ラカンとの勝負から一夜明けて、俺と龍ちゃんはとりあえずお腹がすいたので、自分たちが泊まっている宿の食堂へ行き、少し遅めの朝ご飯を食べていた。
……なぜか、昨日ケンカが殺し合いまで発展したラカンと一緒に。
「……なんでラカンと一緒に飯食べてんだろ。」
「ワイもそう思うわ。しかもさも当然のようにいるから、今の今まで気付かんかったけどな。」
そう言って二人でため息をつく。
しかも、俺達が泊まってる宿は教えてないはずなのだが、どうしてここがわかったのか?
本当に謎だらけだ。
「がっははは。気にするなよ。」
「いや…。俺たちじゃなくて、お前が少しは気にしろよ!」
ラカンの言葉に、俺はツッコミを入れて、更に深いため息をつくのであった。
すると、ラカンはまた大笑いすると、急に真剣な顔つきになって、俺達に語りだした。
「いや、実際な話だな。俺様は、タケル達の事、かなり気に入ってんだよ。それに…、勝負はまだついてねぇからな。」
「は?勝負は、俺の負けで決着がついただろ?」
「負け…負けねぇ…。ありゃーどっちかっつうと、引き分けだ。」
「引き分け?」
「ああ。確かにあの時、最後まで立っていたのは俺様だがな。それは、タケルの技のおかげでもあるんだよ。あの時、俺は地面に叩きつけるように殴ったが、逆にタケルは掬い上げるように拳を放った。しかも、タケルの拳は衝撃が貫通するからな。だから立ってたと言うよりも、立たされていたって言うのが正確なんだよ。…ま、これでも納得できねーなら。勝ちは貰っておいてやるよ。」
そう話していたラカンの顔はとても真剣で、俺が知識として知っていたラカンとは、まるで別人のような感じがした。いつもこんな感じだったらバカとか言われないんだろうな…。
「そしておいてくれ。負けるのは悔しいが、おかげで自分の未熟さが分かったしな。」
「俺様も今度こそは、圧倒的に勝つためにも、もっと強くなるならねーとな。いっちょ、新必殺技でも開発するとするかな?HAHAHA!!」
「なーんか、タケやんとラカン一気に仲ようなったな。…なんやワイだけ取り残された感じや…。さみしい…さみしいで…ほんま。」
「……龍ちゃん」
「……タケやん」
「ま、頑張れば?」
「(ブチッ)…お…己は…ええ加減にせいよほんま!!何で今そんな言葉が出るねん!!!慰めてくれるんかと思って、ちょと感動しかけたワイの気持ち返せ!!この三枚目のボケナスがぁ!!!」
「なっ!!…だれが三枚目のボケナスの空気読めないだー!!」
「そこまで言うてへんけど、間違ってへんやろーがー!!」
「表出ろ!!ナパームくらわしたる」
「昨日の怪我まだ完全には回復できておらんやろ?……安心しいや。もう一度ワイが寝たきりにさしたるわ!!」
「おっ!ケンカまたすんの?俺様も混ぜろ。って言うか昨日龍牙と戦ってねーからまず、龍牙!俺様と戦え!!」
「ええ度胸や。筋肉戦闘バカ!!後悔しなや!!」
本当に俺達はさっきまで、真剣に話していたのか?
そう他の人が、疑問に思ってしまうかもしれないけど、これこそ俺達らしいんじゃないかと思う。
大体、俺にしても、龍ちゃんや、ラカンもそうだけど、こう、真剣な感じよりはこうやってワイワイ騒いでいる方が性に合ってる気がするから。
そんな事を思いながら、俺達は宿から出ていき、昨日ケンカした場所まで、移動しようとするが、そこで男性の声で、呼び止められる。
俺達を呼び止めた男性とは、昨日俺たちに仕事を依頼してきた依頼人さんで、よっぽど俺達を探していたのか、依頼人の額には、大粒の汗をつけていた。
「はぁはぁ…さ…探しましたよ。」
「ん?……あぁ昨日の…」
「そうです。あなた方に仕事の依頼をしたものです。…すいません。昨日はいきなり寝てしまって。たぶん疲れが溜まっていたんでしょうが…今日はちゃんとお話させてもらいますので、一緒に来てもらえますか?」
(なぁなぁ…もしかして昨日のこと気付いていないのかな?)
(たぶんそうやろ。……なんかちょっと気の毒や)
(いやーこれはチャンスだ。下手に気を悪くさせるのはよくねーぜ)
《やったのはお前だけどな|(やけどな)》
「あの…何か?」
俺達が、そう言って小声で相談していると、それが気になったのか、依頼人が首を傾げて怪しんできた。
なので、あわててごまかす。
「!!い…いえ。分かりました。」
「ほ…ほな、いこか?」
「HAHAHA。ほらいこーぜ」
そう言って依頼人をせかす。
すると、依頼人は、多少まだ首をひねっていたが、それ以上俺達に追求する事無く俺達を話ができる所へと案内していく。
小声で喋っている事を聞かれなくて、本当によかったと、俺は胸を下ろすのであった。
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依頼人につれられて、やって来たのは昨日と同じ酒場であった。
ただ、昨日と違うのは俺達以外の人がいない事だった。
「あれ?俺達だけですか?」
「ええ。昨日いた人達は、気付いたらもういなくなってしまっていて…。今から探そうにも時間が足りないので、こうして最初に見つけた貴方方に、依頼を頼むことにしたのです。」
「おう。任せときな。俺様たちにかかりゃどんな依頼も成功したも同然だぜ。」
「おお!!それは心強い。それでは依頼の説明をさせてもらいます。」
依頼人はそう言うと、姿勢を正してあたりを警戒しながら喋り始めた。
「今回の依頼ですが、ある人物達を倒して欲しいのです。」
「倒す?それは相手を負かせってこと?」
「いえ…。できれば殺す…いえしばらくの間動けなくして欲しいのです。」
「ほーう。…それで相手は誰だ?」
ラカンがそう聞くと、依頼人は懐から4枚の写真を取り出して、俺達に見せる。
「こちらの4人になります。」
「なんでぇ、ガキ2人と、ひょろっちい男が2人だけじゃねーか。」
ラカンが写真を見ながら、そう言うが、俺は写真を見た時に、自分の予感が本当に当たった事を知った。
「外見に惑わされてはいけません。この4人は、今世間で有名な”紅き翼”なのですから。」
「誰やそれ?」
「世間で有名な人だよ。…強いって噂の」
龍ちゃんにそう説明する。
つまり俺はこれから原作に介入しろと言う事なんだろう。
更に、依頼人はこの4人の詳細を説明してくれた。
「…”紅き翼”とは、4人で構成されているパーティーの名前です。リーダーの”ナギ・スプリングフィールド”、剣を使う”近衛詠春”、鉄壁の盾”ゼクト”珍しい重力魔法を使う”アルビレオ・イマ”…皆それぞれ強力な力の持ち主です。」
「ふーん。強いってどれくらいなんや?」
そう、いくら依頼人に強いと言われても、正直どれくらい強いかわからない龍ちゃんは、気になっていた事を聞く。
すると、依頼人が話すよりも先に、ラカンが話し出す。
「龍牙。俺様も傭兵やってそれなりに長いんだがな、その“紅き翼”については最近結構話を聞くぜ?傭兵って奴らは、無駄にプライドが高いからな。そんな傭兵達から“強い”って噂れることは、結構できる奴らなんだろう。それともう一つ、そいつら“紅き翼”の名前が噂され始めたのはここ最近だ。…つうことはだ。奴らはそこら辺で噂されている奴らなんかよりも、数倍強い可能性があるだろうさ。」
「ラカン様は、“紅き翼”の事ご存じなのですか?」
「いや、俺様が知っているのは、傭兵の中でその名前が売れているってことだけさ。まさかこんな4人だとは思わなかったけどよ。」
「ん?だったら何で、ラカンはそいつらが数倍強いだろうって分かるんだ?」
「ん?ああその事か。それは結構簡単で、もともとそこまで強くない奴らが、鍛錬なんかして強くなっていくと、ここ最近いきなり噂される事なんてまずありえねーんだよ。もっと前からじわじわと話の話題になるはずだからな。だが、“紅い翼”についてはそんな事は無くいきなり噂されるようになった。と、するとだ。奴らはいきなり現れてその力を見せつけたって事になる。…そんなこと出来る奴らがそこら辺で噂になっている奴らと同等なわけねーだろ?だから数倍強い可能性があるって言ったんだ。」
ラカンの説明に、俺と龍ちゃんは“なるほど”と頷く。
すると、それを擁護するかの様に依頼人の男も話し出した。
「ラカン様の言っている事は事実です。御三方もご存じだと思いますが、今連合と帝国は戦争をしています。そして、彼らは今連合軍に所属しているのですが、ある戦場にて、彼らはたった四人で数十万とも言われた帝国の兵士達の8割以上倒しております。その後も数々の戦場にて帝国側に圧倒的な被害を与え続けているのです。」
「帝国の兵士ってどれぐらいの強さなん?いくら数だけおっても、弱ければそういう事になってもおかしくないと思うんやけど?」
「んーそうだな。もともと帝国ってのは、獣人や亜人なんかの集まりだからな。普通の人間の何倍も力はつえーよ?体力もあるし…。だから俺様の予想では、帝国の兵士一人に対して、大体連合の兵士2~3人分って所か。ま、魔法とか抜きにして、単純な身体能力だけの判断だがな。」
龍ちゃんの疑問にラカンが答える。
おそらく傭兵の仕事で、兵達にもあった事があるのかもしれない。…もしくは戦ったのかも?
本当の所はわからないけど、ともかくそれは的を得ているようで、依頼人の人も否定せず頷いていた。
「なるほどなぁ…。それが確かなら強いな、そいつ等。」
「ええ。しかし彼らはやり過ぎました。…いえ目立ち過ぎたと言ってもいいでしょう。その為こんな依頼が出てくることになったのです。…簡単にですが、これが依頼の内容になります。お引き受けいただけますか?」
依頼人としても、できる事なら早く依頼を遂行して欲しいのだろう。これ以上無駄に時間を潰したくないのか、すぐさまそう俺達に訪ねてきた。
俺としては、この機会を逃す手は無いし、受けてもいいと思う。
そう思って、他の二人を見てみると、どうやら俺と同じ考えの様で、軽く頷いていた。
なら、決定だ。
でも、すべてあっちの思い通りになるのは、つまらないので、ちょっとだけあっちを驚かそうと思う。
どうせ、あっちはばれていないとでも思っているのかもしれないけど、バレバレなんだよね~。
「依頼の内容はわかりました。その依頼お引き受けしましょう。…あなたの上司である帝国のお偉いさんにもそう伝えてください。」
「…なんでしょうか?」
ちょっとの空白があった後、案の定しらを切って来たけど、未だばれてないと思っている所が、俺達を侮ってるって証拠だよね。
「もしかして、ばれてないとでも思っていたんですか?あまり私達を、見くびらないでほしいんですが?」
「………なんの事でしょうか?確かに私は代理人でしかありませんが、別に帝国の人間だとは一言も…」
「せやな。確かにアンタは帝国の人なんて一言も言ってないで?…だけどなぁ。ワイらの実力をまだ下に見とらんか?特にワイなんか、虎やで?匂いで分かるっちゅうねん。どんだけ香水とかで隠したとしても、普段から体に染みついとる微かなにおいまではごまかせんよ。」
「ま、それにだ。いくらそいつらが目障りだとしても、今連合側がそいつらを始末しようなんて考えねーだろ?もったいないし、そこまで状況が見えてない奴はもうすでに死んでるか、そもそも戦争に関わってないだろうよ。だから、今こうしてこんな依頼をしてくる奴なんて、帝国側しかありえねーってことだ。」
「まぁ、理由の方は今二人が言った感じです。でも、先程も言った通り依頼は確かに引き受けました。貴方が帝国の人間だというのもここだけの話にしますよ。だから安心してください。」
「…そうですか。では、お願いします。でも、その前に一つだけ…。私を帝国の人間と知ってなぜ貴方達は、依頼を引き受けようと思ったのですか?」
「簡単な事です。俺達にとって帝国・連合どっちも変わりません。ただ自分の為に…そうですね。しいて言うなら“自身の目的の為にこの依頼は丁度良かった”そう言う事です。」
そうニコッと依頼人に笑いかけると、俺は席を立ち出口へと向かって歩き出す。
それに続くように、ラカンも席を立って俺に着いてきた。
もちろん龍ちゃんは、俺の肩に乗ってる。
その言葉を言った後の、依頼人の顔はおそらくしばらくは忘れないだろう。
あれほど間抜けな顔をした、人を見るのも初めてだしね。
こうして、俺達は最初の依頼にしては、あり得ないほどの難易度である、“紅き翼”討伐の依頼を受ける事になったのだった。