~ラカンside~
俺様の名前は、ジャック・ラカン無敵の傭兵だ。
最近俺様が強くなりすぎちまったせいか、戦える奴がいなくて暇してた時に、知らない男から声が掛かった。昔からいろんな仕事をしてきたせいなのか、それとも奴隷闘士の頃に培った勘が教えてくれたのかはわからねーが、男が話してきた仕事は今までやって来たどんな仕事よりもやばそうな感じがビンビンときた。
だけど、それこそ俺様が求めていたことじゃねーか。
つえー奴と戦える。そしていっぱい謝礼がもらえる。
…それに、やばそうな感じの他にも、行くと俺にとってかなり嬉しい事が起こる予感がしたんだ。
だからこうして、言われた場所に足を運んでみたんだが…正直落胆した。
俺の勘を信じるなら、この仕事はかなり危険なモノになる。だから、少しでも確率を上げるために人を集めるのは間違っちゃいない。
けどなぁ…。今ここに集められている奴らじゃ、意味がねぇ…。
強さも平均して、大した事が無いし、何よりこいつらの目。
全員が全員、もうすでに仕事が成功した気でいやがる。経験上、こういった目をしている奴らは、多分俺様の邪魔をしてくるだろう。
そう思うと、いくらつえー奴に会えるかもしれないとはいえ、この仕事を受ける気がしなくなっていた。
「…帰るか」
そう俺様は呟き、席を立ち出口に向かうという所で、思わず立ち止まってしまった。
なぜなら、新たに依頼人の男に連れられて入ってきた奴は、人間ではおそらく初めて感じるぐらい最初から“強い”と感じさせる奴らだったからだ。
依頼人の男に連れられてやってきたのは、一見ガキと小さい虎。
だが実際はそうじゃねぇ…。俺様だから分かるんだろうが、なんて力もってやがる。
一目見ただけで分かる。
あの存在感。しかも肩に乗ってる虎まで強そうじゃねえか…。
クククッ…さすが俺様。良い予感ってのはこの事か。…まさかこんな大物が現れるなんてよ。
あーもう我慢できねぇ。戦いてぇ…。
そう思うと、いつの間にか体が動いてそいつに喋りかけていた。
さて、どうやって俺様と戦うように仕向けようか…。
久しぶりにマジケンカできるかもしれねーな。
とにかく楽しみだぜ
~ラカンside終~
~武side~
予定通りにラカンと出会い、なんかいつの間にかケンカすることになっていた俺達は、町の外の荒野まで歩いていた。
そしてある程度、町から離れた所に着くと、龍ちゃんが俺の肩から降りる。
そして元の姿に戻っていた。
「お?お前さん幻獣だったのか?通りで…。小さい虎のくせに存在感がハンパじゃねーわけだぜ。」
「まあな。普通ならワイのこの姿を見せるんは、人ではタケやんだけで、それ以外見せる気なかったんやけど、にーちゃんならええかと思うてな。」
「ははは!そう言ってくれるのはうれしいぜ。俺様の名前はジャック・ラカンって言うんだ。ジャックでもラカンでも好きに呼んでくれ。」
「わかったでラカン。ワイの名前は龍牙や。そっちも好きによんでええで?」(なるほどコイツがタケやんが言ってたラカンか…。…強いな。おそらくワイたちよりも…。)
「さて。ケンカするんだろ?どうすんだ?俺様は二人がやりあった後でもかまわねーよ?」
「いや、それにはおよばねーさ。さっきは龍ちゃんとケンカごしになっちまったけど、俺達はいつでもできる。それに……せっかくの客をもてなさない訳にはいかねーだろ?」
「そやな。……タケやん今さらキャラ変えてもしょせんは三枚目や、あきらめ。」
「おまっ…いいかげんにしろよ?少しは俺にも決めさせろって。」
「HAHAHA…本当にお前ら仲いいな。」
「まあな。」
「たぶんほめらてへんで?」
「!!……まぁいいやともかくケンカしようか?」
そう言うと、俺は気持ちを戦闘状態に持っていく。
殺し合いとかは正直好きになれないけど、ケンカなら別。
俺も龍ちゃんとケンカしてるうちに、いつの間にかバトルマニア見たくなっちまったな。
「お!なるほど、それがお前の本性か。いいねぇ…さすが俺様だ。目に狂いはねえな。だけどいいのか?二人してかかってきてもいいんだぜ?」
「はっ!それはねえよ。相手が一人っていうならこっちも一人でやるのが普通だろうが。ケンカっていうのは対等な立場にあって始めて同じ土俵にたてるんだからな。それに……ケンカはタイマンが一番おもしろい!!」
「ま、そういうことや。心配せんでもワイも後で戦うで。」
「言ってくれるじゃねえか!俺様ほどじゃなくても兄ちゃんかっこいいぜ?もう一度自己紹介させてくれ!俺の名前はジャック・ラカン!…さぁ兄ちゃん名前おしえてくれよ!」
「はは…。ありがとよ。…俺の名前は伊達武。こっちの言い方ならタケル・ダテって所か」
「ハッ!タケルか…じゃそろそろ始めるかタケル!!」
「おう。戦闘開始《オープンコンバット》だ!!」
~武side終~
~全体視点~
最初に仕掛けたのは武だった。
まるで狙撃するかの様な姿勢をして、ラカンに向かって、拳を打ち出して行く
「うお!何だこれ?拳が飛んできやがった。気弾ってやつか?」
「似てるけど違うよ。」
これは銃闘技にある3っつの基本姿勢の内の一つ。
銃闘技『遠距離姿勢〈スナイパー・ポジション〉』
そこから撃ち出されるのは、通称“ガンブレット”という技である。
血液を用いた技で、簡単に言うなら気を使っていない気弾である。
「だけどこんな攻撃へでもねえぜ!!」
そう言ってラカンは、武から打ち出させるガンブレットと次々と討ち落としていく。
「そんなもん。最初から分かってるよ。」
武はそう言って、また姿勢を変える。
今度は、先程とは違い前傾姿勢となり、ラカンの懐目掛けて飛び込んでいく。
銃闘技『突撃戦闘型〈アサルト・ポジション〉』
そこから繰り出される技の名前は、ガン・ダイヴァー。
強く踏み切り、相手に向かって突進を仕掛け、そのまま攻撃する技である。
この技は利点は、このまま攻撃してもいいし、相手の距離を詰めたり接近戦に持ち込んだり、追撃をしかけたり、といろいろ用途があり点であり、単発になりがちな銃闘技の攻撃をつなげる大切な技でもある。
「お!いいねぇこっちに突っ込んでくるか。いいぜ?派手な肉弾戦といこうじゃねえか!!」
武がこっちに突っ込んでくるのをラカンが確認すると、嬉しそうに笑いながらラカンも同じように突っ込む。そして、お互いに拳を振り上げて相手の顔面目掛けて殴りかかる。
ドカァッ!!!
本来鈍い音がする打撃戦なのだが、何故か二人から聞こえてくる音は爆撃音にも似た、音だった。
おそらく、二人の拳から繰り出される力がすさまじい為、そう聞こえてくるのだろう。
普通の人…いや、世間でも強いと言われている人達だとしても、こんな威力は出せないだろう。
「……っ!!いってー!!ラカンわざわざ顔狙うなよ。あとで飯食う時困るんだからよ。」
「へっ!タケルも同じだろうが!おらどんどん行くぜぇぇぇ」
そう言ってラカンは武に向かって連打を浴びせてくる。
「オラオラオラオラ!!!どうしたまさかインファイトできないわけじゃないんだろ?」
すさまじい勢いで、武に向かって拳の連打を浴びせてくるラカン。
その勢いに、最初武も押され気味だったのだが、ラカンにそう言われてちょっと頭に来たのか、すぐさま反撃をし始める。
「なめんな!!」
武がそう叫んで、また姿勢を変える。
その姿は、まるで西部劇に出てきそうなガンマンの構え。
その名も…
『銃闘技〈接近姿勢(ガンマン・ポジション)〉…通称”迎撃防御射撃”』
その姿勢から繰り出される攻撃は、まるでマシンガンの様な拳の嵐だった。
「はははっ!!まさか俺とインファイトでやりあえるなんてな。何時振りだよ。」
「何言ってやがる!まだまだこれからだぜ!!」
武はそう言うと、今でも異常なくらいの拳の連打のスピードを、更に上げる。
今までは本気のスピードじゃなかったと言わんばかりの拳の嵐には、さすがのラカンも対応しきれず、次々と被弾していく。
「ちょ。まて!!ヘブブブブッ…」
想像以上の連打に、さすがのラカンにも焦りが見えてくるが、それでも止まない拳の嵐。
そして、その嵐の勢いによって、この世界でもかなりの巨体であるラカンの体が、しだいに宙に浮かんでいく。
これでは攻撃する事も、武の拳を回避する事もままならない。
そして、チャンスを逃す武では無かった。
その隙を利用して、右腕をまるで拳銃の撃鉄を起こすかの様に振り上げる。
すると、振り上げた右腕からどんどん血の気が引いていき、肌色から鉛色へと変わっていく。
さながら、その色は鉄の色。
「げ!それはちょっとやばくね?」
その右腕の脅威を感じたのか、すこし焦った感じで、そうラカンは呟くが、そんな事を言っても武の攻撃が止まる訳が無く、武はその拳をラカンに向かって放った。
「くらえ!44マグナム!!」
ドコォォォン
まるで銃弾を放ったかの様な音がしたかと思うと、その拳を受けたラカンは遠くへ弾き飛ばされてしまった。
放った武の方と言えば、右腕を上にあげて、その場に佇んでいた。
右腕からは白煙が立ち上り、その異様とも言える光景は、まるで本物の拳銃を撃った後をイメージさせた。
これこそが銃闘技の奥義であり、代表的な技『絶対破壊《アブショリュートブレイク》44マグナム』である。
腕を振り上げ(ハンマーコック)、血液を止めて力を溜める事により、その腕は鉛色に変色し、筋肉がスプリングのように収縮を開始する。そしてそれを解放した時、心臓から送られる爆発的な血液によって筋組織を一瞬にして活性化させ、通常の何倍以上の威力を発揮する事ができるのである。これらの現象の事を、『血液爆発《ブラットバーン》』と言い、これこそが銃闘技を最強と言わしめている源なのだった。
『ブラットバーン』を最大限生かした44マグナムの威力は見ての通り。あの巨体のラカンを吹っ飛ばす程の力があり、通常では考えられない威力。まさに絶対破壊攻撃と言えよう。
ちなみに、先ほど使ったガンブレットや、ガン・ダイヴァーは、44マグナムを習得する為の修練で会得した数ある技の一つに過ぎず、言ってみれば副産物の様なものだ。
ただ、副産物と言うにはあまりにもすさまじい技の数々なのだが…。
これで分かったと思うが、銃闘技とは、血液の力をかりた圧倒的なスピードと、驚異的な攻撃力と破壊力を持った武術なのである。
これは余談だが、武はこの『44マグナム』が好きで、神に銃闘技を覚えたいと言ったのである。
「あれ?綺麗に決まっちまった。あ~これで終りか?」
右腕から立ち上る白煙を、腕を振る事によって消しそう喋る武。
その武の言葉に、今までじっと二人の戦いを見つめていた龍牙が答えた。
「タケやんのマグナム。まともに撃ち込まれたらワイでも沈むで?人やったらあたりまえちゃうんか?」
「いや…そんなはずねぇだろ。龍ちゃんだって分かってるだろ?ラカンは俺達よりも強い。そんな奴が何もせずまともに攻撃を受けたんだ。なんかあるだろ。…それに龍ちゃんも知ってるだろ?マグナムを受けると吹っ飛ぶんじゃなくて、その場に蹲るんだ。…衝撃が貫通するからな。」
そう、先程威力の説明で、ラカンが吹っ飛んだと説明したが、それはマグナムを撃ち込んだ相手が起こす現象ではないのだ。本来44マグナムは、外部からの打撃攻撃なのに、そのあまりの威力故、某忍者漫画でお馴染みの柔拳の様に、内部攻撃に似た効果を持つ技である。その為マグナムを撃ち込まれた相手は、吹っ飛ぶことや、外部に傷ができる事はあまりなく、内部を破壊されその場に蹲ってしまうのが本来起こるべき現象なのだ。
しかし、マグナムを撃ち込まれたラカンは遠くに吹っ飛んだ…。
それはつまり、あの瞬間ラカンが何かしたに違いないと言う事になるのである。
「そやったな。…と言う事はや。ラカンは自分で吹っ飛んだって事になるな。」
「…おそらくな。…!!どうやら、その予想は正解みたいだぜ?…ここか本番って事かもな」
二人がそう喋っていると、いきなり体中に今まで感じた事の無い殺気が武と龍牙ぶつけられる。
二人は、すぐさま殺気が発せられている方を見ると、そこに居たのはマグナムによって吹っ飛ばされて倒れていた、ラカンがいた。
「クククッ…アーハッハハハ…」
狂ったように笑い出すラカン。そしてゆっくりと体を起こしながら、こちらを睨みつけてくる。
その目は先ほどまでの楽しそうな目ではなく、まるで獲物を見つけたような猛獣の目をしていた。
「いいぜ、最高だぜ武よぉ…。まさかこの俺様が、本当に本気でやれるなんてな…。誇っていいぞ?」
「………うわ~。やべーな。なんか変なもんおこしちまったかも…。」
「ていうか、自分で吹っ飛んだからと言っても、あのマグナムまともに撃ち込まれて、何事も無かったように立つなんて、ホントに人か?」
ラカンから発せられる、先ほどとは比べ物にならない威圧感に、思わず冷や汗が出る武。
そして、マグナムをまともに撃ち込まれて、立ち上がった事に驚いている龍牙。
確かに、自分達より実力が上なのは知っていた。しかし、それでもこうしてまともに攻撃をくらって何事も無く立ち上がるラカンに、二人は恐怖すら感じていた。
「いやー確かにタケルの最後の一撃…マグナムだっけか?かなり効いたぜ。とっさに後ろにバックステップしなけりゃ、こうして立ち上がる事も難しかったと思うぜ?それにしても珍しいよな。衝撃が突き抜けるなんて。それに、こんな風に体に突き抜けた後まで残る。…なるほどこれは初体験だぜ。」
そう言って自分の体から煙が出ているのを見て嬉しそうに笑う。
「だがな。俺様も伊達に無敵と言われているわけじゃねーんだよ。これぐらいじゃ倒れねえさ。それに何より、喜びの方が勝って、倒れる気なんてまるでおきねえよ。」
「喜び?」
「ああ。俺様がマジで本気出しちまうと、すぐ相手をつぶしちまうからな。それじゃあ面白くねえんだよ。だけど…タケルここからはマジだぜ?気も全開でやってやる。だからオメーも全力だせ。それこそ俺を殺す気でな!!」
そう言って力を込めるラカン。そこから感じられる威圧感、そして気の強さはさすがバクキャラと呼ばれる男。そこにいるだけで心が折れそうだった。
「………気付いていたのか?」
「…ったりめーだ!さっき気弾っぽいのだって気弾じゃないって言ってただろ?なら純粋な体術で戦っていたって言う事だ。だがタケルから感じた力はそんなもんじゃねぇ!!オラだせよ。じゃないとすぐ終わっちまうぜ?」
「分かったよ。」
自分が力を隠していた事に気付かれて少々驚いた武。
しかし、それは当然だろう。原作でも、楽天的で、いつも適当に戦っている様に見えるラカンだが、その戦闘経験と格闘センスは原作の中で一番なのだから。
だからこそ、武もさっきよりも鋭い目でラカンを睨みつけ、今自分が出せる全力以てラカンを倒す事を決める。…そうそれこそ、ラカンを殺すつもりで。
そんな二人を見ていた龍牙は、すぐさまその気配を察知して、巻き込まれるのと、二人が全力を出せるように、その場から更に外れ観戦する事にした。
それを確認した武は、少し空を見上げ、目を閉じて“ふぅ”と短く息を吐く。
そして、先程の何倍にもなるだろう闘気を体中から発して、こう呟いた。
「闘火薬点火《プライムファイヤード》」
「プライムファイヤード?なんだそれは?」
「…俺の心の火薬に火がついたって事さ。後はもう爆発するしかねーんだよ。」
そう武がラカンに言うと、先ほどまで感じられた闘気の他に、今まで一回も感じさせなかった魔力が武から漏れ出した。
その巨大な魔力によって、武の周りには突風が巻き起こり、武を包む。
それを見て、ラカンは更に獰猛な笑みを浮かべる。
「ククク…はーっはははは…。なるほど、それは言いえて妙だな。俺様も火つちまってるからな。同じように爆発するしかねぇ…いいぜ見せてみろよ。タケルの本気ってやつをよ!!!!」
そう叫ぶとタケルに向かって突進してくるラカン。
それを見たタケルは、自分が本気を出す為に必要となる呪文を唱え始めた。
「オン・フィスト・ガン・ペンスリット
”契約に従い我に従え炎の覇王””来れ浄化の炎””燃え盛る大剣”
”ほとばしれよ”ソドムを焼きし火と硫黄”罪ありし物を死の塵に”
”燃える天空”!!”固定””掌握””術式兵装”………”炎帝”!!」
呪文を唱え終えると武の周りを炎が包みこむ。
それを見てラカンは、突っ込むのをやめ、一度距離をとるためにバックステップをした。
「おいおい…。闇の魔法かよ。まさかそんなもん使えるなんて、さすがの俺様でも夢にも思わなかったぜ。しかもこの威圧感さっきとダンチじゃねえか。ククク…面白くなってきたぜ。」
炎に包まれている武をみて思わずそう呟くラカン。
声とは裏腹に視線はずっと武からそらさない。
一度逸らしてしまえばこちらが負ける。そんな雰囲気が武から漂ってきたからだ。
その時ラカンは改めて、覚悟を決める。
今俺様は、今まであってきたケンカ相手なんか、比べものにならないくらいの男と戦っているのだと。
そして、そんな男と命の奪い合いができる事に感謝しろ…と。
しばらくすると、武を包んでいた炎が真っ二つに横に裂けて、その中から武が姿を現す。
その姿は、さっきとはまるで別人だった。
茶色だった髪の毛は、燃えるような赤。
目の色も赤
体のあちらこちらから炎が上がっており、武の周りは陽炎が出来ていた。
それだけを見ても、武自身かなりの熱量をもっていることが分かる。
ただ、そこに佇んでいるだけでその熱量…、まさにその姿は炎の覇王…”炎帝”名に相応しかった。
「ラカンこれが俺の本気だ。さぁ燃やされる覚悟はできたか?」
「はっ!言ってくれるじゃねえか!!そっちこそ吹き飛ばされる覚悟は出来てんだろう…なっ!?」
そう軽口を言葉にしたラカンは、高密度の気を体に纏い武に突っ込む。武もそれを見計らったように、その場からラカンに向かって突撃を開始する。
そして二人は激突した。
その瞬間、大地は罅割れ、空に浮かんでいた雲はすべて吹き飛んでしまった。
まるで、そこからはもう誰も立ち入る事は許さない。…いや許されないと思ってしまうほど、神秘的な空間が出来上がり、まさに世界が二人を思う存分戦わせる為に創り上げた特別のリングの様だった。
そこから聞こえるのは、大きな爆発音と鈍い打撃音。
ラカンが気を込めた拳を繰り出せば、地面が大きくへこみ
武が拳を撃ち出せば、地面が真っ黒に染まる。
二人が同時に拳を繰り出せば、その衝撃波で地面が割れた。
そんな光景がずっと続いていく…。
いったいいつまで続くのだろうか?
そんな事をふと思ってしまうが、“始まるあるモノは、必ず終わりがある”と言う言葉があるように、決着はもうすぐ傍迄、近づいていた。
「はぁはぁはぁ…ぺっ…へへまったくたのしいぜ。」
口に溜まった血を吐き、笑みを浮かべるラカン。
「ゴホ…ゴホ…俺はいい加減疲れたんだけど」
咳き込んで、血を吐きながら答える武
「けっ。そう言う割には楽しそうな顔してんじゃねーか。もっと素直に生きようぜ?」
「素直だから嫌だっていってんだよ!!」
「つれねえな」
「いっとけ」
二人とももうすでに限界など超えて、立っているのも辛いはずなのに、軽口を言い合いながら二人で笑い合う。
何故こんな場面でも、こんな事が言えるのか?
それはおそらく、負けたくないという強い意志と、少しでも長くこの時間が続くように強がってるせいなのかもしれない。
しかし、彼らの願いは叶わず、決着の時は訪れた。
二人とも限界なのは当に承知していた。
だからこそ、さっきまであれだけ激しい戦いをしていたのに、今は静かにそこに佇みじっと何かを待っている。
すると、そんな時間に我慢しきれなくなったのか?武がラカンに向かって一つ提案をする。
「なぁラカン」
「なんだよ」
「お互い限界も近いことだし、最後の大勝負をしないか?」
「いいなそれ…おもしれぇ…もちろん乗るぜ。」
「決まりだな」
そう言うと、二人は少し距離をとり、お互い右腕に残っている力を集める。
そしてそのまま動かず、じっと決着の合図を待ち続ける。
ズサッ
それはきっと、龍牙が動いた音だろう。普段なら気にならないその音が、二人にはとても大きく聞こえ、そしてそれは、決着の合図でもあった。
二人とも、図ったように同じタイミングで動き出す。そして、先ほどまで溜めていた力を、拳に乗せて一気に解放し、今自身が出来る最高の攻撃を繰り出した。
「オラァ!!ラカンインパクト!!!!」
「いけえぇぇ!!ナパームキャノン!!」
ドゴオオォォォォォン!!!!!!!
耳の鼓膜が破れてしまうのではないか?そう思ってしまうほどの巨大な音があたりに響き渡り、二人が放った拳によって、辺りにすさまじい熱風と、爆煙が広がる。
その瞬間龍牙は、この勝負に決着がついたと思い、二人がいるであろう場所へと走る。
そして、その場に着いたとき龍牙が見たものは………。
倒れている武と何とか踏ん張りながら立っているラカンであった。
「えらい派手にやったなぁ。二人とも生きとるか?」
「HAHAHA…あたりまえ…グハァァァ…」
多分大笑いして余裕ぶりをアピールしようとしたんだろうが、下手に大声を出したせいで盛大に血を吐いて倒れこむラカン。
息はあるので生きているだろう。
倒れている武の方といえば、体がピクリとも動かないのであろう、倒れたまま視線だけをこちらを向けて答えた。
「はははっ…なんとかね。…………龍ちゃん」
「なんや?」
「……やっぱり負けたよ。」
「そか」
そう。そっけなく返す龍牙。
だが心の中はまったく別であった。
力の差はあった。
しかも相手は傭兵。
戦闘経験ではどうあっても敵うわけがない。
つまり最初から負けることは分かっていた。
だけど…それでも……
タケやんはきっと勝ちたかったのだろう。
そして負けたことがいっとうに悔しいのだろう。
ワイだって”よくやったやん”の一言ぐらいかけてやりたい。
でもそんな言葉かけた所で余計悲しくなるだけや。
だからこそ今ワイができる事はそばにいてやる事。
そしていじけてしもうたらケツひっぱたいて前に進ます事ぐらいや。
でも…
そんでもなぁ…
これだけは心の中で言わせてくれんか?
”ほんまええ勝負やった。……お疲れさん”
こうしてラカンと武の勝負は、ラカンが勝者となり幕を下ろした。
武がネギまの世界に来て3ヶ月…
初めて本気で勝ちたいと思い
そして初めて負けて悔しいと思った日であった。
今日はここまでです。
おそらく、明日とかにまた投稿すると思います。
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