アルカナ~切り札の騎士~
第四期最終話「切り拓く未来」
「希望……!」
胸に矢を受け、倒れ伏した希望に駆け寄る。矢はすぐに消滅したが、希望は起き上がらない。
「おい、大丈夫か!?」
「…………これで、いいんだ」
希望は、清々しそうな笑顔を浮かべていた。
「希望……やっぱり、お前」
負けるのが目的だったのか……いや。
「エンヴィーを救うこと、諦めてなかったんだな」
俺がそう問えば、希望はふっと淡い笑みを浮かべた。
「……世界の……アカシックレコードの端末として、人ならざる存在となった僕には、所謂生殖能力は存在しない。子供を作ることも出来ない僕にとって、僕の作ったシステムの中から、なんの因果か偶然か……生まれ落ちた唯一の命……諦め切れるものか」
「希望……」
「セツ、これを」
希望は、俺に二枚のタロットと一枚のカード……『戦車』と『世界』、そして『アカシック・ゼロ・アクセサー』を手渡した。
「これで、合計21枚のタロットが、揃った筈だ……僕が消えたら、神の力でこの世界のシステム中枢にアクセスし、世界を再構築するんだ」
「お前が消えたら、って……」
「僕という世界の端末……楔が消えることで、世界は一時不安定になる。その瞬間を狙って世界のシステムを更新……アップデートするんだ。エンヴィーが生きることを許されないのは、世界の処理能力が、エンヴィーの中のバグやウィルスを処理しきれないのが原因だ……」
「世界の処理能力……?」
「バグを処理しきれないからエンヴィーに悪性が溜まるんだ……でも、世界はそう簡単には変わらない……変えることができないようにプロテクトがかかっている。その要が僕だ」
「なら、お前が俺たちに負けるってことが……」
「そうだ。エンヴィーを救うために必要だった」
「な、なら別にあんなに全力で戦わなくても……!」
「……システムに縛られた端末でしかない僕には、それすらも許されてはいなかった。それだけのことさ」
だから、求めたのか。自分を倒してくれる相手を。だから、作り上げたのか。自分を倒してくれるシチュエーションを。
「君ならば……きっとやってくれると思っていた。エンヴィーも、きっとここまで、暴走することなく耐えてくれると……」
「お前は……全てを信じて戦っていたんだな」
俺が勝つと。エンヴィーが耐えると信じ、歯を食いしばって戦い続けていたんだ。
「そうでも……ないさ」
しかし、希望は自嘲する。
「最後のデュエル……僕は例え、自分が勝っても君が勝っても、どちらにしても世界は救われるようにしていた。僕が勝てば、そのままエンヴィーを殺し、世界を救う。君が勝てば、全てを救って……」
最後の最後で、安牌で地獄単騎するようなものさ、と希望は苦笑した。
「結局……全部お前の思惑通り。手のひらの上だったか?」
「いや……そんなことはない。結果的に、僕の求めた結末へとたどり着いただけで、その過程は、常に僕にとっても驚きの連続だった」
当初、希望はエンヴィーをさだめに入れたまま、ここまで来ようとしていたらしい。その方が、エンヴィー=さだめを救うため、俺が奮起するだろうと。
しかし実際は、俺はさだめから終焉を剥がしてしまい、計画の修正を余儀なくされた。
「他にも、君の行動はいくつも僕の予想を外していた。もちろん、それらも修正可能な範囲ではあったし、可能性としては考えていたものではあったけれど。まあ尤も、君が僕の予想を超えて行く度、僕の期待は大きなものになっていった」
予定調和な行動しか取れないのなら、予定調和な結末しか訪れない。希望を……神を攻略することなど出来なかっただろう、と。
「そして君は最後に、見事に世界の……神の壁を乗り越えて、僕を倒してくれた」
「っ!? お前、体が……!」
希望の体が、徐々に薄くなってきていた。まるで、この世から消滅するかのごとく。
「……さあ、セツ。最後の、仕事だ……世界を、救い……エンヴィーを救え……世界の……新生を……君たちの、未来を……」
「バカ野郎! そしたらお前は消えるんだろうが!」
希望は敵だ。敵、だった。しかし、結局のところコイツは敵ではなく、むしろ最初から最後まで俺たちの味方だった。
「そんなお前を切り捨てたら、どうして俺がエンヴィーを胸張って守ったと言える!? エンヴィーを……世界を守ったのはお前だ。俺じゃない……! お前が生き残らないでどうする!?」
「いいんだ……僕は、それだけの罪を重ねてきた……。それに、言ったはずだ。僕は長く生き過ぎた……もう、潮時なんだよ」
「知るか!」
俺は、そんな希望の弱音を、一言で跳ね除けた。
「光さんはどうなる!? シャインは!? お前のことを大切に思う人間は、他にもいるだろう!?」
しかし、希望は首を振る。
「二人には、話してある。きっと、心から納得はしていないだろうが……それでも、痛みを乗り越えられるだけの時間は、共に過ごしてきた。彼女たちには、まだ多くの時間がある……だから、きっと」
「嘘です!」
アテナが、大きく叫んで割り込んだ。
「光お姉さん、泣いてました! 希望さんに生きていて欲しいって、泣いてました!」
希望は、僅かに表情を歪ませる。
「……それでも、光なら乗り越えられる。僕たちは、今までにも多くの仲間を失ってきた。それでも……」
「それでも!」
アテナは退かない。希望の「それでも」を自分の「それでも」で塗りつぶす。
「それでも絶対、悲しいことなんてない方が良いに決まってます! だから光お姉さんは、気を失う直前に泣いたんです! 生きていて欲しいから! ずっと一緒にいて欲しいから! だから、ダメです! 光お姉さんを悲しませるようなこと、しないでください!」
希望は、アテナから目を逸らした。
「沢山の仲間を失ってきたって、言いましたよね? それなら尚の事、一番愛しい希望さんにだけは、生きていて欲しいって……失いたくないって思うのは当然じゃないですか! そんなこともわからない程、馬鹿じゃないでしょう!?」
「……だけど、僕の消滅は確定している。そうでなければ、世界を新生し、エンヴィーを救うことは出来ない」
「そんなもの!……そんなもの、これからどうにかすればいいんでしょう!?」
「……ははっ」
思わず、笑ってしまった。相変わらず、サラッと言ってくれる。
「なんですか!? 私、なにかおかしいこと言いましたか!?」
「いや、言ってないな」
そうだ。言ってない。これからどうにかすればいい。まったくもってその通りだ。そして俺には、それをどうにかする方法が、きっと備わっている。
「……ルイン。俺の力は繋ぐ力。そうだな?」
「……間違いない」
「……そうか」
俺は、確信した。
「なぁ……おかしいと思わないか? 俺の力が、繋ぐ力だなんて」
「どういうこと?」
「俺は……御堂切。切だぞ? なんで切の力が、繋ぐ力なんだ?」
「そんなこと……」
「もちろん、名前なんて関係ないのかもしれない。でもそれにしては、この能力は余りにも正反対過ぎる。切に備わった繋ぐ力、だなんて……な」
俺はもう一度、希望に向き合う。
「希望。俺の力は、お前が授けた力か?」
「いいや。それは、君が元々持っていた力の特性……僕は一切関与していない」
「なら、確定だ」
俺には、コイツを救う力がある。
「どういうことだ? オレらにもわかるように説明しろ」
怪訝な顔をする剣士……いや、仲間たちに、俺は顔を向けて説明する。
「みんなももう知ってる通り、俺は……御堂切は、一種の二重人格だ」
主人格は、あのプライド。他者を見下し、弱者と見限り、自分で全部背負い込まなきゃ安心できない人格破綻者。
そして、もう一つは今の俺。みんなと一緒に、手を取り合って生きていくことを選んだ俺自身。明るく人当たりがよく、他者とも上手く協調出来る好青年……さだめを守るため、そういう正反対の人格を、意図して作った。
「そんな俺の力が……繋ぐ力なら」
俺の意識が、切り替わる。
「持っているはずだな? 俺は……何かを切り離す力を」
「まさか……プライド!?」
「ふん。久しぶり、でもないな。あれからそう時間も経ってはいまい」
いきなり変質した俺の雰囲気に、アテナたちが動揺する。そんな俺に、恐る恐る近づいてくる、小さな影が一つ。
「セツ……?」
「……すまなかったな。エンヴィー。心配をかけた」
「セツ!」
飛びついてきたエンヴィーを、しっかりと受け止める。えぐえぐと泣きついてきたエンヴィーの背に手を回し、抱きしめる。
「真中希望」
俺はそのまま、倒れた真中希望に向き直る。
「この子を苦しませ、悲しませた事実を、俺は決して許しはしない」
「……ああ。それでいい。君にまで許されたら、どうしようかと思っていたところだ」
俺はフンと鼻を鳴らす。
「別に、お前のために言っているつもりはない。ただ俺が気に食わんから許さんだけだ」
「そうだったね」
「そして、貴様が勝手に死ぬのも気に食わん。通り一遍の謝罪だけで、エンヴィーにしてきたことを許してたまるか」
「だが、それは……」
「この俺の力……切り離す力で、貴様と世界の繋がりを切り離す。それで解決だ。貴様は消えず、世界の楔とやらは外れる」
「……そんなことが」
「出来る。何故なら俺は、御堂切だからだ」
自信たっぷりに、断言してやる。全く、もう一人の俺には、自信が足りん。俺たちは、他者が比肩することのない力を持っているのだから、他人にへりくだる必要などない。
(……そういうお前は、もう少し謙虚になれ)
黙れ。
「兎に角、今貴様がここで死ぬことは、この俺が許さん。とっとと始めるぞ」
力の使い方は、身体に染み付いている。俺は主人格だが、物心付いた頃からもう一人の別人格に任せていたから、まともに意識が覚醒したのは記憶を失ってからだ。だからこそ、わかる。その時には既に、力は俺と共にあった。
「切り離せ……! 希望と世界を!」
俺たちを中心に、風が渦を巻く。いや、風というより、力の奔流だ。
「ぐ、ぅ……!」
しかし、この俺の力をもってしても、世界と希望の繋がりは切れない。
「……無理だ。僕という存在は、世界の根……アカシックレコードと繋がっている。セツ、君のデュエルエナジー……精霊の力がどれだけ大きくても、この繋がりは切れない。ピアノ線の束を、素手で引きちぎろうとするようなものだ」
「……なら、一人じゃなければいいんだよね?」
そう言ってさだめが俺の手を握る。
「……ああ、そうさ」
また、人格が変わる。
「俺の力は繋ぐ力……みんなの力を繋げば、行ける筈だ」
さっきと同じ様に、みんなが俺を囲む。力が、何倍にも膨れ上がる。
「これは……」
「ここには、ルインみたいな女神をはじめとして、上級天使のアテナやシャルナ、冥界の王のヴァンダルギオン、剣聖たるネイキッド。他にも沢山の精霊と、そのパートナーであるデュエリストがいる……みんなの力を繋げれば……!」
ぐ、ぐぐ……と、希望と世界の繋がりがほんの少しだけ反応を返す。しかし……。
「ぐっ……これでも、まだ……!」
やはり、世界と希望の繋がりは強固だ。これだけの人数がいて尚、切り離せない。
「しっかりしなさい!」
グンッと、いきなり力が増えた。それを成したのは、間違いなく……。
「光お姉さん!」
「希望を助けられるんなら……いくらだって力を貸すわ。根こそぎ持って行きなさい!」
光さんの力は非常に強く、流石は希望の恋人だと思わざるを得ない。そして……。
「……では、微力ながら」
「っ!? うおっ!?」
シャインだ。微力なんてとんでもない。下手すると他の全員集めても勝てないレベルの総量の力だ。て、ていうかマジで無限かこの人……!?
「光……シャインまで……」
「なに驚いた顔してんのよ」
「希望様を救える可能性があるならば、賭けてみるのは当然でございます」
「泣くのなら、アンタが消えた後でも十分だわ。今はアンタを、力ずくで引っこ抜く!」
二人の協力により、力は大きく増した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「な、なんですか!?」
「世界が……悲鳴をあげている」
楔である希望を切り離されようとしている世界が、そうはさせじと抵抗しているらしい。なるほど、それでこの地震か。
「……なら、あと少しってことだよな!」
そう。あと少し。これだけの助力があって尚、まだ切れない。
「くそ……っ。あと少し……あと少しのきっかけさえあれば……!」
その時、だった。
「……っえい!」
俺の胸に、強く抱きつく小さな姿。同時に、更に強くなる俺の力。
「エン、ヴィー……?」
「ちからが……ひつようなんだよね……? ボクのちからでも、いいんだよね……?」
「あ、ああ……でも……」
「……なぜ、君が。僕は……君を殺そうとしていた張本人で……」
「でも……もう、だれも死ななくてすむんだよ、ね……?」
エンヴィーは、ビクビクと震えながら、それでも俺に力を貸す。
「なら……いいよ。ボク、もう……だれの痛いのも、や、だから……」
「エンヴィー……!」
「ボクのちからで、だれかをたすけられるなら……きっと、それがボクの、生まれてきた意味なんだって……そう、思えるから……」
エンヴィーの言葉に、さだめが涙を流しながら同意する。
「そう……そうだよエンヴィー……さだめの贖罪だって、これから始めていかなきゃいけないんだ……! さだめも、エンヴィーも、誰かを助けられる存在になれるんだ……!」
「……ぅんっ!」
エンヴィーも、その言葉に泣きながら頷いた。その瞬間。
「……ぁ」
エンヴィーの目の前が輝き、一枚のタロットになる。
「それは……二十二枚目の……」
「『愚者』の、カード……!」
「ナンバーゼロ……始まりのカード」
そうだ。なにか足りないと思っていた。二十一枚のタロット。1から21まで数字は揃っているのに、足りない気がしていた……。
「エンヴィーが、最後の……いや、最初のカードの持ち主だったのか」
よく考えれば……それも当然か。俺やアテナ、ルインを始めとした、第二、第三の終焉になる可能性のある終焉の花嫁、またはその候補たちは、全員カード所持者だった。なら、その大元たるエンヴィーだって、所持者であっても何も不思議じゃない。そして、全てのタロットが揃うということは、即ちエンヴィーを真の意味で救えた証拠だ。
「これ、なら……!」
ギチギチと、世界が悲鳴をあげている。光さんとシャインの助力で拮抗していたパワーバランスが、エンヴィーのおかげで崩れた。これなら……!
「いっっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「っ……!」
世界が。
「…………!」
ブチッ……という音が、聞こえた。
「っ!」
「やった!?」
「いやまだだ。まだ、繊維の一本が切れたようなもんだ。まだ気を抜くな!」
だが、一本切れた後は早かった。ブチブチと、引きちぎれる音がして、希望の体が浮き上がっていく。その背に、見えない繋がりの糸があるのだろうか。
「これ、でぇぇぇ!」
「っ!?」
ブチブチブチィ! と一気に繋がりが切り離され、希望が目を見開く。そして……。
「希望さんの消滅が止まりません!」
「どうして!?」
「……僕は世界の端末。弱っていたところに、世界との繋がりが切れれば、あとは消滅するのみ……やっぱり」
「無理じゃねえ!」
俺はもう一度、力の行使を行う。だが今度は、切り離す力の方じゃない。
「お前の命を繋ぎ留める!」
「っあ……」
希望の体が安定する。どうやら、上手くいったらしい。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
希望を完全に切り離したことで、地震が大きくなる。世界が安定を失い、危うい状態にあるのは明らかだ。
「っぐ……セツ! 今度こそ……!」
「ああ!」
みんなのタロットを集め、力を繋ぐ。その上で『アカシック・ゼロ・アクセサー』をデュエルディスクにセットし、力を借りる。
「システム中枢にアクセスする! 世界を……新生する!」
『アカシック・ゼロ・アクセサー』はコクリと頷き、その手に持つ本を開く。
「これは……!」
突如、宇宙のように、360°全てを星に囲まれた、不思議な空間へと変わる。幻想的なその空間に、一箇所だけ、場違いな人工物の姿。
「これは?」
「それが、システム中枢……みんなにもわかりやすく、形にしてあるだけだけどね」
「どうすれば、いいんだ?」
「そう難しいことじゃない。その装置の上に、水晶があるだろう? あれに手を翳し、願うだけだ。君たちの望む、安定した世界の姿を」
希望に導かれ、俺はその装置に手を翳す。
「…………」
そして、願う。エンヴィーが、世界を滅ぼさないように。エンヴィーが生きていてもいい、強い世界を。
「ぁ……」
その変化は、すぐに訪れた。エンヴィーが、自分の手を見つめ、目を見開いている。
「エンヴィー?」
「なんか、へんなかんじ……ずっと、からだの中でもやもやしてたのが、すぅ~ってなくなっちゃった……」
「成功だ」
「じゃあ、これで……」
「ああ……エンヴィーが世界を滅ぼすことは、もうないだろう」
「これで終わり、か……最後は、なんか呆気ないもんだったな」
「そういうものだよ」
苦笑する俺たち。そして、周囲の風景も元に戻り、『アカシック・ゼロ・アクセサー』も姿を消した。
そして俺は、みんなの方に向き直る。
「みんな……ありがとう。これで、全部上手くいった筈だ。みんなのお陰だ」
「いきなり水臭いことを言うんじゃねえよ」
「そうです。私たちだって、無関係じゃないんですから」
剣士と凛は、そう言って二人して笑った。
「……これで、私の過去とは本当の意味でお別れ」
ルインも、淡く、とても美しい笑みを浮かべていた。確かに、ルインにとって過去の世界との決別は、今この瞬間を以て、完全に終わりを告げた。これからは、過去に縛られることなく、未来に向かって歩いていけるだろう。
「良かった……本当によかったね。エンヴィー」
「ユーキお姉ちゃん……」
涙ながらにエンヴィーを抱きしめるユーキちゃんにとっても、この結末は感無量だろう。これからは、エンヴィーの姉として、もっと永く一緒にいられるだろう。
「わたくしたちは、セツ様の剣。最後まで、こうしてセツ様と共に戦えたのですから、これ以上はありませんわ」
「……どこぞの馬鹿が、我らを勝手に逃がした愚行は、これで精算にしておいてやる」
「悪かったよ……」
「……ふん。もう離すなよ」
「エース。そろそろその、わたくしの立場を危うくしかねない言動は謹んでいただけませんこと?」
「なんの話だ。我は知らん」
まあ、希冴姫にしろエースにしろ、他の騎士たちにしろ、よくこれまで俺についてきてくれたと思うよ。感謝してもしきれない。
「ま、お兄ちゃんが行くところに、さだめがついていくのは当たり前だよね」
「ですね。私だって、それは同じです。一々お礼なんていらないんですよ」
「……そうだな」
さだめとアテナも、随分仲良くなったもんだな。特にさだめは、この一年余りで、すごく成長した。俺も、負けてはいられないな。
「……帰ろう。俺たちの世界へ」
そんな仲間たちを見渡して、俺は人間界へのゲートを開く。
一人一人、ゲートを潜って人間界へと戻っていく。そのみんなの背中を見て、俺は敢えて、あの言葉を呟いた。
「……俺たちの戦いは、これからだ」
そう。俺たちの戦いは、きっと本当に、これから始まるんだろう。明確な敵の見えない、生きるという戦いを。
俺たちの世界は、これからもずっと続いていく。過去から、
「……これからだ」
もう一度呟いて、俺は最後に、ゲートを潜っていったのだった。
そして。
「さあ始まりました、今季のプロリーグランキング戦。まずその一戦目に登場致しますのは、安定した勝率を誇るベテランプロデュエリスト、亜内武臣!」
俺はプロになり、こうして公式戦の舞台に立っている。
「そして、対しますはニュービー……これが初のプロデュエリストとしての公式戦となります御堂切!」
実況の声と共に、俺は真新しい試合着に身を包んで舞台へ上がる。
「プロも多数出場したジェネックスの大会に於いて見事優勝し、丸藤プロからの推薦も受けてプロテストに望み、まさかの史上最高点を叩き出してプロの世界に足を踏み入れた期待の新星……“新人殺し”の異名を持つ亜内プロに対し、どのようなデュエルを魅せてくれるのか!?」
「ふっふっふ……プロの世界の厳しさ、教えてあげますよ。新人クン」
ニヤリとした笑みで挑発してくる、壮年のデュエリストに、俺は笑みすら浮かべて言い返す。
「俺を新人だと思って油断すれば、後悔するぞ? アンタ、俺をなんだと思ってる」
「おやぁ? ただの新人クンじゃない、とでも言うつもりですか? では、貴方はなんだというのです?」
「俺は……セツ」
これは、この世界に足を踏み入れて最初のデュエルだ。精々、派手に名乗ろうか。
「
To Be Continued!!
……はい! というわけで、アルカナの第四期、これにて閉幕でございます! いやぁ、長かった。このアルカナを執筆し始めてから丸四年以上もの歳月をかけて、漸く完結まで持っていくことができました。これも偏に、にじふぁんで更新が停滞し、にじふぁん閉鎖以降もずっと書けずにいたアルカナを、このハーメルンにて応援してくれた読者の皆様のおかげです。
色々と、感謝の言葉はありますが、それらは本日12時に更新予定のあとがきにて語りたいと思います。今後の展望なんかも、そちらでお知らせいたしますので、気になる方はそちらをご覧下さい。
それでは、悠でした!