アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 祝! 百話目! いやぁ、再掲載したこのアルカナも、とうとう百話目までノンストップでやってきました。いや、この辺既に書いてあったんだから、ストップしちゃおかしいんですけども。
 とりあえず、クライマックスまではあと少しなので、今後共よろしくお願いします。


第四期第二十七話「レベルカンストの恐怖! アテナの覚悟」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第二十七話「レベルカンストの恐怖! アテナの覚悟」

 

 

 

 

「私は……モンスターとカードを一枚ずつセットして、ターンを終了します」

 正直ミスティック・ソードマン系列の効果を考えれば、この行為にどれほどの意味があるかはわかりません。ですが、フィールドを空の状態でターンを終了するわけにもいかず、私は仕方なくカードをセットしました。

「わたしのターンだね。ドロー!」

 ユーキさんの手札はこのドローで二枚。フィールドには攻撃力3300の『ミスティック・ソードマンLVMax』と、攻撃力が2500まで上昇した『サイレント・マジシャンLV4』の二体……純粋な攻撃力だけでも脅威ですが、『ミスティック・ソードマンLVMax』の効果も未知数です。

「わかってると思うけど……ミスティック・ソードマン相手に裏守備なんて通じないよ。まあ、LVMaxに関しては、表側でも無駄だけどね~」

 余裕の表情のユーキさん。ですが、ミスティック・ソードマンに仕事はさせません!

「じゃあ……行くよ!」

「させません! 私はトラップカード『威嚇する咆哮』の効果を使います! このターン、ユーキさんは攻撃宣言を行えません!」

「……仕方ないね。わたしはカードを一枚セットしてターンエンドするよ~」

 また、一枚の伏せカード……流石に、ユーキさんも息切れをしてくる頃だと思いますが……。尤も、私の方はそれ以上に酷い状況ですけど。

「私のターン、ドロー!」

「この瞬間『サイレント・マジシャンLV4』にカウンターが一つ乗るよ!」

 『サイレント・マジシャンLV4』ATK2500→3000

 引いたのは……『光神テテュス』。私のデッキにおけるエンジンです。でも、この状況ではその効果を有効に使えません。けど!

「私も……」

「?」

「私も、負けるわけにはいかないんですよ! モンスターを反転召喚!」

 このデュエルには、文字通り全てがかかっています! セツのこと、終焉のこと、そして何より……。

「ユーキさんのことも、です」

 私がこのデュエルに負けたら、私だけじゃありません。ユーキさんだって、大切なものを失う。そんな、気がするんです。戻れなくなる。きっと。だから……!

「私は……勝ちます! リバースした『魔導雑貨商人』の効果を発動します!」

 『魔導雑貨商人』ATK200

「リバースモンスター……昆虫族!?」

「私は確かに天使族使いですが……種族統一デッキと言うわけじゃありません!」

 何より『魔導雑貨商人』の効果。デッキからモンスターを墓地に送り、魔法・罠を手札に加えられる効果は、私のデッキと相性が良いです!

「デッキの上から魔法か罠が出るまでカードをめくり、手札に加えます!」

 一枚目『緑光の宣告者』二枚目『虚無の統括者』三枚目『ヘカテリス』四枚目『シャインエンジェル』五枚目『紫光の宣告者』六枚目……。

「来ました! 私は『壺の中の魔術書』を手札に加えます!」

「ドローカード……!」

 サイレント・マジシャンを成長させてしまいますが、背に腹は代えられません。

「そして『魔導雑貨商人』をリリースして『光神テテュス』をアドバンス召喚!」

「テテュス……!? このタイミングで!?」

「そして私は当然、魔法カード『壺の中の魔術書』の効果を使わせてもらいます! お互いに三枚、デッキからカードをドローします!」

「……わたしも、ドローするよ」

 その六枚の中に天使族モンスターは……。

「当然、います! テテュスの効果を発動します! 『勝利の導き手フレイヤ』をオープンしてドロー!」

「くっ……でも、その前に『サイレント・マジシャンLV4』に最後のカウンターが乗るよ!」

 『サイレント・マジシャンLV4』ATKK3000→3500

 これで、サイレント・マジシャンはレベルアップ条件を満たしました。けれど、それは承知の上です!

「一枚目……『虚無の統括者』! ドローします!『アテナ』です。ドロー!『反魂のスピリチュア』!」

 私のカード。ですが、今は正直いりません!

「更にドローします!『オネスト』! ドロー!」

「っ……」

 私がオープンしたカードに、ユーキさんが苦しげな顔を見せます。『オネスト』の有効性は当然ユーキさんも知っています。

「『マスター・ヒュペリオン』、ドロー!」

 最後にドローしたのは『光神化』。

「これで……!」

 攻略の手は整いました!

「ドローを終了します。私は手札から速攻魔法『光神化』を発動します! 手札から『マスター・ヒュペリオン』を特殊召喚します!」

 『マスター・ヒュペリオン』ATK2700→1350

「っ……除去能力持ちのモンスター!」

 苦々しげな表情をするユーキさん。多分、そうだと思いました。

「レベルモンスターの効果は、段階的に強力になって行きます。裏守備を問答無用で破壊しつつ、墓地で発動する効果すら発動させないことができるミスティック・ソードマン系列の最高レベルなら、戦闘の時に発生する破壊効果があると考えました。どうですか?」

「……確かに、レベルカンストしたミスティック・ソードマンは、あらゆるモンスターとの戦闘の際、ダメージ計算を行わずに破壊することができるよ」

「だからこそ、このモンスターの効果はアキレス腱になるはずです!『マスター・ヒュペリオン』のモンスター効果! 墓地の天使族、光属性モンスター一体を除外することで、フィールド上のカード一枚を破壊します!『ハイペリオン・ロスト』!」

「くっ……」

 これで、ユーキさんのフィールドにモンスターは『サイレント・マジシャンLV4』のみ! ただ攻撃力が高いだけなら、『オネスト』で十分突破できます!

「バトルします!『マスター・ヒュペリオン』で、『サイレント・マジシャンLV4』を攻撃します!『ロスト・サンクチュアリ』!」

「それは、させないよ! トラップカード『サイレント・チェンジ』! 相手の攻撃宣言時、攻撃対象となったモンスターを破壊することで、そのモンスターよりレベルの低いサイレントと名の付くLVモンスターを特殊召喚してバトルフェイズを終了させるよ! わたしは『サイレント・マジシャンLV4』を破壊してデッキから『サイレント・ソードマンLV3』を特殊召喚!」

 『サイレント・ソードマンLV3』ATK1000

「っサイレント、ソードマン……」

 遂に出てきましたか。ユーキさんのフェイバリットモンスター……しかも、バトルフェイズを強制終了されてしまったので追撃もできません。

「……私はこれでターンエンドです。エンドフェイズに、手札から溢れた『反魂のスピリチュア』を墓地に捨てます」

 私自身ではありますが、少なくともこのデュエルに於いては真価を発揮できません。

「そして『光神化』で特殊召喚された『マスター・ヒュペリオン』も破壊されます」

 とりあえず、目先の脅威であったレベルカンストモンスターとサイレント・マジシャンを破壊することは出来ました。その上、手札アドバンテージも上回ることが出来ましたし、私の手札にはまだ『オネスト』も残っています。

「これで、形勢逆転です!」

「……そう思うのは、早いよ」

 しかし、ユーキさんの表情は変わりません。

「強がっても無駄です! そんなハッタリはもう、通じません!」

「強がり、かぁ」

 私の指摘にも、ユーキさんは一切動揺しません。

「アテナちゃん、わたしがハッタリと心理誘導だけしか出来ないと思ったら大間違いだよ」

「え……」

「見せてあげるよ。これが、わたしの切り札だから。ドロー!」

 切り札……? まさか、ミスティック・ソードマンみたいに……。

「このスタンバイフェイズに『サイレント・ソードマンLV3』をレベルアップ!『サイレント・ソードマンLV5』を特殊召喚!」

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300

「更に、これがキーカード! 永続魔法『チートコード』!」

「ちーと、こーど……?」

「ゲーム得意じゃないアテナちゃんは知らないかもね~。チートって言うのは、要するにズルとか、騙すって意味。システムとか、データを改ざんしたりすることでもあるんだけど……この『チートコード』の効果は、一ターンに一度、レベルモンスター一体の効果を発動条件を無視して発動することが出来るって効果だよ。代わりに、エンドフェイズ毎に1000ポイントのライフを失うけど、ね」

「それは、つまり……」

「そう。『レベルアップ!』とは違う、レベルアップモンスターの正規特殊召喚。例え、スタンバイフェイズやエンドフェイズじゃなくっても、発動条件を満たしていなくても、正規レベルアップを実現させる夢のチートコードだよ。『サイレント・ソードマンLV7』を特殊召喚!」

 『サイレント・ソードマンLV7』ATK2800

「くっ……!?」

 一ターンでサイレント・ソードマンが最高レベルまで……! けれど、例えテテュスの攻撃力を上回っていても、『オネスト』がいる以上、迂闊に攻撃は出来ない筈……。

「ねぇ、アテナちゃん」

「なんですか?」

「『オネスト』は光属性モンスター使いにとっては最重要のキーカード。当然、サイレント使いのわたしも持ってる」

「まさか、ユーキさんの手札にも……!?」

 それは、非常にまずいです。ターンプレイヤーの優先権の関係で、ユーキさんに先に発動されてしまいます。そしてそうなれば、例え私が『オネスト』を持っていても、チェーンの逆処理の関係で、先に出したユーキさんの方が攻撃力で上回ることになります。

「安心して。それはない。だけどね」

 ユーキさんはクスリと笑って手札を一枚抜き出しました。

「『オネスト』対策もせずに、アテナちゃんの前に立つことなんてありえない、ってこと、だよ。わたしは魔法カード『異次元の指名者』を発動! 宣言するカードは、当然『オネスト』だよ!」

「『異次元の指名者』!?」

「宣言したモンスターが、相手の手札にあれば、そのカードを除外するカードだよ。アテナちゃんの手札に、あるよね?『オネスト』が」

「くっ……」

 ユーキさんに手札を公開し、その中から『オネスト』が抜き取られて除外されます。これで、『オネスト』で戦闘に勝利することはできなくなりました。私の他の手札は『オネスト』を除けば『虚無の統括者』『アテナ』『勝利の導き手フレイヤ』『ヘカテリス』『トレード・イン』の五枚。

「そして、わたしにとっての切り札は、ミスティック・ソードマンじゃない。あくまでも、わたしの切り札はサイレント・ソードマン」

「まさか……」

「そのまさか、だよ。わたしのフィールドに、LV5の効果で特殊召喚された『サイレント・ソードマンLV7』が存在する時、そのカードを墓地に送ってこのカードを特殊召喚するよ……来て。わたしの切り札。『サイレント・ソードマンLVMax』!」

 『サイレント・ソードマンLVMax』ATK3800

「レベル……マックス。攻撃力、3800、アルカナクラス!?」

 二体目のレベルカンストモンスター……それも、ユーキさんのフェイバリット。一体、どんな効果が……。

「『サイレント・ソードマンLVMax』のモンスター効果。特殊召喚に成功した時、フィールド上の表側表示の魔法カードを全て破壊するよ! 沈黙の世界へ!『サイレント・フィールド』!」

 サイレント・ソードマンが、その手に持つ剣を地面に突き刺すと、私の背後にそびえるヴァルハラが、音もなく崩れ落ちて行きます。

「わたしの『チートコード』。アテナちゃんの『神の居城―ヴァルハラ』も、だよ」

 これで、ユーキさんの『チートコード』のデメリットも帳消しにされてしまいました。

「さあ、バトルするよ。『サイレント・ソードマンLVMax』で『光神テテュス』を攻撃!『沈黙の剣LVMax』!」

「きゃああああああああっ!?」

 アテナLP2750→1350

「ターンエンド。それとねアテナちゃん。『サイレント・ソードマンLVMax』が表側表示で存在する限り、アテナちゃんは魔法カードを発動出来ないから、そのつもりでね」

「っ……!」

 これが……レベルカンストモンスター! これで私は、得意の『光神化』からの『地獄の暴走召喚』も豊富なドローソースによるブーストも、ヴァルハラによる特殊召喚も封じられました。

「ユーキさんの、切り札ですか」

「そうだよ」

 淡々と、でも自信に満ちた顔で、ユーキさんは頷きました。それは、以前のユーキさんには見られなかった表情で、それだけ固い決意と覚悟を感じさせます。

「っ……」

 気圧されているのが、嫌でもわかります。こんな人に、私は勝てるのでしょうか。いえ、勝てると仮定して、勝っても良いのでしょうか? こんな、簡単に気圧されてしまう程度の意志しか持たない私が。

「…………ドロー」

 それでも。

「私は、モンスターを一体守備表示でセット。ターンエンドです」

 脳裏にちらつくのは、セツの顔。

「……まだ、やる気だね。アテナちゃん」

 どうしたって、諦めきれないものがあります。この戦いに、それが賭けられている以上。

「退くことは出来ません。例え、ユーキさんがどんな強い決意を持っていたとしても。私は、私は……!」

 セツを、諦めない。

「思えば私は、ずっとそれだけしかありませんでした」

 セツと出会ってからの私は、比喩でも、大げさでもなく、セツが世界の中心でした。セツに振り向いてもらうため。セツに選んでもらうため。セツを守るため。セツを取り戻すため……。

「……もう、セツのいない日々なんてあり得ません。セツを諦めた私は、ただの抜け殻。人形ですらありません」

 これが、依存だとしても。これが、セツに負担を強いる行為だとしても。

「今の私は、セツ在っての私です。セツを諦めることなんて、死んでも出来ません」

「……そっ、か。でも、うん。わかるよ。その気持ち。でも、でもねアテナちゃん。いざという時、相手の幸せを想って退く勇気も、必要なんだよ」

「そうかもしれません。けど、違う。違うんですよユーキさん。真に相手を想うなら、相手の幸せのために退くんじゃなくて、自分が絶対、誰より幸せにして見せる。その気持ちが、大切なんだと思うんです」

「アテナちゃん……」

「独りよがりかもしれません。自分勝手な思い込みかもしれません。けど、私はセツと一緒に幸せになりたい。私が一番に、セツを幸せにして見せる。今はただ、それだけを望みます」

「……そう」

 ユーキさんは、しばらく眼を閉じて、何かを考え込んでいるようでした。そして、次に目を開いた時、その目には変わらず闘志を宿していました。

「なら、わたしも同じ。わたしは、わたしのやり方で、セツくんを支える。例えアテナちゃんたちと決別しても、必ず」

「……安心しました」

「どういうこと?」

「ユーキさんも同じなら、このデュエル。どちらが勝ってもセツは幸せです。誰よりも」

「……そうだね。じゃあ……最後の勝負を、始めようか」

「はい!」

「わたしのターン! ドロー!」

 ユーキさんの手札に、リクルータークラスのモンスターでもあれば、私の負けです。いえ、場合によっては、モンスターの時点で負けが決まります。何故なら、私の守備モンスターは『勝利の導き手フレイヤ』……守備力の低い、現在使いようのない壁でしかありません。

「…………」

 どうです……?

「……命拾いしたね。わたしはカードを一枚セット。バトルするよ」

「っ……」

 思わず、安堵のため息を吐きます。

「バトル!『サイレント・ソードマンLVMax』で守備モンスターを攻撃!『沈黙の剣LVMax』!」

「っ……!」

 巨大な剣に貫かれて、華奢な少女は虚しくも散って行きます。けれど、その役目は果たしてくれました。

「フレイヤ……モンスターさえ引いていれば、わたしの勝ちだった」

「……はい」

 でも、状況は結局変わっていません。ユーキさんのフィールドには、攻撃力3800を誇る『サイレント・ソードマンLVMax』と、謎の伏せカードが一枚。対して私のフィールドは空で、手札も上級モンスターと使うことのできない魔法カード……絶望的、ですね。

「ラッキーは何度も続かないよ。魔法も使えず、フィールドにもカードがなく、墓地肥しやドロー促進で削れたアテナちゃんのデッキはもう十枚ちょっと」

「……はい。次が、きっと最後です」

 もうこうなっては、ドロー加速も出来ません。ドローカードは大半が魔法ですし、残り少ないデッキに、壁モンスターがどれだけ残っているかは疑問が残ります。

「きっとこれが、最後のドロー……」

 眼は閉じて、雑念は捨てます。バクバクと暴れ出す心臓も、無理矢理抑えて、自分のデッキだけに集中します。

 思い出すんです。私の心の一番奥にある、私にとって一番大事な想いを。そうすれば、きっと私のデッキは応えてくれます。

「私は……」

 ユーキさんは言いました。セツを取り戻し、記憶を復活させれば、セツが苦しむ。そうしてまで、どうしてセツを求めるのか。

「私は……!」

 そう。これは、私のエゴなのかもしれません。ただのわがままで、セツを苦しめるばかりの、醜い感情なのかもしれません。

「私は……それでも!」

 セツが。

「セツが、好きなんです!」

 そう。結局私にとって、一番大切な想いはそれでした。

「セツと出会ったその日から、私の想いは変わりません。私は、セツとの未来を掴むために動きます! 大好きな人と過ごす、幸せな未来を求めて! それが醜いとは、くだらないとは言わせません!」

 セツを苦しめてしまうのなら、それ以上に癒し、不幸にしたならそれ以上に幸せにする。とっても単純で、考えなしと言われても仕方のない、子供っぽい理屈。

「大人の理屈なんて、いりません! 私は私です。セツへの想いで、恋心で動く私が、全てです!」

 だから。

「ここで退くわけには……いかないんです!」

「っ!?」

 目の前に輝きだしたカードを掴み取ります。それは、一枚のタロット。六番目の……『恋人達』のカード! そのものズバリ、恋愛を司るカード!

「私の、ターン!」

 タロットの光が宿る、その手でデッキに手を置く。

「ドロー!」

 光の軌跡が、示す先。私のドローしたカードは……。

「私の、勝ちです!」

 瞠目するユーキさん。それもそうでしょう。フィールドにカードはゼロ。ライフは無傷のユーキさんに対して、私はリクルーターのダイレクトアタックにも耐え切れない。そんな状態での、勝利宣言。

「何を……引いたの?」

「……私は」

 私はドローしたカードを、高く、高く掲げます。そして、呼び出します。私が引き当てた、勝利のカードを!

「私は、手札から『究極時械神セフィロン』を特殊召喚します!」

 『究極時械神セフィロン』ATK4000

「こ、攻撃力……4000!? そんな、何の前触れもなく、そんな攻撃力のモンスターが……!?」

「『究極時械神セフィロン』は、墓地にモンスターが十体以上存在する時のみ、手札から特殊召喚することが出来る私の扱える最高クラスのモンスター……そして、その効果は」

 『究極時械神セフィロン』の身体が眩い光に包まれます。

「一ターンに一度、手札か墓地から、レベル8以上の天使族モンスター一体を、効果を無効にし、攻撃力を4000にして特殊召喚することができます!」

「っ……そ、そんな」

「私は……墓地から『光神機(ライトニングギア)―轟龍』を特殊召喚します!」

 『光神機(ライトニングギア)―轟龍』ATK2900→4000

「う、嘘……何もないところから、一瞬で攻撃力4000のモンスターが二体……!? そんな、そんなの……!」

「決めます! バトル!『究極時械神セフィロン』で、ユーキさんの『サイレント・ソードマンLVMax』を攻撃!『アカシックストーム』!!」

 セフィロンの放つ波動が、サイレント・ソードマンに向かって突き進んでいきます。これで、これで……!

「まだ、まだだよ……! まだ、終わってない! まだわたしには、伏せカードが残ってる!」

「!?」

「トラップ発動!『強制脱出装置』! これで、フィールド上のモンスター一体を手札に戻す!」

「な、それじゃあ!」

「そう、そうだよ……! これで轟龍を戻せば、まだわたしのライフは……っ!?」

 ライフは残る。そう言おうとしていたユーキさんの目が、大きく見開かれます。そして、唇を噛みしめました。

「わたしは……わたしは……!」

「ユーキさん……?」

 ユーキさんは、最後にふっ……と諦めたように、力ない笑みを浮かべました。

「わたしは……『サイレント・ソードマンLVMax』を、手札に戻すよ」

「……え!?」

 セフィロンの射線上から、『サイレント・ソードマンLVMax』が音もなく消えて行きます。そして……。

「っ……あぁっ!?」

 ユーキLP4000→0

 セフィロンの放った光条は、容赦なくユーキさんを呑みこんで行きました。

 

 

 

 

 

「まだ、まだだよ……! まだ、終わってない! まだわたしには、伏せカードが残ってる!」

 アテナちゃんの逆転の一手には驚かされたけど、まだわたしには出来ることが残ってる!

「!?」

「トラップ発動!『強制脱出装置』! これで、フィールド上のモンスター一体を手札に戻す!」

 一時凌ぎでしかないとわかってる。この攻撃を耐えたとしても、わたしの手札じゃ状況を打開できない。フィールドもゼロで、アテナちゃんのフィールドには攻撃力4000のモンスター……一瞬前とは真逆の状況に立たされてしまう。それでも!

「な、それじゃあ!」

 見苦しくても、最後まで足掻いて見せる。そう、思った。

「そう、そうだよ……! これで轟龍を戻せば、まだわたしのライフは……っ!?」

 残る。そう、言おうとした。けど。

「わたしは……わたしは……!」

 その視界に、攻撃を受けとめようと剣を構えるサイレント・ソードマンの姿が映った時、わたしは思わず唇を噛みしめた。

「ユーキさん……?」

 ふっ……と、力のない笑顔が自然に浮かぶ。

 ――そう。そうだよね……。

「わたしは……『サイレント・ソードマンLVMax』を、手札に戻すよ」

「……え!?」

 それが、わたしの選択だった。アテナちゃんだけじゃなく、今にも攻撃を受けようとしていたサイレント・ソードマンまでもが、驚きに目を見開いたような気がした。

 迫り来る光の奔流。わたしの視界が、白く、白く染まった。

 

 

 

 

 

 

「ユーキさん!」

 がくり、と力なく項垂れているユーキさんの下に、慌てて駆け寄ります。

「ユーキさん、どうして……?」

 どうして、サイレント・ソードマンを戻したのか。あそこで轟龍を戻していれば、少なくともあのターンで負けることはなかった。もしかしたら、逆転の可能性だってあったかもしれません。なのに……。

「ダメ、だよ……」

「ダメ……?」

 あれだけの決意と覚悟を持って戦っていたユーキさんが、意味もなく諦める筈がありません。いえ、諦めたにしても、サイレント・ソードマンを戻す意味は……。

「勝てたかもしれない……逆転出来たかもしれない。でも……」

 ユーキさんは、その手に持ったサイレント・ソードマンのカードを抱きしめます。

「このカードだけは……この、サイレント・ソードマンだけは、破壊させない」

「どうして、そこまで……」

「だって……」

 ユーキさんは、サイレント・ソードマンのカードを見つめて、力なく笑いました。

「だってサイレント・ソードマンは、絆だから」

「絆……?」

「セツくんと、わたしを結び付けてくれた、何よりも大切なフェイバリットだから……サイレント・ソードマンを……セツくんとの絆を盾にして、生き延びるようなこと、出来ない……」

「ユーキ、さん……」

「ゴメンね……サイレント・ソードマン。わたし、わたし……また、負けちゃった」

 涙を流しながら、カードを抱きしめるユーキさん。

「頑張ってくれたのに……裏切るようなことしてゴメンね……」

 そう言って静かに嗚咽を漏らすユーキさんの胸元が、ポゥ……と僅かに輝きました。

「あ……」

『…………』

 サイレント・ソードマン。沈黙の騎士は、あくまでも静かに、ユーキさんの頭を優しく撫でて、その姿を消しました。

「今のは……精霊?」

「そう、だったんだ……」

 ユーキさんは、尚も強くカードを抱きしめます。

「ずっと、見守っててくれたんだよね……」

 サイレント・ソードマンは、言葉を発さない。自己主張をしない精霊だったから、わからなかったのでしょう。その沈黙の騎士が、一瞬とはいえ現れて、ユーキさんを慰めた……。それだけ、強い絆があったから。

 サイレント・ソードマンのカードが輝き、その光が一つのタロットを形作りました。それは、一番目。始まりのカード。『魔術師』へ。可能性、才能を示すそのカードが、ユーキさんに与えられた力の源。

「わたし、もっと強くなるよ……貴方のマスターに相応しくなれるように……もっと、もっと……頑張るから……っ!」

「ユーキさん……」

 それ以降は言葉にならず、とめどなく流れる涙をそのままに、ユーキさんは泣いていました。

「一緒に、行きましょう」

「…………」

「セツを取り戻して、皆で幸せになるんです。それには……ユーキさんの力が必要です」

「アテナ、ちゃん……」

「デュエルの前に、言いましたよね? 全てを賭けるって……私が望むのは、それだけです。一緒に戦いましょう。そして、セツを……」

「…………」

「ユーキさん……」

「……………………………………………わかっ、たよ」

 長い沈黙の後、ユーキさんは小さくそう呟きました。

「全部、話すよ。セツくんのこと。エンヴィーのこと。わたしの知っていること、全部」

「……お願いします」

「でも、でも今は……もうちょっと」

「……はい」

 そのまま、ユーキさんはまた、静かに泣き始めました。そんなユーキさんの背を撫でながら、私はより強く、セツを取り戻す意志を固めるのでした。

 

 

 

 

 

 




 まずはオリカ紹介です。
・『ミスティック・ソードマンLVMax』 星12 地属性 戦士族 攻/守3300/2700
 効果
 このカードは通常召喚出来ない。
 自分フィールド上に存在する『ミスティック・ソードマンLV6』が、戦闘により相手モンスターを破壊した時、自分フィールド上の『ミスティック・ソードマンLV6』をリリースした場合のみ特殊召喚することが出来る。このカードの特殊召喚に成功したターン、このカードは攻撃することができない。
(1):このカードが戦闘を行う相手モンスターの効果は無効となる。
(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わず、そのままそのモンスターを破壊することが出来る。この効果で破壊したモンスターを墓地へ送らず、相手のデッキに一番上に置くことが出来る。

・『サイレント・チェンジ』 通常罠
 効果
(1)自分フィールド上のモンスターが攻撃対象となった時、そのモンスターを破壊することで、デッキ・手札・墓地から破壊したモンスターのレベル以下の『サイレント』『LV』と名の付いたモンスター一体を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

・『チートコード』 永続魔法
 効果
(1):一ターンに一度、自分フィールド上に存在するレベルモンスター一体を選択して発動することが出来る。選択したモンスターの効果を、発動条件を無視して発動することが出来る。
(2):このカードが表側表示で存在する限り、自分はエンドフェイズ時に1000ポイントライフを失う。

・『サイレント・ソードマンLVMax』 星12 光属性 戦士族 攻/守3800/2000
 効果
 このカードは通常召喚出来ない。
 このカードは『サイレント・ソードマンLV5』の効果によって特殊召喚された『サイレント・ソードマンLV7』をリリースした場合のみ特殊召喚できる。
(1):このカードの特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在する表側表示の魔法カードを全て墓地に送る。
(2):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は魔法カードを発動することは出来ない。

 最後にアテナが出したモンスターについては、まあ色々言いたいことはあるかもしれませんが、とりあえずアテナだし、で片付けてくれませんかね? ダメですかそうですか。一応、OCG版のセフィロンとアニメ版のセフィロンでは全く効果も違うので、同名の別カード、という認識でお願いします。
 それでは、悠でした!
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