我拳は銃なりて   作:秋華

8 / 41
今度は龍ちゃんの戦いです。
それではどうぞ!


第七話:矛と盾

詠春と武が戦いを始めた頃、ゼクトと龍牙も、先ほどいた場所から離れ、お互いに少し距離をとっていた。

戦いが始まる前の、独特の緊張感の中、ゼクトが龍牙に話しかける。

 

「のう…龍牙。お主そのままで戦うつもりか?」

 

「なんやゼクトはん、気づいとったんかい。」

 

今のこの姿が、仮初めの姿という事に気が付いたゼクトに、少々驚く龍牙。

 

「幻獣の中で、そんな体の小さい者など、フェアリー族以外見た事が無いし、聞いたことも無いからの。と言っても、儂が知らないだけかもしれんが。それに歳を重ねる事に、相手の正体と言うものが戦う前から何となく分かるようになっての。儂の感じた感覚と、今のお主のその姿にはかなりの矛盾を感じているんじゃよ。」

 

「…なるほどなぁ。てことは、見た目そんなんやけど、結構…いやかなり歳とっとるみたいやな。ほんま人間か?」

 

「そうじゃの~。限りなく人から離れた人間と言う所じゃの。魔法の研究のせいで不老になってもうただけじゃ。」

 

「だけって済ますには、事が大きすぎると思うんやけど…まぁええか。それじゃお言葉に甘えて…」

 

そう龍牙が言い、”よっ”っと声を上げて飛び上がる。

すると、先ほどまでぬいぐるみぐらいのサイズだったのが、一瞬にして大人の身長よりも大きな虎の姿となった。

 

「ほう…本来の姿はそんなんじゃったか。思ったより大きい訳じゃないんじゃな。」

 

「何と比べとるんか分からんけど、これぐらいが普通やで?まぁ、ワイは種族の中でも、まだ若い方やから、小さい方やと思うけど。それでも、もうそう大きくなりはせえへん。せいぜい、この体が二倍になるくらいやな。」

 

「それはかなり大きくなると言うのではないか?…ワシも成長薬でも作ってみるかの。」

 

「あーそれ、わざとそういう姿の訳じゃないんや。…そっか。いろいろ大変やな。」

 

「幻獣に慰められるとは…。まぁ良いわ。さて、おしゃべりもこれくらいにして、そろそろ始めるとするかの?」

 

「せやな。時間が足らへんと言う訳でもないやろうけど、せっかくの戦いや、変な邪魔入って欲しくないしな。」

 

龍牙がそう言い終わると、お互いもうお喋りの時間は終わったとばかりに、体から発せられる魔力の量を増やしていく。

ジリッジリッ…と、互いに視線を交わしながら、間合いを詰めていく。

そこには、真剣勝負特有の緊張感と重たい空気が流れていた。

 

「ワイからいかせてもらうでぇ!!」

 

その重たい空気を、吹き飛ばすかのように、先に動いたのは龍牙からだった。

考えてみれば当然だろう。龍牙の真骨頂は攻撃にある。相手が動くのを待つのは性に合わないのだ。逆にゼクトは、戦う前に龍牙が言った通り、守りが得意である。

ただし、それは攻撃を防ぐ事が得意と言うよりも、相手の攻撃の隙をついてのカウンター…つまり迎撃が得意なので、決して相手の攻撃を防ぐ事だけが得意と言う訳では無い。

むろん、それは龍牙も知っている事だが、だからと言って動かずにいたら、それこそゼクトの得意とする状況になってしまう。

なので、龍牙が先に行動したのは最良の選択と言えるだろう。

 

「くらえや!空牙!!」

 

そう叫んで、龍牙は爪を出した前足をその場で勢い良く振る。

すると、その爪から空気の刃が出て、ゼクトに襲い掛かった。

ちなみに、技名を付けたのは武だ。

龍牙も最初、“本当に名前なんて必要なんか?”と思っていたが、今ではかなり気に入っている。

むしろ、技名を叫ばないと、調子が出ないみたいだ。

 

「ほっと。危ないのう。空気の刃といった所か、幻獣はもっと肉弾戦を好むと思っていたのだがの。ほれお返しじゃ。光の矢100本」

 

軽く空牙を避けたゼクトは、返す刀で光の矢を放つ。

その数100本。普通の魔法使いなら、まず簡単に出せる量じゃ無い。

 

「うはーけっこう量多いな~。やけど、これぐらいの速さと数じゃワイには当たらんで?それとゼクトはん。その考えは間違ってないで?普通の幻獣は、だいたいそうや。でもな、ワイの相棒はタケやんやで?武術家の相棒やったら、こんな芸の一つや二つ使えんとな。」

 

そう軽口をたたきながら、迫り来る魔法の矢を前足で払いのけていく。

 

「ふむ。それはすまんかったの。…にしても、大方予想はしておったのじゃが、改めて龍牙よ。お主やるのう。」

 

「当たり前や。でも、ワイの力はこんなもんやないで?これからもっと驚かせたるわ。ま、そんなゼクトはんも、さすがやと思うで?ワイが知るどの魔法使いよりも強いやん。」

 

「あたりまえじゃ。年季がちがう」

 

「その姿でそれ言われてもな…。まぁええわ。」

 

そう二人は和やかに話しているが、二人が繰り出す攻撃は凄まじく、すでに辺りはひどい事になっていた。

地面は空牙によって裂け、魔法の矢によって大小の穴が開く。その中を二人はなんてことの無いように動き回り攻撃していく。

しばらくそんな状況が続いた後、二人はお互いに距離を取りまた最初のように見つめ合う。

 

「さて、準備運動はこれくらいにして、そろそろ本気でいこか?」

 

「じゃの。」

 

今までは本気じゃなかったのか?と言いたい所だが、二人が言うなら本当の事なのだろう。

それを証拠に、龍牙とゼクトの体から先程よりもさらに強大な魔力が立ち上り、それによって突風が巻き起こった。

そんな中、龍牙がニヤリと笑うと、ある言葉を紡ぐ。

 

「いくでぇ…”我名において助けを請わん。その友の名は火の精霊クゥ。我魔力を糧に我に力をしめせ”」

 

そう龍牙が唱えると、龍牙の体を炎が包み、そしてその中から紅く色を変えた龍牙が出てくる。

その姿を見てゼクトは驚く。

 

「なんと!!龍牙は”闇の魔法”を使えるのか?」

 

「”闇の魔法”…ああタケやんが使う魔法の事か?ちゃうちゃう。これは幻獣特有の魔法って奴や。」

 

「そうなのか?初めて聞くのう」

 

「そやろな。これはワイら虎型の幻獣特有って言っても良いと思うで?そもそも幻獣に、人が使うような魔法は存在せんのや。使こうとるのは、人に良く似た奴らだけやろ?他は使わん。やけど、幻獣は、人よりも精霊に近い存在や。そのお蔭で、精霊の力を人よりも強く感じれる。やから魔力を糧に精霊の力を借りて、種族ごとに特有の魔法みたいなもんがあるんや。たとえば竜とかは、それをブレスとかに活用してる。んで、ワイら虎型の幻獣やけど。ワイらは、精霊の力をこの身に宿して戦う。それがこの”赤王”や」

 

「なるほどの。長く生きてきたが、そんな話初めて聞いたわ。にしても…”赤王”とはなかなかカッコイイ名前じゃの」

 

「そう言ってもらえるとうれしいわ。名前付けたのはタケやんやけどな、ワイ自身結構気に入ってるんや」

 

ゼクトに名前を褒められて、嬉しそうな顔をする龍牙。それを見ていたゼクトは、”こうも人間らしい虎がいるとは…おもしろいのう”と心の中で思ったとか。

 

「さて、勝負を中断して悪かった。続きを始めるかの?」

 

「望む所や!!!」

 

そう言って龍牙は最初と同じように、ゼクトに向かって駆け出す。

その姿を見たゼクトは、先程とは違い、相手が攻撃をする前に迎撃しようと詠唱を始めた。

 

「”ヴシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト”…”母なる水より生まれし小さな子供達よ””我に集い形成せ””その小さき姿は互いに寄り添い””列なる事で荘厳なる姿となし””すべてを呑み込む海となれ””大海嘯”」

 

ゼクトの詠唱によって生み出された大きな津波が、龍牙に襲い掛かる。

 

しかし、そんな大きな津波を見ながらも龍牙は、焦ることなく、むしろ笑みを浮かべていた。

 

「甘いでぇ…そんな水なんかで、ワイの炎消せると思うんか?オラァ!!かき消えんかい!!炎爆波!!」

 

ゼクトの魔法に対し、龍牙は右前足に火の魔力を集中させ、アッパー気味に振り上げ、前方の水に対して一気に爆炎を放出した。

すると、前の水は一気に蒸発し、ぽっかり穴があく。すかさず、龍牙はその穴に飛び込み一気にゼクトに迫る。

その光景にゼクトは驚くが、すぐに気を取り直し、次の魔法を撃つ。

 

「あの水の量を蒸発させるじゃと…これは驚きじゃ。じゃが、おかげ出てくる場所が丸見えじゃの。ほれ、”雷の暴風”」

 

この瞬間、ゼクトは自分の魔法が当たると確信していた。

…が、次の瞬間龍牙の体は煙のように消えてしまった。

 

「むっ…上か?」

 

それを見て一瞬驚愕と言った表情をするが、戦場で思考が停止してしまうのは、一番危ない事だとゼクト自身経験で分かっている。

なので、未だ気持ちが落ち着かないが、すぐさま周りに気を張って龍牙を探す。

すると、上空からとてつもない大きな気配を感じる。

すぐさまゼクトは上を見上げると、そこには大きな火の玉が自分目掛けて落ちてきているではないか。

 

「くっ!!」

 

間一髪と言った感じで、何とか避けてその場を離れると、地面に落ちた火の玉は、周囲を燃やしつくし、一瞬にして炎が広範囲に舞い上がった。

そしてその中心には、先程直撃を食らったはずの龍牙がいた。

 

「あれ?今のは決まったと思うたんやけどな…」

 

「正直危ない所じゃったわ。あの身代わりに気付かんかったら、直撃しておったわ。」

 

額に流れる汗を拭いながら、ゼクトは答える。

すると、龍牙は心底驚いたと言った表情を見せた。

 

「うわ!!”陽炎”見破ったん?そらあかんわ。」

 

「ほう。”陽炎”と言うのか先ほどの技は、いい技じゃの。」

 

「ま、あそこまで出来たんは半分ゼクトはんのおかげや。ゼクトはんが水だしてくれたもんで、ええ感じにつくれたんや。ありがとはん」

 

陽炎

それは、龍牙が赤王に成った時だけ使える技である。

本来なら、龍牙から発せられる熱によって視界を歪ませ、蜃気楼を起こし、あたかもそこに自分がいるように見せかける技なのだが、今回はゼクトが最初放った水を蒸発させることで、霧を造りだしいつも以上に分かりにくくしたものである。

その為、龍牙はゼクトに挑発の意味合いも込めたお礼を言ったのだが、ゼクトには効果は無かったようだ。

まぁ、龍牙本人も乗ってくれたら儲けモノぐらいにしか考えていなかったので、特にショックを受ける事は無かったのだが…。

しかし、両方とも今の邂逅で一つわかった事がある。

それは、このままでは消耗戦になってしまい、しかも勝敗はどっちに転ぶか分からないぐらい拮抗してしまうと…。

なので、ゼクトは少しでも自身の勝率を上げる為に考えた結果、ある方法を思いつく。

それは、ゼクトにしては珍しく、伸るか反るかの懸けの様な方法だった。

 

「そのお礼は嬉しくないのう。しかし、これではらちが明かん。どうするかの」

 

「その意見には賛成や。お互いにまだ手の内はすべて曝してないとは言え、同じ事の繰り返しやろ」

 

「まぁやりようはあるか…”ヴシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト”…”母なる水より生まれし小さな子供達よ””我に集い形成せ””その小さき姿は互いに寄り添い””列なる事で荘厳なる姿となし””すべてを呑み込む海となれ””大海嘯”」

 

そういったゼクトは先ほどと同じ魔法をまた唱え龍牙に向けて放つ。

それに対し、龍牙はゼクトの行動に少し疑問を持ちながらも、とりあえず目の前に迫っている魔法を迎撃しようと力を溜めた。

 

「なんや?また消されたいんか?爆炎波!!」

 

その結果、やはり先ほどと同じように、自分の近くだけ水を消す事に成功し、すぐさま攻撃に移れるように目の前に居るはずのゼクトを睨みつける。

…が、もうそこには、ゼクトの姿は確認できず、龍牙はすぐさま気配を探る。

すると後ろの方から詠唱の声が聞こえてきた。

 

「”ヴシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト”…”契約により我に従え””大空を統べる王””来れ””天上を貫く荒ぶる槍よ””天へと誘う道となれ””深緑の柱”」

 

その瞬間、龍牙を中心に風が巻き起こり竜巻となって、中心にいる龍牙を押しつぶそうとする。

しかも、まわりには先ほど放った水があり、竜巻によって舞い上がり重みの無い風に重量を与える。

 

「しもうた!!」

 

ここでやっと、ゼクトの考えが読めた龍牙は、必死になって地上に出現した渦潮の中から逃げ出そうと、攻撃を放つが、まるで効果は無く何もできないまま、渦潮に飲み込まれてしまう。

そんな状況の中、さらにゼクトは、魔法を唱え始め、追い打ちをかけていく。

 

「”ヴシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト”…”契約に従い我に従え””氷の女王””来れ””とこしえのやみ””えいえんひょうが”」(さすがにきついの…。じゃがここで決めねばワシは勝てん!!)

 

すると、渦潮は一瞬にして氷の彫刻になった。もちろんその中には、龍牙の姿があり、ゼクトはそれを確認すると、止めの一撃を放つ。

 

「”ヴシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト”…”来たれ水の精””風の精””水を纏いて””貫け””海神の槍””三又の鉾(みつまたのほこ)”!!」

 

大魔法を連発して、残り少なくなった魔力でゼクトが放てたのは、“雷の暴風”と同じ中級魔法として分類されている“三又の鉾”だった。本来ならこの魔力でも、炎系最強呪文を放つことはできたのだが、いくら今氷漬けとなっている龍牙あったとしても、彼が今纏っているのは炎。

もしかしたら、自分が放った炎を利用してしまうかもしれないと思い、この呪文にしたのだ。

この呪文は、“雷の暴風”と同じ中級魔法と言ったが、本来広範囲攻撃となる魔法をある程度纏める事によって、貫通力と破壊力を上げている呪文の為、単純な破壊力は上級魔法にも匹敵すると言われている。しかし、拡散しようとする魔法を纏める難しさと、ちゃんと標的に当たらないと、最悪ダメージも与えられない状況になってしまう為、この魔法を覚えている者はほとんどいない。

しかも、ゼクトでさえ、拡散する魔法を纏めるのに、余計な魔力を消費してしまう為、燃費がかなり悪い魔法なのである。

何故、こんな魔法を使ったのか?

その理由は簡単だった。

他の上級魔法を使うには魔力が足りず、中級魔法では威力が足りない。

今ゼクトが放てた魔法はこれしかなかったのだ。

まっすぐ龍牙に向かって放たれる魔法を見て、”勝った!!”そう思ったゼクトだったが、すぐさまその顔は驚愕の顔となる。なぜなら、本来なら、もうしばらくは閉じ込めておけるはずの氷の中にいた龍牙が赤く光り、ゼクトが作り上げた氷の柱に皹が入っていきたからだ。

 

「ワイをなめるんやないでぇぇぇ!!!!」

 

そう叫んで氷の柱を突き破る龍牙。その体は炎に包まれ、あまりの熱量に龍牙の周りの景色は歪んで見える。そしてそのまま”三又の鉾”へと突っ込んでいく。

その光景を見て、ゼクトの頭には“何故!?”と言う言葉で埋め尽くされていた。

普通に考えて、せっかく脱出できたのに、わざわざ魔法に突っ込んでいく必要など無い。

脱出に成功したが、回避は間に合わないというなら“死中に活を見出す”と言う事で突っ込むのも分からなくは無い。

しかし、あのタイミングだったら、普通の魔法使いなら無理かもしれないが、先程まで見ていた龍牙であれば、かろうじてだが回避は間に合ったはず。

なのに龍牙は、魔法に突っ込んで行った。

しかも、炎の弱点と言われている水の塊に…。

ゼクトには龍牙の考えが分からなかった。

そして、龍牙と“三又の鉾”が激突した瞬間、ゼクトの目の前には信じられない事が起こった。

 

「なん…じゃ…と…」

 

”三又の鉾”に突っ込んだ龍牙は何故か、先程よりももっと巨大で大きな炎を纏ってゼクトに向かって突撃してきたのである。

その大きさは自身の体の二倍はあり、その威風堂々とした姿は、”赤王”…炎を統べる虎王に相応しい姿であった。

 

「…ゼクトはんの考えは間違って無い。炎を纏ってるワイに水の攻撃魔法。理にかなっとるわ。しかしなぁ、ワイが纏っとる炎の強さを読み違えとるわ。ワイの炎を消したかったら、最低でもあの“大海嘯”ぐらいの水が無いとなぁ。むしろこの水のお蔭でワイの炎は更に燃え上がったわ!!これがワイの最高の技じゃ!!!火迦具槌!!」

 

「間に合え!!障壁最大!!」

 

そう叫ぶと虎の形をした炎が大きく口を開けてゼクトを飲み込もうとしてきた。

対するゼクトもほとんど残っていない魔力を搾り出し自身が出来る最大の防御魔法を唱えて堪えようとする。

 

ゴガォォォォン

 

ぶつかりあった瞬間、鈍い音と燃え盛る炎の音が混じって大きな音が響き渡る。まるでそれは虎が雄叫びを上げているようにも聞こえた。音の中心では爆炎に包まれ、まるで炎の棺の様に形を作る。

 

火迦具槌

神の名を借りたその技は、まさしく対象を逃れる事の出来ない炎で抱擁し、すべてを焼き尽くす技だった。

 

しばらくすると、炎の棺は姿を消し、二人の姿が見えてくる。

いつの間にか二人は地面に降りており、あんな激しい衝突をしたにも関わらず、二人とも倒れている事は無かった。

 

「ハァ…ハァ…。なぜじゃ。確かにお主の炎の力を読み違えていた事には納得した。じゃが、何故それで炎が大きくなるんじゃ。」

 

おなかを手で押さえ、肩で息をし、体中に焦げた後や、火傷があり、しかも口からは血を流していたが、そんな事よりもさっきの事が納得できないゼクトは、龍牙に向かって質問を投げかける。

 

「…ワイは、炎を統べる虎であって、炎そのものやない。たとえ水に濡れたとしても、すぐさま炎を纏う事ができるわ。…魔力が続く限りな。やから、あの瞬間纏っとた炎は消えたかもしれんが、火種はくすぶっとった訳や。んで、その火種はまたワイの魔力で燃え上がる。しかもオマケつきでな。ワイは幻獣とはいえ、ベースは虎…恒温動物なんやで?」

 

「恒温動物…。ハッ!!そういう事じゃったのか!!」

 

「気づいたみたいやな。恒温動物は、急激に体温が低下すると、体温を元に戻そうと発熱する。その熱量はかなりのもんや。それとワイの魔力で燃え上がった炎…通常よりも炎が大きくなってもおかしくないで?」

 

「…なるほど。龍牙はそこまで考えてあの魔法に飛び込んだと言う訳じゃな。…儂の完敗じゃよ。」

 

ゼクトは龍牙の答えに納得できたのか、満足した顔でその場に倒れこむ。

しかし、それと同時にもう一つ何かが倒れたような音がした。

もちろんそれは龍牙であった。

彼もまた、あの魔法に真正面からぶつかったのだ。無事であるはずがない。

その証拠に、もう体に炎は纏っておらず、体中に傷をつけた状態で元に戻って倒れこんでいた。

二人の耳に聞こえるのは、遠くから大きな爆発音と、近くにいる人の息遣いだけ…。

その音を聞きながら、二人はしばらく何も喋らずそのままでいた。

そうして、しばらくたった後、龍牙が独り言のように呟く。

 

「今日はワイが負けといたる。…やけど次はギリギリやない。誰が見ても分かるように勝ったるわ」

 

「…そうか。じゃがこの戦いで、儂も未熟だと分かった。じゃからこの勝負は引き分けじゃよ。…もう二度とお主とは戦いたくないがの。」

 

こうして、龍牙とゼクトの戦いは終わりを告げた。

 

武達と同じく、彼らも引き分けだった。

 

二人は、負けたと思っているかもしれないが、むしろ彼らは勝者だろう。

 

互いに目指す場所ができ、そしてこれから目標となる人を見つけ、それに向かい一歩踏み出したのだから。

 

二人は、さらに強くなることを心に誓い、今は休む。

 

その顔は、とても清々しい表情をしていた。

 




おそらく今日はもう少し投稿できると思います。

それとですが、武と龍ちゃんのプロフィールと、今までてきたオリジナル技をまとめたものを別に投稿する予定です。
今日できれば投稿したいと思いますが、もし気になる方は覗いてみてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。