アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 例によって時期も時系列も完全に無視したクリスマスネタです。ある意味、実に遊戯王らしい話になっていると思うので、お楽しみください。


番外編3「聖夜に笑う決闘者」

アルカナ~切り札の騎士~

番外編3「聖夜に笑う決闘者」

 

 

 

 

「お兄ちゃんに、クリスマスプレゼントを要求する!」

「随分と図々しい奴だな……まあ、用意してないわけじゃないが」

 ふわふわの毛に覆われた耳あてを、さだめの耳にひょいっと着けてやる。

「お?」

「前言ってたろ。耳が(寒さに)弱いって」

「意味が違う!?」

「知ってる」

「でも悔しい! あったかい!」

「そうか、良かったな」

 まあ、コイツとのこのやり取りはもう毎年のことなので今更何を思うこともない。これでちゃんと喜んでるしな。一種のお約束という奴だ。

「じゃあさだめからも、はい。プレゼントね」

「……おい、なんかこれ、無闇に動いてるぞ」

「さだめの……使用済み♪」

「クーリングオフで」

「せめて一度くらい使ってから返してよ!」

「男の俺にどう使えというんだ!?」

「そりゃ、お尻で」

「妹の使用済みをケツに入れて喜ぶような奴を、俺は同じ人類として認めない!」

「あ、でも心配しないでお兄ちゃん! そんな紛い物で膜破ったりはしてないから!」

「黙れ!」

「セツもさだめさんも、相変わらずですね……」

「あ、アテナだ。メリクリ~」

「すっごく適当な挨拶ですね! メリークリスマスです。セツ、さだめさん」

「おう。何時になく平和な登場してきたな」

「……あの、私いつもそんなに物騒な登場してませんよ? さだめさんじゃあるまいし」

「え~アテナだって何時もアグレッシブな登場はしてるじゃんか」

「それは、さだめさんが何時も……っと、こんな余計なことで時間を取られている場合じゃありませんでした。セツ!」

「お、おう?」

 さだめとの言い争いを中断し、アテナがやけに気合の入った様子で俺に詰め寄る。

「クリスマスプレゼントです! 良ければ是非、受け取ってください!」

「お、おう……なんだ? 今回はプレゼント回なのか? 大丈夫なのか?」

 プレゼント経験のない作者。本当に大丈夫なんだろうな?

「お、マフラーか」

「定番だね」

「いいじゃないですか定番でも。これでも私、頑張って編んだんですから」

 確かに、不格好ながら形にはなっている。

「あの、セツ……?」

「ん? ああ、ありがたく受け取らせてもらう。サンキュな」

「い、いえ……その、巻かせて貰ってもいいですか?」

「……ああ。いいぞ」

 ちょっとだけ嫌な予感が脳裏を過ったが、折角の好意を無駄にするのも悪い。俺はアテナの申し出を快く受け入れた。

「ではっ!」

「あれ? アテナそのマフラー……」

「え? なんですか?」

「まち針付いてない?」

 ぷすぷすぷすっ!

「ぎゃああああああああああああああああああっ!?」

「ああっ!? セツ!」

 チクチクがっ、チクチクがぁっ!?

 慌ててマフラー(と言う名の拷問具)を首から外し、首をさする。幸い、深く突き刺さった針はない。

「アテナぁ!」

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「三回言っても許すかぁ! 大体なんでマフラーなのにまち針!? 使わないだろどう編んでもさぁ!」

「そこはかとない悪意すら感じるね……」

「ご、誤解です! ただその、私編み物ってやったことなくて……お裁縫ってまち針一杯使った記憶があったので適当にその……」

「よくそれで形になったね! 逆に感心するよ!」

 あの言い方からして、マフラーの編み方をネットとかで見た様には思えないから、完全にオリジナルなのだろう。確かにある意味凄い。

「だとしても抜けよ! 途中で意味ないことに気付いて抜けよ!」

「す、すみません。よくわかんないまま進めてたので、凄く時間かかっちゃって……その、ついうっかり忘れちゃって……」

 そのついうっかり、で危うく死にかけた俺としては何とも言えない。頑張って編んだってことだけは伝わってくるから余計に。

「全く……数々の修羅場を生き抜いてきた俺が、まち針ごときに殺されちゃ笑い話にもなりゃしない……」

 いやまあ、よほど運が悪くない限りまち針で死にはしないだろうが。

「教訓。作り方がわからないときは、人に聞くかネットや本で調べよう」

「はい……肝に銘じます」

 しゅん、としてしまったアテナだが、まあ元々アテナは思い立ったら一直線で深く考えず行動あるのみ! みたいなスタンスだし、その行動力自体は長所なので、そこまで怒るつもりはない。

「……ほら」

「え?」

「プレゼント。いらないならさだめにやるぞ」

「い、要ります! ください!」

 慌てたように俺の差し出したプレゼント箱を受け取ろうと……。

 ババッ!

「え?」

「なっ?」

「ふぇ?」

 箱が消えた。

「さだめさん?」

「違うけど……」

 真っ先に疑われたさだめも首を振る。不思議そうな顔を見る限り、とりあえず嘘はついてなさそうだ。その時。

「ハーッハッハッハッ!」

「なんだ!?」

「あれは……?」

 レッド寮の屋根上。紅い服を纏った男がその手にプレゼントを掲げて持っていた。

「だ、誰ですか!? 私の、セツからのプレゼントを引っ手繰った下手人は!?」

 下手人って、妙に渋い言い回しだな。

「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 季節の節目にやってくる、天衣無縫の決闘者(デュエリスト)! その名も……」

 ビシィッ! と妙なポーズを着けて人影が叫ぶ!

「エンタメン!」

「………………」

「………………」

「………………」

 無音。

「エンタメン!」

「………………」

「………………」

「………………」

 無音。

「えんたm「それはもういい!」それは残念」

 思わず突っ込んでしまったが……。

「…………なにあれ」

 さだめの言葉に、今心から同意する。こんな時期にもかかわらず、真っ赤なタイツ一丁にサンタ帽と、サングラス姿の変態(うん。この表現がしっくりくる)は、何故か無駄に偉そうにふんぞり返る。

「ふっ……私こそ、今巷で有名な、イベントの度に現れる時期モノ決闘者(デュエリスト)……その名もエンタメン!」

「……アテナ、知ってる?」

「知るわけがないでしょう」

「お兄ちゃん?」

「……少なくとも、積極的に知り合いたい感じではないな」

「じゃあ新キャラ? この時期に? 誰得?」

「さあ……ってそんなことより!」

 あまりの展開に呆然としてしまったが、アテナが気を取り直して声を荒げる。

「それ! 返してください! 私への、セツからのプレゼントなんですよ!?」

「ふ……少女よ。そんなにこのプレゼントが大事かね?」

「当たり前です!」

「ならば、私とデュエルすることだ!」

「は?」

「欲しいものは、力尽くでも手に入れる。それがこの世の理。ああっ! なんと無情!」

「意味が分かりません!……でも、良いですよ。そんなに私とデュエルがしたいというのなら……」

 ジャキンッ、と物々しい音を立ててアテナのデュエルディスクが展開する。やる気満々。いやむしろ殺る気満々と言った風情だ。

「大丈夫か……? あの変態」

「大丈夫じゃない? 変態だし」

「さあ、デュエルです! エンタメ(?)さん!」

「おぉっと、今の私はエンタメン・惨汰! 親しみを込めて、サンタさんとお呼びなさい」

「黙りやがれです!」

「アテナって、時々ガラ悪くなるよね」

「反動じゃないか? 普段丁寧語な分」

 最早思考を放棄して完全に傍観者ポジションの俺とさだめが適当なことを言う。

「さあ、私の準備は出来てますよ! 瞬殺される覚悟は良いですか!?」

「ふっ……甘く見ないことだな。この天衣無縫のエンタメンを!」

「「デュエル!!」」

 エンタメンLP4000

 アテナLP4000

「ふっ、では私が先攻だ。ドロー! キランッ☆」

 ウザッ!

「私はモンスターを守備表示でセット。カードを一枚セットして、ターンエンドだ。さあ、どこからでもかかって来なさい。少女よ」

「っ私のターン! ドロー!」

「ふっ。この瞬間、リバースカードオープン!『ギフトカード』!」

「はっ!?」

「なにっ?」

 しょ、初手から『ギフトカード』? シモッチもないのに?

 『ギフトカード』は、相手ライフを3000ポイント回復させるという、単体では全く意味不明な誰得カード。『シモッチによる副作用』とかと組み合わせればその限りではないんだが……。

 アテナLP4000→7000

「ふっふっふ……私のデッキは少々強ぉいからね。少女が一瞬にして蒸発しないよう、私からのせめてものギフトだよ。受け取ってくれたまえ」

「っ……馬鹿にして。ここまで精神を逆撫でする相手は初めてです!」

 そう言いつつも、アテナは冷静だ。相手の意味不明な行動が、逆にアテナに警戒心を抱かせたのだろうか。

「私は手札から『ヘカテリス』の効果を使います! このカードを墓地に捨て、デッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加え、発動します!」

 アテナの何時もの戦術だな。アテナの背後に、荘厳な城が出現する。

「ヴァルハラの効果を使います! 手札から『光神テテュス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 『光神テテュス』ATK2400

「そして更に『ジェルエンデュオ』を攻撃表示で召喚します!」

 『ジェルエンデュオ』ATK1700

「バトルしますよ!『光神テテュス』で、守備モンスターを攻撃!『ホーリー・サルヴェウィション』!」

「ふっ、甘いな。私の守備モンスターは『ギフテッド・カリブー』!」

 『ギフテッド・カリブー』DEF1200

 テテュスの放つ光に焼かれ、サンタ帽を被ったトナカイが破壊される。

「『ギフテッド・カリブー』は戦闘によって破壊された時、私のデッキから攻撃力1500以下のギフテッドと名の付くモンスターを特殊召喚できるのだよ! 私が呼び出すのは『ギフテッド・マジシャン』! 守備表示だ」

 エンタメンのフィールドに、サンタ服のちょっとエロい感じの女性モンスターが召喚される。

 『ギフテッド・マジシャン』DEF2500

「守備力2500……流石に手が出せませんね。ターンエンドです」

「私のターン、ドロー! くるりんっ!」

 だからそれウザい!

「ふっふっふっ……それでは少女に、我がデッキの真髄をお見せしようではないか」

「真髄……?」

「まずは『ギフテッド・マジシャン』を攻撃表示に変更する!」

 『ギフテッド・マジシャン』ATK1200

「1200の2500……なるほど。クリスマスモンスターなわけだ」

 フレームが黄色ってことはバニラモンスターか。

「更に手札から魔法カード『古のルール』! 手札からレベル6、通常モンスターである『ギフテッド・マジシャン』を攻撃表示で特殊召喚!」

 『ギフテッド・マジシャン』ATK1200

「そして永続魔法!『ジングルヴェール』を発動する!」

 『ギフテッド・マジシャン』の手にはベル。周りにはオーロラのようなオーラが満ちる。

「永続魔法『ジングルヴェール』は、ギフテッドと名の付いたモンスターの攻撃力と守備力を反転させるのだよ!」

「なっ!? それじゃあ……」

「そう! 今や『ギフテッド・マジシャン』の攻撃力は2500! 少女のモンスターを超越したのだ!」

 『ギフテッド・マジシャン』×2 ATK1200→2500

「さあ! バトルと行こう!『ギフテッド・マジシャン』で『光神テテュス』を攻撃!『アンハッピー・ギフト』!」

「きゃあっ!?」

 アテナLP7000→6900

「くっ……私がダメージを受けたことで、『ジェルエンデュオ』は破壊されます……」

「ふははははっ! 追撃だ!『ギフテッド・マジシャン』でダイレクトアタック!」

「きゃあああああっ!?」

 アテナLP6900→4400

「私はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「くっ……私のターン!」

 意外とやるな。あの変態。アテナ相手にあれだけやるとは。

「私は『神の居城―ヴァルハラ』の効果を使います! 手札から『The splendid VENUS』を攻撃表示で特殊召喚!」

 『The splendid VENUS』ATK2800

「む……」

「更に『The splendid VENUS』が表側表示で存在する限り、天使族以外のモンスターの攻撃力守備力は500ポイントダウンします!」

 『ギフテッド・マジシャン』×2 ATK2500→2000

「バトルします!『The splendid VENUS』で『ギフテッド・マジシャン』を攻撃!『ホーリー・フェザー・シャワー』!」

「ふっさせんよ! トラップ発動!『聖なるバリア―ミラーフォース―』!」

「そっちこそ、させません! 手札から『紫光の宣告者(バイオレット・デクレアラー)』のモンスター効果です! 手札から天使族モンスター一体と共に墓地に送ることで、相手の発動したトラップを無効にし、破壊します!」

「なんと!?」

 エンタメンの発動したトラップが、紫色の球体によって砕かれ、消えていく。

「むぅぅっ!?」

 エンタメンLP4000→3200

「ターンエンドです!」

「ふっふっふ……どうやら私はお嬢さんを甘く見ていたようだ」

「……なんですか?」

「これは我が真の力をお見せする必要がありそうだ、ということだよ。私のターン、ドロー!」

 エンタメンが今度は余計な動きをせずにカードをドローした。本気ということだろうか。

「まずは手札を整えようではないか。お互いに、ね。魔法カード『天よりの宝札』! お互いにデッキから、手札が六枚になるようにカードをドローする!」

「何をたくらんでいるかは知りませんが……遠慮なくドローさせてもらいます!」

 これで互いに手札は六枚。何が起きても不思議じゃないな。

「私は手札から儀式魔法『聖者降臨の儀式』を発動する!」

「儀式魔法!?」

「フィールドのレベル6『ギフテッド・マジシャン』と、手札のレベル4『ギフテッド・カリブー』をリリース! 降臨せよ!『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』!」

 『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』ATK2500

「そしてイエスマンもまた、ギフテッドの名を冠するモンスター。よって攻撃力と守備力が逆転する!」

 『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』ATK2500→3000

「くっ……」

 イエスマンは天使族であるらしい。ヴィーナスの効果が通用していない。

「凄い……」

「どうしたさだめ。お前が素直に感心するなんて珍しいな」

「いや、宗教的に間違いなく現実だとOCG化しないだろうカードを躊躇いなく出してくるあたりが」

「……なるほど」

「バトル!『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』で、『The splendid VENUS』を攻撃!『ザ・ミラクル』!」

 攻撃名が酷い。

「きゃあっ!?」

 アテナLP4400→4200

「私はカードを一枚セット。ターンエンドだ!」

「私のターン、ドロー!」

 アテナの表情は苦しい。無理もない。最初に渡されたライフアドバンテージを、早くも失いかけているのだから。

「ですが、手札は潤沢です! まずは手札から速攻魔法『サイクロン』! その厄介な『ジングルヴェール』を破壊します!」

「なんと!?」

 相手フィールドを覆っていたオーロラ状のヴェールが吹き飛ばされ、消えていく。

 『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』ATK3000→2500

「そして私はヴァルハラの効果を発動! 手札から『アテナ』を攻撃表示で特殊召喚します! シャルナ!」

『はいは~い。シャルナおねーさんサンタコスヴァージョン!』

「あ、ホントにサンタコスしてる」

 『アテナ』ATK2600

「更に手札から『聖なるあかり』を通常召喚します!『アテナ』のモンスター効果です! 天使族モンスターが召喚、特殊召喚、反転召喚される度に、相手ライフに600ポイントのダメージを与えます!」

 『聖なるあかり』ATK0

「おっと、そうは行かぬよ。リバースカードオープン! トラップカード『ホーリーライフバリアー』! 手札を一枚捨てることで、このターン、私は少女から受けるダメージを全て無効にする!」

「なっ!?」

 巧い。アテナのデッキは基本、ワンキルタイプのビートバーン。たったの一ターンで会っても全てのダメージを無効にする『ホーリーライフバリアー』は良いメタカードだ。

「くっ……それでも! 私はシャルナの効果を使用します!『聖なるあかり』をリリースすることで、墓地から『The splendid VENUS』を蘇生します!」

 『The splendid VENUS』ATK2800

「しかし、『ホーリーライフバリアー』の影響下では、我が『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』を破壊することは叶わない!」

「……わかってます。私はこれでターンエンドです」

「ふっ。私のターン! それ、ドロー!」

 カードをドローしたエンタメンは暫し黙考。

「……ふむ。とはいえ流石に『ジングルヴェール』が破壊されては敵わない。私は手札から魔法カード『ブラックホール』を発動しよう!」

「なぁっ!?」

『うにゃああああああああああああっ! おねーさんのコスがぁぁぁっ!!』

 なんとエンタメンは自らの切り札ごとアテナのモンスターを全滅させてきた。再利用の難しい儀式モンスターで、よくそんなことをする気になったな。

「そして私は魔法カード『一時休戦』を発動。互いにカードを一枚ドローし、次の少女のターン終了時まで、お互いに受けるダメージはゼロになる。汝、争うなかれ、だ。ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

「ふっ……一日目だ」

「は?」

「いや、なんでもない。続けてくれたまえ」

「……私はヴァルハラの効果を使います。手札から『光神機―轟龍』を特殊召喚。ターンエンドです」

 『光神機―轟龍』ATK2900

「私のターン、ドロー」

 切り札を失ったというのに、余裕綽々な様子のエンタメンがカードをドローする。

「ほぅ……私はカードを一枚セットし、ターンを終了する」

「私のターン、ドロー!」

 その時。

「三日だ」

「え……?」

「聖者の死は死に非ず。聖者は死なず、また蘇る」

「何を……」

「破壊され、墓地に送られてから三回目のスタンバイフェイズ時、我が主、『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』は墓場より蘇る! その手に奇跡を携えて!」

「なんてすって!?」

 『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』ATK2500

「そして『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』が自身の効果により蘇生した時、私は墓地からカードを一枚手札に戻すことが出来る。私が手札に戻すのは『ジングルヴェール』!」

「……何度でも蘇るのなら! 私は何度でも打ち倒すまでです!」

 流石、アテナらしい強引な帰結だ。

「バトルです!『光神機―轟龍』で、『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』を攻撃!『エクストリーム・バースト』!」

「ふっ……聖者に奇跡はつきものだろう? リバースカードオープン! 速攻魔法『禁じられた聖杯』! 対象モンスター効果を無効にする代わり、攻撃力を400ポイントアップさせる!」

 『奇跡の担い手―ギフテッド・イエスマン』ATK2500→2900

「攻撃力が互角……!」

 相討ちか。だが……。

「聖者は三ターン後、再び蘇る!」

「くっ……私はターンを終了します」

 最上級モンスターばかりの重いアテナのデッキは、それが破られると途端に脆くなる。今も、通常召喚権を残したまま、ターンを終了するしかない。

「アテナ、苦戦してるね」

「意外とやるな。あの変態」

「エンタメン、或いは惨汰さんとお呼びなさい! 私のターン!」

 どうでもいい訂正をしつつ、エンタメンはカードをドローする。

「まずは『ギフテッド・カリブー』を攻撃表示で召喚! 手札から『ジングルヴェール』を発動させてもらおう!」

 『ギフテッド・カリブー』ATK600→1200

「バトルを行う!『ギフテッド・カリブー』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

「きゃああああっ!」

 アテナLP4200→3000

「最初の『ギフトカード』がなかったら負けてたね」

「ああ。あの変態、予想以上に強い」

「変態だけどね」

「ああ。変態だけどな」

「私は再び、魔法カード『一時休戦』を発動しよう! 聖者が舞い戻るには、今しばらくの猶予が必要なのでね。ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

「苦しいな……」

「このターンはダメージを与えられない。でも次のターンにはイエスマンが蘇ってくる」

「このターンで何か対策を講じないとマズイな」

 エンタメンは内心ほくそ笑む。少なくともこのターンで負けることはない。そして手札には……。

「(ふっふっふ……聖者の復活と共に『ブラックホール』を手札に戻し、この『禁じられた聖槍』とのコンボで一方的に殲滅。勝負を決めて差し上げよう)」

 しかしふと、エンタメンは窮地に追い込んだ筈の少女が笑っていることに気付く。

「……何故、微笑んでいる。少女よ」

「変態さん。ちょっと調子にのって、私にカードを引かせすぎましたね」

「なに……?」

「私はヴァルハラの効果を使用します! 手札から『ジェルエンデュオ』を特殊召喚!」

 『ジェルエンデュオ』ATK1700

「聖者はもう、蘇りません! これが私の逆転の一手! 『ジェルエンデュオ』を二体分のリリースとし……」

 ヴァルハラで召喚せず、態々『ジェルエンデュオ』を経由する……?

「……そうか、なるほどな」

 アイツか。

「私は『虚無の統括者』を攻撃表示でアドバンス召喚です!」

 『虚無の統括者』ATK2500

「『虚無の統括者』が存在している限り、貴方は特殊召喚を行えません! よって、聖者が墓地から蘇ることも、もうありません!」

「な、なんですとぉぉぉぉぉぉっ!?」

「バトルです!『虚無の統括者』で、『ギフテッド・カリブー』を攻撃!『トリニティ・ヴァニッシュ』!」

「ぬぅぅっ!?」

 『一時休戦』の効果で、エンタメンにダメージはない。しかし……。

「『虚無の統括者』の効果により、『ギフテッド・カリブー』のリクルートも無効です!」

「くぅっ!」

「ターンエンド! さあ! 打つ手がありますか!?」

 アテナの啖呵に、エンタメンは悔しげに口元を歪め……ふっ、と力を抜いた。

「……なるほど。これが想いの力というものか」

「そうです! セツからのプレゼント、返して貰いますよ!」

「聖者の復活が妨げられた以上、最早私に打つ手はない。サレンダーだ」

 エンタメンLP3200→0

「私の勝ちです! プレゼントを返して下さい!」

「……よかろう!」

 ばばっ! と無駄に大げさな動きをし、エンタメンは俺のプレゼントをアテナに向かってぶん投げた。あ、そんな乱暴に扱うと……。

「ふはははははははっ! さあ受け取るが良い! エンタメンからのプレゼントだ!」

「セツからのプレゼントですぅ! いきなり価値を暴落させないでください!」

「それでは諸君! 季節の節目にイベントに! また、会おう!」

「もう来なくていいです!」

 ふはははははははーっ! と高笑いをしつつ、エンタメンは寒空の向こうへと消えて行った。

「せ、セツ……私、なんとかセツからのプレゼント、取り戻しました!」

「あ、ああ……その、アテナ」

「あ、これ開けてみてもいいですか?」

「いや、まあお前にあげたものだし、ダメとは言わないが……その、な?」

「ありがとうございます! 楽しみです~」

「あ~……そのプレゼントなんだが」

 浮かれているのか、俺が言葉を濁していることに全く気付かず、嬉しそうにアテナがプレゼントの箱を開ける。

「……え?」

「実は特製のケーキを作ってみたんだが……あんだけ派手に振り回されると、な?」

 箱の中身は、それはもうぐっちゃぐちゃだった。元の面影はまったくない、ただの生クリームの残骸。

「あ、な、なんだったら作り直すぞ? 別に作るのにそんな手間がかかるというほどでもないし、俺は全然……」

 構わない、という前に、アテナが爆発した。

「あ、あ、あ、あの変態デュエリストぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 アテナはエンタメンが消えた寒空の向こうを危険な目で睨みつける。

「今度……今度会った時はサレンダーなんて許しません! 二度と! 二度と奇行の出来なくなるまで徹底的に痛めつけて反省させてやりますからぁ!!」

「あ、雪……」

「ホワイトクリスマス……だな」

「絶対、絶対許しませんからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 雪の降りしきる聖夜に、少女の怒りの声が響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 




・『ギフテッド・カリブー』 星4 光属性 獣族 攻/守600/1200
 効果
(1)このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の『ギフテッド』モンスター一体を自分フィールド上に特殊召喚することが出来る。

・『ギフテッド・マジシャン』 星6 光属性 魔法使い族 攻/守1200/2500
 テキスト
 聖夜に一人、カリブーに乗って夜空を駆ける、ちょっとエッチなお姉さん。恵まれない男の子たちに一夜の夢を見せてくれるが、怖いお兄さんには気をつけて!

・『ジングルヴェール』 永続魔法
 効果
(1)このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する『ギフテッド』モンスターの攻撃力・守備力を入れ替える。

・『聖者降臨の儀式』 儀式魔法
 効果
 『奇跡の担い手-ギフテッド・イエスマン』の降臨に必要。
(1)自分の手札・フィールド上から、レベルの合計が10以上になるようにモンスターをリリースし、手札から『奇跡の担い手-ギフテッド・イエスマン』を儀式召喚する。

・『奇跡の担い手-ギフテッド・イエスマン』 星10 光属性 天使族 攻/守2500/3000
 儀式・効果
 『聖者降臨の儀式』により降臨。
(1)このカードが墓地に送られてから3回目のスタンバイフェイズ時に、このカードを墓地から特殊召喚する。この効果により特殊召喚に成功した時、自分は墓地からカードを一枚選択し、手札に加える。



 こんなくっだらない話のために態々オリカを作る……それが遊戯王クオリティ! そして『ギフテッド・マジシャン』のフレーバー・テキストを読む限り、確実にこの女つつもた……いえ、なんでも。
 それでは、悠でした!
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