アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第四十七話「繋ぐ想い」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第四十七話「繋ぐ想い」

 

 

 

 

 

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』ATK0

「…………」

 希望が召喚した“神”……『アカシック・ゼロ・アクセサー』の攻撃力は0だ。アカシックと名がついているにも関わらず、フィールド魔法の効果も受けていない。

「ってことは、あらゆる効果を無効にする効果か」

 神なら、それくらいの耐性を持っていても不思議じゃない。

「その通り。君の予想通り、『アカシック・ゼロ・アクセサー』第一の効果は自分以外の、あらゆる効果を受けつけない完全耐性」

「ちっ……」

 なら『天罰』も無効だな。クソッ……それならリーディングエクスプローラーの時に使っておくんだった!『天位の階』を温存しようとしたのがミスだったか……?

「なに、君の判断は間違っていたとは言えない。リライトヒーラーを倒せなければ、神を出すまでもなく、君は僕のライフを削ることすら出来ずに敗北していただろう。逆に言えば、君は僕を、神を出させるほどに追い詰めたと言ってもいい」

「……できれば、そんなもんが出てくる前に勝ちたかったところだけどな」

「それは無理だね。これはある意味、物語の必然だ。どんな展開になっていたとしても、僕はきっと、運命に導かれ、このタイミングで神を引き当て、召喚しただろう」

 それは、きっとそうなんだと思う。運命、という言葉は好きになれないが、その言葉の一面だけ見て否定するのはやめよう。

「……なら、俺はその運命を打ち砕く。いや……俺は、必然の勝利を掴んでみせる」

 俺の言葉に、希望は確かな笑みを浮かべた。期待通りだと。その思わず溢れたといった風の笑顔に、俺は希望の真意を見た気がした。

「まさか……期待しているのか? 俺たちが、神を打ち破ることを」

「さて……どうだろうね? どちらにしても、このカードを召喚したからには、最早決着の時は近い。さあ、バトルを開始しよう」

 希望がそう言った瞬間、神が……『アカシック・ゼロ・アクセサー』が動き出した。その手に持つ本が捲られ始め、特定のページで動きを止めた。

「『アカシック・ゼロ・アクセサー』のモンスター効果だ。一ターンに一度、自分か相手の墓地に存在するモンスター一体をゲームから除外することで、その攻撃力と効果を得る」

「なっ……まさか!?」

 本から溢れた光が、『アカシック・ゼロ・アクセサー』の背後に立体映像のように映し出したのは、紛れもなく『アルカナ ナイトジョーカー』の姿。

「……アカシックレコードにアクセス……戦闘情報を解析……コード名、『アルカナ ナイトジョーカー』……ダウンロード完了。システムアップデート、OK……さあ、戦闘を始めようか」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』ATK0→3800

「そして『アカシック・ゼロ・アクセサー』のもう一つの効果。バトルフェイズ開始時に、相手フィールド上に存在するモンスターの数だけ、一度のバトルフェイズ中に攻撃できる!」

「なにっ!?」

 俺のフィールドに存在するモンスターは四体……四回攻撃だと!?

「マズイ……! アルカナの攻撃力で、四回攻撃なんてされたら……!」

「君の手札も、セットカードも把握している。君に耐えうる術はない。それでも尚、耐え切れるというのなら……耐えて見せろ! 僕は『アカシック・ゼロ・アクセサー』で『切り札の騎士団長-エース』を攻撃!『コード:ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』の背後のアルカナが、その手に持つ剣を振り上げる。アルカナと全く同じ挙動で、俺を倒すために向かってくる。

「くっ……!」

 どうする!? 今この状況で、勝利するために出来ることは……!

『セツ!』

「っ!?」

『俺を切れ!』

「なっ!?」

『俺の……仲間の戦闘を庇う効果を無効にしろ! そして……希望を繋げ!』

「っ……!」

 それしか、ないのか……! 仲間を……俺の騎士を切り捨てる選択しか、俺には……!

『切り捨てるのではない! 未来を……希望を繋ぐため、俺は喜んでその礎になろう! お前が……王が、躊躇うな!』

「俺は……!」

『やれ。セツ。我が許す』

「エース……!」

『早くしろ! 負けても……守れなくてもいいのか!?』

「っ……『切り札の騎士-テンス』の効果発動! 仲間の……切り札の騎士が攻撃対象に選択された時、このカードに対象を移す!」

『それで、いい!』

「そして俺は、この効果に対し、カウンタートラップ『天罰』を発動する! 手札一枚を捨てることで、モンスター効果を無効にし、破壊する!」

 天から振り落ちて来た雷が、テンスを貫く。

「……フィールド上のモンスターの数が変わったことで、バトルの巻き戻しが発生するよ」

『……勝て。セツ。俺は犠牲になったのではない。仲間を守り、未来への希望となるだけだ』

「ああ……ありがとう。テンス。お前の力、無駄にはしない! 俺は手札から捨てた『ジャム・ウォリアー』の効果を発動! デッキからカードを二枚ドローする!」

 引き当てる! 勝利へ繋ぐ、そのために!

「俺がドローしたカードは……」

 『英知之蔵-生命之書』によって、希望にもそのカードを公開する。希望の目が、見開いた。

「『オネスト』と、『サイクロン』だ!」

「やった!」

 俺のドローしたカードに、さだめたちが喜色混じりの声をあげる。

「……ここで『オネスト』を引いてくるか……!」

 希望も、その結果には驚きを隠せないようだ。しかし、その笑みはむしろ挑発的だ。

「……だが、果たして『オネスト』で神を倒せるかどうか……試してみるか?」

「なにっ!?」

「まずは巻き戻された一撃目……『アカシック・ゼロ・アクセサー』で『冥王竜ヴァンダルギオン』を攻撃。『コード:ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

『グオオオオオオオッ!?』

「ぐああっ!? ヴァンダルギオン!!」

 セツLP3500→2500

『グヌゥ……すまぬ、我が駆り手よ。あとは任せた』

「ああ……必ず勝つ!」

 『オネスト』でヴァンダルギオンは守れない。わかってはいたが、それでも悔しい。

「さて、残るは光属性モンスターが二体……君の手札に『オネスト』があるのがわかっている以上、ここは退くのが普通だが……」

 ニヤリ、と希望は自信有りげに微笑む。

「バトルを続行する」

「なっ!?」

「『オネスト』対策があるの!?」

 自身もよく使う『オネスト』に全く怯む様子も見せない希望に、ユーキちゃんが瞠目する。

「僕は『アカシック・ゼロ・アクセサー』で『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』を攻撃!『コード:ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

「くっ……!?」

 攻撃力2500で、一度だけ戦闘破壊を免れてしまう(・・・・・・)エンプレスに『オネスト』を使わないという選択肢はない。だが、そうするとエースが……。

『構うなっ!』

「っ……!」

『テンスが覚悟を見せたのだ! 団長たる我がその覚悟を継がずしてなんとする!?』

「……すまん! 俺は手札から『オネスト』の効果を発動する! このターン終了時まで、戦闘を行う光属性モンスターの攻撃力を、相手モンスターの攻撃力分アップさせる!」

 『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』ATK2500→6300

「迎え撃て!『オネスティ・ハーツ』!」

 『オネスト』の光の力を宿した連結剣が、圧倒的な光輝を以て『アカシック・ゼロ・アクセサー』を両断する……かに思われた。

「この瞬間『アカシック・ゼロ・アクセサー』の最後の効果を発動する。これこそが、答え無き真実への扉、『ゼロ・アンサラー』!」

「っ!?」

 返り討ちにしようとしたエンプレスの連結剣が、『アカシック・ゼロ・アクセサー』の背後に映し出されているアルカナの虚像に受け止められる。

「『アカシック・ゼロ・アクセサー』は、戦闘を行う時、発生する僕への戦闘ダメージと自らの破壊を無効にし、デッキからカードを一枚ドローする。アカシック最強の神は、効果でも、戦闘でも倒すことは叶わない」

「そん、な……」

 戦闘破壊を無効にするばかりか、アドバンテージまで手にする効果だと……?

「インチキ! そんなんインチキじゃん! 効果が効かないのに、戦闘でも倒せないんじゃ、どうしようも……あっ!?」

 どうしようも、ない……? 勝て、ない?

「がふっ!?」

 俺の口から、鮮血が迸る。まさか……。

「セツくん! 弱気になっちゃダメ! 諦めないで! どんなに強いモンスターでも、必ず弱点はある!」

「無駄だ。アカシックの神に弱点はない。戦闘も、効果も、決して神を倒せない」

「クソッ! 本当に手はねえのか!? なにか……なにか……!」

「さあ……そろそろ絶望の幕を引こうじゃないか。僕は『アカシック・ゼロ・アクセサー』でもう一度『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』を攻撃する。『コード:ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

 俺の意思に関わらず、エンプレスは神を迎撃するため連結剣を構える。しかし、その迎撃の剣戟は、無常にもまた背後のアルカナによって防がれてしまう。

「戦闘ダメージと破壊を無効にし、一枚ドローする!『ゼロ・アンサラー』!」

 希望の手札が増えていく。俺の希望を……可能性を摘み取るように。

「さあ……そしてそろそろ、エースにも退場して貰おうか」

『くっ……!』

 エースが剣を構えるが……無理だ。『オネスト』もなく、アルカナの攻撃力には太刀打ち出来ない。

「『アカシック・ゼロ・アクセサー』で『切り札の騎士団長-エース』を攻撃!『コード:ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

『ぐっ……あああああああああっ!?』

「が、はっ……!?」

 セツLP2500→1400

「僕はカードを一枚セット。ターンエンドだ。エンドフェイズに『アカシック・ゼロ・アクセサー』の攻撃力は元に戻る」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』ATK3800→0

「…………」

 俺のターンだ。だが……。

「セツ!」

「アテナ……?」

「顔を……顔を上げてください!」

 アテナの必死な声に、少しだけ俯かせていた顔を上げると……。

「んっ……!」

「んむっ!?」

 キスされた。

「ああーっ!?」

 なんかさだめの叫び声が聞こえたが、今はそちらに顔を向ける余裕はなかった。

「んっ……っは、セツ」

 数秒ほどの、短いキスを終えて、アテナがそのまま、俺の頬を包んだまま話し始める。

「顔を上げてください。俯かないでください。そんなの、私の好きなセツじゃありません」

「アテナ……」

「目は、覚めましたか?」

「え……」

「神がなんですか。無敵がなんですか。そんなことで諦めるなんて早すぎます。セツ、デュエリストなら、最後の最後まで……ラストドローまで諦めないでください」

「…………」

「諦めるなら……まだ目が覚めてないなら、何度だってキスします。だからぶっ!?」

「させるかーっ!」

 アテナが消えた。なんか、アテナらしい悲鳴を残して消えた。

「さ、さだめさん……げほっ! お、乙女のお腹にドロップキックって……!」

「問答無用! まったく油断もスキもありゃしない! ちょっと目を離すとすぐこれだよ! この清純気取りの肉食系!」

 いや、全く目は離してなかったと思うが。

「な、な……よ、よりにもよってさだめさんが言いますか!? 大体私はセツを元気づけようと……」

「それなら……!」

 ぎらり、とさだめが振り向いて俺に向かってロックオン。

「さだめがするぶふっ!?」

「ぶっ!?」

 頭突きでもかますかのように飛び込んできたさだめの口が、俺の口と激突する。キス、とかいう甘いもんじゃない。完全に歯と歯のぶつかり合いだった。

「う、ぐ、ぐ……し、しくったぁ……」

 口元を押さえ、涙目で震えるさだめ。コイツはホントに……。

「……まったく」

「んっ……」

「「あぁっ!?」」

 呆れたようなため息混じりの声とともに、俺の顔をほぼ後ろから掴んだルインが、背中越しに俺にキスをしてきた。

「……ふぅ」

「ちょっとルイン!」

「なんですか今の横取り!」

「……ん、ごちそうさま」

「あー……その、お粗末さま?」

 なんと言っていいのかわからず、そんな間抜けな声を返してしまう。

「……もう。これでわたしだけしない、なんてナシだよね~?」

「んぅ!?」

 負けじと飛びついてきたユーキちゃんがさだめと違って綺麗に俺の唇を奪う。なんというか、鮮やかだった(他人事)。

『ちょっとっ!? わたくし今デュエル中でそちらにいけないんですのよ!? 不公平じゃありませんこと!?』

『き、キサマら……今の状況をわかってるのか!?』

 しかも希冴姫とエースまで青筋立てて迫ってくる始末だ。

「いいんじゃないかな~? あとで、たっぷりしてもらえば。勝った後に、ね?」

 ウインクしながら言ったユーキちゃんに、希冴姫とエースが黙る。いや、ちょっと待て。

『……仕方ないですわ。最初はわたくしですわよ』

『……い、いや。我はいい。結構だ』

 そう言いながら、チラチラと俺の方を見てくるエース。お前な……。

「お前ら……」

 勝った後で、なんて……勝てる算段もつかないのに、なんでそんな簡単に……。

「信じてるんだろ。お前が勝つって」

「剣士……」

「……オレはしねえぞ?」

「当たり前だ!」

 おぞましいことを言うな!?

「……ま、そういうこった。盛るなら、勝ったあとで勝手にやってろ。オレは知らん」

「あ、あのなぁ……」

 他人事のように(実際他人事だが)言ってのける剣士に、思わずジト目を向ける。

「と、兎に角!」

 脱線しかけた話を戻すように、アテナが声を張り上げた。

「……セツ、辛いなら、私たちが手を繋いでます。抱きしめてあげます。キスだってしてあげますっていうかします」

『……おい』

 エースがジト目で睨んできた。

「だから、諦めないでください。セツなら……いいえ。セツと私たちなら、必ず見つけ出せます。活路は必ずあるはずです」

「アテナ……」

 アテナは、宣言通りぎゅ、と俺の手を握った。その時だった。

「あ、れ……?」

 体が、ふっ……と軽くなった。今までみたいな、やせ我慢とか、感覚が鈍くなった感じじゃない。もっと根本的に、体の痛みが和らいだような……。

「っ……!」

「アテナっ!?」

 代わりに、というように、アテナが苦痛に身を捩る。どういうことだ? どうして……。

「まさか……」

 ハッとした顔で、ルインが俺の肩を握る。するとまた、スっと体が楽になった。

「っ……くぅ!」

 そしてやはり、ルインが苦痛に顔を歪ませる。

「や、やっぱり……」

「ルイン、どういうことだ? どうして、俺の体が楽に……」

「貴方の……力の本質が、漸くわかった」

「力の、本質……?」

「貴方の力は、転移の力……そう、思っていた」

 そうだ。いざという時、逃げることしか出来ない力。それが……。

「でも、違った」

「え……?」

「本当の、貴方の力の本質は、繋ぐ力……転移は、あくまで他の場所と場所とを、繋いでいただけに過ぎない」

「繋ぐ、力……」

「人と人との縁を繋ぎ……心を繋ぐ。以前、貴方が人間界から、剣聖を軸に転移した時と一緒……人と人の繋がりを、転移という形で現出した」

「じゃあ、今俺の体が楽になってるのは……」

「私たちと貴方の、体を繋いだ。苦痛を、私たちと貴方の間で等分した」

「なっ……!?」

「さだめも!」

「わ、わたしも!」

 それを聞いて、さだめとユーキちゃんもすぐさま俺の体に触れる。すると、さっきよりも更に体が楽になる。アテナやルインの表情も、心なしか和らいだ。

「お、おいお前ら……」

「はっ……いいじゃねえか。オレも乗らせろ」

「私も……微力ながらお手伝いします!」

 剣士と凛までもが俺の体に触れ、もう殆ど気にならなくなってきた。

『にゃ~るほど……なら、人数が多いほどいいわよねん?』

『はン。面白ェじゃねェか。おいカイエン、わかってンな?』

『はいっ! 私もお手伝いします!』

『…………』

『ふむ……そういうことなら、我が筋肉の力も貸そうではないか』

『……ま、ちょっと今のエリアルにはやらせられないしね。代わりに、で良ければ』

『おおっ! 俺みたいな脇役でも役に立てるんなら、やってやるぜ!』

 精霊たちまでもが、それぞれのパートナーと手を結び、それぞれの負担が一気に軽減される。もう、痛みに強い俺でなくても、ほぼ気にならない。

「みんな……」

「勝ちましょう。セツ。私たちも、精一杯支えます」

「やろう。お兄ちゃん。神を倒そう!」

「セツくんならできるよ~!」

『そちらで手を繋げないのが口惜しいですが……わたくしたちとも、きっと繋がっております』

『……全く。どこまで人たらしなのか、な』

「痛みくらい、幾らでも引き受けてやらぁ。だから、勝てよ」

「私たちも戦います。だから……先輩も諦めないでください!」

「……貴方の力は、繋ぐ力。だから、出来る筈。希望を、未来へ繋ぐことが」

 最後にルインがそう締めくくり、みんなは揃って頷いた。

「……ああ!」

 力尽きようとしていた身体に、活力が戻る。そうだ。何を弱気になっていたんだ。俺は。まだ、俺のライフは残ってる。テンスと、エースの献身のおかげで、まだ望みは繋いでいるじゃないか。

「なら、諦めるわけには行かない。勝つんだ。神に。希望に。己に! 俺の、ターン!」

 デッキトップに手をかけ、一気に引く。まだだ。まだ、希望は潰えていない!

「俺がドローしたカードは『ガード・ブロック』!」

 これなら、まだ耐えられる!

「まずは、墓地に存在する『冥幼竜ヴァーミリオン』のモンスター効果! カウンタートラップのコストになったこのカードは、スタンバイフェイズに手札に戻る! そして、手札から速攻魔法『サイクロン』! お前のフィールド魔法……『英知之蔵-生命之書』を破壊する!」

「……そうはさせない。よく息を吹き返したといいたいが、神は倒せない。このフィールド魔法も……カウンタートラップ『マジック・ジャマー』! 手札を一枚捨て、魔法の発動と効果を無効にする!」

「っ……それならそれで構わない。俺はカードを三枚セット。『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』を守備表示に変更して、ターンエンドだ!」

 『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』ATK2500→DEF2000

「僕のターン、ドロー」

 俺が復活したのを見てか、希望はその表情を引き締め、笑みを消している。改めて、油断を消した。そんな表情だ。

「……神を攻略するにあたって、まずは守りを固めたか。確かに『アカシック・ゼロ・アクセサー』の攻撃力は、恒久的に上がるものではないし、攻撃回数も君のフィールドのカードの枚数に左右される」

 そう。あくまでも希望の『アカシック・ゼロ・アクセサー』は俺のフィールドや墓地次第で能力を左右されるモンスター。攻撃力こそ、希望の墓地のモンスターも利用出来るが、そもそも今まで見てきた限り、アカシックモンスターは元々の攻撃力が低い傾向にある。最大でも『アカシック・ブレーダー』や『アカシック・リーダー』の2000。効果もコピーするから『アカシック・リーダー』をコピーすれば攻撃力は更に上げられるが、それでも決して高くない。今なら、俺の墓地のヴァンダルギオンが最大攻撃力だろう。

「……だが、それもプレイヤーの使い方次第だ。僕は手札から『アカシック・シャドウスカウター』を君のフィールドに特殊召喚する」

「なにっ!?」

 『アカシック・シャドウスカウター』ATK0

「『アカシック・シャドウスカウター』はこのターン、通常召喚を制限される代わりに、相手フィールドに特殊召喚出来る。尤も、このカードを攻撃対象に選択することは出来ないが……『アカシック・ゼロ・アクセサー』の攻撃回数増加には役に立つ」

 そして、俺のセットしたカードが全て表側表示になる。

「なんだ!?」

「『アカシック・シャドウスカウター』が自身の効果で特殊召喚された時、君のフィールドにセットされたカードを全て確認することができる」

 俺のセットカードは右から『天位の階』『ガード・ブロック』『融合準備』だ。

「セットカードをピンポイントで狙うには、いい効果だと思わないか? 僕は手札から速攻魔法『サイクロン』を発動。真ん中のカード……『ガード・ブロック』を破壊する。

「くっ……!?」

「更に速攻魔法『エネミーコントローラー』を発動。君の場の『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』を攻撃表示に変更する」

 『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』DEF2000→ATK2500

「しまっ……」

 クソッ……流石に手札が豊富にありやがる!

「そして『アカシック・ゼロ・アクセサー』の効果発動。君の墓地の『冥王竜ヴァンダルギオン』を除外し、その攻撃力を得る。アカシックレコードにアクセス……戦闘情報を解析……コード名、『冥王竜ヴァンダルギオン』……ダウンロード完了。システムアップデート、OK……いくよ。バトルだ」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』ATK0→2800

「『アカシック・ゼロ・アクセサー』で『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』を攻撃。『コード:冥王葬送』」

「ぐっ……!『切り札の騎士・聖杯-エンプレス』は、一ターンに一度、戦闘では破壊されない!」

 セツLP1400→1100

「それは好都合だ。『アカシック・ゼロ・アクセサー』で二度目の攻撃。『コード:冥王葬送』」

「ぐぁあっ!?」

 セツLP1100→800

 貫通した闇色の衝撃が、俺を襲う。だが、そのダメージは思ったほどに大きくない。それは、アテナたちみんなが、俺と共に戦ってくれている証だ。

「……ターン終了時に、『アカシック・ゼロ・アクセサー』の攻撃力は元に戻り、『アカシック・シャドウスカウター』は僕の手札に戻る」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』ATK2800→0

「まだ、抗うか……」

「抗うんじゃない……勝つんだ!」

「この状況で……まだ、勝てると思っているのか?」

「勝つさ」

「君のフィールドにモンスターはなく、手札もない。そもそも『アカシック・ゼロ・アクセサー』は効果を受け付けず、戦闘でも倒すことは出来ない……これでも、まだ」

「勝つ!」

 食い破るように、断言した。

「お前の神は、確かに無敵……それは認める。だが、絶対じゃない!」

「セツ、君は……」

「それを証明してみせる! 俺のターン! このドローで、俺たちの未来を繋いで見せる! 神を、お前を超え、世界を……エンヴィーを救い、お前をも救ってみせる!」

「僕を……救う?」

「いくぞ! ドロー!!」

 俺は、勝つ!

「俺がドローしたカードは……装備魔法『女神の聖弓-アルテミス』!」

「っ馬鹿な! そのカードは……!」

「希冴姫……」

『……はい』

「これは、お前の力なんだな」

『……はい!』

「なら、使わせてもらう! 俺はトラップカード『天位の階』を発動! 俺の墓地に存在する『切り札の騎士-クィーン』『切り札の騎士-キング』『切り札の騎士-ジャック』『切り札の騎士-テンス』『切り札の騎士団長-エース』をデッキに戻し、『切り札の騎士帝-アルカナ ロイヤルジョーカー』を融合召喚する!」

 『切り札の騎士帝-アルカナ ロイヤルジョーカー』ATK4500

「くっ……だがしかし、例え最強のアルカナでも、神を倒すことは……!」

「もうわかってるんだろ。そんなことは問題じゃない! 俺はトラップカード『融合準備』を発動! デッキから『切り札の騎士-クィーン』を手札に加え、墓地の『融合』を手札に加える!」

「まさか……いやだがしかし、あのカードは、ヘルモスの……!」

「俺は手札の『切り札の騎士-クィーン』と『融合』を墓地に送ることで……手札の装備魔法『女神の聖弓-アルテミス』を『切り札の騎士帝アルカナ ロイヤルジョーカー』に装備する!」

「馬鹿なっ! ヘルモスの力を、融合で代用出来るわけが……!」

「ヘルモスの力、じゃない!」

「!?」

「これは、希冴姫の……『切り札の騎士-クィーン』の持っている力だ! それを俺が……切り札の騎士(トランプ・ナイト)の御堂切が! 引き出せない訳無いだろう!」

「っ……!」

「バトルを行う!『切り札の騎士帝アルカナ ロイヤルジョーカー』で……『アカシック・ゼロ・アクセサー』を攻撃!『フォビドゥン・サーム』!」

「くっ……『アカシック・ゼロ・アクセサー』の効果は……」

「強制効果、だろ?」

「っ……!」

 『アカシック・ゼロ・アクセサー』の効果が発動し、希望はデッキからカードを一枚ドローする。

「そして、装備された『女神の聖弓-アルテミス』の効果発動! このカードを装備したモンスターが戦闘を行った時、相手モンスターの効果が発動した場合、その戦闘ダメージを0にし、追加攻撃出来る!」

「まさか、これは……このコンボは……!」

「行け! アルカナ!『フォビドゥン・サーム』!」

「ぐっ……ダメージと戦闘破壊を無効にし、ドローする……!」

「もう一度、続けて攻撃する!」

 その様子を、固唾を飲んで見つめていたアテナたちから、驚きの声が聞こえる。

「これって……」

「無限、ループ?」

「……違う。無限じゃ、ない」

 そう。無限じゃない。

「希望……お前のデッキ、後何枚残ってる?」

「っ!」

 希望のデッキは、あと十数枚……その回数だけ、攻撃すればいい。そうすれば……。

「ドロー不可で……」

「お兄ちゃんの勝ちだ!」

「この、この戦法は……神の効果を逆利用する、この無限ループは……!」

「俺は、今ここに……伝説を再現する!」

 そう……伝説のデュエリスト、武藤遊戯が神である『オシリスの天空竜』を打ち破った……あのデュエル!

「アルカナ……ヴァンダルギオン……そして『女神の聖弓-アルテミス』……君は、本当に……!?」

「いぃっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 絶え間なく射掛けられる光の矢が、遂に……『アカシック・ゼロ・アクセサー』を貫いた。

「……流石だ。セツ。やはり君は、僕の望んだ…………っが!」

 そして、その矢はデッキを消費し尽くし、手札からカードの溢れた希望の胸に、深々と突き刺さった。

 

 

 

 

 

 





・『アカシック・ゼロ・アクセサー』 星12 神属性 幻神獣族 攻/守0/0
 効果
 このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上に存在するアカシックと名のついたモンスター三体をリリースすることでのみ、手札から特殊召喚出来る。
(1)このカードは、このカード以外の魔法・罠・モンスター効果を受けない。
(2)一ターンに一度、自分か相手の墓地に存在するモンスター一体を選択し、ゲームから除外することが出来る。このカードは、この効果によって除外されたモンスターの攻撃力・守備力・効果を得る。
(3)このカードは、バトルフェイズ開始時に相手フィールド上に存在するモンスターの数だけ、バトルフェイズ中に攻撃出来る。
(4)このカードが戦闘を行うバトルステップ時に発動する。このカードの戦闘によって発生する自分へのダメージはゼロになり、このカードの戦闘での破壊を無効にする。この効果が発動した時、自分はデッキからカードを一枚ドローする。

・『アカシック・シャドウスカウター』 星1 闇属性 悪魔族 攻/守0/0
 効果
 このカードは、相手フィールド上に特殊召喚することができる。このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚を行えない。
(1)このカードの効果によって特殊召喚に成功したとき、このカードのコントローラーは自分フィールド上にセットされたカードを相手に確認させる。
(2)このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、攻撃対象に選択することができない。
(3)特殊召喚されたこのカードは、ターン終了時に持ち主の手札に戻る。

・『女神の聖弓-アルテミス』 装備魔法
 効果
 手札、又はフィールドから『クィーンズ・ナイト』と『融合』を墓地に送ることで、自分フィールド上に存在するモンスターに装備する。
(1)このカードを装備したモンスターが攻撃を行ったバトルステップ時に、相手モンスターの効果が発動した場合、その戦闘によって発生するお互いへの戦闘ダメージは0になり、もう一度続けて攻撃することができる。



 前回、次は第四期最終話だと言ったな……あれは嘘だ!


 ……はい。というわけで、まさかのここに来て一話延長です。次回、完結!……まさか神の攻略にまるまる一話使うとは思わなんだ……流石神。
 尚、最後にセツの使ったカード、ご存知の通り、半オリカです。元々はアニメでクィーンズ・ナイトとヘルモスの爪を融合した融合装備カードでした。ぶっちゃけ最後決めるのはこれにしよう、と多分以前掲載時、第三期が始まったくらいから考えてました。漸く実現できました。前回の感想で思いっきりデッキデス予想してくれちゃった人とかもいましたが。それと、お気づきかと思いますが、元々のアルテミスには装備モンスターの攻撃力を倍にする(2500アップ?)効果もあったのですが、それはカット。強すぎる、というのと別になくても関係なかったこと。ヘルモスの爪の力がそこにかかってるのだという事にしたかったのでカットしました。
 アルカナは、使用カードを見てもらえばわかるように、基本初代リスペクトな小説なんで、最後の方、大事な敵とのデュエルのラストは初代を踏襲しています。狂戦士の魂とか魂のリレー(アルカナペンダント)とか今回のアルテミスと無限ドローとか。……またGXはどうしたと言われそうですが。


 さあ、今度こそ次回ラスト! 全ての謎が解き明かされ、エンディングに向けて一直線であります! 最後までどうかお付き合いをお願いします!
 それでは、悠でした!
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