあこがれるね。」

「あら?貴方もかっこいいわよ?」

 

「えっ…。あーうん。ありがとう。」

 

「はいはい。仲がよろしい事で…。ごちそう様や。」

 

そうして俺と龍ちゃんは、明石家族と別れて、次時渡りをするまで旅を続ける事にしたのだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

旅を続けて早何ヶ月。

俺達はまだ旧世界を旅していた。龍ちゃんが魔法世界から出た事が無かったので、この機会にいろいろな世界を見せてあげたかったのが一番の理由だ。

もちろん、俺も知識や写真でその光景を見た事はあるけど、実物を見るのは初めてなので龍ちゃんの一緒に楽しんでいた。

 

ただ、世界中を回っていると言う事は決して楽しい事だけじゃなかった。

なぜなら、未だに戦争を続けている国があったからだ。

その悲惨さは大戦を経験した俺達でさえも、目を覆いたくなるほどだった。いや、経験しているからこそ、戦争の空しさを知っているので余計なのかも知れない。

だからこそ、何度もその戦争を止めようと思った。

国同士のいさかいを無くす事は無理でも、せめて目の前にある命くらいは助けようと行動した。

けど、いくら魔法世界で有名だとしても、旧世界では俺はただの青年だ。できる事は少なかった。

…そんなある日。

旅の途中で寄ったある村を散歩していると、俺達の目の前で大勢の人が集まっていた。

何をやっているのだろうか?

気になった俺達は、人だかりをかき分けてその中心へと入って行く。

そして俺は見てしまった。

 

その中心で、人達に罵倒を浴びせられ、物を投げつけられている一人の少女の姿を…。

 

「な、何やってるんだお前らーー!!!」

思わず俺は大声で叫ぶと、その少女に駆け寄る。

ひどい…

まさにそうとしか言えなかった。

所々から血が滲み、服はボロボロ。

元々小さな体だが、明らかに軽いと思わせる体重。

おそらくほとんど何も食べていないのだろう。

まるで顔に生気が無く、腕なんかはまるでマッチ棒の様に細く、軽く触っても折れてしまいそうだった。

そんな少女の様子に俺が思わず泣きそうになっていると、周りの人達は口ぐちにこう言い始めた。

 

その子は悪魔の子だ!

 

悪魔の血を引いているんだ!

 

この子が居るだけで町が穢れる。襲われるんだ!!

 

なんでお前もそんな奴の事をかばうんだ!!

 

出てってよ!早くこの街から出てってよ!!

 

悪魔の子?その言葉に、俺は少女に視線を向けて改めて様子を見てみる。

そして、何故この子が悪魔の子と呼ばれているか…。その理由が分かった。

少女の左目が紅く光っていたからだ。

これは…魔眼か?

もしそうだとしたら、この子は人間と魔族のハーフという事になる。しかし、目が紅く光っている事を除けば、他はすべて人間の体だった。つまりハーフなのはまず間違いないだろうが、あくまで人の体に魔族の血が流れているだけに過ぎないのだ。

だったら、普通に生活していれば、魔眼なんてそうそう発動する事は無いと思うが…。

なにせここは旧世界。魔法世界の様にごく身近に魔法なんてものは存在しない。

そうなると、おそらく何かの弾みで、発動してしまったか、自ら発動させたかのどちらかになると思う。

むしろ前者の方が、可能性が高いだろう。

なにせまだそんな歳もいってない子供に、しかも魔法が身近に無い旧世界なんかでは、制御なんてできる訳が無いし、その方法など分かるとも思えないからだ。

でも、そんな事よりも俺が気になったのは、少女の眼に全くの光が灯っていない事だった。

一体どんな事をすれば、こんな目になるんだ。

まるで、すべてに絶望し、それを受け入れている目に…。

こんな子を一人では放っておけない!

そう思った俺はすぐさま行動に移すのだった。

 

「うるせー!!この子よりもお前らの方がよっぽど悪魔だろうが!!大人の癖に、子供をこんな大人数で痛めつけるなんて、それでも人間か!?」

 

な、なんだと…

 

よそ者の癖に…

 

お、おいこいつもまとめてやっちまえ!!

 

そう言って、俺にも物を投げてくるが、物が俺にあたる前に、炎が目の前に起ち上りそれを防いだ。

それをやったのは、龍ちゃんだった。それも、ぬいぐるみサイズじゃなくて本来の姿になって、周りを威嚇している。

 

な、なんだアレは…

 

白い…虎?

 

虎だと?あんな大きな虎居る訳ないだろ!!!

 

「ありがとう龍ちゃん。お前ら怪我したくなかったら道を開けろ。この子は俺が連れて行く。…いいな!?」

 

殺気を纏いながら、俺がそう言うと目の前の人達が“ヒッ…”と声を上げながら道を開ける。

それを見届けた俺は、少女を抱えると、できた道を歩いて行く。その後ろからは龍ちゃんがついてくるのが分かる。

その間、俺の腕の中に居る少女は、まぶた一つ動かさず、ジッと俺を見つめていた。

その瞳に光を映さないまま、まるですべてを諦めているかのように…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

街から離れた俺は、そっと彼女を地面に下した。

近くには川もあるし、ここで一夜明かすのも良いだろう。

 

「龍ちゃん。追手が来る気配ある?」

 

「…いや。無いな。やけどそれは、今の所は…や。もしかしたら、また後から来るかもしれん。まぁ心配せんでも、なんかあったらすぐ知らせるわ。」

 

龍ちゃんはそう言うと、その場に腰を下ろして一つあくびをした。

姿を元に戻してないと言う事は、おそらく龍ちゃんは、追手が来る可能性が高いと思っているのだろう。

俺もその意見に賛成だ。

二・三日くらいは、気を張っておいた方がいいだろう。

さて、とりあえずはこの子をどうにかしないといけないな。

 

「どこか痛む所はあるか?」

 

俺は彼女にそう聞くが、返事は帰ってこない。

それ所か、反応一つしないのだ。

 

「君の両親は?」

 

反応無し。

完全に心を閉ざしているみたいだ。

でもこれは仕方が無い事だろう。あんな目にあったんだし、それに彼女の目を見ていると、どうやらこういった事は何度も経験していると思う。

そうじゃなければ、あんな目になる訳が無い。

 

「そっか…。最初に言っておくけど、俺達は君をどうこうする気は無いよ。龍ちゃん…。あの虎も喋ってるように、俺達はちょっと特殊だからね。たとえ君が普通の人とは違っても、そんな事は全く気にしないから。とりあえず、二三日くらいは、追手の心配もあるし、俺達と一緒に行動した方が、何かと安全だと思う。だけど、もし家族の下に帰るんだったら、行っていいから。あ、でも一応俺達から離れる前に、一声かけてね。じゃないと心配するからさ。」

 

俺は彼女にそれだけ伝えると、野営の準備をする為に、川へ水を汲みに行こうとその場を立つ。

しかし、そこで今まで黙っていた彼女から声がかかる。

 

「何で?」

 

「ん?」

 

「何でそんなに私に優しくするの?同情?蔑み?それとも、やっぱり慰め者として私を囲うつもりなの?」

 

慰み者って…おいおい。

俺はそんなにモテないように見えるのか?

これでも、それなりにモテるんだぞ?…小さい子ばっかりだけど。

……おっと言ってて悲しくなった。

 

「はぁ…。いいか?今君が言った事はすべて違う。慰み者なんてもってのほかだ。唯一かすってそうなのは、同情ぐらいか?でもそれは、人を助ける時に、必ず感じてしまうもんなんだよ。そうだな…。あえて助けた理由を言葉にするなら、“俺がしたかったから”それと、“目の前であんな事をやっている状態で、見なかった事にするほど、俺は人でなしじゃねー”って所だ。」

 

「…そんな事信じられない。」

 

「まぁ…君が今までどんな扱いを受けてきたのか、大方予想がつくから、そう言われても仕方が無いと思う。…が、それでもこれだけは覚えておくべきだ。“あれが人間のすべてじゃない。中にはましな奴もいるってな。”」

 

そう言うと、彼女は何かを考えるそぶりをしながら黙ってしまう。

それを見て、再度水を汲みに行こうと、彼女に背を向けると、彼女がぼそりと呟いた。

 

「…マナ。」

 

「ん?」

 

「マナ・アルカナ。それが私の名前。」

 

「…そっか。良い名前じゃないか。」

 

そう言って俺は、マナちゃんの頭をなぜる。

マナちゃんはこうされる事に、かなり驚いていたが、別にいやだとは思ってないようだ。

俺が撫ぜ終わるまで、ずっとそのままじっとしていた。

俺の勘違いじゃなければ、少し笑った気がした。

 

マナちゃんが少し心を開いてくれた後、俺は野営の準備をして食事を作り始めた。

よっぽど疲れが溜まっていたのか、ご飯を食べた後マナちゃんはすぐ眠ってしまった。

それを見た龍ちゃんと俺は一安心する。

 

「こんだけ食べれば、体に心配は無いだろう。大した傷も無かったしな。」

 

「やなぁ…。にしても、いろいろ世界見て回ったけど、まさかこんな胸糞悪いもん見るとは思わんかったわ。」

 

「だな。もしかしたら、俺達の知らない所でこういう事があったかもしれないけど、実際見るのは初めてだしな。」

 

「そうやな。確かにあの大戦では、何があってもおかしくない状況やったからな…。まぁええわ。とにかく助けられたんやし…。タケやん。最初の火の番はワイがやるわ。今は気持ちが高ぶっていて、寝れそうにないしな。」

 

「分かった。頼むよ。……龍ちゃん。人に絶望しないでくれよ?」

 

「それはありえん。ワイは、あいつらよりも、ええ奴がいっぱいおるって知っとるし、人の気持ちって奴は、ちゃんと変えられるって分かっとるから。…ワイらの夢の為にも、たとえ、人に絶望しても、心の底から人を嫌う事はありえへんよ。」

 

「そっか。そう言ってくれると救われるよ。お休み龍ちゃん。」

 

「お休みや…。」

 

俺はそう言って、毛布に包まって、体を休めるのだった。

 

しばらく経ってから、俺は龍ちゃんと火の番を交代し、一人火を見つめながら今日あった事、俺と龍ちゃんの夢について考える。

“心の底から人を嫌う事はありえへんよ”

そう言ってくれた龍ちゃんの為にも、今自分は何ができるのか、そして俺達の夢をかなえる為にどうすればいいのか?

そんな事をずっと考えていた。

すると、背中から誰かの視線を感じた。

 

「どうした?起きるのにはまだ早いぞ?」

 

そこに居たのは、寝ていた筈のマナちゃんだった。

マナちゃんはそのまま何も言わず、俺の横に腰かけるとじっと火を見つめていた。

そして、不意に呟く。

 

「…夢って。」

 

「ん?」

 

「さっき貴方が寝る前に、あの白い虎と話していた事。」

 

「ああ。起きてたのか。」

 

「信用できてない人の前で、ちゃんと寝れるほど、図太く無い。それに元々私は寝てても人の会話を聞く事ができるから…。」

 

「なるほどね。」

 

マナちゃんの言葉に納得がいった。

最初言った事は、確かにそうだと思うし、もう一つの方は、おそらく物心ついた時から、本当に安心して眠れた事が無い為に身についた、特技なのだろう。

歴戦の兵士達の中では、そう言った特技を持っている人が居ると聞いたことがある。

まだ、小学生に入ったばかりぐらいの子供だと言うのに…。悲しすぎる。

 

「で…。」

 

「ん?」

 

「貴方達の夢って何?」

 

「どうしたの急に…。そんなに気になるの?」

 

「私を助けるなんて、お人よしの人が持っている夢ってのが気になっただけ。後貴方達の正体も教えて。」

 

「いろいろ聞いてくるなぁ…。」

 

「いいから教えて。こんな私を見ても、人と同じように扱うなんてありえないから。気になるの。だから教えて…。」

 

そう言ってくるマナちゃんの目は真剣だった。

ならこちらも正直に話すべきだろう。

どうせこの子は、その内こちらの世界…つまり魔法世界に入って来る事になる。

しかも、表だけじゃなく裏の方まで。

何せこの子は、あの龍宮真名なのだから。

 

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