アルカナ~切り札の騎士~
第四期第三十四話「俺に出来ること」
「……ボクのターン。ドロー」
俺たちのやり取りを見ていたのか見ていないのか、幾分激情は収まったエンヴィーがカードをドローする。
「ボクはモンスターを一体守備表示でセット。『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を守備表示に変更してターンエンド」
『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』DEF1000
激情の収まったエンヴィーは嫌に慎重だ。いや、焦らずとも、俺が自滅する可能性の方が高いのだから当たり前か。
「俺のターン、っ……ドロー!」
カードをドローする度、体中を激痛が走る。だが、これくらいは今更だ。気にしちゃいられない。
「俺は『切り札の騎士―キング』を攻撃表示で召喚! 効果によりデッキから『切り札の騎士―ジャック』を特殊召喚する!」
『切り札の騎士―キング』ATK1600
『切り札の騎士―ジャック』ATK1900
『主よ、無理をするでないぞ』
『貴方が死んでは元も子もありません。くれぐれも、ご自愛を』
「ああ、わかってる。俺は『アルカナソード ダイヤ』をジャックに装備。バトルだ!」
『切り札の騎士―ジャック』ATK1900→2200
『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』はリクルーター。倒しても次の餓狼が出てくるが、三銃士による波状攻撃なら全て討ち取れる!
「まずは希冴姫で『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃!『エレガント・ハーツ』!」
『はああああああああっ!』
希冴姫の剣が闇の狼を切り裂く。
「無駄だよ。『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』はもう一体居る」
『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』DEF1000
「もう一度! 今度はキングで『終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃する!」
『わしを、老骨と侮るでないぞ。おおおおおおおっ!』
キングの剣は力強く狼を切り裂く。これで三体だ。これ以上は召喚されない!
「そしてジャックで守備モンスターを攻撃だ!」
『……御免ッ!』
ジャックが切り裂いたのは『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリット)』と似た顔を持つ小さな闇の塊。
『|終焉の僕(ジ・エンド・サーヴァント)』DEF0
「あれは……『|終焉の僕(ジ・エンド・サーヴァント)』?」
「ユーキちゃん、知ってるのか?」
「うん。『|終焉の僕(ジ・エンド・サーヴァント)』は、戦闘で破壊されたとき、除外することでデッキからカードを一枚ドロー出来るドロー強化モンスターだよ」
ユーキちゃんの言葉通り、エンヴィーはカードを除外して一枚ドローしている。俺も『アルカナソード ダイヤ』の効果でカードを一枚ドローする。
「それに……『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を三体とも倒しちゃったのは、ちょっとマズイよ~」
「……どういうことだ?」
「ボクのターン!」
ユーキちゃんに詳細を尋ねる間もなく、エンヴィーがカードをドローする。
「ボクは、手札から永続魔法『魂吸収』を発動」
「『魂吸収』?」
『魂吸収』はカードが除外される度、一枚につき500ポイントライフを回復するゲインカード。前回のユーキちゃんとのデュエルでも思ったが、やはり除外軸なのか。
「ここで『魂吸収』!? マズイよ。一気に回復されちゃう!」
「なに?」
ユーキちゃんが蒼白な顔で叫ぶ。エンヴィーが動く。
「ボクは墓地に存在する三体の『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を墓地融合する!」
「墓地融合!?」
墓地の『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』が除外され、その魂がエンヴィーに吸収されて行く。
エンヴィーLP3800→5300
「……地獄に落ちた三匹の餓狼。互いにその屍肉を喰らい、混ざり合い、その身は一つ、三つ首を持つ魔獣へと変わる……『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』は、リクルーターでありながら、墓地に溜まることを警戒しなくちゃいけないモンスター。『融合』の魔法カードを使うまでもないの。……出てくるよ。三頭狼が」
「ケルベロス……!?」
「融合召喚……!『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』!」
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』ATK1300
「な、なんだ……名前の割に攻撃力は『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』と同じじゃん。希冴姫さんよりも低いし、脅かさないでよ」
安堵したようなさだめの言葉に、しかしユーキちゃんは首を振った。
「『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』は戦闘では破壊されない上、モンスターがいる限り一ターンに三度まで攻撃出来る効果を持ってる。それだけなら、単なるリクルーター潰しのモンスターだけど……」
なにか、あるのか。コンボカードが。
「ボクは手札から魔法カード『終焉思想』を発動」
「っ……やっぱり!」
聞き慣れぬカード名に、ユーキちゃんを見る。ユーキちゃんは俺たちに説明、というよりは自分で確認するように説明してくれた。
「……魔法カード『終焉思想』は、簡単に言えば『ジェノサイド・ウォー』の除外版。戦闘を行ったモンスターを、バトルフェイズ終了時に除外するの」
「除外か……!」
マズイ。希冴姫たちを除外されれば、アルカナが……! それに『魂吸収』がある時にそんなに大量に除外されれば……。
「バトル!『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』で、セツの騎士を攻撃!『ヘル・エンドファング』!」
『くっ……迎撃するしか!』
希冴姫たちは剣を構え、『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』を迎撃する。
「ぅ……っ」
エンヴィーLP5300→3900
エンヴィーにダメージが入るが、『魂吸収』のゲイン効果の前ではあまり意味を為さない。
「全部……奪ってあげる。セツの大事なモノ……全部、全部……そうすれば、また抱きしめてくれるよね……? ボクだけを見て、ボクだけを愛してくれるよね……?」
『ぐっ……きゃああああああっ!?』
『こ、これは……!?』
『ぬうっ!?』
「希冴姫っ! ジャック! キング!」
三銃士の足元から闇が這いより、希冴姫たちを呑みこんで行く。くっ……!
「エンヴィー……!」
座り込んだまま、ブツブツと呟くエンヴィーの目に、光はない。希望も、ない。
「……『終焉思想』の効果で、『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』を含めたモンスターは除外される。『魂吸収』の効果により、ボクはライフを2000ポイント回復する」
エンヴィーLP3900→5900
「全部、呑み込んであげる……みんなみんな、ボクのモノになればいいんだ……優しい闇の世界に抱かれて……みんな、消えていく」
「……それは、優しさじゃない。それは、絶望と諦観に満ちた終焉だ。終焉なんだよ。エンヴィー」
「わからない。わからないよセツ……ボクには、なにもわからない」
「いつかきっと、わかる日が来る! だから、エンヴィー」
「煩い! ボクは、ボクは一人だけいればいい。セツ、セツが一緒に居てくれるなら、他にはなにも、なにもいらない。いらないんだ……!」
「エンヴィー!」
「ボクは『|終焉の魔術師(ジ・エンド・マジシャン)』を攻撃表示で召喚! カードを一枚セットしてターンエンド」
『|終焉の魔術師(ジ・エンド・マジシャン)』ATK1700
「気を付けてセツくん。『終焉の魔術師(ジ・エンド・マジシャン)』はカードが除外される度に、相手ライフに500ポイントのダメージを与えるモンスター。今のセツくんじゃ、何発も受けられない」
「……ああ。わかったよ。ありがとうユーキちゃん」
幸い、ユーキちゃんが終焉モンスターを知っているお陰で情報は不足しない。
「俺のターン、ドロー……っ!?」
「セツ!」
一瞬よろけた俺を、アテナが慌てて支えてくれる。くそ……流石にキツイ。ドローを一回する度に魂ごと持って行かれそうになる。
「……俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ」
今は、耐えるしかない。正直長引くと厳しいが、手がない以上は仕方がない。
「ボクのターン、ドロー!」
エンヴィーも、墓地アドバンテージを大分失った。すぐに攻めてくるとも思えないが……。
「ボクはトラップカード『針虫の巣窟』を発動。デッキの上から五枚を墓地に送る」
「くっ……!?」
エンヴィーのデッキから五枚が墓地に送られる。送られたカードは『|終焉の僕(ジ・エンド・サーヴァント)』『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』『腐り堕ちる世界』『|終焉の死神(ジ・エンド・グリムリーパー)』『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』の五枚。
「四枚がモンスターカード……これは」
「更に『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリット)』を召喚。魔法カード『ブラック・ホール』!」
「なっ!?」
「ぶ、『ブラック・ホール』!?」
「た、確か『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリット)』の効果は……」
ことここに至って、アテナたちも終焉モンスターの特性を理解したようだ。
「墓地と除外ゾーンをフル活用した変則的な除外デッキ……!」
今、エンヴィーの除外ゾーンには五体の終焉モンスター。そして墓地に四体。フィールドに二体の計十一体。これが全て、エンヴィーの墓地に集まる……!?
「ユーキちゃん……教えてくれ。この状況で、一番不味い展開を」
「…………」
顔色を悪くしていたユーキちゃんは、恐る恐る顔を上げて俺を見る。
「……間違いない。出てくるよ。わたしの知ってる中で、一番危険なモンスター……」
「切り札クラスか……!」
「名前は……」
ユーキちゃんがその名前を告げようとした瞬間、エンヴィーは墓地に戻った終焉モンスターを全て除外した。
「『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』……融合召喚!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「うわっ!?」
「なんだっ!?」
「くぅっ……!?」
頭をぐちゃぐちゃに掻き回されるような咆哮と共に、|それ(・・)は姿を現した。
『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』ATK4400
「こ、攻撃力4400……」
「『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』の攻撃力は、融合召喚時にゲームから除外した終焉モンスターの400倍……除外したのは十一体、だよ」
だが、それだけじゃない筈だ。ただ攻撃力が高いだけなら、ユーキちゃんもここまで狼狽はしないだろう。
「……そして、除外したカードの種類二種類ごとに、混沌獣の効果はプラスされて行くの」
「二種類ごと……!? 確か、除外されたのは……」
「『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』『|終焉の僕(ジ・エンド・サーヴァント)』『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』『|終焉の死神(ジ・エンド・グリムリーパー)』『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』『|終焉の魔術師(ジ・エンド・マジシャン)』『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリット)』……八種類もいるじゃないですか!?」
「ユーキちゃん」
俺の視線に、ユーキちゃんは頷いて話してくれる。
「……まず、二種類。混沌獣は、対象となる効果を受けない。四種類。戦闘を行う相手モンスターの効果を無効化する。六種類。守備表示モンスターを戦闘によって破壊した時、その守備力を攻撃力が上回っていればその分だけ戦闘ダメージを与える。……そして八種類。エンドフェイズに、除外された自分のカードを任意の枚数墓地に戻すことが出来る」
「っ……!」
どの効果も相当強力だ。しかも、召喚条件も見たところ緩い。全ての効果を得るのは難しいが、四種類くらいなら比較的容易に出せるだろう。
「更にマズイことに……」
エンヴィーLP5900→11400
エンヴィーのライフが急激に回復されてしまった。墓地と除外ゾーンを行き来するエンヴィーのデッキに、『魂吸収』の回復効率は半端じゃないな。
「バトル……!『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』で、セツを攻撃……っ!『カタストロフ・スクリーム』! っ死んじゃえ!」
「セツ!」
「悪いが、まだ死ぬわけにはいかないんだよ……! トラップカード『天位の階(きざはし)』! ゲームから除外された切り札の騎士をデッキに戻して融合する!」
「トラップ融合! いいタイミング!」
「『切り札の騎士―クィーン』『切り札の騎士―キング』『切り札の騎士―ジャック』の三体を融合し、来い! 天位の騎士『アルカナ ナイトジョーカー』!」
『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800
「ダメ! アルカナでも、ダメージを減らすことしか……!」
「アルカナの攻撃力でも、今の混沌獣には敵わないなんて……」
「セツの騎士……その魂すら喰い尽してあげる……!『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「っ……!」
「バトル!『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』で、『アルカナ ナイトジョーカー』を攻撃!『カタストロフ・スクリーム』!」
混沌獣の咆哮が、剣を盾のように構えたアルカナを打ち破る。
「ぐっ……あああああああああああああああっ!?」
「きゃあああああああああっ!?」
セツLP4000→3400
アルカナを貫通した混沌獣の咆哮が、俺を支えているアテナたちごと吹っ飛ばした。
「ぐっ、がはっ!?」
「お兄ちゃんっ!」
たった600。それだけのダメージですら、今の俺には致命的な激痛を与えてくる。思わず膝をつきそうになる俺を、さだめが支えてくれた。
「……ボクはこれでターンエンド。エンドフェイズに除外されている三体の『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』と『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』、『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』を墓地に戻す」
……まさかとは思うが、次のターン二体目が出てくるとか言わないよな?
「くすっ! 安心してよセツ。混沌獣は強すぎる……ボクでも制御出来るのは一体だけ。これ以上従えることはできないから」
そいつは何より。とはいえ、一体だけでも相当キツイことに変わりはないが。
「俺の、ターン! ぐ……ドロー!」
まずは、兎に角あの化け物を倒さないことにはどうにもならないな……。
「……いや、だがそううろたえる必要はないな」
沢山の効果を持つモンスター。確かにそれだけ聞けば強そうだが、決して倒せないレベルじゃない。
「冷静になれ。怪我も、痛みも、今はどうでもいい……」
大事なのは、今だ。
「俺はモンスターを一体、守備表示でセット」
「守備表示……」
「けど、混沌獣は……」
貫通効果持ち。だが、仕方がない。今は、なんとかして耐えなければ。
「カードを二枚セットして、ターンエンドだ」
攻略する。あの凶獣を。救って見せる。エンヴィーを。
「ボクのターン、ドロー。バトル!」
「来るか!」
「『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』で、セツの守備モンスターを攻撃!『カタストロフ・スクリーム』!」
『主!』
俺に迫る混沌獣の咆哮を、テンスが身体を張って受け止める。
『ぐっ……おのれ! ぐおおおっ!?』
混沌獣のふたつ目の効果により、テンスの戦闘破壊耐性は無効化され、破壊される。
「テンス! くっ……トラップカード『ガード・ブロック』! 戦闘ダメージを無効にし、デッキからカードを一枚ドローする!」
テンスを吹き飛ばした咆哮は、ギリギリ俺の眼前で結界によって受け止められる。
「ごぶっ……ぁ」
ダメージこそ防げたが、結界ごしに届くちょっとした振動だけで目の前が暗くなる。
くそ……目の前が、暗い……だが、負けん!
「俺、は……リバースカード『アルカナソード クローバー』を、発動……! 切り札の騎士がやられたことで、『アルカナ ナイトジョーカー』を、復活させる!」
『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800→4500
「や、やった……! 混沌獣の攻撃力を上回った!」
「けど、セツくん……!」
「だ、大丈夫……まだ、やれるさ」
嘘だ。もう目の前が霞んで殆ど見えない。今、ユーキちゃんの呼びかけに応えられただけでも奇跡的だった。
「……ボクは、カードを一枚セット。ターンエンド」
「お、れの……ターン。ぐっ……」
「しっかりしやがれ! ドロー!」
「け、んじ……か?」
「お前、もう死にかけじゃねえか! 本当はデュエル自体を代わってやりたいところだが……それは納得しねえだろうしな。せめて、ドローくらいは代わってやるよ」
「サンキュ、な……」
「礼は良い。兎に角、お前は死ぬな。いいか、絶対だぞ」
「わ、かってるよ……」
剣士からドローしたカードを受け取り、俺は混沌獣をキッと睨みつける。
「バトル……!『アルカナ ナイトジョーカー』で、『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』を攻撃……!『ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」
「っ……!」
「これで、終わりだ……! 混沌獣!」
「ぅうっ!」
エンヴィーLP11400→11300
ダメージは微々たるものだが、これでなんとか混沌獣を倒すことも出来た。
「よし……! 俺は、これでターンエンドだ」
「………………」
「エンヴィー?」
エンド宣言をしても、動きを見せないエンヴィーに、俺は声をかける。
「……ったと」
「え……?」
「終わったと……思った?」
「なっ……っ!?」
「ボクのターン、ドロー!」
不気味に呟くと、エンヴィーは勢い良くカードをドローする。
「くっ……俺はリバースカードオープン!『サンダー・ブレイク』! 手札の『アルカナソード ハート』を捨てて『魂吸収』を破壊する!」
エンヴィーがどう動くにしろ、終焉デッキの特性上カードを除外する。なら、いい加減『魂吸収』をこれ以上残しておくことは出来ない。
「ボクは墓地の三体の『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』をゲームから除外して『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』を融合召喚!」
『|終焉の三頭狼(ジ・エンド・ケルベロス)』ATK1300
「今更三頭狼……? もしかして、また『終焉思想』を……」
「いや、これは……」
「更に手札から魔法カード『死者蘇生』! ボクの墓地から『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』を守備表示で特殊召喚!」
『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』DEF2000
「そして『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』のモンスター効果。墓地から闇属性モンスター一体を除外することで終焉モンスターを一体特殊召喚できる。ボクは『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』を除外して『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』を特殊召喚!」
『|終焉の混沌獣(ジ・エンド・カオティック・キメラ)』ATK0
「モンスターを三体……! まさか、これは……!」
「ボクは、フィールド上に存在する三体の終焉を生贄に……」
「うそ……わたし、知らない。知らないよ……」
「『|終焉の真闇(ジ・エンド・ダークネス)』を召喚する!」
『|終焉の真闇(ジ・エンド・ダークネス)』ATK6500
エンヴィーのフィールドに、闇が溢れた。
「攻撃力、6500……!」
「……お兄ちゃん」
「……ああ。わかってる」
「ヤバい、な」
剣士の言う通り、膝が震えそうになるほどのプレッシャーを感じる。
「だが、俺にはこうするしか出来ない」
「お兄ちゃん……?」
訝しげに声を上げるさだめたちから少し離れ、俺はエンヴィーの前で手を広げる。
「セツ!?」
「なにを……!」
「来い、エンヴィー。それが、お前の深淵……心の闇だとするなら、俺はその全てを受けとめてやる」
「セツ……?」
戸惑うように声を漏らすエンヴィー。俺は構わず続ける。
「言葉じゃ、何も変えられないから……」
どれだけ言葉を尽くしても、人を信じることをやめてしまったエンヴィーには、きっと届かない。
「けど、ただ力尽くで叩きのめしたって、当然なにも変わらない」
もし俺が、エンヴィーをこのデュエルで倒したとしても。エンヴィーの心を救わなければ意味がない。それは、ただエンヴィーを苦しめるだけだから。
「だから……」
俺には、これしかない。
「約束してくれ。エンヴィー。俺が、お前の全てを受けとめて……それでも尚、ここに立っていられたのなら……」
――俺を、信じてくれ。
「……むり、だよ」
俺の言葉を聞いたエンヴィーは、いやいやと首を振る。
「むりだよ……セツ、死んじゃうよ……」
「死なない」
「死んじゃうよ! 終焉は……ボク、は……世界だって殺すんだ! ただの人でしかないセツに耐え切れるはず、ない!」
「それでも、耐える。耐えて見せる。だからエンヴィー。お前の心に溜まった淀み……もやもやを、全部纏めてぶつけて来い!」
「セツ、いくらなんでも無茶です!」
「そうだよ~! 唯でさえセツくんは、さっきまでのデュエルでボロボロなのに……」
後ろからアテナたちも叫んでいるが、それでも俺は体勢を変えない。
「それでも……俺には、これしかないから」
昔から、そうだった。俺がさだめにしてやれたことってなんだろう。俺が、さだめを救えたとしたら、その理由はなんだろう。
「ずっと、考えてきた」
俺は、さだめの全てを受けとめた。どんな痛みも、苦しみも、屈辱も。全てこの身体で受け止めて、やっとあいつを救えた。なら……。
「お前も同じだ。エンヴィー。かつてのさだめと同じ……全部、俺が受け止めてやる。だから……」
「うるさい! むりだったらむりなんだよ!」
「だったら、試してみれば良い! 俺は、死なない……!」
全部、全部受け止めて……必ず、お前を救うから。
「さあ、来い! エンヴィー!」
「う、うぅわああああああああああああああああっ、バトルッッ!!」
エンヴィーの宣言と同時に、フィールドが闇に包まれた。
・『終焉の三頭狼』 星5 闇属性 獣族 攻/守1300/1000
融合・効果
『終焉の餓狼』×3
このカードは、墓地に存在する『終焉の餓狼』三体をゲームから除外することで、エクストラデッキから融合召喚扱いで特殊召喚する(『融合』魔法カードは必要としない)。
(1):このカードは戦闘によっては破壊されない。
(2):このカードは、相手フィールド上にモンスターが存在する限り、一度のバトルフェイズで三回まで攻撃することができる。
・『終焉の魔術師』 星4 闇属性 魔法使い族 攻/守1700/300
効果
(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、カードがゲームから除外される度に相手ライフに500ポイントのダメージを与える。
・『終焉の混沌獣』 星? 闇属性 獣族 攻/守?/?
融合・効果
『終焉の』モンスター二体以上
このカードは、墓地に存在する『終焉の』モンスターを任意の枚数除外することで、エクストラデッキから融合召喚扱いで特殊召喚する(『融合』魔法カードは必要としない)。
『終焉の混沌獣』は、フィールド上に一体しか存在できない。
このカードの元々の攻撃力・守備力は、このカードの融合召喚時に除外した『終焉の』モンスターの数×400ポイントとなる。
このカードの融合召喚時に除外した『終焉の』モンスター二種類につき、このカードは以下の効果を得る。
(1):このカードを対象とした魔法・罠・モンスター効果を無効にする。
(2):このカードと戦闘を行う相手モンスターの効果は無効になる。
(3):このカードが守備表示モンスターを攻撃したとき、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その分だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
(4):自分のエンドフェイズに、自分の除外されている闇属性モンスターを任意の枚数選び、墓地へ戻すことができる。
・『天位の階』 罠カード
効果
このカードを使用するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを特殊召喚できない。
(1):墓地・除外されているエクストラデッキの『アルカナ ナイトジョーカー』又は『切り札の騎士』融合モンスターカードによって決められた自分の融合素材モンスターをデッキに戻し、その融合モンスター一体をエクストラデッキから融合召喚する。