アルカナ~切り札の騎士~
第四期第四十三話「ロスト・エデン」
「……まさか、ここまで露骨な人海戦術でくるとは思いませんでした」
私は目の前に並ぶ黒い人影を眺めて呆れの色が強いため息を吐きました。
「ええと……闇丸さんと邪々丸さん、それに貴方は、光丸さんでしたっけ?」
ニヤニヤと、嫌らしい笑みを浮かべる金髪の男性。剣士さんや凛さんから聞いた話を思えば、恐らくそうでしょう。他にも『甲虫装甲騎士』に『地獄戦士』『終焉の精霊』と……よくもまあ今まで倒した敵を集めたものです。六人もいるんですけど。
「へへ、闇丸と邪々丸の奴がやられたっつーから、化物なのかと思えば……」
光丸さんは、ジロジロと不躾な視線を私に巡らせます。正直、不快です。
「男好きのしそうな嬢ちゃんじゃねえか。なぁ?」
「……その言い方、やめてくれません? 最近どうにも、実は私の取り柄って見た目だけなんじゃないかって不安になってるところなので」
それにしても、もしかして私、この全員相手にしなきゃセツのところにいけないんですか? それなら……。
「時間がないので、纏めてお相手させていただきます。構えて下さい」
傲岸不遜。そうとられても仕方のないくらいの大言壮語ですが、今の私なら……。
「はぁ? テメエ、まさか俺ら全員相手に勝つつもりでいるのかよ?」
「はい」
なにか問題でも? とばかりに言ってのけます。挑発の一種ですが、本心でもあります。むしろ、この人たち程度を相手に勝てないようでは、この先セツの力になんてなれませんから。
「ギチチッ、この無死虫団のエリート騎士であるこのワタシを愚弄するとは……万死に値する!」
『…………』
光丸さんと、セツが倒した『甲虫装甲騎士』さんの二人は綺麗に挑発に乗ってくれましたが、後の四人はロクに反応を返してすらきません。仕方ないので、このままデュエルすることにしましょうか。
『デュエル!』
「はい。デュエルです!」
光丸LP4000
闇丸LP4000
邪々丸LP4000
インセクトナイトLP4000
地獄戦士LP4000
終焉の精霊LP4000
アテナLP4000
「俺のターン、ドロー!」
光丸さんがカードをドローします。普通に私は最後のターンに回されましたが、その方が都合はいいので気にしない事にします。
「ハッ! 俺たちを甘く見やがったこと、後悔させてやるぜ! 俺は手札から速攻魔法『手札断殺』を発動! お互いに手札を二枚捨て、デッキからカードを二枚ドローするぜ!」
「はい。では私も、二枚ドローします」
手札から『シャインエンジェル』と『コーリング・ノヴァ』を捨てます。
「更に、カードを二枚セット。魔法カード『死者蘇生』! 俺の墓地から『光帝クライス』を特殊召喚し、効果発動! 俺のセットした二枚を破壊し、俺はカードを二枚ドロー! 更に、破壊された二枚の『黄金の邪神像』の効果発動!『邪神トークン』二体を特殊召喚するぜ!」
『光帝クライス』ATK2400
『邪神トークン』DEF1000×2
「ターンエンド。どうよ? これでも俺を馬鹿に出来んのかよ?」
「いえ、別に馬鹿にしてはいませんよ?」
特に警戒すべきだとも思っていませんが。
「私のターン、ドロー」
次の闇丸さんがドローします。どうでも良いですけど、ホントに個性の欠片もありませんねあの人たち。同じ帝使いでも、光丸さんや剣士さんが相手した風丸さんはもっと個性があったと聞いているんですけど。
「『邪神トークン』をリリースし、『闇帝ディルグ』をアドバンス召喚。効果発動。貴様の墓地の二体のモンスターを除外し、デッキの上から二枚を墓地に送る」
『闇帝ディルグ』ATK2400
私の墓地の二体の天使が闇に消え、代わりに『アテナ』と『光神機-轟龍』が墓地に送られました。むしろ好都合です。
「ターンエンド」
「私のターン、ドロー」
今度は邪々丸さんですか。正直、個性がなくてどっちがどっちだかよくわかりませんね。
「『手札から『ダーク・アームド・ドラゴン』を墓地に送り、手札から『ダーク・グレファー』を特殊召喚。そして『邪神トークン』をリリースすることで『邪帝ガイウス』をアドバンス召喚」
『ダーク・グレファー』ATK1700
『邪帝ガイウス』ATK2400
「そして『邪帝ガイウス』で『ダーク・グレファー』を除外し、貴様に1000ポイントのダメージを与える」
「っ……!」
アテナLP4000→3000
「ターンエンドだ」
「へっ! どうよ? クライスを出しながら、味方の援護までする俺様の妙技は!」
妙技……なんでしょうか? いいコンボだったとは思いますが。
「ギチチッ! ワタシのターン、ドロー。ワタシは『甲虫装甲騎士』を攻撃表示で召喚。カードを二枚セットしてターンエンドだ」
『甲虫装甲騎士』ATK1900
「おれのターン、ドロー。おれは『地獄戦士』を攻撃表示で召喚。カードを一枚セットしてターンエンド」
『地獄戦士』ATK1200
「我のターン、ドロー。我は『キラー・トマト』を召喚。ターンエンド」
『キラー・トマト』DEF1400
「私のターンです! ドロー!」
さあ、やっとターンが回ってきました! そして……。
「これが、ラストターンです」
『っ!?』
露骨な勝利宣言に、相手集団が色めき立ちます。
「私は手札から『ヘカテリス』を墓地に捨て、デッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加え、発動します」
お約束といってしまえばそれまでな、私の第一手。そして、私のデッキの潤滑油。
「ヴァルハラの効果を使って、手札から『光神テテュス』を攻撃表示で特殊召喚します!」
「……トラップ発動『奈落の落とし穴』。攻撃力1500以上のモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、そのモンスターを破壊してゲームから除外する」
『終焉の精霊』がトラップを発動しますが、それくらいはさすがに予想済みです!
「手札から『紫光の宣告者』の効果を発動! 手札の『アテナ』と共に墓地に送ることで、トラップカードの効果を無効にして破壊します!『バイオレット・ジャマー』!」
トラップが発動する直前、紫色の光がカードを撃ち抜き、霧散させます。
「そして手札から魔法カード『トレード・イン』を発動します! 手札から『堕天使スペルビア』を墓地に送ることでデッキからカードを二枚ドロー!」
ドローしたカードの中には当然天使族モンスター。意図的にモンスター比率を高めているこのデッキで、モンスターを引けない方が珍しいです。因みにもう一枚のドローカードは『打ち出の小槌』です。
「私はドローした天使族モンスター『聖なるあかり』をオープンすることで『光神テテュス』の効果を発動します! もう一枚ドロー!」
引いたのは天使族モンスター『紫光の宣告者』。
「更にテテュスの効果でドロー! 天使族モンスター『アテナ』をオープンしてドロー!『オネスト』をオープンしてドロー!『シャイン・エンジェル』ドロー!『ムドラ』ドロー!『緑光の宣告者』ドロー!『マシュマロン』ドロー!『虚無の統括者』ドロー!『神聖なる魂』ドロー!『ジェルエンデュオ』ドロー!『フェアリー・アーチャー』ドロー!『コーリング・ノヴァ』ドロー!『堕天使アスモディウス』ドロー!」
っと、第一弾はこれで終わりですか。
「では更に魔法カード『打ち出の小槌』を発動します! 手札を十枚デッキに戻して十枚ドロー!」
当然天使族モンスターはいます。というか、果たして私のデッキに魔法・罠が十枚も入っていたかどうか。いえ、入ってはいますけど。
「私は『マシュマロン』をオープンしてドロー!『神聖なる魂』ドロー!『緑光の宣告者』ドロー!『紫光の宣告者』ドロー!『緑光の宣告者』ドロー!『神光の宣告者』ドロー!」
むぅ、宣告者が続きますね。
「『スケル・エンジェル』ドロー!『虚無の統括者』ドロー!『シャイン・エンジェル』ドロー!『コーリング・ノヴァ』ドロー!『光神テテュス』ドロー!」
あ、終わりましたね。まだまだドローブースト自体は出来ますけど……まあ、必要なカードは全て揃ったので別にいいでしょう。
「では早速行きます! 魔法カード『最終戦争』! 手札を五枚墓地に送り、フィールド上の全てのカードを破壊します!」
これだけブーストした後なら、手札五枚くらい消費のうちにも入りません。
「チェーンしてトラップカード『和睦の使者』」
「手札から『紫光の宣告者』と『シャイン・エンジェル』を捨てて無効化します!」
二度目のトラップ無効化です。さあ、これで十分墓地も肥えました。
「行きます。手札から『ヘカテリス』を墓地に捨ててデッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加え、発動します」
先程と同じくヴァルハラです。
「ヴァルハラの効果で、手札から『アテナ』を特殊召喚!」
『アテナ』ATK2600
『はいは~い。お給料分の仕事はしますよ~』
してないじゃないですか。主にサボりで。
「そして『ジェルエンデュオ』を召喚。『アテナ』の効果で終焉の精霊に600ダメージ!」
『一発目! 天罰てきめーん!』
「ぐっ!」
終焉の精霊LP4000→3400
「更に『アテナ』の効果発動!『ジェルエンデュオ』をリリースして『堕天使スペルビア』を蘇生します!『アテナ』の効果でダメージ!」
『第二射! 天罰てきめーん!!』
終焉の精霊LP3400→2800
『堕天使スペルビア』ATK2900
「スペルビアの効果で墓地から二体目の『アテナ』を特殊召喚です!『アテナ』の効果でダメージ!」
『あら? 鏡写しのお姉さんね。取り敢えずてきめーん!』
終焉の精霊LP2800→2200
「二体目の『アテナ』の効果です! スペルビアをリリースしてもう一度スペルビアを蘇生!『アテナ』は二体いるので二体分のダメージです!」
『『声を揃えて! 天罰てきめーん!!』』
終焉の精霊LP2200→1000
「そしてスペルビアの効果で三体目の『アテナ』を蘇生! 二体の『アテナ』の効果です!」
『『もいっちょてきめーん!』』
「ぐおおおっ!?」
終焉の精霊LP1000→0
まずは一人目!
「続いて更に三体目の『アテナ』の効果です! 三度、スペルビアをリリースして蘇生!『アテナ』三体分のダメージです!」
『『『纏めて~……てきめーん!!』』』
「ぐああああっ!?」
地獄戦士LP4000→2200
「スペルビアの効果で『オネスト』を蘇生します!『アテナ』三体分のダメージ!」
『『『そろそろ飽きてきたけど、天罰てきめん!』』』
「ぐうううっ!?」
地獄戦士LP2200→400
「私は『オネスト』を自身の効果で手札に戻します。そして魔法カード『アドバンスドロー』! フィールドの『堕天使スペルビア』をリリースしてカードを二枚ドローします!」
このドローには特に意味はありません。フィールドを空けること。それが目的です。
「私の墓地にモンスターが十体以上いるとき、手札から『究極時械神セフィロン』を特殊召喚します!」
『究極時械神セフィロン』ATK4000
「セフィロンは天使族モンスター。当然『アテナ』三体の効果も発動します。一体と二体に分けてダメージです!」
『『『はいはいてきめんてきめん』』』
「ぐあああっ!?」
「ギチチッ!?」
地獄戦士LP400→0
インセクトナイトLP4000→2800
二人目終了です! っていうか、早くもシャルナが飽きてきてます。給料分の仕事はどうしたんですか。
「そしてセフィロンの効果で墓地から『光神機―轟龍』の効果を無効化し、攻撃力を4000にして特殊召喚です!」
『光神機―轟龍』ATK2900→4000
『『『今度こそラスト! 天罰てきめーん!』』』
インセクトナイトLP2800→1000
「さあ、バトルしますよ!」
フィールドには攻撃力2600の『アテナ』が三体。4000のセフィロンと轟龍。つまり……。
「これで、終わりです! まずは一体目の『アテナ』でトドメ!『ディヴァイン・クロス』!」
『よっし行くわよ! 食らえーい!』
抵抗すら許しません……! ここで決めます!
「ギチチッ!? ば、馬鹿なっ!? ギィィィィィィッ!?」
インセクトナイトLP1000→0
三人目! これで半分です!
「残り二体の『アテナ』でダイレクトアタック!」
「ぐあああああっ!?」
邪々丸LP4000→0
四人目!
「続いて『光神機―轟龍』でダイレクトアタック!『ライトニング・バースト』!」
「ぐぅぅぅぅぅっ!?」
闇丸LP4000→0
五人目です! 次で、ラスト!
「ひっ!?」
仲間が次々にやられていくのを見て、顔を引き攣らせた光丸さんが小さく悲鳴をあげます。
「『究極時械神セフィロン』で、光丸さんを攻撃!『アカシック・ストーム』!」
「ぎ、ぎゃひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
光丸LP4000→0
セフィロンの放つ光の奔流が、最後に残った光丸さんを呑み込んでいきます。
「私は、スピリチュア。魂を司る上級天使として、偽りの生命に慈悲は見せません」
例え、今のこの身が精霊でなかったとしても。
「私は……私ですから」
さあ、こんなところで時間を取られるわけにはいきません。早く、セツのところに行かなくちゃ……。
「いや~ホント、派手にやったもんねぇ……」
「っ……!」
早く、行かなくちゃ。けれど、そんな私の前に、大いに呆れてます、と言わんばかりの表情で立ち塞がる女の人。
「光、お姉さん……!」
「ワンターン6キル? 聞いたことないわよそんなの……希望態々六人も揃えたってのに、鎧袖一触とはこのことね」
「やっぱり、貴女も……」
「ん? そりゃそうでしょ。私が誰の恋人やってると思ってるのよ」
「……ですよね」
真中希望さん。かつての私の上司……というか主であり、世界の意思。
「で? アンタはやっぱり、希望の邪魔をするのかしら?」
「……そうですね」
あくまで個人的な意見を言うならば、希望さんが間違っているとは思いません。大のために小を切り捨てる……いえ、この場合、切り捨てるときに迷わないように、元からその役目を持った存在を作り、その時が来たら処分する。全ては、この世界の人々が安寧とともに生きられるよう……。
「希望さんのやり方が、間違っているとは言いません。きっと、あの人はあの人なりに、すべての人に優しい世界の救済を、心から願ってこの道を選んだんでしょう」
「よくわかってるわね。でも、アンタはそれに反抗する。なんでかしら?」
「決まってます。同じ優しい選択なら、エンヴィーも救うと言った、セツの選択を支持します。たった一人でも、救われない子がいるのなら……それを救うと誓ったセツに、私は正義有りと判断します」
「その結果、世界が滅びたら? セツの言う、エンヴィーも世界も救う、なんてのはただの夢物語。希望の言う選択こそが、世界を救う唯一のものだったなら?」
「私がエンヴィーを殺します」
即答しました。
「言い切るわね」
「元より、私の本来の役割は終焉を滅ぼすこと……最悪の場合には、私はその役割を果たします。ですが……」
最後まで、足掻き続けます。それが、私の好きになったセツの選んだことで、私が選ぶべき道でもあります。
「そう……」
私の覚悟を聞いた光お姉さんは、目を閉じ、しばらく何事か考えている様子でしたが、次に目を開いた時には、その目には確かな戦意が宿っていました。
「なら、戦うしかなさそうね」
「はい。お互いに、信じるもののために」
「ええ。私に勝てば、私の持つタロットは渡す。セツのところにでも行けばいいわ」
「私が負ければ、私のタロットを渡して、セツのところにはたどり着けない。そういうことですか」
「そうね。それでいいんじゃないかしら」
そこで、光お姉さんは不敵な笑みを浮かべました。
「でも、いいのかしら? これまで二度、私とアテナはデュエルしてるけど……どちらも私が勝ってるわけだけど」
「構いません。今の私は、今までの私とは違いますから」
「言うじゃないの。なら、その実力、見せてもらおうじゃない」
「はい。始めましょう。私たちのラストデュエルを!」
「「デュエル!!」」
光丸なんて、所詮こんなもん。アテナは、宣言通りもっと凄いことをやってのけました(※第三期第二十四話のあとがき参照)。
今回のワンターン6キル。現実だとライフが8000なので3キルになりますが、可能です。何故ならオリカもアニメオリカも使ってないから。それどころか禁止・制限に引っかかってるカードすら使ってない(途中でドローしたオネストくらい)ので、比較的決めることは容易いかと。テテュスブーストさえできれば、夢のone turn three kill……(ネイティブ)が可能になりますので、是非お試しあれ。
さて、前座(酷い)が終了し、次回が本番。パワーデッキ同士の対決です。二度に渡る敗戦を経験した相手ですが、リベンジなるか。乞うご期待。
それでは、悠でした!