アルカナ~切り札の騎士~
第四期第四十話「信頼」
仲間たちが、それぞれ宿命の相手と相対している頃。オレもまた、因縁深い相手とお互い向き合っていた。
「風丸……」
「剣士殿……」
こうして相対するのはこれで二度目。まだたった二度目なのに、どうしてか何度となく向き合ってきたような気がする。
それはきっと、コイツとのデュエルで、オレは自分のデュエルに対する認識の甘さを痛感させられ、心に植え付けられたからだろう。
オレは、あの時から何度となく、風丸と心の中でデュエルをしていた。あの時感じた無力を、苦さを、忘れないために。
「ふ……」
「風丸?」
「無様なものよ。所詮、私はまがい物。空を舞う翼はなく、ただの籠の鳥でしかなかったのだから」
「違ぇ! あの時のお前は……」
「慰めは不要! あの時に感じた高揚も、過去の苦しみも、所詮は造物主が私に与えた過去の設定……籠の鳥ですらない。造物主によって造り上げ、その意思によって踊らされる哀れな操り人形でしかないのだ」
風丸の目は、死んでいた。そこに、デュエリストの魂も、戦う力すらなく、ただ漠然とこの場に立っているだけだ。
「違う……! 違うぞ風丸……あの時、確かにお前はデュエリストだった。もし、それを忘れたって言うのなら……もう一度、デュエルで思い出させてやる!」
「……それが、私に課せられた役割だ。それを放棄するつもりはない」
風丸は、静かにデュエルディスクを構える。しかし、それは、所詮ただの惰性。そう在れと望まれたから、そう在るだけの、空虚な闘志でしかなかった。
「「デュエル」」
剣士LP4000
風丸LP4000
「先攻は譲るぜ」
「ならば私の手番だ。引かせてもらおう……」
先攻は譲ったが、風丸の目は死んだままだ。
「私は『ソニック・シューター』を攻撃表示で召喚。札を一枚伏せ、終了する」
『ソニック・シューター』ATK1300
「オレのターン、ドロー!」
風丸の『ソニック・シューター』の攻撃力は低い。伏せカードが一枚ある以上、なにも考えずに攻撃することは出来ねえが……。
「まずは風丸! テメエの目を覚まさせるのが先決だ! オレは手札から『切り込み隊長』を攻撃表示で召喚! 効果発動!」
『切り込み隊長』ATK1200
「手札から『翻弄するエルフの剣士』を攻撃表示で召喚! バトルする!」
『翻弄するエルフの剣士』ATK1400
「『翻弄するエルフの剣士』で『ソニック・シューター』を攻撃!『ダンシング・ソード』!」
「速攻魔法『スワローズ・ネスト』を発動する。『ソニック・シューター』を生贄に、山札から『聖鳥クレイン』を攻撃表示で特殊召喚する」
『聖鳥クレイン』ATK1600
「ちっ……攻撃は中断する」
「『聖鳥クレイン』の効果。特殊召喚に成功したとき、山札から一枚引く」
「ドロー補助カードか……」
攻撃力の低いモンスターを逃がしつつ、ディスアドバンテージも回避する、いい戦術だ。
「やっぱやるな。オレはカードを一枚セットし、ターンエンドだ」
「私の手番だ。引かせてもらおう」
風丸のフィールドにはモンスターが一体。十中八九、出てくるな。奴のエースモンスターが。
「……剣士殿。私の本気が見たいか?」
「ああ。もちろんだ。腑抜けたお前を倒したって何の意味もねえ」
「……ならば、この力に打ち勝って見せてくれ。剣士殿の持つ、決闘者の力で!」
来るかっ!?」
「私は墓地の『ソニック・シューター』を除外し、手札から『シルフィード』を特殊召喚! そして、場の二体を生贄に捧げる!」
「二体のリリースだと!?」
風帝じゃねえのか!?
「これが、私が新たに授かった力だ!『烈風帝ライザー』を召喚する!」
『烈風帝ライザー』ATK2800
「烈風帝……」
「この烈風帝は、風帝の上位種。召喚に成功したとき、場と墓地から一枚ずつ、持ち主の山札に戻すことができる」
「バウンス効果。それ自体は風帝にもあったが、墓地からもか……」
場合によっては二ターンのドローロック。だが、オレの墓地にカードはまだない。
「私は『切り込み隊長』と私の墓地の『スワローズ・ネスト』をそれぞれ山札に戻す」
「ちっそういうことか」
「更に、風属性を生贄に召喚された烈風帝は、もう一枚場から手札へと退ける効果を発揮する!」
「なにっ!?」
ってことは、オレの場はガラ空き……!?
「退け!『翻弄するエルフの剣士』を手札へ!」
「くっ!?」
「戦闘を行う!『烈風帝ライザー』で剣士殿に直接攻撃する!『極・風神烈波』!」
「リバースカードオープン!『トゥルース・リインフォース』! デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する! オレが特殊召喚するのは『ヒーロー・キッズ』!」
『ヒーロー・キッズ』DEF600
「そして『ヒーロー・キッズ』の特殊召喚に成功したとき、デッキから『ヒーロー・キッズ』を任意の枚数特殊召喚できる! オレは二体の『ヒーロー・キッズ』を特殊召喚!」
『ヒーロー・キッズ』DEF600
「やるな!? ならば烈風帝で一体を攻撃する!」
烈風帝の攻撃に耐えられず、『ヒーロー・キッズ』が一体破壊される。だが、十分に仕事は果たしてくれた。
「流石だ。私の仕掛けた山札の封印も、次の手番への布石も、たった一枚で行うとは」
「当たり前だ。お前の目を覚まして、本気のデュエルで上回るって決めてんだ。簡単にやられるかよ」
「……そうか」
オレの言葉に、風丸の奴はふっ、と微かな笑みを見せた。
「剣士殿が、そこまでの覚悟をみせてくれているのに、私がいつまでも腐っているわけにはいかぬな」
「風丸……!」
「……だが、造物主より賜ったこの力……果たしてどれほどのものか、私自身にもわからぬ。本気の私を上回るというその言葉、後悔するな」
「はっ、元より楽に勝てるなんざ思っちゃいねえよ。お前は、デュエリストだからな」
「ふっ……ならば私は、伏せ札を一枚増やし、手番を終了する」
風丸はどこか嬉しげに微笑むと、カードを一枚セットしてターンを終了した。
「オレのターン、ドロー!」
さあ、ここからが本番だ。風丸の奴も本気になったことだし、オレも遠慮せず、全力で行くぜ!
「オレは二体の『ヒーロー・キッズ』をリリースし、手札から『フェニックス・ギア・フリード』をアドバンス召喚!」
『フェニックス・ギア・フリード』ATK2800
『ふっ、不死の炎を纏いて我、参上!』
「攻撃力は互角か!?」
「どうかな? オレは手札から装備魔法『神剣-フェニックスブレード』を『フェニックス・ギア・フリード』に装備!」
『フェニックス・ギア・フリード』ATK2800→3100
「烈風帝の攻撃力を上回ったか!」
「バトル!『フェニックス・ギア・フリード』で『烈風帝ライザー』を攻撃!『鳳凰烈波』!」
『不死鳥よ。我が剣に集いて薙ぎ払え!』
ネイキッドの奴が振るう剣から飛び出した不死鳥が、風丸の『烈風帝ライザー』を焼き尽くす。
「ぬぅぅっ!?」
風丸LP4000→3700
「オレはカードを一枚セット。ターンエンドだ!」
「私の手番だ。引かせてもらう!」
風丸は、先程までとは打って変わって力強くカードをドローする。
「私は伏せていた永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動! 墓地より『聖鳥クレイン』を特殊召喚! 一枚引かせてもらう」
『聖鳥クレイン』ATK1600
「ちっ、またソイツか!」
「そして当然、此奴もある! 私は『聖鳥クレイン』を生贄に『風帝ライザー』を召喚する!」
『風帝ライザー』ATK2400
「風帝の効果は知っているな? 私は『フェニックス・ギア・フリード』を山札の一番上に戻す!」
「ちぃっ!?」
『ぬおおっ!?』
吹っ飛ばされたネイキッドはそのまま、オレのデッキを封印する。クソッ! 相変わらず厄介な効果だぜ。
「戦闘を行う! 私は風帝で剣士殿に直接攻撃!『風神烈波』!」
「ぐぅぅっ!」
剣士LP4000→1600
「う、くっ……だがこの瞬間トラップカード『ダメージ・コンデンサー』を発動! 手札を一枚捨てることで、デッキから受けたダメージ以下のモンスター一体を特殊召喚する!」
オレは手札から『翻弄するエルフの剣士』を捨てる。
「オレはデッキから『無敗将軍フリード』を特殊召喚する!」
『無敗将軍フリード』ATK2300
「くっ、山札の封印への対抗策は十分というわけか」
「当然だ。お前とのデュエルは、何度も思い返してた。オレにとって、お前は何度となくデュエルした相手なんだよ」
「……ふっ、光栄だ。ならば私も、私の全力を見せるとしよう! 私は手札から『スワローズ・ネスト』を発動! 風帝を生贄に、同じ
『トラファスフィア』ATK2400
「なにっ!?」
「戦闘はまだ続いているぞ!『トラファスフィア』で『無敗将軍フリード』を攻撃する!」
「ぐあっ!?」
剣士LP1500
「私は札を一枚伏せ、手番を終了する」
「オレのターン、ドロー! よし。オレは手札から魔法カード『命削りの宝札』を発動! 5ターン後に手札を全て捨てる代わりに、デッキからカードを五枚ドローする!」
ドロー補助カードによってオレの手札は五枚。とはいえ、フィールドはゼロであり、風丸のモンスターは確か、トラップカードの効果を受けないモンスター。
「だが、これならどうだ!? オレは手札から『鉄の騎士 ギア・フリード』を攻撃表示で召喚!」
『鉄の騎士 ギア・フリード』ATK1800
「そして魔法カード『拘束解除』を発動! ギア・フリードをリリースし、デッキから『剣聖-ネイキッド・ギア・フリード』を特殊召喚!」
『剣聖-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2600
『ぬんっ! 再びの我参上!』
「更に墓地の『無敗将軍フリード』と『翻弄するエルフの剣士』二体を除外し、墓地の『神剣-フェニックスブレード』を手札に加え、ネイキッドに装備する!」
『神剣よ。再び我が手に!』
『剣聖-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2600→2900
「そしてネイキッドの効果発動だ! 装備カードが装備されたとき、相手モンスター一体を破壊する! オレは『トラファスフィア』を破壊!」
「ぐぅっ!?」
「カードを一枚セットし、バトル! ネイキッドで風丸にダイレクトアタック!」
『うおおおおっ!』
「ぐぅぅぅぅぅ!」
風丸LP3700→800
「ぐぅっ! だが剣士殿、考えることは同じらしいな。私もこの瞬間、『ダメージ・コンデンサー』の効果を発動する! 手札の『暴風小僧』を捨て、デッキから『ダーク・シムルグ』を特殊召喚する!」
『ダーク・シムルグ』ATK2700
「そして、この『ダーク・シムルグ』が場に存在する限り、剣士殿は場に札を伏せることはできん!」
「なっ……セット妨害の永続効果持ちだと!?」
「さよう。これによって剣士殿は、今しがた伏せたものを除き、罠を使用できなくなった」
オレが今伏せたのはトラップカード。コイツの効果は使えるが、これ以降、『ダーク・シムルグ』を倒すまで、魔法とモンスターだけで凌ぐ必要がある。風丸の奴が肉を切らせて出したモンスターだけあって、相当に厄介な効果を持ってやがる。
「ちっ……オレはこれでターンエンドだ」
『ダーク・シムルグ』だけなら、ネイキッドの奴を戦闘で破壊する攻撃力はない。だとすれば……。
「私の手番だ。引かせてもらう!」
『烈風帝ライザー』、『ダーク・シムルグ』と、既に二体もの最上級モンスターを操る風丸。しかし、自分でも力の底が測れないって程なら、まだ何かいるはずだ。
「ふ、ふふふ……」
「あん? どうしたよ。風丸」
「楽しいなぁ、剣士殿」
そういう風丸の表情は、確かにデュエル前とは比べ物にならないくらい、輝いていた。
「所詮まがい物。所詮夢幻と腐っていたが、例えこの身が一夜限りの夢としても、これだけの戦いが出来るのならば、生み出された意味もあったというもの」
自嘲するような、しかし満更でもない様子の風丸を前に、オレはどうしても疑問を抑えきれなくなった。
「……なあ、風丸」
「なんだ?」
「どうしてだ?」
「む?」
「どうして、あいつはこんなことが出来る?」
あいつ……真中希望のことだ。
「オレたちを操り、仲間同士で争わせたり、フリードのような奴を利用したり……なんでだ!? なんであんな涼しい顔でそんなことができやがるんだ!?」
「……それについては、私も剣士殿に聞きたいと思っていた」
「なんだよ」
「剣士殿たちはなぜ、終焉を庇い、私たちと戦うのだ?」
「そんなもん……!」
「彼女は終焉だ。今でこそただの幼子のように小さくなっていようと、あの少女が終焉であり、世界を滅ぼす存在であることは確かだ。そんな少女を、何故庇う?」
「セツの奴が救うって言ったからだ」
「それは、思考停止ではないのか?」
「違ぇよ」
確かに、理由としちゃ、人任せ過ぎるのかもしれねえ。だが、そこにはちゃんと根拠がある。
「オレたちだけじゃ、間違っても救うなんて言えねえよ。お前の言うとおり、エンヴィーは終焉で、オレたちはそれを止めるために戦ってきたんだ。エンヴィーを倒して、世界を救うのが、理にかなってる」
「それがわかっていて、何故?」
「セツならやれる。そう思うからだよ」
自分が普通じゃないってわかっていて、それでも前を向いて、自分じゃなく、世界をすら変えてしまうような、そんな男が。
「救うって言ったんだ。世界も、エンヴィーも。だったら……!」
信じるしか、ないだろうが……!
「プライドを相手にしてたときとは違う。セツがいて、エンヴィーも改心して、どっちも前を向き始めたんだ。救ってやりてえ。それに……」
セツは、オレにとって初めて出来た男のダチだ。助けるのは当然だ。
「……造物主は、大義のため、世界のため、私心を捨てて戦っておられる。そのためならば、どんな批難も、甘んじて受ける覚悟でな。だからこそ、私は造物主を支持する」
「ああ。わかってる」
普通に考えりゃ、真中希望の方が圧倒的に正しい。オレたちのはただのワガママなのかもしれねえ。
「だが、ウチのリーダーが希望を捨ててない以上、オレらが諦めるわけにはいかねえ。そんで、オレらが諦めねえ限り、望みは繋がる。セツの奴が、繋いでみせる。それが……」
思わず、オレは苦笑した。人に避けられ続け、ヒネた見方しか出来なかったオレが口に出すには、余りにも似合わない言葉だったからだ。
「信頼って言うんだ」
「……そうか」
「信頼してる奴の言うことだから、どんなに無謀な無理難題でも、やってやろうかって気になるんだ。信頼してるから、命を懸けて戦えるんだ」
セツはきっと、真中希望の思惑を乗り越える。未来へ道を切り拓き、明日へ望みを繋いでみせる。
「だから風丸! オレは戦うぜ! どんなに道理に合わないことでも、あいつならきっとやり遂げる!」
「ならば、まずは剣士殿が、この私を乗り越えるのだな」
「おう! 来やがれ風丸!」
「造物主から頂いた三つの新たな力。その最後の一つを見せよう! 私の墓地に、風属性が5体のみのとき、此奴は特殊召喚が出来る! 来るがいい! 風纏う黒き薔薇、一切の呪縛をその旋風にて振り払え!『風霊神ウィンドローズ』!」
『風霊神ウィンドローズ』ATK2800
「こ、コイツが……!」
風丸の、切り札か!
「『風霊神ウィンドローズ』が特殊召喚に成功したとき、剣士殿の場の魔法・罠を全て破壊する!」
「なにっ!?」
マズイ! このままフェニックスブレードが破壊されたらやられる!
「させるか! その効果にチェーンしてトラップカード『スキル・サクセサー』を発動! ネイキッドの攻撃力を400ポイントアップさせる!」
『剣聖-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2900→3300→3000
「クッ!? これでは攻撃力が……!」
「そう簡単にやらせねえ!」
「ならば、一枚伏せて終了する! 剣士殿、我が布陣を超えられるか!?」
「超えてやらあ! オレのターン、ドロー!」
よし! コイツなら行ける!
「オレは手札から魔法カード『死者蘇生』を発動する!」
「むっ!? この場面で『死者蘇生』だと?」
「オレが蘇生するのはお前の墓地の『暴風小僧』だ!」
『暴風小僧』ATK1500
「そしてオレは更に魔法カード『融合』を発動する! オレの場のネイキッドと、天使族の『暴風小僧』を融合し、今こそ天の衣を纏いて、並ぶ者なき剣の境地を見せやがれ! 融合召喚!『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』!」
『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2800
「こ、これは……これが、剣士殿の……」
「切り札だ! オレは墓地の『ヒーロー・キッズ』二体をゲームから除外し、墓地の『神剣フェニックスブレード』を手札に加え、ネイキッドに装備する!」
『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2800→3100
「バトルだ! ネイキッドで『風霊神ウィンドローズ』を攻撃!『ヘヴンズ・ソード』!」
「ぐぅぅぅっ!?」
風丸LP800→500
「更に『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』の効果発動! このカードに装備された装備カードを一枚破壊することで、もう一度だけ追加攻撃することができる!」
『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』ATK3100→2800
『唸れ! 我が筋肉! 限界を超える!』
「ぬぅっ!? だが、それでは私のライフは削り切れん!」
「わかってんよ! だからこの瞬間、オレは墓地のトラップカード『スキル・サクセサー』を除外して、効果を発動する!」
「墓地の罠を!?」
「コイツを除外することで、ネイキッドの攻撃力を800ポイントアップする!」
『天剣-ネイキッド・ギア・フリード』ATK2800→3600
「トドメだネイキッド!『天剣技・アマテラス』!」
『ぬぅおおおおおおおおおおっ!』
「ぐあああああああああっ!?」
風丸LP500→0
下から掬い上げるような切り上げが、『ダーク・シムルグ』を両断し、風丸を吹き飛ばした。
「風丸!」
倒れ伏した風丸の元に駆け寄り、抱き起こす。
「大丈夫か?」
「……ふっ、問題ない。所詮は仮初の身体よ」
風丸は、どこか憑き物の落ちたようなスッキリとした表情だった。
「最後の一撃……てっきり剣聖の効果で突破するとばかり思っていた。読まれていたか」
風丸がそう言って見せたのは、最後に風丸が伏せていたカード。『デストラクション・ジャマー』だった。
「最後の最後で『死者蘇生』を引かなきゃ、そうしてたよ」
「ふっ……やはり、勝利を掴むのは本物の引き、か」
「オレが本物なんだとしたら……お前もだ。風丸」
「なに……?」
「本物が相手だったから、最後の最後で『死者蘇生』が引けたんだ。お前が相手じゃなきゃ、引けなかった」
「……そう、か」
風丸は、最後にふっ、と笑った。
「……何か、清々しい気分だ。結果は、敗北だというのに、な」
「勝ち負けなんざ関係ねえよ。例え負けたのがオレでも、オレたちは今と同じ気持ちになってる筈だ」
「……そうだな」
戦いが終わり、キラキラと輝く粒子になって消滅していく風丸は、それでも穏やかな笑顔だった。
「……感謝する。剣士殿。一度ならず二度までも、貴殿には救われた」
「気にすんな。オレは、お前みたいな奴が燻ったまま消えていくのが嫌だっただけだ」
「……そうか」
「風丸」
「なんだ?」
「また、デュエルするぞ」
「……その時が、来たならば」
「来るさ。オレたちのリーダーが、全部ハッピーエンドにしちまうよ。だから、必ずだ」
「セツ殿か。彼とも、一度戦ってみたいものだ」
「ああ。色々刺激になると思うぜ。アイツだけじゃなく、オレの仲間みんながな」
「……剣士殿」
「あん?」
「愉しい……そう、愉しいデュエルであったよ」
「気にすんな。オレも、最高に楽しかったぜ」
「……さらばだ」
そして、風丸の身体は風に散っていった。オレは、踵を返してその場を離れる。その足取りに、後悔や悲しみはない。
「……行くか」
きっとまた、会えるからな。