アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第三十一話「心を届けて」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第三十一話「心を届けて」

 

 

 

 

 遂に、出てきましたか……。

 『Sinアルカナ ナイトジョーカー』ATK4300

「流石に、圧巻の攻撃力ですね……」

 元々の私のデッキでは、ヴィーナス暴走召喚でようやく相討ちが取れるレベル。そう考えると、あまりにあんまりな攻撃力ですね……。兎も角、それでも何とかするしかないです。

「私はネイキッドさんを守備表示に変更。更にモンスターを一体守備表示でセットしてターンを終了します……」

 『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』DEF2400

 それでも、そうそう何とかなるなら苦労はしません。仕方なく、ドローしたモンスターをセットして守りを固めます。

「ふん。俺のターン、ドロー」

 そんな私をつまらなそうに睥睨して、セツはカードをドローします。幸い、『Sinアルカナ ナイトジョーカー』のデメリット効果で他のモンスターを展開することは出来ませんから、それだけが救いですね……。

「モンスターが展開出来ないからと言って、安心して貰っては困る。俺は手札から魔法カード『命削りの宝札』を発動する」

「ドロー強化!?」

 マズイ、です。これでアルカナの効果が使えるようになったのみならず、手札に|あの(・・)カードが行ってしまった可能性も……。

「それだけじゃない。俺は手札から魔法カード『デス・メテオ』を発動する!」

「なっ!? きゃああああああああああっ!?」

 アテナLP8100→7100

「ぐっ……そ、ういえば……そうでしたね」

 セツには、豊富なバーンカードもありました。まだ、ライフに余裕はありますが、身体に蓄積する実際のダメージは馬鹿になりません。正直、今も結構くらくらしています。

「バトルだ。そろそろその暑苦しい筋肉には退場して貰おうか。『Sinアルカナ ナイトジョーカー』で『天剣―ネイキッド・ギア・フリード』を攻撃。『Sinロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

『ぐおおおおおおおおおっ!?』

「ネイキッドさん!」

『ぐっ……すまぬアテナ殿! 我では、力不足であった……!』

「そんなことは、ありません。私は『与奪の首飾り』の効果を発動します! 装備したネイキッドさんが戦闘によって破壊され、墓地に送られたことで、私はデッキからカードを一枚ドローします!」

「ふん。まあいい。俺はターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!」

 これは……なんとか、してみましょう。

「私は、何もせずにターンエンドです」

 何もせずターンを終了した私を見て、セツが嘲笑を浮かべます。

「遂に事故を起こしたか」

「さあ……それは、どうでしょうね」

「ふん。まあいい。俺のターン、ドロー」

 ドローカードを見たセツは、愉快そうにニヤリと笑いました。

「ほう……これは、耐え切れるかどうか、見物だな」

「っ!?」

「俺は魔法カード『ハリケーン』を発動する。フィールド上の魔法・罠を全て持ち主の手札に戻す!」

「なっ!?」

 『ハリケーン』だと、フィールド魔法も手札に戻ります。当然、フィールド魔法がなくなったSinモンスターは自壊するはずですが……。

「更に、俺はチェーンして速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動!『Sinアルカナ ナイトジョーカー』の効果を無効にすることで、『Sinアルカナ ナイトジョーカー』は自壊せず、フィールドに残る」

 『Sinアルカナ ナイトジョーカー』ATK4300→4700→4200

「っ……」

 これがセツの目的ですか……!

「まだだ。俺は手札から速攻魔法『トラップ・ブースター』を発動。手札を一枚墓地に送ることで、俺はこのターン一度だけ、手札からトラップカードを発動することができる」

「っ……!『トラップ・ブースター』……!」

 セツの、黄金パターン……!

「更に、墓地に送った『切り札の騎士―エース』の効果でカードを一枚ドローする」

 またしてもエースさんを墓地に送り、セツは手札を回復させます。

「俺はフィールド魔法『ダーク・ゾーン』を再び発動し、バトルフェイズに入る」

 『Sinアルカナ ナイトジョーカー』ATK4200→4700

「バトル。『Sinアルカナ ナイトジョーカー』でセットモンスターに攻撃。『Sinロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

 『リチュア・エリアル』DEF1800

『きゃあああああっ!?』

「エリアルさん……ごめんなさい!」

『だ、大丈夫です……それよりも、お役に立てなくてすみません!』

「そんなことはありません! 私はエリアルさんの効果を発動します!」

「エリアルの……効果?」

「『リチュア・エリアル』がリバースした時、デッキからリチュアと名の付いたモンスターを一枚、手札に加えることが出来ます! 私が手札に加えるのは……『反魂のスピ|リチュア(・・・・)』!」

「っ……そういう、ことか」

 かなり無理矢理なこじつけですけど、事実名前にリチュアが入っていることには変わりありません!

「だが、それも無駄だ! 俺は手札からトラップカード『連撃』を発動する!」

「っそ、それは……!」

「Sinの剣……お前の小さな身体で受け止めきれるか?『Sinアルカナ ナイトジョーカー』でプレイヤーにダイレクトアタック!『Sinロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 アテナLP7100→2400

『アテナ(ちゃん)っ!』

 凄まじいダメージに、私の身体は大きく跳ね飛ばされます。

 ドンっ! と吹き飛ばされた身体が、誰かに抱きとめられる感覚。

「ぁ……?」

『よォ……まだ、死んでねェよな?』

 吹き飛ばされた私を受け止めてくれたその精霊は、そう言ってシニカルな笑みを浮かべます。

「と……ぅ、ぜんですよ……ゴーズさん」

『ハッ……。なら、とっとと立てや』

 私はゴーズさんの手を借りて何とか立ち上がり、手札のカードをデュエルディスクにセットします。

「フィールドに……何のカードも存在しない状態でダメージを受けた時、手札から『冥府の使者ゴーズ』と『冥府の使者カイエントークン』をフィールド上に特殊召喚することが出来ます……」

 『冥府の使者ゴーズ』ATK2700

「そして……この効果で特殊召喚されたカイエントークンの攻撃力・守備力は……受けたダメージと同じになります!」

 『冥府の使者カイエントークン』ATK4700

 今、私の目の前には圧倒的な存在感を放つカイエンさんが、その手に武器を構えて立ち塞がっています。

『ハッ……漸く、マトモにやれそうじゃねェかヨ。カイエン』

『はい。今の私には、力が漲ってくるようです!』

「ちっ……ゴーズとカイエン。いや、それよりも……」

 セツは戸惑うような視線を私に向けます。

「何故……生きている」

 4700という破格の戦闘ダメージをまともに受けて、私はそれでも立っています。正直……もうフラフラですけどね。

「それでも……倒れるわけにはいきませんから」

 セツに、もう一度……。

「もう一度、貴方に……抱きしめてもらうまで」

 私は、倒れません!

「なら……耐え切って見せろ! 俺は『ファイヤー・トルーパー』を召喚し、リリースすることで1000ポイントのダメージを相手ライフに与える!」

「きゃあああああああああっ!?」

 アテナLP2400→1400

「ぐっ……ぁ……ぅ」

 熱い……熱い熱い熱い熱い! でも……!

「負けま、せん……!」

「くっ……この……っ!」

 腹立たしげに、セツが歯軋りをします。私は、今にも途切れそうな意識を必死に繋ぎとめ、セツに向かって笑いかけます。

「セツ……セツなら、きっと」

 この苦しみにも、耐え切れる筈。だから私も……!

「耐えて、みせますよ……!」

「……俺は、魔法カード『命削りの宝札』をもう一枚発動。デッキからカードを五枚ドローする」

 セツの手札が再び増強されます。

「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ……」

 エンド宣言をしたセツは、何か言いたげに、私を見つめます。

「……どうしましたか?」

「……耐え続けても、辛いだけだぞ」

「え?」

「俺には……わからん。過去・現在・未来……その全てを絶望に彩られて尚、その両足で立つお前の在り方が……。俺は、裏切ったんだろう? 記憶を無くして、この傲慢(プライド)に身を任せたとはいえ……お前を。仲間を。それも、お前にとって、誰よりも大切だっただろうこの俺が」

 困惑を強めたかのように、セツが首を振ります。その姿が、まるで親とはぐれた子供のように寂しげで……私は、一瞬身体の痛みを忘れました。

「それでも……それでも前に進み続ける。そんな貴方の姿を、私たちは知っているから」

 私が強いんじゃありません。そんな貴方を取り戻したいから。今の私は、貴方の模倣をしているだけ。

「だから……思い出してください。セツ。貴方なら……きっと」

 終焉になんて、負けませんから。

 『Sinアルカナ ナイトジョーカー』ATK4700→4300

 セツのターンエンドと同時に、『Sinアルカナ ナイトジョーカー』の攻撃力が元に戻ります。これで、カイエンさんの攻撃力がアルカナを上回りました。

「私の、ターン! ドロー!」

 今は、必ず貴方を助け出します!

「バトルです! カイエンさんで『Sinアルカナ ナイトジョーカー』を攻撃!『冥天刃陽の太刀』!」

『行きます……! やああああああああああっ!』

「ぐぁっ……!」

 セツLP5100→4700

「続けて……!」

「させん!『Sinアルカナ ナイトジョーカー』が破壊された時、手札全てとエクストラデッキの『切り札の騎士帝―アルカナ ロイヤルジョーカー』をゲームから除外し、ライフを100にすることで、手札から『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』を特殊召喚する!」

 セツLP4700→100

 カイエンさんに切り裂かれた天位の闇騎士が、その鎧と剣に、さらなる力を宿して復活します。

「やっぱり……出てきましたか!」

 『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』ATK4500→5000

「攻撃力……5000!」

 ゴーズさんどころか、今のカイエンさんですら相手にならない攻撃力。仕方なく、私は攻撃を中断し、メインフェイズ2に入ります。

「手札がない今の内に……! 私は永続魔法『神の居城―ヴァルハラ』を発動し、魔法カード『貪欲な壺』を発動します! 私は墓地から『サイクロイド』『シャインエンジェル』『サイレント・ソードマンLV3』『サイレント・ソードマンLV5』『リチュア・エリアル』の五枚をデッキに戻してシャッフルし、二枚ドローします!」

「ならば、俺はリバースカード『逆転の明札』を発動! お前の手札は四枚。よって俺もデッキから四枚カードをドローする!」

「っ……!」

 これで、また手札が……!

「私は……ゴーズさんを守備表示に変更してカードを一枚セット。ターンエンドです」

『チッ……コイツは旨くねェな』

「俺のターン、ドロー! バトルを行う!『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』で『冥府の使者カイエントークン』を攻撃!『Sinファイブ・オブ・ア・カインド』!」

『あああっ!?』

「きゃあああっ!」

 アテナLP1400→1100

 カイエンさんが破壊され、私のライフにも更に危険信号が灯ります。流石に……余裕がなくなって来ましたね。

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

 アルカナの耐性を減らしてでもカードをセットしてきた……? あの伏せカード、一体……。もしまた『連撃』のようなカードであれば……。

「私のターン、ドロー!」

 これで手札は四枚。けれど、今出来ることは何もありません。

「……私は、ターンエンドです」

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から装備魔法『巨大化』を『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』に装備する!」

 セツがドローしたカードをプレイするのを聞いて、私は戦慄します。

「っ『巨大化』!?」

 今、セツのライフは風前の灯……!

「『巨大化』の効果により、アルカナの元々の攻撃力は倍になる!」

 『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』ATK5000→9000→9500

「攻撃力、9500……!?」

 最早、まともな手段で戦闘破壊することは叶いません。かといって、あの効果を考えれば効果破壊も……!

「これで……終わりにする!『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』で、『冥府の使者ゴーズ』を攻撃!『Sinファイブ・オブ・ア・カインド』!」

『グッ、オオオオオオオオオオォッ!?』

 天すらも断たんと言うほど巨大な剣で、ゴーズさんが一刀両断されてしまいます。ゴーズさん……!

「俺は……ターンエンドだ」

 圧倒的優位に立っている筈のセツですが、その表情は険しい。迷いが断ち切れていないのか、それとも……。

「何故だ……」

 それとも。

「何故……そんな目で俺を見る……?」

 希望を捨てず、ただ憐れむようにセツを見る私に、困惑しているのか。

「何故……諦めてくれない?」

「……私のターンです」

「答えろ!」

 ごめんなさいユーキさん。私、作戦は無視します。

「アテナちゃん……?」

「私……勝ちます! この……ターンで!」

 今の私なら……出来る筈です!

「セツ……貴方の罪(Sin)を、私が消します!」

「なんだと……?」

 私の脳裏に蘇るのは、いつかの光お姉さんとのデュエル。そう、思い出しました。これが、セツのSin攻略の答え!

「私はリバースカード『サンダー・ブレイク』を発動します! 手札一枚をコストに、『Sinアルカナ ロイヤルジョーカー』を破壊します!」

「させると思うのか!? 手札を一枚ゲームから除外することで、『サンダー・ブレイク』の発動と効果を無効にして破壊する!」

 当然、この『サンダー・ブレイク』は無効にされます。ですが、これで全ては整いました!

「私は、フィールドの『神の居城―ヴァルハラ』の効果を発動します!」

「っ……!」

 そう。アルカナの弱点その一は、既に発動済みの永続魔法や罠の効果には干渉出来ないことです!

「私は手札から『反魂のスピリチュア』を特殊召喚!」

 『反魂のスピリチュア』ATK800

「そいつは……お前の……」

 そしてここからが……アルカナ最大の弱点!

「私は、墓地から『レベル・スティーラー』の効果を発動します!」

 これが……『サンダー・ブレイク』発動の真の意図! 手札コストとして墓地に送った『レベル・スティーラー』!

「なんだと!?」

 セツが息を呑む。当然です。だって『レベル・スティーラー』の効果は……。

「一ターンに、何度でも使えます! 私は『反魂のスピリチュア』のレベルを一つ下げて『レベル・スティーラー』を特殊召喚します!」

「くっ……!?」

 本来なら、無効にするまでもない効果。でも、アルカナは……。

「強制効果か……!」

 『反魂のスピリチュア』レベル7→6

 セツの手札が一枚消滅し、残りは二枚。

「もう一度『レベル・スティーラー』の効果を発動!」

「ッ無効だ……!」

 『反魂のスピリチュア』レベル6→5

 あと、一枚!

「最後です!『レベル・スティーラー』の効果を発動!」

「馬鹿な……!」

 『反魂のスピリチュア』レベル5→4

「手札が……!」

 これで、アルカナの効果は使えません!

「行きます! 私は私自身の効果、手札を捨ててフィールド上の闇属性モンスターをデッキに戻し、同じ数だけ墓地から光属性モンスターを蘇生します!」

 これで……アルカナを戻せば!

「おおお……! 速攻魔法『神秘の中華鍋』発動する!」

「えっ!?」

「ここで……こんなところで、あんなデッキに……負けてたまるか! 俺は自らアルカナを破壊することで、その攻撃力分、9500ポイントのライフを回復する!」

 セツが……自らSinを破壊した!?

 セツLP100→9600

 スピリチュアの効果でバウンスが出来なかったので、効果は不発。墓地からモンスターの蘇生も行われません。

「それでも……!『反魂のスピリチュア』第二の能力! 一ターンに一度相手の墓地に存在する闇属性モンスター一体をデッキに戻すことで、墓地の光属性モンスターを、効果を無効にして特殊召喚します! 私は『切り札の騎士・剣―ブラック・ジャック』を戻して『切り札の騎士―クィーン』を特殊召喚!」

 希冴姫さん……! もう一度、お願いします!

 『切り札の騎士-クィーン』ATK1500

『……感謝、しますわ。わたくしに、もう一度チャンスを与えてくれて』

「バトルします! 私自身……『反魂のスピリチュア』でセツにダイレクトアタック!『トライデント・サンシャイン』!」

「ぐあっ……アテ、ナ……!」

 セツLP9600→8800

「続けて希冴姫さんでダイレクトアタック!『エレガント・ハーツ』!」

『セツ様……!』

「希……冴、姫……っ」

 セツLP8800→7300

「まだだ。まだ、終わっては……!」

「そう。まだです」

 まだ……。

「私のバトルフェイズは残っています!」

「な、に……?」

「この瞬間私は、手札を全て捨てることで速攻魔法『|狂戦士の魂(バーサーカーソウル)』を発動します!」

『…………え?』

 それまで固唾を呑んで見守っていた後ろの皆から、何故か気の抜けたような声が聞こえました。どうしたんでしょうか?

 私は残った『水霊使いエリア』のカードを捨てることで、狂戦士を呼び覚まします。

『……はっ!? あ、あのアテナ? もしかしてその、それは……』

「希冴姫さん、お願いします!」

『そ、そんなっ!? あ、ああああああああああああああああああああああああっ!?』

 狂戦士の力が宿った希冴姫さんが、その剣を構え直します。

「くっ!?」

「まずは一枚目……ドローします!」

 引いたカードは……。

「『切り札の騎士―キング』! モンスターカードです!」

『あああああああああああああああああああああっ!』

「ぐあああああああっ!?」

 セツLP7300→5800

「二枚目、『切り札の騎士―ジャック』、モンスターカード!」

『やああああああああっ!』

「ぐがっ……ぁ」

 セツLP5800→4300

 希冴姫さんがセツの眼前で、狂ったように剣を振るいます。

「三枚目……!『切り札の騎士―テンス』!」

『おおおおおおおおおおおっ!』

「っ……が!?」

 セツLP4300→2800

「四枚目、『冥王竜ヴァンダルギオン』、モンスター!」

『はぁ、はぁ……ああああっ!』

「…………っ!」

 セツLP2800→1300

「これで……最後です!」

「っ!」

 その時、膝を着いていたセツの目が力を取り戻し、ギッ! と睨みつけてきました。

「っ……! 五枚目は……魔法カード、です」

 その気迫に恐れてしまったのか、私が最後にドローしたのは魔法カード『光神化』。セツのライフは、ギリギリですが残りました。

『あ、あああ……ぁ?』

 瞳から狂気の色が消え、カクンと膝を着く希冴姫さんを、セツが抱きとめます。

「…………」

『せ、セツ……様?』

「…………おはよう。希冴姫」

『ぇ……?』

「……ッ」

 痛みをこらえるように立ち上がるセツ。その目には……理性の光。私たちの良く知る……穏やかな、セツの顔。

「……ったく、考えなしの特攻は相変わらずだな。死んだらどうするつもりだったんだ?……アテナ」

「ぁ……」

 セ、ツ……?

「お、お兄……ちゃん?」

「久しぶり……って言えばいいのか? さだめ。皆も」

「せ、セツ……記憶、が?」

 私は、震える手を伸ばし、セツに問いかけます。セツは、悪戯っぽい微笑を浮かべて答えます。

「……誰かさんが、随分強烈過ぎる目覚ましをしてくれたから、な」

「セツ……!」

 戻って、来てくれた……! やっと、やっと……私たちの、セツが……!

『セツ(くん・先輩)!』

「お兄ちゃん……」

 中でも、さだめさんは安堵のあまり座り込んでしまっています。よかった……本当に……。

「セ、セツ……お前、大丈夫、か?」

「剣士か。お前と凛には、悪いことをした。謝っても謝りきれん」

「い、いやオレらのことは別に良い。こうして、何ともなかったんだ。今更蒸し返しゃしねえよ。けど……」

「そ、そうですよ! 先輩、身体の方は……」

 そうです。不可抗力とはいえ(強調)、セツの身体は10000近いダメージを纏めて受けてしまっている筈……。しかし私たちの心配を余所に、セツは軽く笑って手を振ります。

「ん? ああ、大丈夫大丈夫。こんなん全然大したことなごぷぁっ!?」

「血が!?」

「お、お兄ちゃーーーーーーん!?」

「セツーーーーーー!?」

 セツが会話の最中に、おびただしい量の血を吐いて蹲ります。え、えと……。

「もしかして……私?」

『もしかしなくてもお前の所為だ!』

「ひゃうっ!?」

 恐る恐る呟いた私に、皆さんから一斉にツッコミが入りました。だ、だって……。

「ああするしかなかったんですよ! ああでもしないと、セツのライフを削れなかったですし……」

「限度があるよ~!」

「そもそもあんなカード入れんな!」

「う、うぅ……」

 非難轟々のなか、セツが口元を押さえつつ立ち上がります。

「っ……っ……だ、だいじょうぶ。俺は、平気だ」

「い、いやだってお兄ちゃん! 今、血がビシャァって!『ごぷぁっ!?』って!」

「『ぐはっ!?』くらいなら兎も角……」

「うん……『ごぷぁっ!?』はマズイよ~……」

「血の量も……ボタボタ、とかいう可愛いもんじゃなかっただろ」

「……バケツ一杯分ひっくり返したような音」

「それ、致死量なんじゃ……」

 セツ以外の全員が大慌てでセツの心配をする中、セツ自身は一人だけ冷静に口元の血を拭います。

「だから、大丈夫だ。俺は、やせ我慢なら昔から得意なんだ」

「ほらやっぱりやせ我慢じゃん! ほらアテナ! さっさとターン終了してお兄ちゃんにターン回して! お兄ちゃんはさっさとサレンダーする!」

「は、はい! ターンエンドです! セツ!」

「……俺の、ターンか」

 さっきの『|狂戦士の魂(バーサーカーソウル)』では、ギリギリセツのライフを削りきれませんでした。まあそれで記憶は戻ってくれたので、結果オーライとして……。

『ジロッ!』

 け、結果オーライとして! 当初の目的だったセツにサレンダーを促した私たちでしたが、セツは自分にターンが回って来ても中々サレンダーしようとはせず、何かに耐えるように眉間にしわを寄せていました。

「セツ……?」

「すまん。アテナ、皆」

 え……と疑問に思うよりも早く、セツはその手をデッキに掛けました。

「え、セ、セツ……?」

「お兄ちゃん……」

 それは、どう見てもサレンダーの体勢ではなく……ドローの格好。戦意の篭った眼。困惑する私たちに、セツは悲しげに告げました。

「俺の記憶は戻った。皆のこと、全部思い出した。けど……けど俺は」

 喜びの絶頂にあった私たちを、一気にどん底まで突き落とす、その言葉を。

「それでも俺は……皆の敵だ」

 

 

 

 

 

 





 逆転の明札使いすぎだと思った人。すみません。ぶっちゃけこれの使い勝手が良すぎて手放せません。そして命削りの宝札。正直展開上の都合に寄る辻褄合わせなんですが、これはやはり悠の実力不足ですね。難しい。……あ、アテナの最後の速攻魔法については、アニメ効果です。まさかOCG化するとは……。
 無事セツの記憶を取り戻したアテナたち。しかし、それでも尚敵であると宣言したセツ。セツの真意とは? 次回、VSセツ編劇的決着! 衝撃の結末を見逃すな!
 ……ちょっと意識して次回予告風にしてみました。
 それでは、悠でした!
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