さて今回は有名なあの戦いになります。
楽しんでいってくださいね。
詠春との仕合いが終わり、動けるようになるまでしばらく時間が係ったが、何とか動けるようになったら俺達は最初詠春達が居た場所に戻ってきた。その時に、アルがとても嬉しそうにこちらに向かってきたのだが、その光景はとても不自然だった。隣に居た詠春も微妙な表情をしていたからたぶん俺と同じような気持ちなのだろう。
…というか、正直アルのキャラでそれをやられると、いろいろダメな感じがした。
それはともかく。
仕合の事をアルに根掘り葉掘り聞かれながら、話をしていると、龍ちゃん達も勝負が終わったのかこっちに向かって来た。
勝敗について俺は尋ねる事はしなかったが、龍ちゃんの顔を見る限り、何か得る物があったんだろう。それぐらい、良い目をしていた。
龍ちゃんも龍ちゃんで、こっちの勝敗を聞くことは無く、じっと俺の目を見つめると、納得したように”うんうん”と頷いていた。
そうして残るはラカン達となった訳だけど、しばらく雑談をしながら時間を潰していたのだが、一向に帰ってくる気配が無く。未だ爆発音が聞こえている。それから考えるに、まだまだ決着はつかないだろうと結論を出し、俺は詠春さんに頼んで日本食をつくって貰い、皆それを食べながら待つことになった。
それからさらに半日以上が過ぎた所で、爆発音も無くなり、おそらく決着がついたのだろうと思った俺達は、様子を見に全員でその場所へ向かった。
するとそこには、二人して体が動かないのか、寝転がっている二人を発見した。しかも未だに口ゲンカをしているし…。
それを見ていて、あまりにも見苦しかったので、引き離して連れて帰ろうとすると、なんというか、子供のような捨て台詞をラカンは叫んでいた。
「今日は調子が悪かっただけだ。今度会うときは覚えとけよ!!」
そうラカンが言うと、ナギの方も同じように子供じみた捨て台詞を叫ぶ。
「へっ!俺様だってお腹がいっぱいで、うまく動けなかったんだよ!!次あったらボコボコにしてやるぜ!!」
うん。
もう好きにすればいいと思う。
きっとここにいた全員が、同じ事を考えていたんじゃないかと、俺は思う。
それから約2ヶ月、俺達は”紅き翼”とケンカをしていた。
ケンカと言っても、やっているのはラカンとナギだけで、他は思い思いに過ごしていた。
俺は詠春さんと一緒に修行したり、ゼクトやアルに魔法を教えてもらい、龍ちゃんの方と言えば、ほぼ俺と一緒で、詠春さんと戦ってみたいと言って仕合いをしたり、興味があるのか俺と一緒に魔法の授業を受けていた。
そんな日が何日か続いたある日、いつものようにラカン達がケンカから戻ってきたのだが。何かおかしい。
何故あの二人は肩を組んで、仲よさそうに帰って来てるのだろう?
皆して打ち所が悪かったのか?と心配したが、どうやらいまさら互いに強さを認め合って仲良くなったらしい。
本当にいまさらだ。
そしてさらに驚いたのが、どうやら俺と龍ちゃんはいつの間にか、”紅の翼”のメンバーになっていたらしい。
それについて、“いつの間に!?”と思わず声を上げてしまったが、他のメンバーからすれば、“何をいまさら…”という目で見られ、“ああ、そういえば、勧誘とかしてなかったっけ?”と呆れたように言われた。
ちなみに、もうメンバーの一員として決まっていた俺達に向かって、ナギからこう言われた。
「ラカンから聞いたけど、オメェ達もかなりつえーんだって?だったら俺達と一緒にこねぇか?一緒に大暴れしようぜ!!…って言うか、今さらだよな。もうお前たちは“紅き翼”の仲間だからな。それより、後で俺とケンカしようぜ?どれくらいつえーかためしてみてぇ…」
なんていうか、言葉は微妙なのに、何故か一緒に着いて行きたくなる。これが俗に言う主人公体質っていう奴なのかもしれない。カリスマってやつ。
でも、これで当初の目的通りに話が進めそうだった。
毎日が騒がしくて、いろいろ大変だけど、心が許せる仲間がいるのはこんなにも楽しい事なんだなぁ…としみじみ思う今日この頃だった。
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俺が“紅き翼”の正式なメンバーになって何ヶ月が過ぎたある日、俺達”紅き翼”はある戦場へと向かっていた。
…そう、原作で”紅き翼”が世界的に有名となる舞台。
グレート=ブリッジへと…。
「なぁ、ワイの記憶が正しければ、グレート=ブリッジって連合のもんやなかったんか?」
「いえ、龍牙の言う通りですよ。でも、帝国側が大規模転移魔法を使って奇襲をし、難攻不落とまでいわれたグレート=ブリッジを陥落させたんです。」
「そのせいで、連合側は後手後手に回ってしもうての、今形勢は帝国側有利になってしまったんじゃ。」
「それで、その状況を打開するために私達が呼ばれ、今回の作戦が決まったということだな。」
「今回の作戦…グレート=ブリッジ奪回作戦か。だけどこれは作戦っていうのか?周りで陽動をかけて、その隙に俺達が奪還するだけだろ?」
呼び出された俺達は、最初連合のお偉いさんからありがたい作戦を伝えられた。
…が、正直その作戦は、作戦と言う言葉を冒涜している様なモノ。
ただでさえ、難攻不落と言われている要塞の防御力もあるのに、それに加え、兵力は相手の方がかなり上という情報まで入っている。いくら陽動をかけると言っても、それでどれだけの兵力がそちらにいくか分かったもんじゃない。これでは俺達に死ねといっているもんだ。
「そうですね。私達のことを信頼していると言われれば聞こえはいいですが、私としてもどうかと思っています。戦況が見えていないのか、それとも…」
「あ゛ー、そんな難しく考える必要なんてねーよ。ようは俺達が敵をぶっ飛ばせばいいことだろ?簡単じゃねーか。俺達は無敵の”紅き翼”だぜ?負けるわけがねー」
「HAHAHA!その通りだぜ。むしろ他のヤツラがいない方が、余計な気を使わなくてすむってもんだ。むしろやりやすいぜ。」
二人はそう言って大笑いをしている。
これだからバカと言われるんだけど…まぁいい所でもあるのか。
それに、一見バカバカしい発現だけど、ナギ達が言っていることも間違っていない。
どんな作戦だろうと、ようは俺達が成功させればそれでいい事なんだし、難しく考えて体が動かなくなってしまうのもバカらしい。
そう思っていると、他の皆も同じ気持ちなのか、仕方が無いなぁと行った感じで笑う。
でもその目は真剣味を帯びており、これからやる事の覚悟が出来た目をしていた。
「はぁ…バカは気楽でいいな。」
『誰がバカだ!!コイツと一緒にするな!!』
俺がそう呟くと、二人してこっちに叫んでくる。まるで息を合わせたように同じ事を言うので思わず吹き出しそうだった。すると、さっきの言葉に引っかかったのかまた二人が言い争いを始める。
「おい。ラカン俺様が何だって?お前と違ってバカじゃねーんだよ。この筋肉バカ」
「はぁ?何言ってやがんだ?てめーこそ未だに魔法ほとんど使えないくせに。このバカガキが!!」
『……ぶっとばす!!』
そう言ってお互いに胸倉をつかみ合う。また始まったみたいだ。
「はぁ…だから二人はバカなんだって…」
「そういうたかて、いまさらやん。それに……タケやんもあんま変わらんで?」
「オイオイ…。それを言うなら龍ちゃんだろ?俺はいつも冷静だ。」
「冷静って言葉の意味しっとるか?…それとワイのどこがあいつ等と一緒や!!」
「ほう…龍ちゃんケンカ売ってんの?」
「そっちこそワイにケンカ売っとるやろ?」
『……表に出やがれ!!』
「戦争する前に龍ちゃんを亡くすなんて、残念だよ。」
「そのキャラは無理やといっとるやんけ。いい加減あきらめや!それとそっくりそのままその言葉返したるわ。…覚悟せいよ。ワイの半分も生きてないクソ餓鬼が!!」
「やめんか!!!状況を考えてケンカしろ!!」
詠春さんがケンカを止めようと叫ぶが、そんな事関係無い!!今日こそは俺が二枚目になれることを証明しなくちゃいけないんだ!だから…
『『黙れ!!邪魔すんな!老け顔詠春!!』』
「老け……!!フフフッ………斬る!!」
「ふう…あやつらは。これから戦争しに行くって本当にわかっとるのかのう」
「忘れていると思いますよ?ですが…フフフッ」
「なんじゃ?」
「いえ。この方が私達らしいと思いましてね。」
「わっはっはっは。なるほど。その通りじゃ」
そんな感じで指定された場所へ行くまで、俺達はずっとケンカをしていた。
皆この後戦争すると分かっていたのか、ただのじゃれあい程度だったが、それでも場所についた時に、そこにいた兵達に怪我の心配をされてしまった。
俺達にとってはこんなもの日常茶飯事だったのだが、どうやらそれは普通から見たらありえない域だったらしい。
どうやら俺もかなり毒されてしまったようだ。
「もともとやないんか?」
龍ちゃん心を読まないで欲しいな。
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「ナギ!そろそろ作戦開始時刻ですよ。」
アルがそう言うと、一瞬にして皆真剣な顔つきになる。
正直俺は戦争をするのが始めてだから、怖い気持ちが無いわけじゃない。
するとそんな気持ちを感じ取ったのか、そばに居た龍ちゃんが声をかけてくれた。
「タケやん。怖いのは全員一緒やで?大丈夫や。うち等は強い。んで、うち等は誰も死なへん。安心しいや」
どうやら龍ちゃんは、俺の心が分かるらしい。
確かに殺し合いをするのは怖い。
だけどそれ以上に怖いのは、心を許しあっている仲間が死ぬ事だ。
だから戦争は嫌いだ。
「そういうことじゃ。安心せい。」
「ですね。」
「私の背中を任せられるのは、武しかいない。お互い助け合えば大丈夫だ。」
「らしくねーなタケル。いつもみたいなクソ度胸、どこいったんだ?オメーが負ける?ハッ!こんな奴らにやられるわけがねーだろ?俺様達は最強なんだよ。やられるわけがねー」
「ラカンの言う通りだぜ!俺様達は無敵の”紅き翼”様だ!この世界で俺達に敵う奴らなんか、いやしねーぜ。この”サウザント・マスター”のナギ様が保証してやる。タケルは負けねぇし、俺達も死なねぇよ!」
やば!不覚にも泣きそうになった。
ホントこいつ等とダチになってよかった。
これからもこいつ等と、バカをやっていく為にもこんな所で負けちゃいられない。
「んー?なんだぁ?タケルオメー泣いてやがんのか?おい見ろよ!タケルの奴泣いてるぜ?」
「……ラカン後で急所にマグナム全弾な。しかも下の方の」
「HAHAHA。やっといつものタケルに戻りやがったな。……マグナムは嘘だろ?」
「ふう。わりぃな。おかげでようやく負けねぇ”覚悟”って奴ができたよ。」
「気にするな。」
「なぁタケル嘘だといってくれ!!頼む!謝るから!!」
「……ラカン。」
「おお!!龍牙。俺様を助けてくれるのか?」
「よく言うやん。諦めが肝心やって」
「ノオオオオオォォォォ……!!!」
なんかラカンが叫んでいるけど気にしない。
自業自得だし、まぁ無事に生きていたら全弾じゃなくて一発ですましてやるさ。
「んじゃま。そろそろ行くか…オメーラ準備はいいか?」
おっ?ナギまでラカンを無視か?
さすがにラカンがかわいそうになってきた。
…自業自得なんだけどさ。
『『オウ!!!』』「……オゥ」
「よっしゃ!じゃ行くぞお前ら!!!」
ナギの掛け声と共に、俺達は戦場へと突っ込むのだった。
「最初は俺様からいかせてもらうぜ!オラァ『千の雷』!!」
ナギ得意の広域殲滅魔法によって、前方にいた戦艦や兵達が一瞬にして吹き飛ばされ、壊滅する。
その光景に帝国、連合両方の兵達が驚き一瞬動きを止めた。
「どうせ後が無いんだ……派手に暴れさせてもらうぜぇぇぇ!!!”アデアット”『千の顔を持つ英雄』オラオラオラ!!HAHAHA!!どんどんきやがれぇぇ!!!」
続いてラカンが、ナギとのパクティオーによって出てきたアーティファクトを使って、剣を次々だし相手に向かって投げる。そしてバスターソードとでも言えばいいのか、ラカンの身長ぐらいある剣を取り出すと、敵陣に突っ込んで行った。
大きい戦争で、興奮しているのか、それとも何か他に理由があるのかわからないけど、いつも以上にラカンの奴飛ばしてるな。
あれが“鬼気迫る”って奴なんだろうな。
「こっちも忘れてもらっては困るのう。ホレ『雷の暴風』。」
「そうですね。」
ラカンの反対側では、ゼクトとアルが魔法を放ち次々と相手を倒して行く。
特にアルの重力魔法。
あれはひどい。
爆発する訳でも無く、ただそこに存在している魔法なんだけど、次々とアレに巻き込まれて部隊が壊滅してる。
あれこそチートって奴じゃないか?
「武!余所見をしていると危ないぞ?『真・雷鳴剣』!!」
俺が、アルの魔法を見てそんな事を思っていると、俺の横に居た詠春さんが、俺に声をかけながら技を放っていた。
ナギの”千の雷”より範囲は狭いけど、これも大概だよな。
神鳴流はダテじゃないって所か…。
俺も負けてられないな。
「おっしゃ。龍ちゃん戦闘開始《オープンコンバット》だ!」
「任せとき!」
「オン・フィスト・ガン・ペンスリット
”契約に従い我に従え炎の覇王””来れ浄化の炎””燃え盛る大剣”
”ほとばしれよ”ソドムを焼きし火と硫黄”罪ありし物を死の塵に”
”燃える天空”!!”固定””掌握””術式兵装”………”炎帝”!!」
「”我名において助けを請わん””その友の名は火の精霊クゥ””我魔力を糧に我に力を示せ”……”赤王”」
俺達がそう詠唱すると、皆さっきナギが魔法をぶっ放した時と同じように唖然としていた。
まぁ仕方が無いか。
俺と龍ちゃんは炎を纏ってそこに佇んでるし、ラカン達曰く威圧感がハンパないらしいからね。
「行くぜ!”クレイジー・ホース””モデル・サラマンダー”!!!」
俺はそう言って敵に向かって炎を纏ったガン・ブレットを乱れ撃つ。
ガン・ブレットが敵か地面に当たった瞬間大きな爆発がした。
本来ガン・ブレットは爆発なんて起きないけど、これは”炎帝”時に起こる偶然の産物だった。直接殴りつければ相手は炎に包まれ、ガン・ブレットなど間接攻撃に当たると、爆発する。
詠春さん達と修行し、ゼクト達に魔法を見てもらったせいか、威力が前よりも上がったし何より効率が良くなった。
ゼクト達が言うには、魔力とかを気にせず打ち続けるのは、ラカンとナギぐらいで、普通は自分の限界を知ってから、効率化を図るそうだ。
俺の場合は、特に”感卦法”や”闇の魔法”を使用し、銃闘技を使うと常時消費しているだけではなく、攻撃する際、魔法をぶっ放しているのと同じ事らしいので、とても燃費が悪かった。
更に問題なのが、銃闘技の強みである圧倒的な手数のせいで、さらに燃費が悪いらしい。また、連続で魔法を撃ち続ける事は、体にかなりの負担をかけて、最悪魔法が使えなくなるかもしれないらしい。
それを聞いた俺は、すぐさま二人に手伝ってもらって、自身の技の効率化することで、負担を軽くすることに成功した。しかも、効率化を図った結果、すべての技が前より一段階上へ上がるというオマケまでついてきた。
それを見た詠春さん達は、”理解ができる分バクでは無いが、それでも武装した武はすでに人のレベルではない”と人外の称号を俺に授けてくれた。
…嬉しくないけど。
それを聞いた俺は皮肉のつもりで、詠春さん達に”そうは言うけど、詠春さん達も大して変わらない”と言ったら三人ともそれは自覚しているようだった。
…俺と同じく、とても嫌そうだったが。
「ワイも行くでぇ!!爆炎波!!」
隣では、龍ちゃんが同じように炎を飛ばして攻撃をしている。
こっちもこっちで、以前よりかなり強くなったみたいだ。
もともと幻獣は、魔法の効率化なんて考えた事もしたことも無かったらしく、俺と同じく効率化をしてみたら格段に動きが良くなり、そして技の威力も上がった。
なんでも、うまく魔力を込めれるようになったとか?
アルとゼクトの二人も、さすがに幻獣の魔法については全く分からなかったので、全部龍ちゃんの感覚でしか成果が分からない。
そのせいか、ゼクトは、戦争が終わったら、幻獣についていろいろ研究してみたいと呟いてみた。
まぁ、それがいつになるか俺も分からないけど、そうなったら修行を手伝ったお礼として俺も、龍ちゃんにお願いしてあげようと思う。
龍ちゃんなら、“面白そう”と言って協力してくれそうだけどね。
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とまぁ、そんなこんなで俺達は、ほぼ無双状態でどんどん敵陣に突っ込み、とうとう難攻不落の要塞の前まで来ていた。
そして、いざ要塞を攻略しようとした所で、ゼクトとアルが急に止まり要塞を見ながら渋い顔をした。
「ふむ。これはちょっとやっかいじゃの」
「そうですね。」
「どうしたんだお師匠。何がやっかいなんだ?」
「ふむ。簡単に言えば魔法障壁が、これでもかって言うくらい張り巡らされておる。」
「なら詠春に斬ってもらえば、いいだけじゃねーのか?」
「それが出来ればいいんですが…。ここまで巨大な障壁を斬ったことがないでしょう?これ一枚で多分私達が使う障壁最大の二倍は硬いと思いますよ。それが幾重にも張り巡らされているとすると…詠春はどう思いますか?」
「そうだな…。斬れないことはないと思う。だが、それにはかなり時間がかかるな。もちろん全力でやってみるが…とても短時間では無理だろう。でも、二人の感じから言って、それじゃ駄目なんだろう?」
「その通りじゃ。コレに手間取っている時間は無い。時間を掛け過ぎると、敵の増援が来てしまう。そうなったらワシらは良くても他がもたん。まだコレは城門じゃ、その後には制圧作業が待っておる。それを考えたら、もうほとんど時間が無いと言ってもいいじゃろう。」
「つまり、短い時間の間…。できれば、ほぼ一発でこれを撃ち破る必要があるわけか。俺達が一斉に攻撃して、攻撃を集中させるのは?」
「それでもたぶん威力が足りないですね。まったく厄介なものです。」
「オイ!いよいよやベーぜ?連合が押され始めやがった。このままだともたねえ。」
ラカンがそう状況を皆に伝える。それでもまだ皆の顔は暗いままだった。
どうにかしたいが、力が足りないのだ。
必死に頭を回転させて打開策を考えるが一向に思いつかない。
どうしたら…。
皆の気持ちは一つだった。
だけど、俺だけは違う。
かなりのカケになるけど、一つだけ方法を思いついていた。
「……アル?後どれくらいの威力が必要なんだ?」
「え!?…そうですね。ナギ一人分の威力でしょうか。それだけあれば大丈夫かと。…でもそれがどうしたんですか?」
「…方法が一つだけある」
『『何だって!?』』
帝国の兵達の攻撃をかわし、反撃をしながら皆武の方を見る。
この追い詰められている状況で、それを打開する方法があるというのだ。当然の反応だろう。
皆が期待を込めた表情で俺を見ている中、一人だけ視線の感じが違う。
それは、龍ちゃんだった。
俺の相棒にして、この中で一番付き合いの長い龍ちゃん。
だからこそ俺の考えている事に気付いた。…いや、気付いてしまったのだろう。
俺に詰め寄って必死になって、俺を止めようとする。
「まさか…あかんて。タケやんそれだけはやったらあかん。アレはまだ完成しとらんやんけ。前つこうた時、どうなったか覚えとるやろ!?」
龍ちゃんが今まで見たこともないくらいに、取り乱しているのを見て他の面々は驚いていた。
いつも飄々としているあの龍ちゃんがここまで必死になって止めるのだ。
それはつまり…常道な方法ではない。
”紅き翼”の間になんとも言えない緊張感が漂い始めてくる。
「でも龍ちゃんもう時間もないし、アレを使うしか方法が無いじゃないか。」
「せやけど…」
「龍ちゃん大丈夫。俺は不可能を可能にする男だぜ?」
「……こんな時までアホいうよるんやから。わった。でもタケやん死ぬんや無いで?」
俺の意思が固いのを知って、止められないと分かった龍ちゃんは、そう言って俺の傍から離れる。
それを見ながら笑い、真剣な顔になって皆の方へ顔を向ける。
「皆聞いて欲しい。これから俺はある詠唱をする。それがうまくいけばナギ一人分の威力は確保できると思う。だけど…」
「だけどなんだよ」
「コレはまだ完成もしてないし、もちろん使いこなせるわけでもない。実際に前使おうとしたら扱いきれず結果ひどい重症をおった。」
『!!!!』
「しかもコレを使った後、俺はしばらく戦闘不能になる。だけどこの状況を打開するためにはもうコレしか手がないと思う。だから俺を信じてみてくれないか?」
そう言って頭を下げる。
すると皆近くに寄ってきて、肩に手を置いた。
「何いってやがる。オメーが信じろって言うなら、俺様は信じるぜ?そんなもん頭下げて言われる必要なんかねーよ。」
「私もだ。今から何をやるか想像はつかんが、それでも武ならできる。そう信じている。だから思いっきりやれ」
「お主とおると本当に退屈せんのう。分かった。その代わり絶対に成功させるんじゃぞ?その後のことは任せておけ」
「そうですね。私も信じますよ。後のことは任せてください。貴方は成功させる事だけを考えてくれればいいですよ。」
「何言ってやがる。ダチの言う事しんじねーで何を信じるってんだ。それにうまくいかなくても俺様がケツを拭いてやるぜ。…それが嫌ならせっかくの見せ場だ!絶対に成功させろよ!!」
「お前ら……よっしゃ。いっちょやってやるぜ!!」
皆からの信頼されるという事は、これほどまで俺に力を与えてくれるものなのか!
その信頼に答えるためにも、俺は不安でいっぱいの心を吹き飛ばすかのように、大声を上げて気合を入れる。
「ありがとう。じゃあすまないが、この詠唱はちょっと時間が掛かるんだ。それまで俺を守って欲しい。それから俺が合図したら一斉に要塞に向かって攻撃して欲しい。」
『まかせろ!』
「じゃ始めるか。…闘火火薬点火《プライムファイアード》!!」
そう言って俺は準備を始める。
今まで一度も成功させた事の無い魔法。
俺にしかできない、俺だけの魔法。
“然”を…。