アルカナ~切り札の騎士~
番外編4「桃色さだめ夢想伝」
ここは、どこでもない世界。ここは、ただ一人の少女の記録。
……ねえアテナ。いくら僕が全知の書たるアカシックレコードだからって、こういう風に使ってほしくはないなぁ、なんて……。
「いいから、プロローグを続けてください」
……ふう。仕方ない。コホン。ともかく、これは、運命に翻弄され、聞くも涙、語るも涙の悲劇を体験した少女の物語である……。
「ダウトです。聞くも失禁語るも失禁の間違い(嘘)ですし、これから見ていくのは、悲劇ではなく喜劇です」
……プロローグにツッコミを入れないでくれるかな。では訂正。
これは、運命に翻弄され、抱腹絶倒、面白可笑しくエロバカらしい日常を送る一人の少女の物語である……。
「大体は合ってますが、ハードルを上げ過ぎるのはいけないと、何処かの偉い人が言っていた気がします」
大丈夫。別にその人は偉くもなんともないただの引き籠り予備軍だから。……そしてこれは、最近頓にヒロイン力が右肩上がりしている一人の少女に嫉妬した、メインヒロイン(笑)の依頼に基づくものである……。
「ちょっと! わ、私は別に嫉妬してこんなことをしているわけじゃありませんし、いい加減その(笑)は取ってください!」
まあ要するに、人気その他で負けてしまってどうしようか悩んだ挙句、そうだ、敵を知り、己を知らば百戦危うからずと言うじゃないか、と考えた某元精霊が僕のところに押しかけるなり情報屋扱いして尋問の体勢に入った結果、仕方なく公開するものであって、別に終焉の力が増したり時系列がどうとか、そういう本編に直結するような事態は特にありませんよーということを明記しておくものとする。
「そ、そうやって解説されると、私がすっごく馬鹿みたいじゃないですか! やめてください!」
甘い。僕に依頼した時点でありとあらゆる事情は解説されてしまうものと心得よ。……まあ例え別人に相談していても僕には隠せないから結局解説はするんだけどね。
「八方塞じゃないですか!?」
ほらほら、そろそろ君は舞台袖に引っ込まないと。今回の主役は君じゃないだろ?
「そ、そうでした……って、今気付きましたけど、これってむしろさだめさんの出番を増やして、人気を更に確立させる要因になるだけじゃないですか?」
……気付いてなかったんだね。ついでに、キミに腹黒設定が追加されて人気が落ちる可能性も秘めた両刃の剣……というか、キミが一方的に損するだけの話だということに。
「あ、ああぁ~!? ま、待ってくださいやっぱりいいですやっぱりこの企画なしで!」
そうしたいのは作者共々まったくの同感なわけだけど、まあ一度やると宣言してしまった手前、やらないわけにもいかないよね。ちょっと方向性違うけど。
「タイトルからして変わっているんですからやめちゃってもいいじゃないですか!」
さあ、それでは既に名前も出ちゃっているのでぼかすのはやめて本名で。これは、悲劇を乗り越え今を面白可笑しく楽しくエロく生きる御堂さだめの、大好きなお兄ちゃんとのやり取りの、ごく一部を公開するものとする……。
「ごく一部!? っていうか、始めないでくださいってb(ブッ)」
……ゆっくりしていってね!
ケース1:常軌を逸したエロ思考
「なに? バーベキュー?」
その日の授業も終わり、アテナと談笑していた俺に、剣士が声をかけてきた。
「ああ。吹雪さんがよ。折角こうして個性的な面々が集結したんだから、親睦会の意味も込めて、皆でバーベキュー大会でもやろうじゃないか! だとさ」
「やる。是非、やろう!」
俺は間髪いれずに剣士の話に飛びついた。その勢いに、剣士が少々たじろぐ。
「ど、どうしたセツ。いつになく積極的だな?」
「当たり前だろ! だってバーベキューだぞ!? 焼肉だぞ!?」
「そ、そうですけど、別にそこまで珍しい話じゃないんじゃ……」
「甘い。甘いぞアテナ。お前、俺が今まで……ハッ!? おい剣士! まさかこの話、さだめにしてないよな!?」
「ん? いや、まだなんじゃね? けど、凛には伝えてあるし、間接的にあの妹にも伝わってる可能性も……」
「……ああ、そうか……そうだよな……」
いきなりテンションがガタ落ちになった俺。アテナも剣士も怪訝そうな表情をしている。
「セツ……どうしたんですか? さだめさんとバーベキューに、なにか関係が……?」
さだめの性格も大体把握してきているが、バーベキューで騒ぐことがあるとは思えないのだろう。ちょこんと可愛らしく首をかしげている。
「……いや、どうせ本人がすぐに聞きつけてやってくるだろうから、詳しいことは聞きもしないのに勝手に答えてくれるだろ……」
ぐったりする。ああ……そりゃさだめの耳に入らないわけないよなぁ……短い夢だった……。アテナたちが更に不思議そうな顔をしているが気にしない。
「お兄ちゃん!」
そして数秒と待たず、俺の言葉通りさだめが飛び込んできた。
「……で、なんださだめ? 俺は……」
「バーベキューするんだって? ダメだよ。さだめは認めないよ。浮気ダメ! 絶対!」
俺が何を言う間もなく、さだめによって却下されてしまう。
「あの……さだめさん? どうしてバーベキューがダメなんですか? それに浮気とか……全然意味がわからないんですけど……」
「甘い。甘いねアテナ」
「あれ、なんでしょう。ついさっきセツから似たようなフレーズを聞いたような……」
兄妹だからな。言葉使いとかは多少似てくるだろ。
「アテナ。バーベキューと言えば、何だと思う?」
「え? 何って……焼き飯、ですか?」
「そうそう終わり際に余ったご飯を鉄板で焼いて……って、敢えてそのセレクトをするアテナも結構変わっているよな」
「そうだね。焼肉だね」
「そしてさだめ。お前はもうちょっと会話のキャッチボールを楽しもう」
俺の波状ツッコミにもめげず、さだめは更に質問を続ける。
「そしてアテナ。焼肉と言えば?」
「豚足です」
「アテナ。もうちょっと普通のセレクトはないのか? っていうか断言!?」
「じゃあライチだと思います」
「焼肉屋でシャーベット頼むと付いてきたりするらしいなーってだからセレクトが独特!」
しかも自信満々。どうしてそのセレクトで胸を張れるのか小一時間程問いただしたい。
「じゃあなんですか!? ギアラですか!?」
「だからなんでそんなマニアックな部位なんだよ!? 牛の第四胃とか、知ってる人どれだけいると思ってるんだ!?」
「知ってんじゃねえか」
「そうだね。タン塩だね」
「これまでの会話で一度でも出てきたか!? その単語」
いや、俺はさだめが俺にバーベキューや焼肉を許さない理由を知っているからわかるけど、他の奴らからすれば唐突すぎるだろ。
「そ、それで、タン塩がどうしたんですか?」
「簡単な話だよ。アテナ……タン塩って……なんだと思ってるの?」
「……っ!? ま、まさか……」
アテナは気が付いたらしい。逆に、剣士は良くわかっていない顔をしている。
「そう! タン塩は……牛の
「なるほど確かに!……とはなりませんよ流石に! さだめさんその発想というか妄想は流石に異常だと思います!」
いや、俺の視点から見ると、アテナも思いっきり納得しかけて、俺をチラ見して思いとどまった印象を受けるぞ。アテナ……。
「な、なんですかセツ。その、ちょっと残念な子を見るような目は……違いますよ? 私、そんな妄想に納得したりしていませんよ?」
「牛ごときが……お兄ちゃんの舌と絡むなんて……考えるだけでも怖気が走る……!! ギリィッ(歯軋り)」
「お前も唇噛み切る勢いで歯軋りするな! タン塩ごときで何考えてんだ!?」
さだめがこんななので、俺は未だにタン塩を食ったことがない。……美味いって聞くから、食べてみたいんだけどなぁ……タン塩。
「さだめなんて、肉自体あんまり好きじゃない。さだめが興味あるのはお兄ちゃんのお肉だけ」
「カニバリズムはそろそろ卒業しような?」
コイツ、終焉に取り憑かれていた時程じゃないが、未だに文字通り俺を食べたそうにしているんだよなぁ……。
「お兄ちゃん一つ。血の滴る生で!」
「グロい! せめて焼け!」
「セツ、セツ。ツッコムところが違います! どっちにしろ食べられてますよ!」
「あとホルモンとか、名前がエロい。ムラムラする。お兄ちゃんの男性ホルモンが……」
「そろそろ止めよう? な? お前疲れてるんだよ」
「お兄ちゃん……食べたければ、さだめのタンを食べて……?」
「焼肉一つでよくもそこまで盛り上がれるよなぁお前は!?」
「お兄ちゃん。牛乳も飲んじゃダメだからね。飲むならさだめのを……」
「……その程度の胸で搾乳プレイとか……笑わせる」
「ぐ……ルイン……何処からともなく現れて……」
ホント、ルインは神出鬼没だな。そして胸関係の話題に必ず飛びついてくるよな。
「私の武器」
「ふ……胸しか取り柄のない女はこれだから……」
「ウエストもお尻も足も、自信はある。お子様体型の貴女とは雲泥の差」
「ぐ……い、いいもん。さだめだって、お兄ちゃんに協力して貰えば、すぐにナイスバディに……」
誰が妹の発育促進に協力するか。
「ないすばでぃ(笑)」
「く、くぅぅ~……」
ルインがさだめをからかって遊んでいる。実に、普段通りの光景。というか、ルインはいっつも誰かをからかって遊んでるな。
「お気に入りはこの子と剣聖。あと、最近は冥府の使者の片割れ」
「カイエン……(泣)」
ただでさえゴーズやシャルナの相手で日々てんてこ舞いなのに、この上ルインまで……今度、菓子折りでも持って行ってやろうかな……割と真面目に。
「っていうか、さだめさんってホントに何でもかんでもエッチなことに結び付けますよね……」
「さだめは思ったことをそのまま正直に言っているだけだよ。誰もが色んなものからエロ妄想するんだから。さだめは素直なだけ」
まあ確かに、世の中には茶葉がジャンピングするだけでエロ妄想に繋げる図書部員がいるらしいが……。
「そ、それはどうなんでしょうか……」
「……ま、さだめが欲望に忠実なのは心から同意してやるけどな……」
「それは同感」
「最近は歌詞の裏に隠されたエロを見つけ出すのがマイブーム」
「お前は……」
「た、例えばどんなのですか……?」
アテナよ。なぜそうも興味深げに尋ねてるんだ。歌詞は二次作以上に著作権がヤバいと気付かんのか。
「例えば『夏○幻』とか」
「コ○ンかよ。しかも古っ」
「あれ、よく歌詞を見てみるとエロに溢れているよね」
「何処がだ!」
「よくぞ聞いてくれました!」
しまったついツッコミを。
「まず『近づいてくる至福の時は痛みを伴いながら……』のフレーズ。これはもう明らかにアレだよね。破……」
「黙れさだめそれ以上はヤバい」
「他にも『瞳閉じて一番最初に君を思い出す……』とか『キョリを超えた欲望が溢れて一人部屋の中で君の温もり想う……』とかはオn「そこまでださだめ!」他にも……」
「いいです! もういいですから! 私が悪かったです!」
「歌詞にはいいエロがたくさんあってホクホクだね!」
「大声でエロエロ叫ぶな」
「今更。むしろ叫ばない彼女の方が異常」
「否定できない!」
むしろ全力で肯定してしまいそうだった。
「とにかく! 話を戻すけど、お兄ちゃんはバーベキューに参加不可! してもタン塩だけは食べちゃダメ!」
ケース2:人知を超えた異能力
ある日、珍しく俺たちがデュエルではなく普通のゲームをしている時のことだった。
ゲームの題名は、諸事情によりボカしておくが、怪物狩人とでも言っとけばわかるだろ。察しろ。
メンバーは俺、剣士、シャルナ、ゴーズの四人。何故か精霊が混じっているが、サボる傍らよくやっていたらしい。今日もサボり。カイエンェ……。
ちなみにアテナやユーキちゃんもいる。二人が参加していないのはそれぞれ真逆の理由で、まずユーキちゃんは上手過ぎた。というか、ゲームに登場する全ての武器防具を各三つずつコンプしている上所持金カンストとか、どれだけやりこんでるのかと。
「わーいウカム討伐~♪」
「オレ、マフモフでウカム挑む奴初めて見たわ」
「それだけなら兎も角、無傷かヨ……そりゃ防具いらねえわ」
「っていうか、このゲーム無傷討伐可能なのね……おねーさんもびっくりよ」
「こういうゲームなら任せて~♪」
「アイテムすら未使用とか……可能なのか……?」
「あ、崩天玉取れた。でももうアイテムスロット一列分あるし、いらないかな~」
『どんだけだよ!?』
お前は神かと言わんばかりに一人チート街道まっしぐらだったので、チームプレイには向かなかった。
そしてアテナだが……。
「あっ、あっ、死んじゃいます!」
「落ち着けアテナ! それはただの苔ブタだ!」
「ば、爆弾! 爆弾使えば……」
「苔ブタに!?」
「はきゅぅっ!? し、死んじゃいました……」
「最後は自爆!」
……と、逆に話にならない下手さで一同を唖然とさせた。ちなみに、アテナはゲームを持っていなかったのでユーキちゃんが貸した。要するに、あのフルコンプも甚だしいユーキちゃんのデータで、下位の苔ブタに敗北。これで、アテナの下手さ具合がわかろうというものだろう。現在体育座りで凹んでいるが、流石にかける言葉がなくて全員スルーを決め込んでいる。
「うあ、ヤバ! 悪ぃ、オレのP○Pの体力レッドゲージに突入したわ」
「ありゃ」
「マジか。剣士の大剣、ダメージソースだったからなぁ……」
「じゃあ代わりに……」
アテナとユーキちゃんを見る。どっちもないわ。
「……しゃーない。さだめでも呼ぶか」
「妹か? アイツも上手そうだな……」
「まあ俺と一緒にそこそこやり込んではいたからな。アイツも大剣使うし、穴埋めには丁度いいだろ」
ケータイを取り出そうとして、ふと思いついたことを試してみたくなった。
「どうした?」
「いや、もしかしてさだめなら、手を叩くだけで反応するかな、と」
「流石にそれは……ない、と言いきれないところがすごいな……」
むしろ十二分にあり得る話だった。
「試してみるか。えーと……」
パンパン!
柏手を打つように手を叩く。
「呼んだ? お兄ちゃん?」
「ホントに出た!」
「つーかお前は何処から湧いて出てるんだ!」
さだめは何故か俺のベッドの中から出現した。その手にはしっかりと件のゲームが握られている。
「お前はアレか? イリュージョニストか何かか? テンコーさんか?」
「お兄ちゃんの無駄スキルに限界がないように、さだめもお兄ちゃんに関することなら天井知らず、だよ」
「似た者兄妹だよお前ら」
そこを突かれると反論できないな。
「じゃ、さだめも入るね。大剣?」
「ああ。前線任せるぞ」
「お兄ちゃんも、援護よろしくね~」
ちなみに俺は片手剣。アイテムサポート技術は一級を自負している。
「ん~金銀ツガイか~。じゃあどれでいこっかな~」
さだめが武器を選んで、早速狩場へ。と言っても、今回は相手を探す必要もなく、あっさりと目標を視認する。
「よし、行くぞ!」
まずはスタングレネード(意訳)で片方の動きを止める!
「成功! 二体とも気絶したぞ!」
「流石セツ!」
「パッパと狩っちゃいますか!」
目を回している内に四人で一斉に攻撃。目を覚ましたら即スタン。この繰り返しでまずは一体を討伐する。二体同時に相手するのはユーキちゃんぐらいしかできん。スタグレなしで二体討伐するんだもんなぁ……ユーキちゃん。
「はいは~い、榴弾で気絶確認よ!」
「よし、ナイスシャルナ!」
チャンスとばかりに片手剣を構えて斬りかかる。しかし……、
「お兄ちゃん危ない! 後ろ!」
「なにっ!?」
気絶から回復しもう一方が襲ってきたのか!?
「お兄ちゃん、危な~い!!」
「おぶっ?」
敵を確認する前に、俺の操作していたキャラが宙を舞った。大剣のカチ上げだ。
「きゃふぅっ!?」
「さだめっ!?」
カチ上げられた俺は無敵時間のおかげで無事だったが、カチ上げたさだめはそうもいかない。突っ込んできた金竜に吹き飛ばされて地面を転がる。
「さだめー!!」
「ぐふっ……お、兄ちゃん……無事?」
「ああ、ああ! 俺は、俺は無事だ! お前のおかげで……でもお前が!」
俺のキャラが吹き飛ばされたさだめのキャラの所まで駆け寄る。
「いいの……いいんだよお兄ちゃん。お兄ちゃんを守れたなら、さだめは……がはっ!」
「さだめ!」
「さだめは、もう駄目……お兄ちゃん」
「そんなこと言うな! お前は大丈夫。大丈夫だから!」
「勝って……じゃなくて狩って。お兄ちゃん……さだめの分まで……ガクッ」
「さだめー!!」
大の字に横たわるさだめのキャラの隣で、がっくりと膝を着く俺の操作キャラ。
「おいコラそこのアホ兄妹! リアルでもゲーム内でもコントしてないで手伝えヨ!」
「二人じゃ厳しいって! ほらセツが命の霧薬使えばいいだけじゃないの! つかそこに居ると二人とも火炎弾が……」
「「あぶしっ!?」」
「「死んだー!?」」
俺たちがふざけてコントしているところを、銀竜が吐いて来た火炎弾が的確に打ち抜く。即死。二死決定。後一回死ねばゲームオーバー。
「なにやってんだー!?」
「ちょっと! あたしヤバいんですけど! スナイパーだから防御力低くて……あっ!」
GAME OVER
「ぎゃあああっ!」
「だから命の霧薬使ってって言ったのに……」
「それ持ってるの、俺だけだったしな……」
「持ってかなかった俺らも俺らだがヨ……」
シャルナとゴーズがジト目で俺たちを見やる。俺とさだめはサッと目を逸らす。
「……ゲームはほら、リプレイできるから」
「そうそう。楽しかったし、いいんじゃないカナ?」
「「カナ? じゃなーい!!」」
「それにしても、さっきさだめちゃんがセツくんを助けた時の動き……立ち位置的には絶対間に合わない筈だと思うんだけど……システム的に……」
「……さだめさんなら、システムとかそんなもの超越した動きしてもそんなに不思議じゃないですよ」
「……まあそうだね。むしろ、わたしのあのデータ使って苔ブタに負けるアテナちゃんの方がある意味あり得ない動きだったとも思えるし~」
「はぅ……い、言わないでください……手先不器用なんです……」
……いかがだっただろうか? これでもまだまだ、御堂さだめという少女の潜在能力は、表面的なものでしかない……。
「っていうか、このケースどっちも私いましたよ! 態々見せて貰わなくても、私現場に居ましたから! どうせなら私も見てないところを見せてくれなきゃ全然私収穫ないじゃないですか!?」
それどころか、アテナのダメっ娘っぷりが強調されるようなシーンを厳選してお伝えしました。
「なんの嫌がらせですか!」
とりあえず今の二つのケースでわかったことは、セツとさだめは似た者兄妹ということと、アテナが結構ダメな子だという二点。
「だから! なんでさだめさんのお話のハズが私の悪いところばっかりクローズアップするんですかぁ!」
さだめをメインに据えながらも、その背後で空回っているメインヒロイン(笑)を魅せる、というのが今話のコンセプトなのさ。
「こ、これじゃあ本格的に私、メインヒロイン(笑)じゃないですか! 抗議! 断固抗議します! 私にももうちょっといいところ見せさせてくれてもいいじゃないですか!」
その内ね。
「誠意がないです」
善処します。
「それしない時の事前言い訳の代表ですよね」
まあ、本編を待て、ということで。
「その本編で私の扱いが徐々にさだめさんに押されてきているからこその企画だったと思うんですけど!?」
僕に言われても。僕はアカシックレコード。本当にあった話ならともかく、なかった話を捏造することはしないよ。
「暗に私にはいいところなかったと言っているんですか? そうなんですね」
まあ、頑張るんだね。その内きっといいことあるさ。
「う、うぅ……わたし、メインヒロインなんですよぉ~……(笑)じゃないですよぉ~……セツ~(泣)」
あらら、遂に泣きが入っちゃったから、そろそろお開きにするとしよう。それでは、今回のお話は、監督編集を僕、真中希望が務めさせていただきました。まあ、毒にも薬にもならない程度の小話だけど、楽しんでいただければ幸いだね。それではまた、本編等でお会いしよう。
おまけ
「うぅ~……」
「あれ? どうしたんだアテナ。こんなところで……泣いているのか?」
「せ、セツ~」
「うわ、どうしたアテナ。よしよし、ほら、何があったんだ? 話してみな」
「私、私ぃ~……」
「……ホントにどうしたんだ? 何か悩みがあるなら聞くぞ? 格安で」
「私……」
「あれ、ツッコミなしか。ホントに切羽詰まってるな……」
「私、セツのメインヒロインでいいですか……?」
「ぶはっ!? あ、アテナいきなり何を……」
「もう嫌です……(笑)は嫌なんですよぅ……」
「あ、アテナ……」
えぐえぐと泣き続けるアテナをあやしつつ、俺は赤く染まった頬を隠すように顔を背けるのだった。