アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 超欝&シリアス展開注意。


第四期第四十二話「償いの形」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第四十二話「償いの形」

 

 

 

 

「さってと、さだめの相手は……やっぱり、貴女なんだね」

『当たり前よ。あんたを殺すのは私の役目よ』

 醜い容姿。爛れた体。憎しみと悪意が形になったような、そんな悍ましい姿。さだめが犯した罪の塊。以前会った時と比べて、少し言動に余裕というか、落ち着きが出ているようにも思えるけど。

「ま、今更ウジウジ悩んだりなんてしないけど」

『遂に罪の意識すら捨てたのね』

「違うよ。立ち止まるのをやめただけ。振り向いて、俯いて、目を背けるのをやめただけ。前へ、前へと進むのに、邪魔な荷物(過去)は捨てただけ」

『最低ね。そうやって自分の罪をなかったことにして、自分だけ幸せになるつもり?』

 静かな、けど深い怒りを滲ませたその声に、さだめはしっかり首を振る。

「違うよ。さだめだけ、幸せになんてならない。お兄ちゃんも、アテナたちも、さだめの大事なモノ全部、全部幸せになるんだもん。……最低なのは、否定できないけどさ」

 そう。もう、独りよがりな幸せを追い求めるのはやめたんだ。今なら、今ならはっきり言える。

「……アテナたちは、さだめの大事なトモダチだから。大事な大事なトモダチと、大好きなお兄ちゃんと、みんなで幸せになりたい」

 ほんの一年前のさだめが聞いたら正気を疑うようなセリフ。でも紛れもない本心からのセリフ。

『許されると思っているの……!? アンタのような罪人が、人並みに幸せになるなんて……!』

「許す、許さないじゃないんだよ。幸せになるんだ。そして、幸せにするの。貴女たちから奪った幸せの分まで、たくさんの人を」

『ふざけるなっ!!』

 うん。そうだよね。さだめだって、貴女の立場ならそう思う。でも……。

「でも、例えばここで、さだめが貴女に殺されたとして。そしたらさだめは、本当になにも残せなくなっちゃう。恨みと憎しみと悲しみと……不幸を振り撒くだけ振り撒いて、ただ殺されるなんて……それこそ、許されないんだよ。さだめには」

 さだめが死んだら、お兄ちゃんは悲しむ。アテナたちだってきっと泣く。さだめの大事な皆から幸せを奪って、お兄ちゃんたちからも奪って。

「全てを奪って、さだめは死んでいく……そんなの」

 そんなの、堪えられない。

「だからさだめは、身勝手でも、最低でも、貴女たちを振り切って幸せにならなきゃいけない。少しでも多く幸せを残して。命を育んで」

 それが正しいかどうかなんて、さだめには判らない。もっと別の、彼女たちすら納得できるような、そんな冴えたやり方があるのかもしれない。

「さだめには、幸せになる権利なんて、ないのかもしれない」

 それでも。

「さだめには、幸せになる義務(・・)があるんだ」

 さだめを愛してくれる人たちのためにも、さだめは幸せにならなきゃいけない。そう、エースに教えられたから。

『……あんたの幸せなんて知らない。あんたの自己満足なんてどうでもいい……! あんたの幸せなんて……私が認めない! あんたは……あんたは私が地獄に送ってやる!』

「……うん」

 彼女たちの恨みは、憎しみは、決して晴れることはないと思う。さだめはそれを、晴らす方法を知らない。

「だけど、殺されてあげるわけにはいかないんだ。だから……!」

 抗う。彼女たちの憎しみを、受け止めた上で、さだめは戦う。きっとこれは、さだめが負うべき心の傷で。彼女たちが負ったであろう心の傷。

「「デュエル!!」」

 ???LP4000

 さだめLP4000

『私のターン、ドロー!』

 彼女たちがデッキからカードをドローする。さて、どんなデッキなのかな? 前回はインヴェルズを使ったアドバンス召喚主体のビートダウンだったけど……。

『私は『ヴェルズ・ヘリオロープ』を攻撃表示で召喚! カードを二枚セット、ターンエンド!』

 『ヴェルズ・ヘリオロープ』ATK1950

「ヴェルズ?」

 インヴェルズとは違うのかな? 取り敢えず、下級モンスターとしては攻撃力が高いけど。

「さだめのターン、ドロー!」

 う~ん……見たことないカードに対しては、いくらさだめでもメタれないし……けど、名前は似てるから、そこまで大きく違うこともないはず。

「さだめは手札から魔法カード『封印の黄金櫃』を発動! デッキから『ネクロフェイス』を選択してゲームから除外するよ!」

 さだめのデッキから、例の気持ち悪い顔の人形(?)が黄金櫃に収められる。けど、その黄金櫃の隙間から、瘴気のようなものが湧き出て、お互いのデッキを削る。

「『ネクロフェイス』がゲームから除外されたとき、お互いのデッキの上から五枚をゲームから除外するよ!」

『ちっ……また除外戦術ね』

 当然。メタの基本は除外だよ。あとは特殊召喚封じだけど……相手はアドバンス召喚主体っぽいし、ちょっと動きを鈍らせるくらいの効果しかないかな。

 ちなみにさだめのデッキから除外されたのは『ダーク・アームド・ドラゴン』『ダーク・グレファー』『キラー・トマト』『ダーク・クリエイター』『闇王プロメティス』の五枚……って。

「いきなりダムド落ちとか……」

 相変わらずそーいうところ運がないよねさだめって。で、相手のデッキから除外されたのは以下の五枚。『侵略の一手』『インヴェルズの斥候』『終末の騎士』『魔導雑貨商人』『インヴェルズ・モース』の五枚。うん。自己再生効果持ちの斥候とバウンス効果のモースが除外出来たし、上々だね。

「さだめはモンスターを守備表示でセット。カードを一枚セットして永続魔法『漆黒のトバリ』を発動してターンエンドだよ」

 さてさて。これでさだめの手札は二枚。どう出てくるかな?

『そのエンドフェイズに永続トラップ発動!『侵略の侵喰感染』! 一ターンに一度、私の手札かフィールドの『ヴェルズ』と名の付いたモンスター一体をデッキに戻して発動する! 私のデッキから『ヴェルズ』と名の付いたモンスター一体を手札に加える! 私は『ヴェルズ・ヘリオロープ』をデッキに戻して『インヴェルズの魔細胞』を手札に加える!』

「む……」

 エンドフェイズに永続トラップかぁ……しかも結構汎用性高そうなサーチカードだね。面倒臭そう。

『私のターン、ドロー! 私は『侵略の侵喰感染』の効果を発動。手札の『インヴェルズの門番』をデッキに戻して『インヴェルズ・ギラファ』を手札に加える』

「うげ……」

 あのメリットの塊みたいな最上級モンスターかぁ……きっついなぁ。しかも召喚手段は整ってるし。

『私のフィールドにモンスターが存在しない場合、『インヴェルズの魔細胞』は手札から特殊召喚する事が出来る』

 『インヴェルズの魔細胞』ATK0

『そして『インヴェルズの魔細胞』をリリースして『インヴェルズ・ギラファ』をアドバンス召喚する!』

 『インヴェルズ・ギラファ』ATK2600

『『インヴェルズ・ギラファ』は最上級モンスター。けれどインヴェルズをリリースに使うことで一体のリリースでアドバンス召喚が可能。そしてインヴェルズをリリースに使ったギラファは、相手のカードを一枚墓地に送り、私のライフを1000ポイント回復するわ』

 出た。何そのチート。

『私が選択するのは貴方の場のモンスター! 消えなさい!』

 ???LP4000→5000

「さだめのセットモンスターは『クリッター』だよ! デッキから攻撃力1500以下のモンスター……『バトルフェーダー』を手札に加えるよ!」

『ちっ……!』

 思わず舌打ちする彼女。まあ、折角場を開けたのに直接攻撃が封じられたも同然だしね。

『それでもバトルは行うわ!『インヴェルズ・ギラファ』でプレイヤーにダイレクトアタック!』

「手札から『バトルフェーダー』の効果発動! このカードを特殊召喚してバトルフェイズを終了させるよ!」

 『バトルフェーダー』DEF0

『……私はターンエンド』

「さだめのターン、ドロー! ドローしたカードは闇属性モンスター『ネクロ・ガードナー』!『漆黒のトバリ』の効果で墓地に捨ててもう一枚ドロー! ドローしたのは『闇帝ディルグ』! 墓地に捨ててドロー!」

『ディルグですって!? そのカードは闇丸の……!』

「んふ。お兄ちゃんが何故か持ってたから、ちょっとギッておいたの」

 手癖の悪さにも定評のあるさだめです。普通に頼めばくれた気もするけど。

「さあ、そして当然このカードもあるよ!『バトルフェーダー』をリリースして『邪帝ガイウス』をアドバンス召喚!」

『ぐっ……!』

 『邪帝ガイウス』ATK2400

 ちなみに自身の効果で特殊召喚された『バトルフェーダー』はこの時点で除外される。

「そして『邪帝ガイウス』の効果発動! このカードのアドバンス召喚に成功したとき、フィールド上のカード一枚をゲームから除外するよ! そのカードが闇属性モンスターなら更に1000ポイントのダメージを与える。さだめが選択するのは当然『インヴェルズ・ギラファ』!……と見せかけて『侵略の侵喰感染』!」

『なっ!?』

 ホントはダメージも与えられるギラファを除外しておきたいところなんだけど……後々のことを考えると、あのサーチカードはさっさと消しておくに限るよね。それに、嫌な予感もするし。

『くっ……ならばその効果にチェーンして『侵略の侵喰感染』の効果を発動するわ! 手札の『ヴェルズ・ヘリオロープ』をデッキに戻してデッキから『インヴェルズの魔細胞』を手札に加える!』

「む」

 まだ手札にヴェルズがあったんだ。残念、あわよくばそのままギラファを戻してくれるかな、とか思ったんだけど。

『そしてトラップカード発動!『侵略の波動』! アドバンス召喚に成功したインヴェルズを手札に戻すことで、相手のカード一枚を破壊する! 私が破壊するのは『邪帝ガイウス』!』

 やっぱり。どうせガイウスでギラファを狙ってたらこのカードでサクリファイス・エスケープされてた。そう考えれば、さだめの判断は間違ってなかったはず。

『……さあ、これであんたのフィールドは空。召喚権も使ったわ』

「なら取り敢えず墓地の『闇帝ディルグ』と『クリッター』をゲームから除外して手札の『ダーク・ネフティス』を墓地に送るよ。ターンエンド」

 これで次のさだめのターンに『ダーク・ネフティス』が特殊召喚される。

『私のターン、ドロー!』

 さて、彼女の手札に魔細胞とギラファがあるのは分かってる。やっぱり出してくるかな。

『私は手札から『インヴェルズの魔細胞』を特殊召喚! 魔細胞をリリースしてギラファをアドバンス召喚するわ』

 『インヴェルズ・ギラファ』ATK2600

『そしてギラファの効果で『漆黒のトバリ』を墓地に送り、ライフを1000ポイント回復するわ』

 ???LP5000→6000

 彼女も、これ以上手札交換を許すつもりがないのか『漆黒のトバリ』を排除してきた。けど、それはさだめの予想通り。元より永続魔法にそんな場持ちは期待してないし。

『バトルよ!『インヴェルズ・ギラファ』でダイレクトアタック!』

「トラップ発動!『ホーリージャベリン』! 攻撃モンスターの攻撃力分、ライフを回復するよ!」

 さだめLP4000→6600

『でもダメージは受けてもらうわ!』

「うあああああっ!」

 さだめLP6600→4000

「ぅ……けど、さだめのフィールドが空の状態でダメージを受けたことにより、手札から『冥府の使者ゴーズ』と『冥府の使者カイエントークン』を特殊召喚するよ」

 『冥府の使者ゴーズ』ATK2700

 『冥府の使者カイエントークン』ATK2600

『ちっ……冥府の使者か』

 態々ダメージ覚悟で『ホーリージャベリン』なんてさだめのイメージに合わないカード使ったのもこのため。これなら実質ノーダメージでゴーズに繋がる。

『よォ。大丈夫かマスター?』

「……平気だよ。お兄ちゃんみたいに痛みに慣れたりはしてないけど、これでも生死の境を彷徨ったこともあるんだから」

『無理はしないで下さいね?』

「だいじょぶだって」

 案外心配性な精霊二人に支えられて、さだめは立ち上がる。

『……私はカードを二枚セット。ターンエンドよ』

「さだめのターン、ドロー!」

 それにしても、あれだけくるくる回してる割に手札がまだ一枚残ってるかぁ。結構アド損しがちな効果ばっかりだと思ってたけど、そうでもないみたいだね。

「さだめはこのスタンバイフェイズに墓地から『ダーク・ネフティス』を蘇生。効果で右側のリバースカードを破壊するよ」

 『ダーク・ネフティス』ATK2400

『させないわ。その効果にチェーンしてトラップ発動『侵略の侵喰崩壊』! 私のフィールドのヴェルズを除外することで、相手のカードを二枚手札に戻す! ギラファを除外して冥府の使者二体を戻すわ!』

『チィ!?』

『きゃああっ!?』

 ギラファの体が崩れ、崩れた体の破片がゴーズたちを侵食する。ゴーズは手札に戻り、トークンであるカイエンは破壊される。残念だけど、ギラファを排除できただけ良しとしておこうかな。ゴーズは再利用できるし。

「更にこのスタンバイフェイズに『封印の黄金櫃』で除外していた『ネクロフェイス』が手札に加わるよ」

 さだめの背後に浮かんでいた黄金櫃から、例の気持ち悪い顔が開放される。

「そして手札から魔法カード『闇の誘惑』を発動! デッキからカードを二枚ドローして、手札の闇属性モンスター一体をゲームから除外するよ!」

『そのコンボは……!』

 そう。『封印の黄金櫃』と『ネクロフェイス』。そしてこの『闇の誘惑』のコンボは結構有名。黄金櫃で除外し、手札に戻ってきたところでさらに除外することで一気に相手のデッキを削ることが出来る。手札交換にもなるしね。

「さあ、デッキの上から五枚、除外してもらうよ」

 さだめのデッキから除外されたのは『終末の騎士』×2『キラー・トマト』『D・D・R』『死者蘇生』の五枚。う……また『死者蘇生』とかいいカードが落ちたし。

 相手のデッキから除外されたのは『インヴェルズ・ガザス』『インヴェルズ・グレズ』『インヴェルズの万能態』『インヴェルズを呼ぶ者』『おろかな埋葬』の五枚。ん、まあそこそこかな。

「そしてバトル!『ダーク・ネフティス』でプレイヤーにダイレクトアタック!『ダーク・フェニクス』!」

『ぐっ、ああああああああっ!?』

 ???LP6000→3600

『ぐっ……熱い、熱い熱い熱いぁぁぁぁぁっ!?』

「っ……!」

 闇の炎が彼女を焼く。また、焼いてしまう。割り切ったつもりでいたけれど、やっぱりトラウマに身悶える彼女を見ていると胸が痛む。苦しい。泣きたい。ごめんなさいって謝りたくなる。けど……。

「……さだめは、謝らない」

 それが本当は正しいことだとしても。ここで謝っても意味がないことを知ってるから。謝っちゃだめだ。謝ったところで、彼女には何の慰めにもならない。謝罪は、たださだめの心を軽くするだけ。ひどい自己満足。それは、許されない事だから。

「……さだめはカードを一枚セット。ターンエンド」

『うっ、ぅぅ……ぁぁぁ』

 息を荒げ、血走った目でさだめを睨む彼女には、さだめが悪魔か何かに見えてるんだと思う。それは正しい。さだめは、悪魔だ。

「それでも、生きたい。生きて、幸せになりたい」

『黙れ! あんたが……あんたみたいな奴が!』

「さだめみたいな奴でも、大切にしてくれる人が、いるんだ。トモダチになってくれる子が、いるんだ」

 そんな、奇跡みたいな偶然が、さだめに“生きろ”って言ってる。どんなに罪を犯したとしても、さだめを愛してくれる人がいる限り……。

「さだめは、死を選べない」

『選べないなら……』

 彼女は憎しみに溢れた目でさだめを睨む。

『私が! 殺してやるよ! 私のターン!』

 彼女のフィールドは伏せカードが一枚のみ。けど、手札は二枚あるし、アドバンス召喚に長けたインヴェルズだ。何が出てくるかわからない。

『私は手札から速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動する!』

「っ!?」

 やっぱり入ってたんだ。除外対策カード!

『私は除外されている『インヴェルズの万能態』『インヴェルズ・ギラファ』『インヴェルズ・ガザス』を墓地に戻す! そして手札から魔法カード『悪夢再び』を発動! 墓地の守備力0の闇属性モンスター二体を手札に戻す! 私が戻すのは『インヴェルズの魔細胞』と『インヴェルズ・ガザス』!』

 ガザス……二体のリリースが必要なインヴェルズを戻してきたってことは、あの伏せカードは……。

『トラップカード発動!『侵略の波紋』! ライフを500ポイント支払うことで墓地から『インヴェルズの万能態』を蘇生するわ!』

 ???LP3600→3100

 『インヴェルズの万能態』ATK1000

「万能態……確か、インヴェルズ専用のダブルコストモンスター?」

『そうだ!『インヴェルズの万能態』を二体分のリリースとして、『インヴェルズ・ガザス』を攻撃表示でアドバンス召喚!』

 『インヴェルズ・ガザス』ATK2800

 あの状況なら、例の神より重い『インヴェルズ・グレズ』の召喚も出来た。それをしなかったのは、それだけじゃさだめのライフを削り切れず、ゴーズが出てくるのがわかるからだと思う。だとすれば、ガザスの効果は……。

『『インヴェルズ・ガザス』の効果発動! インヴェルズ二体をリリースしてアドバンス召喚に成功したとき、フィールド上のこのカード以外のモンスターか、魔法・罠をすべて破壊するわ!』

「っ……!」

 やっぱり、そういう類の効果だった。そして間違いなく、彼女が選ぶ効果は……。

『すべての魔法・罠カードを破壊するわ!』

 『大嵐』の効果……! 彼女のフィールドにカードは無いし、当たり前だよね。

「その効果にチェーンしてトラップカード『針虫の巣窟』を発動! さだめのデッキの上から五枚を墓地に送るよ!」

 墓地に送られたのは『キラー・トマト』×2『闇王プロメティス』『ファントム・オブ・カオス』『闇次元の開放』の五枚。いい加減デッキも少なくなってきたし、そろそろ終わりにしないとデッキ切れで自滅しかねないね。

『バトル!『インヴェルズ・ガザス』で『ダーク・ネフティス』を攻撃する!』

「うぐっ……!」

 さだめLP4000→3600

 このまま削って、グレズのダイレクトアタックで倒しきるつもりかな? そう簡単には行かないけどね。

『ターンエンドよ』

「さだめのターン、ドロー!」

 さあ、それじゃあそろそろフィニッシュに向けて動くよ!

「さだめは手札から魔法カード『終わりの始まり』を発動! 墓地の闇属性モンスター五枚を除外して、デッキからカードを三枚ドロー!」

 さだめは『ネクロ・ガードナー』と『ファントム・オブ・カオス』の二枚を除いたモンスターを全て除外して、デッキからカードをドローする。これで手札は四枚。十分だね。けどホントにデッキが危うい。もう十枚切ってるし、さっさと決めなきゃ。

「さあ、まずは行くよ! 魔法カード『カオス・エンド』! さだめのカードが七枚以上除外されているとき、フィールドのカードを全て破壊するよ!」

『クッ……!?』

「そして『終末の騎士』を召喚! 効果によりデッキから『D.D.クロウ』を墓地に送るよ」

 『終末の騎士』ATK1400

 いや、もう墓地に送る闇属性モンスターとかいないんだよね。遂に残り六枚だよ。

「バトルだよ!『終末の騎士』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

『ぐっ、ぅぅぅぅぅぅっ!』

 ???LP3100→1700

「さだめはカードを一枚セット。ターンエンドだよ」

 今伏せたカード。出来れば……出来ればこのカードは使わずに済ませたい。けど、多分使わざるを得ないんだろうな。結局。

『私のターン、ドロー!』

 ……きっと、彼女はトリガーを引く。自らの手で、その終焉の幕を開く。

『終わりにしてやる……! 私はもう一度手札から魔法カード『悪夢再び』を発動! 墓地の『インヴェルズ・ギラファ』と『インヴェルズ・ガザス』を手札に戻す!』

 ……ああ。

「…………ほら、ね」

『……ぇ』

 ゴゥッ……とさだめたちの周りに炎が舞う。

『な……なに? なにをした……!?』

「……また、貴女のトラウマを刺激した。それだけだよ」

 燃え盛る炎が、彼女が戻そうとしたインヴェルズを焼き尽くしていく。

『あ、あああ……ああああああああっ!?』

「トラップカード……『大火葬』!」

 ゴッ! さだめがそう宣言した瞬間、燻るように燃えていた炎が、一気に天高く燃え上がる。

「相手が墓地のモンスターを対象にするカードを発動したとき、お互いの墓地に存在する全てのモンスターをゲームから除外する!」

『やめて……やめてやめてやめてぇ! もう、もう炎は嫌ァ!』

 泣き叫び、体を震わせて膝をつく彼女に、さだめは何も言わない。ただ、先を促す。

「さあ……どうするの? 貴女の手札に、まだモンスターは残ってるはずだよね?」

 さっき手札に戻した『インヴェルズの魔細胞』が。

『いやぁ……いやぁ……!』

「……何も、しないなら」

『ぁ、あああ……インヴェルズの、魔細胞……を、守備』

 『インヴェルズの魔細胞』DEF0

 何かしなきゃ。そう思っていたかどうかはわからないけど。彼女は一応、モンスターを出した。

「……さだめのターン、ドロー」

 これで、終わりにしよう。

「さだめは『終焉の精霊』を攻撃表示で召喚」

 『終焉の精霊』ATK???

 いい加減、この精霊との因縁も終わりにしたいけど。結局コイツからは逃れられない。さだめが、決して罪から逃げることが許されないことを暗示しているかのように。

「……『終焉の精霊』の攻撃力は、お互いのゲームから除外されている闇属性モンスターの数×300ポイントとなる。除外されているのは合わせて29枚。よってその攻撃力は」

 『終焉の精霊』ATK???→8700

『8、700……!?』

 手札も、フィールドも、墓地も無く。彼女にはもう、抗う術は残されていない。

「……貴女のこと、忘れないよ。ずっと、覚えてるから。バトル」

 そう。忘れちゃいけない。さだめが、罪を犯したことを。その罪を、過去を。償うでもなく破棄したことを。その……傷を。

「『終末の騎士』で『インヴェルズの魔細胞』を攻撃」

 闇に染まった剣が、黒いテントウムシを一刀両断する。そして……。

「そして……『終焉の精霊』で、プレイヤーにダイレクトアタック。『ダークネス・エンド』」

『ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?』

 ???LP1700→0

 

 

 

『これで……終わりだと思うな』

「…………」

 デュエルが終わり、ボロボロと崩れていく彼女が、未だ憎しみの絶えない目でさだめを睨む。

『あなたが、幸せになどなれるわけがない……! 必ず誰かの幸せを奪って……踏み躙って……いずれはあなた自身が踏み躙られる……! 必ず、必ずよ……!』

『テメエ……まだ言うか!』

「ゴーズ、黙って」

『けどナ、マスター!』

「黙れ!」

『ッ……グ』

 強い口調でゴーズを窘め、彼女の言葉を聞く。

「聞かなきゃいけないの。それが、彼女に出来る、せめてもの……」

『……わかった』

『さだめさん……』

 それでも尚、心配そうにこちらを見つめる精霊二人に、大丈夫と手を振って答える。

『……あなたの、罪は……決して消えやしない……! いつか、必ず……報いを……!』

「……うん」

 デュエルに勝ったことなんて、どうでもいい。そんなことで、さだめの罪が帳消しになるなんてことはない。あっちゃいけない。

『憎い……! 憎い、憎い! 呪ってやる……呪ってやる……! 呪ってやるッ!』

「……うん」

 震えそうになる体を押し留め、溢れそうになる涙を堪えて、さだめは彼女の言葉を刻み込む。

『返して……返してよぉ……私の……私の……』

 血が、涙となって滴り落ちる。もう戻らない、やり直せない過去に、彼女は手を伸ばす。その手を、さだめはそっと握りしめる。

「……せめて」

 せめて、もうこれ以上、苦しまないように。

「もう、眠って……」

 闇が、その体を呑み込んでいく。包み込むように。彼女の体は闇に溶けた。

「…………」

『マスター』

『さだめさん』

「……だいじょーぶ、だよ」

 お兄ちゃんのところ、行かなきゃ。

「だけど……だけど、ちょっと……もう、ちょっとだけ……ひとりにして」

 二人は無言で頷いて、その場から消えてくれた。

「っ……ぅ、ぁ」

 泣いちゃだめ。そう、思うけど。

「ぅ、く……」

 ごめん、お兄ちゃん。

「も、ちょっとだけ……まってて」

 すぐ、行くから。すぐ、いつものさだめに戻って……助けに、行くから。

「ぁ……ぁ」

 膝をつき、胸を押さえ、声を押し殺す。爆発しそうな感情を必死で押さえつける。

「ぅ、ぁあ……」

 泣くな。泣くな。泣くな。

「ぁああ……っ」

 泣くのが許される立場だと思ってるのか。泣いて許される立場だと思ってるのか。泣くな。泣くな。泣くな。

「うあああ……っ!」

 そう思えば思うほど、胸を衝く感情は、とめどなくさだめの瞼から溢れ、零れていく。

「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 それでも暴れる感情が、慟哭となって爆発する。

「あああっ! ああああああああっ!」

 これで、これで最後にするから……もう、泣かないから。だから……!

「ああああああああぁ……!」

 今だけは……、泣かせて下さい。

 

 

 

 

 

 








 基本的に明るくて元気なコメディ寄りの子なのに、時折とんでもないレベルの欝展開ぶっ込んでくる子です。少し休んで、また元気になってから、戻っておいで。
 それでは、悠でした!
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