アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第三十話「皆の心を」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第三十話「皆の心を」

 

 

 

 

 

 一先ずは、成功と言ったところでしょうか……。

 私は手札を覗き、密かに溜息を吐きます。

(思いっきり事故ってます……)

 当然と言えば当然です。あんなデッキ構成で事故らない方がどうかしてます。

「行きますよ。私はカードを五枚セットして、ターンエンドです!」

 いきなりの五枚セット。ぶっちゃけ召喚できるのがサイクロイドさんしかいなかったのはかなり最悪です。

『おうおうおう! 来いよ兄さん! 思いっきりなぁ!』

 張り切っている所悪いですけど、思いっきり来られたら負けるのであんまり滅多なことは言わないで欲しいです。

「くっ……! 俺の、ターン!」

 不愉快さを隠しもせずに、セツはカードをドローします。

「俺は魔法カード『融合』を発動する!」

「融合……!?」

 これまでプライドのセツが融合戦術を取ってきたことはありませんでした。あちらも、私とのデュエルに備えてデッキ構成を変更してきたのでしょう。

「俺は手札の『切り札の騎士―エース』と『切り札の騎士―ジャック』を融合する!」

「我ら、だと? まさか……」

 融合素材として使われたエースさんが、愕然とした顔でセツを見る。

「来い。黒の騎士。『切り札の騎士(トランプ・ナイト)・|剣(スペード)―ブラック・ジャック』!」

 『切り札の騎士(トランプ・ナイト)・|剣(スペード)―ブラック・ジャック』ATK2100

 黒の鎧に身を包んだ騎士が、セツのフィールドに現れる。見たことのないモンスターに、私は警戒を強めます。

「そして『切り札の騎士―エース』が融合素材として手札から墓地に送られたことにより、デッキからカードを一枚ドローする」

 融合により失った手札も即座に回復するセツ。流石に、その辺りは激昂していても抜かりはない。でも、それは私にとっても好機!

「リバースカードオープン!『逆転の明札』! 相手がドローフェイズ以外でカードを手札に加えた時、相手の手札と同じ枚数になるようにデッキからカードをドローします! デッキからカードを四枚ドロー!」

 態々手札を全て伏せたのはこのためです。セツのデッキにドロー加速カードが多いことは、あのSinモンスターの特性から明らかでしたし。

「そんな雑魚は壁にもならんと言うことを教えてやる。『切り札の騎士(トランプ・ナイト)・|剣(スペード)―ブラック・ジャック』で『サイクロイド』を攻撃!『ハイローラー・オブ・スペイド』!」

『ぬああっ!? アテナの嬢ちゃん、どうにかしてくれ!』

 迫る漆黒の剣に、慌ててサイクロイドが私に声をかけてきましたが、私は僅かに眼を逸らします。

「えと、すみません。サイクロイドさんはその……」

『え……?』

「基本的に出オチ……なので」

『そんだけ伏せといてそりゃないぜ!? ぎゃああああああああっ!?』

 何の防御も得られなかったサイクロイドさんがあっさり剣で両断されてしまいます。……えと、すみません。

「更に『切り札の騎士(トランプ・ナイト)・|剣(スペード)―ブラック・ジャック』がモンスターを戦闘破壊したバトルフェイズ終了時、相手ライフに2100ポイントのダメージを与える!『ブラッディ・ジャック』!」

「なっ!? と、トラップ発動!『レインボー・ライフ』! 手札を一枚捨てることで受けるダメージを無効にし、その分だけライフを回復します!」

 アテナLP4000→6100

 ありがとうございます。サイクロイドさん。貴方のお陰で、ライフに保険が出来ました。

「ふん。バーン対策カードか。当然と言えば当然か。まあいい。その程度のライフ、すぐにでも奪える」

「更に、手札から捨てた『切り札の騎士―エース』の効果で、私もデッキからカードを一枚ドローします」

「貴様……」

 再び私のものではないカードを使ったことで、セツの表情が歪みます。が、それも一瞬。すぐにその表情を冷静なものに戻してしまいます。

「……ふん。だが、満更ふざけているわけでもなさそうだ。油断は捨てるとしよう」

「…………」

 やはり、こんな序盤に『レインボー・ライフ』を使うべきではなかったかもしれません。セツを怒らせて、油断させる目的が、早くも崩れてしまいそうです。

「まあいい。俺はカードを二枚セットし、ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!」

 さて……どうしましょうか。手札の総とっかえは出来たので全体的なカード・アドバンテージは稼げましたし、サイクロイドさんの犠牲のお陰でライフ・アドバンテージも得られました。

「ですが……一番大事なアドバンテージが消滅してしまった感じですね」

 心理(メンタル)・アドバンテージ。ユーキさんの提唱した心理的な優勢・劣勢のことですが、このデュエルに於いてはある意味最も重要です。

 共に負けられないデュエル。初期のモチベーションはどちらもこれ以上なく最高でしょう。しかしそこでセツのプライドを刺激してあげることにより、怒りや油断と言った“雑念”を生じさせ、ミスを誘発させる。ユーキさん曰く「逆裁で言えば“ゆさぶる”だね~」だそうですが、ゲーム知識はあまりないので良く分かりません。

 そうして生じた隙に、希冴姫さんたちをはじめとしたセツの思い出に呼びかける行為や攻撃を通し、記憶を取り戻す。またまたユーキさん曰く「“つきつける”、だね~」だそうです。

「……私は手札から『ヘカテリス』を墓地に送り、デッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加え、発動します!」

 どうするか迷いましたが、今は兎に角セツの攻撃を凌ぐ必要があります。何とかしてもう一度、メンタル・アドバンテージを取り戻さないと……!

「ふん。漸く真面目に相手をする気になったか」

「……行きます! 私はヴァルハラの効果で手札から『アテナ』を攻撃表示で特殊召喚します!」

 『アテナ』ATK2600

『ほいほ~いセツっちお久~って、こんな序盤に呼ばれると死亡フラグにしか見えないorz』

 良くわかってるじゃないですか。

「っていやいやそうじゃありません。シャルナ、私たちでなるべく稼ぎますよ!」

『……時間を?』

「それ以外に何を?」

『結局やられること前提のおねーさん涙目』

「文句言わないでください! 更に私は『シャインエンジェル』を攻撃表示で召喚します!」

 『シャインエンジェル』ATK1400

「まずはシャルナの効果で600ポイントのダメージ!」

「考えることは同じらしいな。俺は手札を一枚捨てて、トラップカード『レインボー・ライフ』を発動。このターン受けるダメージは全て回復となる」

「くっ!?」

 セツLP4000→4600

「お前のデッキがワンキル特化の高火力デッキであることはわかっていた。当然、そのための対策くらいはしている。結果若干俺自身の火力は落ちたが……まあいいだろう。所詮寄せ集めカードのネタデッキ相手だ」

「……そう言っていられるのも、今の内ですよ」

「だといいがな」

 『レインボー・ライフ』が発動している中で攻めるのは悪手ですが、ブラック・ジャックの効果を考えれば長生きさせておくわけにはいきませんね……。

「バトルします! シャルナで『切り札の騎士(トランプ・ナイト)・|剣(スペード)―ブラック・ジャック』を攻撃!『ディヴァイン・クロス』!」

『あ~、もうどうにでもなれ~!!』

「リバースカード発動! 速攻魔法『収縮』!『アテナ』の攻撃力を半分にする!」

『げっ……』

「させません! カウンタートラップ『マジック・ジャマー』! 手札から『冥幼竜ヴァーミリオン』を墓地に送り、魔法カードの発動と効果を無効にして破壊します!」

『きゅきゅ~!!』

「なにっ!?」

 シャルナを小さくしようとしていた魔力を、ミリーちゃんが身体を張って無効にしてくれます。

「シャルナ!」

『ぃよっし行くわよ! せえええいっ!』

「くっ……!」

 シャルナの放った十字の極光が、黒の騎士を焼き尽くし、セツまで届きます。

「だが、『レインボー・ライフ』の効果により俺はダメージを回復に変換する!」

 セツLP4600→5100

「私はターンを終了します」

「俺のターン、ドロー!」

 カードをドローしたセツは、私に感心したような目を向けてきました。

「褒めてやろう。そんな狂ったバランスのデッキで、よくも回せるものだ、と」

「…………」

 あまり、今の状況では嬉しくありませんね……。

「だが……」

 感心したような顔から一転、酷くつまらなそうな顔でセツが睨んできます。

「敢えて言おう。下らん」

「なっ……」

「デュエルにお前らしさがなく、プレイングに精彩を欠く。先を先をと考えるあまり、焦りがお前の心に巣食う」

「それは……」

「俺の記憶。俺の心。取り戻したいと願う気持ちに、焦りが余計なノイズを走らせている。そんなザマで、俺の記憶が戻ると思うな」

「セツ……?」

 何故、そんなアドバイスの様な……。

 セツはそれ以上何も言わず、デュエルを続行します。

「行くぞ。俺は手札から『融合回収』を発動。墓地の『融合』一枚と『切り札の騎士―エース』を手札に戻す」

 手札補充……!

「そして『スナイプストーカー』を召喚。効果を使用する」

 『スナイプストーカー』ATK1500

「『スナイプストーカー』……!」

 ここでそんなモンスターを……。

「手札から『切り札の騎士―エース』を墓地に捨て、『アテナ』を選択して効果を発動。ダイスロール」

「くっ……おのれ、よくも人をポイポイと捨ててくれる……!」

 墓地に対する嫌悪感が拭えないエースさんは歯噛みします。

「出た目は……5。よって破壊は成立だ。消えろ」

『きゃあっ!?』

「シャルナ!」

 『スナイプストーカー』の持つ光線銃のような武器が、シャルナを狙い撃ちます。

「墓地に送られた『切り札の騎士―エース』の効果で、俺はデッキからカードを一枚ドローする。手札から『融合』を捨ててもう一度効果を使おう。『シャインエンジェル』を対象にダイスロール……6か。破壊は不成立」

「ほっ……」

 助かりました。この上更に『シャインエンジェル』まで破壊されたら折角サイクロイドさんが作ってくれたライフ・アドバンテージまで失うところでした。

「バトルだ。『スナイプストーカー』で『シャインエンジェル』を攻撃。『スナイプショット』」

「リバースカードオープン!『ガード・ブロック』! この効果により私はダメージを受けず、デッキからカードを一枚ドローします!」

「だが、モンスターは破壊される」

「それなら!『シャインエンジェル』の効果を発動します! デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター……『サイレント・ソードマンLV3』を攻撃表示で特殊召喚します!」

『…………』

 『サイレント・ソードマンLV3』ATK1000

「サイレント・ソードマン……か」

 セツは私の後ろで見ているユーキさんを一瞥し、首を振ります。

「……いや、未練は捨てよう。俺は……」

 セツは何かを振り払うように二度、三度と首を振り、此方を見つめてきました。

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー! このスタンバイフェイズに『サイレント・ソードマンLV3』はレベルアップします! デッキから『サイレント・ソードマンLV5』を攻撃表示で特殊召喚します!」

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300

「ミリーちゃんも戻って来ます!」

『かぅ!』

 これで手札は四枚。次は……!

「希冴姫さん、お願いします!」

『承知しましたわ!』

 『切り札の騎士―クィーン』ATK1500

「貴様は……」

『セツ様……騎士の務めを、果たしに参りましたわ』

「黙れ。今更貴様に何が出来る。折角拾った命を、無駄に散らすだけだ」

『……そうでも、ありませんわ』

「なに?」

『例えその身が朽ち果てようとも、守るべき存在を守る。その意志に殉じたわたくしだからこそ、確かな実感と共に言えるのですわ。セツ様。貴方は間違っています』

「間違い……か」

『刺し違えてでも、等と言う考え方では、守れるものも守れません。死んでも守る、等と言う自己満足では、結局誰も守れません。セツ様、貴方も……』

「だから、どうした?」

『な……』

 まったく堪えた様子のないセツに、希冴姫さんが絶句します。

「俺が間違っている? そんなこと、百も承知だ。世界の滅びを甘んじて受けよう等と言う考え方が、正常であると思っているとでも?」

『……では、何故?』

「簡単なことだ」

 セツは胸を張り、誇らしげに答えます。

「例えどれほど間違っていようとも、俺は己の意志を通す覚悟をしている。他の何を裏切ろうとも、己の信念だけは己が誇りに懸けて裏切らん、とな」

『セツ様……!』

「だから希冴姫。止めたいのならかかって来い。俺は言った筈だ。わかり合えるとすれば、デュエルでしかあり得ないと」

「希冴姫さん」

『……わかりましたわ。アテナ、わたくしの剣、一時預けますわよ』

「はいっ!」

 希冴姫さんに初めて名前を呼ばれました。それを信頼の証と受け取り、私は動きます。

「行きます!『サイレント・ソードマンLV5』で『スナイプストーカー』を攻撃!『沈黙の剣LV5』!」

「未練は……断つ! リバースカード『次元幽閉』! サイレント・ソードマンをゲームから除外する!」

『…………!』

「サイレント・ソードマン!」

 ユーキさんが次元の彼方へと消えて行くサイレント・ソードマンを見て悲痛な声を挙げます。

「くっ……希冴姫さん」

『問題ありません。行けますわ』

「……すみません! 希冴姫さんで『スナイプストーカー』を攻撃!『エレガント・ハーツ』!」

『はああああああああああああああっ!』

「迎撃する。過去の残滓は……消えろ!」

 攻撃力は互角。一瞬の交錯の後、希冴姫さんと『スナイプストーカー』は共に消滅していきます。

「希冴姫さん……」

『後は、頼みましたわ』

「……はい!」

「くっ……どいつもこいつも」

 いらだたしげにセツが歯軋りをします。多少……冷静さはなくなってきたみたいですね。

「私はこれでターンエンドです」

「俺のターン、ドロー!……ちっ、カードをセットしてターンエンドだ」

「っ!」

 攻撃が止みました! 今なら……!

「行きます! 私のターン、ドロー!」

 今、セツは揺れています。堪えていないように見えて、希冴姫さんたちによる揺さぶりは意味がありました!

「私は手札から魔法カード『強欲な壺』を発動します! デッキからカードを二枚ドロー!」

 手札は五枚! 行けます!

「私は手札から『融合』を発動します! 手札の『破滅の女神ルイン』と『剣聖―ネイキッド・ギア・フリード』を融合!」

「ネイ……キッドだと!?」

「比類なき剣、光翼を纏いし姿を見せよ!『天剣―ネイキッド・ギア・フリード』!」

『おおおおおおおっ!』

 『天剣―ネイキッド・ギア・フリード』ATK2800

「貴様……ネイキッド!」

『ふ……どうした、セツよ。随分と険しい顔をしているな?』

「生きていたか」

『皆が戦っている時に、一人だけ寝てはおれんだろう』

「……随分と深く抉ってやったつもりだが」

『ふん。あの程度、我がたくましい筋肉の前では蚊の一刺しにしか過ぎんということよ』

 何時も通り、力コブを見せて筋肉アピールをするネイキッドさん。そんなネイキッドさんに、セツは冷ややかな目を向けます。

「男の肉体美を誇るなら、まず下半身から露出することだ」

「ってなんでですか!?」

『盲点であったアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!』

「脱がないでくださいっ!」

 その身に纏う天使の衣を躊躇いなく脱ぎ捨てようとするネイキッドさんを怒鳴りつけて止めます。ああもうこの人は……。

 

 

 

 

 

「……アテナに呆れられる辺り、大概だよね」

「ネイキッド……あの馬鹿は」

「……ちなみに、あんなこと言えるくらいセツくんのってその、凄いの?」

「……さだめは具体的には言わない。ただ、これだけは言っておくよ。……さだめが最後に見た時は、猛々しい龍○牙……」

「上位素材……!?」

「貴様らは何の話をしている……」

 

 

 

 

 

「うぷっ……」

 は、鼻血が……。た、猛々しい……。

『どうしたアテナ殿。我が肉体は無垢な少女には刺激的過ぎたか?』

「貴方じゃありません!」

「無垢でもないだろうな。色欲(ラスト)」

「と、兎に角! 私は更に、手札から装備魔法『与奪の首飾り』をネイキッドさんに装備します!」

『むぅ……攻撃力が上がるわけではないが……』

「効果は使えます! 私はネイキッドさんの効果で、除外されている『サイレント・ソードマンLV5』を特殊召喚します!」

『…………』

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300

「サイレント・ソードマン!」

 無言で生還したサイレント・ソードマンに、ユーキさんがまた声を挙げます。

「このダイレクトアタックが通れば……!」

 丁度5100ポイント。サレンダーに頼らなくても、ここで……!

「ネイキッドさんとサイレント・ソードマンでダイレクトアタックをします!」

「させん! トラップ発動!『和睦の使者』! このターンのダメージを無効化する!」

「くっ……やはり、通りませんか」

「当然だ」

 そうは言っても、あの時ドローした一枚がダメージ無効カードだった辺り、セツのドロー力はやはり相当なものです。

「私は、これでターンを終了します」

「俺のターン、ドロー! 俺も使わせてもらう。手札から魔法カード『強欲な壺』を発動。デッキからカードを二枚ドローする」

 ドローしたカードを見たセツは、ニヤリと笑みを浮かべて私を見ます。

「そろそろ……潮時だな」

「っまさか!?」

「俺はフィールド魔法『ダークゾーン』を発動。そして、エクストラデッキから『アルカナ ナイト・ジョーカー』をゲームから除外し、来い。『Sinアルカナ ナイトジョーカー』」

 『Sinアルカナ ナイト・ジョーカー』ATK3800→4300

「……っ!」

 遂に……出ましたか!

「Sin……!」

「まずは、鬱陶しいサイレント・ソードマンを蹴散らす。『Sinアルカナ ナイト・ジョーカー』で『サイレント・ソードマンLV5』を攻撃。『Sinロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

「くっ!? と、トラップカード『レインボー・ライフ』! 二枚目のこのカードでダメージを回復にします! ミリーちゃん、ごめんなさい!」

 アテナLP6100→8100

 サイレント・ソードマンが漆黒の剣で切り裂かれ、そのダメージが私まで届きますが、そのダメージは私の眼前で回復に変化します。ですが、ミリーちゃんは、カウンター罠のコストではないので戻っては来ません。

「ターンエンド。さあ、足掻いて見せろ」

「くっ……わ、私のターン!」

 

 

 

 

 

 カードをドローしたアテナを見つつ、さだめはユーキさんに尋ねる。

「どう思う?」

 ユーキさんは、目の前でフェイバリットカードが切り裂かれた衝撃から、少し青い顔で答える。

「そうだね……とりあえず、アテナちゃんはあのデッキを良く回せてると思うよ」

「だよね。正直、驚異的だよ」

 普通じゃあり得ないような構成で、無茶苦茶なデッキを組んでいるのに、未だに初期ライフを下回っていない、どころかライフが倍になってるなんて普通じゃ考えられないくらい。

「……だけど、ちょっと上手く回し過ぎ、かな~?」

「どういうこと?」

 それっていいことなんじゃ?

「上手く回し過ぎて、互角の戦いをしちゃってる。これじゃ、セツくんのプライドは刺激出来ないし、セツくん自身も本気で戦いにきちゃう。そうすると、最初の目的だったサレンダーが難しくなる」

「それは……」

 確かにそうだ。お兄ちゃんを本気にさせちゃいけない。それじゃ勝てない。

「それに、アテナちゃん自身もそろそろあのプレイングに耐え切れなくなってきてる」

「そうだね……」

 元々アテナは刹那的っていうか、その場その場で臨機応変……っていうか行き当たりばったりでデュエルを回すタイプのデュエリストだから、今回みたいに先の展望とかを見据えたデュエルは苦手な筈。あのデュエルスタイルはどちらかと言えば、お兄ちゃんやユーキさんのスタイルだし。

「……ただ、それをセツくん自身がアテナちゃんに指摘してきたことが気になるよ」

「そうだね。そんなことしても、お兄ちゃんに不利になるだけだし」

「それこそ、奴のプライドの問題ではないのか? 本気のアテナを叩き潰そう、という」

「うん。それはそうだと思うんだけど~……」

 お兄ちゃんは、さっきから希冴姫さんの言葉やサイレント・ソードマンの存在に反応したり、ネイキッドさんの下らない台詞にも一々ツッコミを入れたりと、以前のプライドからは少し雰囲気が変わって来ている印象を受ける。

「もしかしたら……」

「結構、良いところまで来てるのかもね。お兄ちゃんの記憶」

 今はまだ、雰囲気でしかない。でも、その内思い出せる筈。だって……。

「お兄ちゃんは、プライドなんかに絶対負けない。必ず、思い出してくれる。だから……」

 もう少し、頑張って……アテナ!

 

 

 

 

 

 




・『切り札の騎士・剣―ブラック・ジャック』 星8 闇属性 戦士族 攻/守2100/2100
 融合・効果
 『切り札の騎士―エース』+『切り札の騎士-ジャック』
 このカードの融合召喚は、上記のカードでしか行えず、融合召喚でしか特殊召喚出来ない。
(1):このカードが戦闘を行った場合、相手プレイヤーに与える戦闘ダメージはゼロになる。
(2):このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し、墓地に送った場合、相手ライフに2100ポイントのダメージを与える。
(3):フィールド上に表側表示で存在するこのカードの攻撃力が元々の攻撃力より高い場合、このカードを破壊する。

 今回のオリカです。名前の由来はもちろんトランプのゲームの一つであるブラックジャック。攻撃力が2100以上で自壊するのもブラックジャックでは22以上でバーストする(※負ける)からです。
 それでは、悠でした!
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